京が禪院家に来て一年が経った春のある日
禪院家の書庫で京は座学に励んでいた
半年前、『最強』五条悟と対面してから『呪術』の理解を深めることに努めた。
扇さんや甚壱さんなどの炳の上部メンバーとの手合わせを経てもあのときの高揚感と理解度に勝るものに至れず、手合わせから座学へとシフトしていた。特級相当の相手と戦うことで理解度が深まると考えたが今の所、準一級相当扱いの京では任務の許可が降りず駄々をこねたのはここだけの話。
真希真依との関係も変わった。
正確には京には真希真依の住んでいた離れから母屋の一室が与えられ世話係の女中が専用に付くようになった。名前を
何故『らしい』なのかというと3ヶ月前に呪詛師に呪殺されたため本家で引き取ったとのことだ。怖いよ禪院家、本当に相手は呪詛師だよな?
琴音も呪術師志望であるが術式を持っていないため『陣』や『閃』などの術式を使わない技術を教えたりしている。
分家の女性であるため躰倶留隊への入隊義務も入隊権利も無いらしい。いずれは両親を殺した呪詛師を祓うことが目標だそうな。
そして、現在、京は十種影法術について学んでいた。
影を自在に操り影写しを実現させる術式は自分の術式に活かせないか考えていた。
書物によると昔の六眼と無下限呪術を扱った五条家の人間と十種影法術使いの禪院家の人間が差し違えたことがあるらしい。
あのチートみたいな奴と刺し違えるって何だよ?と思いながら十種影法術についての書物を読み勧めている。
気になっているのは『調伏の儀は何人でも参加できる』という一節、結果として摩虎羅の調伏には何人がかりでも出来なかったそうだが逆に考えれば自分の術式の縛りを相手にも強要することができるのではなかろうか?
『縛り』は『術式』を補強するための『ルール』であって『術式』ではない。未だに『領域』に『術式効果』を付与できていない京にとっては十分試す価値のあることであった。
試しにやってみた。
相手は直毘人さん。桜を見ながら暇そうに酒を飲んでいる。
「『疑似領域展開』」
とりあえず目の前に立って展開してみた
『落花の情』
すぐに対応された。酒飲んでても呪力操作完璧なの普通なのかな?
「……………」
「……………」
「京よ……なんじゃこれは……?」
「『領域内では術式の使用を制限する縛り』だけを付与した領域です。」
「ふむ、そうか、まだまだ『縛り』が甘いな……」
「え?」
『投射呪法』
ドカッバキッボコッ
たんこぶで済んで良かった。花見酒してる直毘人さんに攻撃しかけるのはやめておこう。
『縛り』とは自分に手札がいっぱいなければ補強されない。2枚ある手札の1枚に絞る縛りより10枚ある手札を1枚に絞る縛りの方が『術式効果』が上がるのだ。今の縛りでは直毘人さんクラスだと無理やり術式を使われるし『最強』ならば今の京の机上の空論の『疑似領域』では上書きされて終わりである。
「呪術の本質かー琴音はどう思うー?」
「すみません、私には『術式』が無いためわからないです。私にできるのは呪力操作と帳を下ろしたりする簡易なものだけですから」
「…………自分にできることか……琴音、道場に行こうか」
京は自分にできることを思い返すことにした。
道場に移動して琴音に巻き藁を用意させて久しぶりに木刀を握る。
「『桐ヶ谷流剣術』『閃』」
「『桐ヶ谷流剣術』『断』」
『閃』は呪力の刃による抜刀術
『断』は呪力の刃で上段から面を打つように一刀両断する技
なんとか2回の攻撃に耐えた木刀が崩れ落ちる
これは桐ヶ谷流剣術が無刀に至った理由、己の力が武器に与える負荷が強すぎて武器が攻撃後にボロボロになるのである。
木屑で汚れた手を払ってから無刀抜刀の構えをとる。
「『桐ヶ谷流剣術』『陣』」
桐ヶ谷文幸が到達した『簡易領域』領域内の全てのモノの運動を認知できる。
ここからが自分の術式
「『投影呪法』『
まだ残っていた巻き藁に影で作った分身三人が攻撃を仕掛ける幻影を作る。
そのうち一体と同じ攻撃をすることで威力を向上させるというもの。
分身は実際はもっと出せるが『3人に縛り』と『幻影に答えを混ぜる縛り』と『幻影以外の攻撃には呪力を乗せない縛り』の3つの縛りを付けることで経験の浅い京でも戦うことができていた。
「『投影呪法』『
これは『投射呪法』の真似事、自分にしか術式効果は無いが予め作った自分の動きを圧縮して再生することで動きを加速させる術式。体への負荷と『
「『投影呪法』『
呪力のインパクトの時間を伸ばすことで『黒閃』の0.000001秒の誤差範囲を無理やり広げて『黒閃』を無理やり引き出す技。
1000倍の0.01秒まで広げているため呪力消費量が凄まじい。
これまでに自分が解釈し使えるようになった技術を並べてみたがどこをどう拡張すべきか?やはり自由で柔軟な発想というものは屋敷の中では生まれそうにない。高専入学までは今ある術式を磨くべきなのかもしれない。
片付けを琴音に任せて自分は鍛錬の汗を流すために風呂場に向かった。