ラブライブ!~アウトローと、虹とトキメキの女神達~   作:弐式水戦

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第9話~スクールアイドル同好会再び~

 ゴールデンウイークが明け、世間が再び学校・仕事モードに戻ったある日の放課後、紅夜は校内を1人歩き回っていた。

 これまでは瑠璃達のお披露目ライブに向けて付きっ切りで練習を見ていたが、たまには休暇を取り入れるべきだと考えたのもあり、今日1日は練習を休みにしたのだ。

 今頃は、各々好きなように過ごしていることだろう。

 

「それにしても、皆一気に上達したよな。未だ練習初めて1週間しか経ってないのに」

 

 あの日の集会を終えて帰宅し、夕食を終えた後、紅夜は直ぐに振り付けを考えて瑠璃達に披露し、本格的に練習を始めた。

 曲想も相まってかなり動きの激しい振り付けとなったものの、それまでにある程度場数を踏んできただけあって思いの外上達は早く、既に曲に合わせて通しで踊れる状態にまでなっていた。

 

「この調子なら、お披露目ライブには余裕で間に合いそうだな。流石は瑠璃達だぜ」

 

 適応力や身体能力の高さなら、そんじょそこらのスクールアイドルを遥かに上回るだろう。何なら、せつ菜達スクールアイドル同好会を差し置いて彼女等が虹ヶ咲学園のスクールアイドルとして認識されても何らおかしな事ではないし、それに興味を持った彼女等が勧誘に動く可能性も十分に有り得る。

 

「彼奴等、これから大変だろうな……まぁ、WeTubeに投稿するって言うくらいだから、それくらい覚悟の上だとは思うが」

 

 そんな事を呟きながらあてもなく歩き回っていると、何時の間にかとある建物の2階に来ていた。

 

「そういや、此所ってテラスがあるんだっけか……ちょっくら行ってみようかな」

 

 そうしてテラスへ出てきた紅夜は、『ほう……』と息をつく。

 

 建物自体大きいだけあって、テラスの広さもかなりのもの。それに、景色も悪くない。

 それに建物をぐるりと1周囲んでいるようで、まるでちょっとした遊歩道だ。

 

「こんな所で飯食ったり昼寝するのも良いな……それに、練習場所としても使えそうだ。自販機も中に結構あったし。明日からの練習場所は、此所に決まりだな」

 

 そうしてテラスを歩き回っていた、その時だった。

 

「駄目です、全然合ってませんでしたよ!もう1度です!!」

「……な、何だ?」

 

 曲がり角の向こうから、女子生徒の声が聞こえてくる。

 その言葉からダンスか何かの練習をしているようだが、熱が入り過ぎているのか、その声は励ましと言うより、最早怒号だった。

 

「随分とまぁ熱入ってんなぁ……まるで、この前テレビで見た何かの部活動の練習風景みてぇだ」

「ああっ、今のじゃ駄目です!もう1度!!」

「ていうかこの声、何か聞き覚えが……」

 

 紅夜の足は、自然とその声の主へ向けて歩き出す。そして曲がり角を曲がって声の主の正体を突き止めると、予想通りとでも言うような様子で呟いた。

 

「やっぱりお前だったのか、優木」

 

 彼の視線の先に居たのは、せつ菜達スクールアイドル同好会の面々だった。

 紅夜の声が聞こえたのか彼女等は振り向き、思わぬ客人の来訪に目を見開いていた。

 

「こ、紅夜さん!?どうして此所に!?」

 

 最初に声を上げたのは、やはりせつ菜だった。

 

「ああ。ちょっと散歩してたら、聞き覚えのある声が聞こえてな。やたら怒鳴ってたみたいだから、気になって来てみたんだ」

「そうでしたか……すみません、五月蠅くして」

 

 すまなそうに言うせつ菜だが、紅夜は『気にするな』と手をヒラヒラ振った。

 

「別に謝る事じゃない。何もテラスで昼寝したり課題やってた訳でもないからな」

「昼寝って、何か彼方先輩みたいですね……」

「ものの例えだよ、中須」

 

 そう答えた紅夜は、せつ菜と残りの4人を交互に見た。

 

「見たところ……前にやったダンスの練習か?」

「はい。5月の下旬に、ダイバーシティでお披露目ライブをする事になりまして……」

「今はそれに向けて練習してるんだ」

 

 しずくとエマが説明してくれる。

 

「何?お前等も?」

 

 紅夜は驚いた。偶然にも彼女等は、瑠璃達と同時期にお披露目ライブをやろうとしていたのだ。

 

「どうしたの、紅夜君?」

「……いや。実は俺の友人達も、そこでお披露目ライブする事になっててな。時期が被ってたから、少し驚いただけだ」

「そう言えば、以前申請した時に同じ事を言われましたね。確か、BLITZ BULLET……でしたか?」

「何時申請したのか知らんが、よく他のグループの事まで覚えてられるな……ビンゴだよ優木、ソイツ等だ」

 

 紅夜が頷くと、せつ菜は『ああ!』と何かを思い出したように両手を合わせる。

 

「北条さん達ですよね?以前も音楽室で、大勢で騒いでましたし」

「ああ、その節は迷惑掛け……ん?お前なんでそこまで知ってるんだ?あの時居なかったろ」

「……あっ」

 

 その瞬間、せつ菜は固まった。

 

「そ、それは。以前同好会の皆で紅夜さんの演奏を聞いた時に――」

「その時一緒だったのは瑠璃だけだし、彼奴等のチーム名言った記憶も無いんだが?」

「うぅ……」

 

 冷静にツッコミを返され、何も言えなくなるせつ菜。かすみ達も何事かと首を傾げるが、紅夜はそこまで深入りする気は無いのか、やがて『まあ良いや』と呟いた。

 

「それじゃあ、俺はこの辺でお暇するよ。これ以上邪魔したら悪いからな」

「あっ……」

 

 そう言って来た道を戻っていく紅夜に、思わず声を漏らすかすみ。

 紅夜の来訪は予想外だったが、彼女……いや、彼女等にとって、これはある種のチャンス。そのため、ここで彼が帰っていくのを黙って見送る訳にはいかなかった。

 

 

 というのも、以前の体験が終わってから練習がかなり厳しくなっていたのだ。毎回ではないものの、こうしてせつ菜が声を荒らげる事が結構あり、かすみや他の面々は少しやりにくさを感じていた。

 勿論、人に見せるためのパフォーマンスである上、これを紅夜勧誘のための布石にしようという考えもあるため、多少練習が厳しくなるのは仕方が無い事だし、それはかすみ自身もよく理解しているつもりだ。しかし、だからと言ってこうも怒鳴られてばかりでは、上がるモチベーションも上がらないというものである。

 

 そんな時、偶然とは言え紅夜がやって来た。残念ながら考えを変えてくれたという訳ではなさそうだが、それでも彼の来訪は正に僥倖。彼に練習を見てもらい、自分達の練習のやり方に関して意見を出してもらえれば、せつ菜の考えも変わり、練習も少しはやりやすくなるのではないかと感じたのだ。

 

「しず子……」

 

 かすみは、隣に居るしずくへ視線を移す。ちょうど彼女も同じ事を考えていたらしく、かすみと目が合うと頷いた。

 

「よし……!」

 

 かすみも頷くと、既に歩き出していた紅夜に視線を向ける。

 

「待ってください。紅夜先輩!」

 

 そして紅夜の姿が曲がり角の向こうへ消えようとした瞬間、彼女は声を張り上げた。

 

「……?どうかしたのか?」

 

 彼の足が止まり、此方に戻ってくる。

 

「先輩、今までこうして散歩してたって事は、今日は特に予定とか無いんですよね?」

「ん?まあ、そういう事になるが……」

 

 その答えに、かすみの目に光が宿る。

 

「だったら!」

「ッ!?」

 

 また声を張り上げ、ずいっと顔を近づけたかすみは、ある頼み事をした。

 

「かすみん達の練習、見てくれませんか!?」

「……は?」

 

 紅夜の口からは、間の抜けた声が漏れ出す。

 

「か、かすみさん!そんな急に――」

「良いじゃないですか~。紅夜先輩も特にやる事無いって言ってますし、せつ菜先輩だって、また紅夜先輩と練習したいですよね?」

「そ、それは……」

 

 せつ菜は否定出来なかった。実際、以前紅夜を体験に連れてきた時も彼の勧誘にはかなり熱が入っており、断られても食い下がろうとしていた。

 今回の彼の来訪も、驚きはしたが心の何処かでは嬉しさを感じていたのだ。

 あの時は断られたが、もしかしたら気が変わったのではないかと、僅かながら期待もしていた程だ。

 

「そうですね。偶然とは言え、こうしてまた会えた訳ですから、私も見ていただきたいです」

 

 そこへ、しずくも便乗する。

 

「確かに、せっかく来てくれたんだもん。また彼方ちゃん達とやろうよ~」

「どうかな、紅夜君?」

 

 1年生達の計画を知ってか知らずか、彼方やエマまでも参戦してきた。

 

「…………」

 

 どうしたものかと考える紅夜だが、彼女等の誘いを断ったところで、先程も言ったように特にやる事は無い。つまり、彼女等の誘いを断る理由が無いのだ。

 

「(……まあ、良い暇潰しが出来たと思えば良いか。無理して断る理由もねぇし)」 

 

 結論を出した紅夜は、小さく溜め息をついて言った。

 

「まぁ良いだろ、ちょうど暇してたところだったしな」

 

 こうして、紅夜の体験入部第2弾が始まった。




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