さて、数ヶ月ぶりの投稿が何故続ける気の無かった話なのか、私としても疑問ですが、出来てしまったのであげることにしました。
内容はあって無いようなものなのでお暇な人はどうぞご覧下さい。
「実は俺……昔吸血鬼だった時期があるんだ」
今となっては何故こんな話題になったのか分からない。
ただ、その言葉に目の前の相棒の騎士は呆けたような声を上げた。
「弟子入り」を志願した奇特な少年と旅をするうちに、いろいろな厄介事に巻き込まれ、多くの人物と知り合い……いつの間にやら、少年を中心にパーティーを組んで旅は続いていた。
彼と会うまではたっちとたった二人の目的地もほぼ無いような放浪であっただけに、今の現状はこちらの予測の外と言って良い。
そんな俺達の旅の中で現在の懸案事項と言えるのは近頃少年が保護した、とある少女の存在だった。
少女の名前はキーノ。
この世界の中では少数派である、生まれついての「特殊能力」、「タレント」の保持者であったが、他ならない、自身の「タレント」の暴走により、この世界の大多数の種族「人間種」から、「異業種」の一種、「吸血鬼」へと変貌を遂げてしまった少女だった。
「吸血鬼」としての本能を抑えきれずに、自らの生まれ故郷すら滅ぼしてしまった彼女はひどく不安定で、俺達のメンバーの中でも、命を助けるべきか、魔物として抹殺するべきかで酷く揉めた。
少年の方も酷く悩んでいた事は記憶に新しい。
本人の内向的な性質も相俟って、パーティーメンバーの中でも未だに彼女は浮いていた。
「すいません。聞き違いですか? もう一度言ってください」
これまでの事を思い返していた俺の思考を元に戻したたっちの声は、ありありと困惑の色が見て取れる。
「あぁ、悪い……といっても、今言ったことが全部なんだが」
「……いえ、まずこの世界に、種族を自由に変える能力は……少なくとも、君は持っていないはずですよね? それとも、以前そのようなアイテムを持っていた経験があるのですか?」
アイテム、と口の中で転がす。
次いで思わず苦笑が漏れた。
どうやら俺の言葉足らずでこの相棒も随分混乱してしまっているらしい。
俺がこの世界由来のアイテムの殆どを……特に、魔法具に関しては使うことが出来ない事などとうの昔に知っているだろうに。
「悪い……こっちの……この世界に来る前の話なんだ」
正確には、俺の今の体……アンダーワールドで過ごすよりも更に前だから、この体に関しては名残も何もありはしないが。
「俺が14歳……かなぁ。オンラインゲームの中で、始祖の吸血鬼の女の子を助けるために、自分から血を飲んでくれって頼んだんだよ。彼女は毒で弱っていたし、その毒を解毒するために必要な材料はそのゲームのフロアボスの一人でさ、結構大所帯で攻略しようとしたのに、かなりギリギリの戦いを強いられたんだよなぁ」
懐かしさに、つい顔が緩む。
彼女たちは、元気だろうかと、現実世界に残してきた相手を後ろめたさ無く思いだせたのは、自分でも少しばかり驚いた。
「……それ、単なるゲームだったんですよね?」
たっちの方は穏やかな言い方なれども、何か違和感を感じ取ったのか、改めるように問いかけてくるが、時代も異なる彼に、わざわざ製作者自らの画策によって変わった仕様など、伝える必要も無いだろう。
彼らは
「あぁ……単なるゲームだったよ」
そう、あの少女を気にかける理由など、それくらい小さなものの方が気が楽と言うものだろう。