「うち、まだ喪中なんやけど」
「そんなこと言える状況か禪院直哉、貴様は禪院家当主代理でもないただの呪術師でしかないんだぞ。」
直哉は上層部に呼び出されていた。
「特級呪霊、『京』の祓いと呪詛師『禪院琴音』の呪殺を命ずる。」
「………はぁ……」
「縛りを設ける」
「ほんま人使い荒いねん。」
直哉は承諾せざるを得ない。
丙と灯、禪院家の術師の首が会議室に並び。
禪院本家の数少ない生き残りが人質にされているのである。
縛りを結び直哉は外に出る。
(甚一の首だけなかったな………)
「帰って家に誰も居へんのは寂しいやんなぁ………もしもし?」
『直哉さん。どうしたんですか?』
「これからお前祓いに行くから居場所教えてくれへんか?」
『……………桜島で真希姉さんに会う予定です。』
「真希も居るならちょうどええわ。今の家の話少しだけ話したいねん」
『やるときは本気ですよ』
「勿論や。んじゃまた後で」
「対象に連絡を取るって貴方は喧嘩を売ってるんですか?」
呪力を込めた槍を背中に突きつけられて直哉は両手を上げる。
お目付け役兼直哉が裏切った時の秘匿処刑執行役
おさげ髪に丸メガネ
二級術師
土御門 フミ
(舐めとんのか?)
「なんで准一級でもない奴が付き人やねん。」
「付き人ではありません。監視者です。仕方がないでしょう。上の命令なんですから。」
「特級呪霊祓いに行くのに死んでも知らへんで。」
「私の術式は………端的に言うと『道連れ』です。縛りを結んだ相手に私が受けた傷を相手にも写します。私から5km以上離れると呪力コントロールができなくなります………」
「なるほど、聞いたことあるなぁ。その術式、領域持ちに使えへんから二級止まりやんな。」
「でも、貴方には効きますよね。」
「そやね。」
パシンッ!!!
直哉は一瞬で背後に周り尻を引っ叩く。
「いったぁい!!!」
「いってえ。」
確かに傷を共有しているようだ。
「まあ、その大きな尻に免じて鹿児島まで運んでやるわ」
「殺しますよ?」
世界が加速する。
「着いたで」
「え?」
「コンビニで雉落としてくるわ」
フミはコンビニの店名を確認する。
確かに鹿児島まで来ていた。
「嘘でしょ………報告書と全然違うじゃない……」
その移動速度は五条悟の速さに近い。
呆然と立ち尽くすフミ。
「なんや?早く行くで。桜島コロニーや」
次の瞬間、上空に飛ばされる。
目の前には呪霊。
「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああああああああ!!!」
空を飛ぶ呪霊に捕食されそうになったとき。
『白雲切り』
斬撃が目の前を通り過ぎて呪霊を祓う。
それを見た直哉がすぐに飛んでくる。
「着地できるか?」
「……………」
「これでノックアウトかいな…………京、ちょっと待ってな」
「いいっすよ。下に誰もいない喫茶店あるんでそこで会いましょう。」
「お前もここまで何顔出してんねん。他の泳者に狙われんぞ」
「そういう奴は姉さんと加茂先輩が片付けてくれましたよ。」
「そうかいな。」
誰もいない喫茶店、そこにフミを運び込み座席に寝かせる。
「で、俺が処刑になったって………今更っすか?」
「そうやねん。俺はやる気起きへんのやけど……コイツ、死ぬと俺も死ぬねん。ついでにコイツが本部に連絡すると本家の連中が全員処刑される。コイツから5キロ以上離れると呪力ねれなくなって多分呪霊に殺される。今も危なかったんや……はーあ、クソゲーやな………」
「やる気ないっすね。」
「そりゃそうやねん。伏黒くんぶち殺して禪院家当主になろうって思ってたときに呼び出しや………そりゃヤル気もでぇへんわ」
「んで……こいつどうします?」
伸びてるフミをつついてみる。
「おお……、これは……中々のおっ…゛っいだだだだだ!!!!」
琴音に耳を引っ張られる京。
「女はちゃんと躾けなきゃあかんで。…………桜島まで呼んでもらって助かったで。監視の目もコイツだけやし。早う真希と合流しとこか」
二人は禪院家の生き残りを集めることにした。
「それにしても、えれぇお荷物連れてきちまったなぁ……」
その後、真希達と合流するために移動する道中、フミが直哉の肩の上で目を覚ます。
「ん……………?」
「重いねん、自分で歩きや」
ドサッと地面に落とされたフミは視界がぼやけていることに気がつく。
「あれ、メガネ…………」
「コレは預かっとくで」
直哉はメガネを持っていた。
「ちょっと……返してください!!!………槍は?」
「折って捨てた」
「何やってるんですか!!?」
「呪具でもないんやからギャーギャー喚くなや」
「私戦えないですよ⁉呪霊に会ったらどうするんですか⁉」
「あん?呪術師なら素手で戦うんは普通やろ!?武器になんざ頼るなや!!」
「そ゛ん゛な゛こ゛と゛ぉおおおおお」
「ああもう鬱陶しいなぁ。メガネは返したるから静かにせぇや」
フミは押し返されたメガネをかける。
「………うぅ……これから死滅回遊をどっやって戦え………ば……………」
「どうも〜」
メガネをかけるまで気が付かなかったが、右前を歩く人は特級呪霊で、その特急呪霊がにこやかに挨拶してきた。
「ど、どうも〜」
フミはにこやかに返すしかできなかった。
隣の呪詛師の視線が怖いけど……
直哉と京が急に歩みを止める。
「真希は掃除もまともにできへんのか……」
「上からですし新しい泳者じゃないですか?」
呪霊と術師の新たな泳者がコロニーに入ってきた。
「どっち相手します?」
「んー……………俺が呪霊やりにいくで。そっちの方が楽そうや」
「じゃあ自分が術師ですね」
京と琴音が影に消えるとフミは直哉に抱えられて飛び立つ
巨躯の呪霊。
何の呪霊なのか分からないが今の直哉に関係は無かった。
呪術師においての到達点は3つある。
一つは呪力操作の到達点『黒閃』
打撃と呪力のインパクトを誤差0.000001秒以内に収めることでその打撃を何倍にも跳ね上げる奥義。
一つは術式の到達点『極ノ番』
術式の奥義。己の術式を理解し鍛錬し研ぎ澄まされた技の完成形。
一つは呪術の到達点『領域』
生得領域に他者を引きずり込み自らの技を必中必殺にする呪術師の完成形。
直哉は京との鍛錬の中で『領域』を諦めていた。
生得領域に他者を入れることを彼は拒絶していた。
それ程までに彼は他者を嫌っていたのである。
だからこそ『術式』を極めることに集中した。
父のように相手に『術式』を押し付けるのではなく自らの強化に特化させた。
それが今の彼の強さにつながる。
「クエストスタートや」
四足歩行の呪霊を蹴りで地面に叩き落とす。
「こないな速さで蹴られるのんは始めてやろ?」
「離してください!!!特級呪霊逃していいんですか!?」
「連絡手段ないねんやから今はお前守ってりゃええねん。」
「………圏外になってる………」
「あとお前重すぎやねん。少しは痩せろ」
「なぁああああああああ!!!!」
煽られて殴りかかろうとするがすり抜ける。
「うるっさいわ。死にたくないから動くやないで」
既に呪霊に追撃を始めていた。
(絶対に殺してやる……)
そう思いながら戦闘中の直哉を見守る……というか、目で追えない。何が起きてるかも不明である。
(仕事中にあんなうるさくてよう二級になれたなぁ)
『陣』
直哉は過去に桐ヶ谷史幸に指南を受けている。
その上で投射呪法を極めた。
父・直毘人のように相手には適用せず呪力を自らの術式に集中する。
アニメーションで使われる中割の技術。
中割を学ぶ上で自らの魂の形を変える技術にも触れることができたがこれまで利用するのをためらっていた。
そして、今日、土御門 フミの術式によって縛られたことで魂を観測され続ける、その結果、自らの魂の輪郭を完全に把握することができた。
(ほんま感謝しとるで。まさかこんな方法があったとは思いもしなかったで)
第三者に常に魂を観測させ続ける。
過去の自分では絶対に掴めなかった感覚。
横たわる呪霊の周囲を廻りながら加速する直哉。
圧倒的な速度は自らの魂の輪郭を変形させ操作し、人の形を捨てる、こうして直哉は圧倒的な速さを手にしたのである。
直哉の『黒閃』の発動条件、打撃と呪力の誤差0.000001秒の壁に対する回答は呪力を纏った攻撃を光の速さで行うことであった。
『投射呪法』〜極ノ番〜『雷光』
「呪術を知れば知るほど、京や宿儺が人を捨てた理由がようわかったわ………」
『黒閃』バチンッ
「人のまま力を得てる
『黒閃』バチンッ
「呪霊になって力を得てるお前らのほうがよっぽど俺等よりや」
『黒閃』バチンッ
「でもな、まさかこんな方法があったとは思いもよらなかったわ。」
『黒閃』バチンッ
「ただ、俺もアイツラの仲間入りや」
『黒閃』バチンッ
「…………ま、聞いてないか。」
1級相当の巨大な呪霊が祓われ消し炭になり、直哉は人の形に描き直される。
ここまでの時間わずか10秒、直哉は300枚のコマを描ききった。
「ほな行くで」
「………報告書と強さが違くないですか?」
「そうか?じゃあ、書き直しとき。」
今の直哉は『最強の一級術師』と言ったところだろうか。
『落花の情』以外の領域対策ができれば特級術師になるだろう。
『閃』
泳者が縦に切り裂かれるのを遠目に見る。
「直哉さん。こっちも今終わりました。戦いに気がついて姉さんたちもこっちに来てます」
「そうかい。んじゃまっとるわ。」
「禪院直哉、なんで任務を遂行しないんですか?」
「あんねぇ、一人で足で纏い連れながら特級呪霊祓いに行けってそれ体のいい死刑宣告やろ?何でそんなの従わなくちゃならんねん。お前も死刑宣告されとるんや。なにかの心あたりあるんやないか?。」
「それは………」
土御門 フミは高専卒業後8年間、秘匿死刑の執行人のお目付け役として働いていた。そのため呪術界の悪い面も多く見てきたのである。おそらく彼女も離反すると考えられていたのだろう。
「それでも、ずっと世界が良くなる任務だと思ってやってきましたよ……」
秘匿死刑の現場をよく見てきた彼女は任務を受けた時点で圧倒的な力量の差を感じ取り違和感をずっと覚えていたのである。
「上層部の人達、だいぶ疑心暗鬼になってるな。五条先生降ろそうと必死になってたのに居なくなったら居なくなったでコレかよ。」
「まあ、おそらくウチの人質はあらかた殺されてるやろなぁ。」
「そ、それは………子供までいたんですよ!?」
「アイツラにとっては禪院家は特級呪霊に操られてるかもしれない非術師や、どうせアイツラにとっては禪院家は消える予定やし生かしとく価値ないやろ。」
フミは俯いたまま納得するしかなかった。
「…………」
「まぁまぁ、ええわ。そろそろ真希も来るやろ」
「そうですね……」
一行は合流を待つことにした。
原作『死滅回遊編』が終わるまで、番外編「日常回」どこら辺を読みたいか。
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