領域の支配者   作:ルルーラ・ランドー

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二十三話 甘い誘惑

GWという呪術界の繁忙期の一つの波を乗り越えた京は加茂先輩の取り計らいにより加茂家の書庫に正式な来客として訪れていた。

 

加茂先輩の同行を条件として禁書の棚も見させてもらっている。目的は『呪胎九相図』を含めた『呪胎』についてである。

琴音については勿論黙っているが『特級呪霊』『漆姫』が『呪胎』を作る技術を持っており、対策をしたいと言ったら快く引き受けてくれた。

 

書庫の内容はほとんど『加茂憲倫』によるものである。

几帳面な人であったのであろう、書物にはしっかり見出しが作られておりわかりやすくなっている。その中から目当ての書を探す。

 

『後天的天与呪縛』

 

双子という言葉に惹かれなんとなく手にとってみた一冊であるが内容はかなり興味深いものであった。

 

『双子は呪術的には同一であるが体と命がそれぞれ別々にある。生得領域もそれぞれ持っているが、それはそれぞれが『魂』を『認知』しあっているからであり、その『魂の認知』を失えば一つになる。このときに大量の『縛り』を課しその後に2つ分け『生得領域』に『境界』を作ることで『魂の認知』を再開させ。片方に『縛り』による負債を背負わせ、もう片方に『縛り』による利益を与える、こうすることにより後天的に天与呪縛を生み出すことが可能である。』

というもの。

黙々と読み進めていた京につられて加茂や琴音が除きこみ内容を理解する。

「これって……」

 

「『双子の術師』と『操演(マリオネット)』と『疑似領域』があれば今日にでもできるな………加茂先輩、後で『ここで見たものを他の者に口外しない縛り』を3人で課しましょう」

 

「元よりそのつもりだから問題ない。」

 

「ありがとうございます。」

 

礼を言う京は書物選びに戻る。

 

『呪力操作』

 

なんともシンプルな名前であるが気になるため読み始める。

内容は現在、呪術高専で学ぶ事を例えを古くして解説しているようなものであったが一箇所だけ気になるところがあった。

 

『他者を利用した呪力操作の補助』の項である。

 

『他者の『魂』を制御下に起き、その者に『呪力操作』の補助をさせることで莫大な量の『術式』を同時に扱う、また『呪力』もその者から供給させることも可能である』

というもの。………これは……使えるな……覚えておこう。

 

何事もなかったかのように京は棚に書物を戻した。

3人で手分けして探していると目当ての物を見つけた。

 

「ありました『呪胎九相図』」

 

絶対にこれだよなってタイトルをつけられていた。

読もうと書物を開くと書物は黒く塗りつぶされていた。

 

「…………これって…」

 

「炭ではなく『漆』………だね…………」

 

「『漆姫』と我々の因縁は我々の思っている以上に深いのかもしれんな。」

 

「それがわかっただけでも十分な成果かもしれません。」

 

「他に無いかもう少し探そうか。」

 

その後も書物を物色するが目ぼしいものは見つからず、3人は『縛り』を課して加茂家をあとにした。

 

 

 

 

帰り道に立ち寄ったカフェの中で小さな『陣』を使い密談をする。

 

「………双子の呪詛師……ですか………?」

 

「うん……加茂先輩と琴音には悪いけど、双子天与呪縛について、姉さんたちのためにも少し研究を進めようと思うんだ。」

 

「…………私に異論は在りません。どうせ祓うのでしょう?」

 

「片方は祓う、というより施術の過程で死ぬかな、二人分の『縛り』を一身に受けてね、生き残った方は一生『操演(マリオネット)』かな……………」

 

「私は問題ありません」

 

「そう?本当に?」

 

「…………………ただ、やるときは協力させてください。呪詛師を祓うときは私もやります。」

 

「そう?琴音は聞き分けが良くて助かるよ」

 

「お待たせしました。」

 

京は『陣』を解くと店員に出された大盛たらこパスタを食べ始め。琴音は運ばれてきたタワーになっている巨大なパンケーキを少しずつ切り崩す。

 

メニューには『大人数の女子会にピッタリ スペシャルビッグタワーパンケーキ』と書かれていたこのタワマンの様な物体を『カップル割』で頼む和装の二人組という冒険的な行動に店内の空気は異様なものとなっていた。

 

中には二人に許可を得てから写真や動画に撮る者までいた。

 

「ネット上げるときはスマイルマークで顔隠してくださいね…………………琴音、これ、味変できるの?」

 

「階層ごとに違う味なのですが、各種フルーツソースと各種クリームを追加注文すると小皿で持ってきてくれるみたいですね」

 

「すみません店員さん、フルーツソース全種とクリーム全種追加でください」

 

「京様は話が早くて助かりますね」

 

「気が済むまで食べたら言いなさい」

 

「わかってます」

 

結果1/4まで掘り進めたところで琴音のナイフとフォークは止まり飲み物を頼むために店員を呼ぶ

 

「タピオカミルクティーと山盛りフルーツの盛り合わせをください」

 

「……………かしこまりました」

 

店員はなにか言いたそうだったが、あまりに自然な追加注文に何も言い出せなかった。

店員が頼まれたメニューをテーブルに運ぶ頃、残りが1/4になっていた。一瞬のうちに巨大なタワマン全体の半分が消し飛んだのである。

ナイフとフォークを持つのは先程から京に変わっている。

 

淡々とナイフとフォークと口を動かし続ける京、それを眺めながらタピオカミルクティーと口直しのフルーツ盛り合わせのフルーツを齧る琴音。

 

結局、フルーツ盛り合わせも殆どを京が食べ尽くした。

カップル割のおかげで会計は4桁で済んだ。

 

京にバトンタッチしてからの動画がTi○TokとTwi○terで拡散され先輩の目に止まり。後日、西宮と真依に引きずられて『呪術高専京都校女子会残飯処理係』としてもう一度来店することになるがそれはまた別の話。

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