九話 旅立ち
朝、起きると布団をたたみ着替えを済ませ京を起こしに行くが京は既に寝床にいない。何時もの朝のランニングに行っているのであろう。他の女性たちと混ざり台所で食事の準備をする。京の比類無き食欲を満たすために今日も専用の炊飯器でご飯を炊く。
朝の鍛錬を終え身を清めた京が食事処に入ってくると私は配膳を行い、私は京のおかわりに対応出来るように少し後ろに座る。京の食事が終わると自分の食事を手短に済ませ食器洗いに混ざる。
午前中、京は道場にいた。百鬼夜行で領域展開に成功したもののそれ以降領域展開ができないそうだ。彼曰く「あの時は魂の扉を相手も一緒にこじ開けてくれたからできた。まだ俺は自力で開けることができない」らしい。術式が刻まれていない私にはよくわからないことではあるが彼が言うからにはそうなのであろう。
京は半紙をばら撒いて呪力で作った刃で切る。
「お見事です。」
落ちた半紙を集めるとすべて切り方が違えど2等分になっていた
「まだまだだ、切るときに半紙が弾かれていた。切れ味が悪い。」
百鬼夜行以降、京は『呪力操作』の鍛錬に没頭していた。私が話しかけても気が付かず、二日間何も飲ますわ食わずでいたこともある。その時は直毘人様に頼んで起こしてもらったことがある。
本人的には1~2時間のつもりだったらしい。
半紙を2等分に切る鍛錬を続けていると直毘人様が道場に入ってきた。
「おい京!!」
「あっ、はい!!何でしょうか?」
「おめぇ、後1ヶ月でここを出て高専に行くじゃねえか。そのための卒業試験を用意した、受けてくれるか?」
直毘人が高専から来た任務の依頼書を手渡す。
無言で依頼書を読み進める京、途中で一瞬眉をしかめるがすぐに何時もの表情に戻り。その場で正座をする。
「……慎んで受けさせていただきます。」
そのまま一礼した。
「……おめえは既に特級だ、この任務に『誰を使うか』、『誰を連れて行くか』、『何が必要か』お前が決めて俺に言え。書面上はお前が行ったとおりに手配してやる、実際にやってくれるかは別だがな。」
「承知しました。」
「じゃあな、期日までにやれよ」
最後にそう告げると道場を出ていった。
その場で何も言わなずに直毘人様が出ていった方向を見続ける京
「書類、お預かりしますね」
何時も通り預かってファイリングしようと近づくと
「いや、もうちょっと読み込みたいからいいや、これについては書類も集めないといけないから新しく用意しよう」
「承知しました、次の買い出しの際に買ってきます。」
「いや、すぐに欲しいから一緒に買いに行こうか」
「はい?」
「二人で外に出る準備をお願いします、外泊許可もらってくる」
出ていった直毘人様に追いつくために走って道場を出ていった
「一緒に外泊…………?」
私は理解が追いついていなかった。
部屋に戻ると外泊の準備をしようとするが何処に何泊するのかがわからないため取り敢えず二人3日分の着替えや生理用品を準備してそれぞれスーツケースにまとめている。これまで京の準備は急な任務で日本全国を周っていたためもう慣れたものであるが、急なものは私は無かったため驚いている。きっとなにか特殊な事情でもあるのであろう。私の両親も急に出ていっては何週間も帰ってこないこともあった。呪術師とはそういうものである。
「外泊許可取れたよ……って何泊するか言ってなかったね、多分一ヶ月ぐらいかかるからホテルの洗濯機を借りたり最悪その場で買おう。長い間帰らないから他の女中への挨拶に行ってきなさい」
「……承知しました。」
私は奥様方に報告に向かった。
「で、今度はどこに行くのかしら?」
京は任務で遠出をするたびに現地のものを土産に買ってくるため奥様方から少し期待されてたりする。そういえば今回は目的地を聞いていなかった。
「………何処に行くんでしょうか?」
「そんなの私達が知るわけないじゃない」
奥様方は笑っていた。
「ま、目的地を知らない二人旅なんて、なんかロマンチックじゃない?」
「やーだまだ中学生よ?どうせ誰かついていくんでしょ?」
「………誰が保護者なのか聞いてません。」
「あはははは、もしかしたら任務に託けた二人旅かもねー、卒業旅行だと思って行ってきなさい!」
「ありがとうございます」
任務内容を確認している京の表情は引っかかるが私を同行させるということは『安全』が保証されているのであろう。これまで危険な任務の同行はずっと許されていなかったため今回はそうなのだろう。私は疑問を飲み込み部屋に戻った。
「挨拶は済んだかい?」
「はい……あの、今回の任務の内容って教えてもらえないんですか?」
「んーー、極秘任務だからダメだね。今後の予定もまっ白の出たとこ勝負、とりあえずこれから京都高専に行くよ。今日はそこに泊まるから。」
「承知しました………そういえば車は?」
「タクシーお願いしてあるから駅までそれで行くよ」
「はい………」
こうして中学生二人の流れ旅が始まった。