現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢が牧場を救うのはちょっと大変   作:れべっか

11 / 41
第11話 ハルウララブームと高知競馬(とスポーツ新聞の闇)

「高知競馬とネッ馬の契約に基本合意できたのは良いけど、ハルウララブームには間に合わなそうなのよね、残念なことに」

 

2003-2004年に競馬界を超えて国民的知名度を誇った競走馬ハルウララは、2004/03/22に高知競馬の1日総売上8億7000万円という最高記録*1を叩き出した。その後、2005年3月での引退と2004年春シーズン終了後に休養に入ることが発表され*2、ハルウララブームは終焉へと向かうことになる。

 

日本の競馬史において、世間一般にまでの流行となったのは、第一次ブーム(ハイセイコー/1973年)、第二次ブーム(オグリキャップ/1990年)、第三次ブーム(ハルウララ/2003年)の3回*3

ハイセイコーが高度経済成長期を、オグリキャップがバブル景気を下敷きにした競馬ブームに対し、ハルウララはバブルの弾けた景気低迷期。しかも”負け組の星”と呼ばれ連敗を期待されるという、異色なブームであった。

 

高知競馬は1991年の総売上220億円をピークに右肩下がりとなり、2001年総売上97億円と僅か10年で半分以下、2003年総売上は66億円とそこからたった2年で33%減少と、瀕死の状態であった。*4

不景気の波に飲まれ廃止する地方競馬も出るなか*5、高知競馬も存続危機に晒された*6。2003年は単年で8100万円の黒字とぎりぎり踏みとどまったが、2004年以降は赤字転落の見込みで先行きは暗い。

 

もちろん高知競馬も打てる手は打った。

分かりやすいのは経費削減であろう。レース賞金の減額は傍目から見ても顕著だった。なにしろ高知優駿の1着賞金額は1995年300万円から2003年50万円に*7、それ以外の高額賞金レースは軒並み廃止、最下級のレースだと1着賞金が9万円まで下がった。

賞金額の5%が騎手の取り分なので、高知競馬だけでは食って行けぬと他所へ出稼ぎ遠征する騎手も多かった。

 

それだけでなく、未来への投資としてナイター設備の設置*8やインターネットの重視*9、また一発逆転ファイナルレースというギャンブル性の高いレース*10を用意するなど、集客手段も模索している。

 

「ファイナルレースは上山や宇都宮にも導入して良いかもね。中央競馬と被ったら勝てないんだから、地方競馬は平日開催なりナイトレースなり、時間帯をずらすしかない。とにかく、ネットで馬券が買える、ケーブルTVやラジオ中継でレースが観戦できると、現地に出向かなくても良いようしないと」

 

ああ、富岳テレビのスポーツ局長と湾岸カーレースの話をしたけど、競馬の番組についても話をしておけば良かった。

 

「後はスポーツ新聞にも何かテコ入れする? うーん、あれはあれで闇が深いから」

 

ゴシップ誌としての側面が強いスポーツ新聞は、通常の新聞がスポーツ欄で扱わないジャンル、プロレスと競馬を扱うのが上手い。特に帝スポ*11はプロレスと競馬を一面で扱うことが多い*12のだが、あれはうかつに手を出せない場所なのだ。

帝スポの初代オーナーはヤクザに顔が利く右翼の大物*13である。更に言うと、戦後復興期の力剛山*14プロレスの時代、プロレス協会に与党副総裁*15とその右翼の大物が名を連ねている。スポーツ新聞はヤクザと政治が蜜月だった名残がまだ色濃い場所である。

戦後の混乱期にフィクサーとしてのし上がった桂華院清麻呂公爵の娘という立場だからこそ、余計に手出しできない。

 

「プロレスのTV中継もゴールデンタイムから深夜帯に追いやられて久しく、富岳テレビもプロレス番組を打ち切る*16というから、そこに競馬番組をねじ込めないかと思ったけど、一筋縄では行かなそう……」

 

というか、なんで花の女子中学生がスポーツ新聞で悩まないといけないの?

 

*1
中央競馬の最高記録は1996年有馬記念の875億円

*2
史実で引退と休養が発表されたのは2004/08/03のレース後。なお馬主都合により引退式も引退レースも行われずハルウララはフェードアウトした

*3
作中が2004年なのでディープインパクト/2005年は除外。またコダマ/1960年を第一次ブームとする説もある

*4
史実では総売上38億円の2008年が底と、ここからまだ5年も受難が続く

*5
作中に描写はないが、史実で2002年までに廃止された新潟・益田・中津は廃止扱いにしている

*6
史実では高知県議会が2003/03に「これ以上運営赤字を出したら廃止」と決定。ハルウララがいなければ高知競馬が潰れてたという話は誇張ではない。

*7
史実では2005年27万円まで減額される

*8
史実ではナイトレースは2009年7月開始

*9
高知競馬のHPドメイン名がwww.keiba.or.jpと草創期のもの

*10
人気薄の馬だけを集めてどの馬が勝つかまったく予想できないようにし、しかもこのレースだけ通常より還元率が高い

*11
史実では東スポ

*12
昭和天皇崩御の日の一面もプロレスネタだった

*13
史実では児玉誉士夫

*14
史実では力道山

*15
史実では大野伴睦

*16
フジテレビは2002年に全日本女子プロレスの番組を打ち切り




参考資料
〝負け組の星〟は「ウマ娘」でも活躍中!社会現象にもなったハルウララの連敗を「東スポ」で振り返る
https://note.tokyo-sports.co.jp/n/n3f73ba169c51?magazine_key=m9e440741ff61
JRAの売上金額と入場者数
https://www.jra.go.jp/company/about/outline/growth/pdf/g_22_01.pdf
高知競馬の売上・入場数
https://umanushi.biz/local-horse-racing/kouchikeba_salse
落ちこぼれ競馬の逆襲 どん底から生き延びました(上・下)
https://www.huffingtonpost.jp/jcej/kochi-keiba_b_5429624.html
https://www.huffingtonpost.jp/jcej/post_7769_b_5442734.html

修正履歴:誤字脱字の修正
修正履歴:参考資料に追加
修正履歴:脚注のタグが崩れていた個所を修正
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。