現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢が牧場を救うのはちょっと大変 作:れべっか
樺太競馬会が結成されるというニュースが世間を賑わせている。
これは『競馬法に従って農林水産大臣の認可を受け、樺太競馬が地方競馬という区分で法的に成立するのが2004年夏の見通し』を意味する。
ちなみにニュースでは競馬会と言っているが、樺太競馬を主催する競馬組合、調教師や騎手の集まりである調騎会、馬主の集まりである馬主会、など複数の組織を一括りにして呼んでいる。
もっとも、樺太競馬がレースを開始するのは2004年夏よりももっと後。豊原の地下街再開発に関係して樺太競馬の復興を、という話を耳にしたのが2004年5月*1で、競馬場の工事は2004年6月時点で着手済み*2だが、少なくとも競馬場の造営が半年未満で終わるはずもない。
さすがに着工どころか設計すら終わっていない新・宇都宮競馬場*3よりは早くオープンできると思うけど。
樺太の競馬にがっちり食い込んでいる桂華競走馬も、組織の立ち上げという点では忙しい部分もあるが、組織成立から興行開始まで数年の余裕があるので大慌てではない。
そんな状態で、桂華競走馬の担当者とお話することになったのだが。
「樺太競馬の売りの一つとして、滅びゆく名馬の血統に会えるというのはどうでしょうか? レースで結果を出して名馬と呼ばれても、産駒が活躍せず種牡馬として結果を出せないのであれば、競馬という経済活動の中でその血筋は消えてしまいます。ですが、それを惜しむ人が多数いるのも事実。ぶっちゃけ、オグリキャップ産駒を樺太で走らせたいんです」
おっと、天満橋がツインターボに脳を焼かれたように、この担当者もオグリキャップに脳を焼かれているようだ。
桂華商事の競馬通が私のポケットマネーを好き勝手した結果、桂華競走馬が成立したということを知る身として、天満橋の同類がいるとは思っていたけど。
「私欲が混じっていることを否定しませんが、これは桂華が競馬界全体に貢献する案でもあります。10年20年先、日本はサンデーサイレンス・ノーザンダンサー・ミスタープロスペクターの血統で煮詰まってしまうと私は考えています。その対策として非主流血統を保護することは、体力のない中小牧場にはできないことですから。産駒の成績が振るわないとなれば、名馬の子でも安く買えます」
「私のポケットマネーの範囲でも何頭か買えるってことね? それを樺太に持ち込んで、レース成績は度外視して長く走らせると。うーん、戦国時代でよくある、捨扶持を宛がって飼い殺しというフレーズが脳裏に浮かぶわ」
「大丈夫です、子が走らなくても、孫・ひ孫の代でひょっこり突然変異が出てくることもあります*4」
「何が大丈夫なんだか…… あぁ、そうだ。サラブレッド三大始祖のうち、ダーレーアラビアン系が今は全世界で9割を占め、そう遠くないうちにバイアリータークとゴドルフィンアラビアンは消えてしまう*5って聞いたわ。血統保護というならそのレベルまで大きく出る方が良いのかしら?」
「良いですねぇ! バイアリータークならシンボリルドルフ・トウカイテイオー・メジロマックイーンがパーソロン系、非パーソロン系ならダイタクヘリオス。1970年代から日本で栄えた血統ですが、今はサンデーサイレンスに押されて先細りの傾向*6です。ゴドルフィンアラビアンだと、クライムカイザーはちょっと古い*7か。今年の高松宮記念*8を勝ったサニングデール、後はカルストンライトオが重賞勝ち*9だったはず」
この担当者、すらすらと血統知識が出てくるあたり、ただものじゃないを過ぎてむしろ怖い。おぬし何者?*10
ああ、でも。オグリキャップ・トウカイテイオー・メジロマックイーンの産駒が樺太で走るのを見たいかと言われたら、見たい。
修正履歴:史実でのバイアリータークの凋落ぶりを注釈に追記。