現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢が牧場を救うのはちょっと大変   作:れべっか

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第18話 牧場計画(迷走編)

桂華競走馬の方針として、当初は育成のための牧場は保有せず馬を委託する*1はずだったが、樺太競馬参入により方針を転換して救済した中小牧場を管理下に置くことになった*2

それに関係するものとして、馬産の本場・北海道に桂華直営の生産牧場を保有するという話が進行しつつある。

元々は広尾郡大樹町に存在したビッグツリー牧場*3が2002/5に静内へ移転後、その土地18haが丸ごと空いているので、桂華に救済を求めてきた小規模牧場をそこに集約する予定だとか。

 

更にそれに関係するものとして、中央競馬の黒井調教師*4と縁を結ぶ機会を得た。

調教師は自分の厩舎に良い馬を入れるために、生産牧場と馬主のどちらにも営業活動する。今はセリで馬を買うことも多いがかつては庭先取引(生産牧場から直接買い付けること)が主流であり、相馬眼に自信のない馬主の代理人として調教師が牧場を回って若駒を探すことは当然であった。

桂華(うち)は馬主として見れば資金潤沢な太客(個人馬主は資金不足で早期撤退しやすいリスクがある)だし、生産牧場にも手を伸ばすということで、調教師としてはコネを築いておいて損のない存在。私から見ても一流の調教師と縁を結べるのは願ったりということで、救済する牧場(とこ)の牧場主さんに仲介してもらった。

 

黒井調教師は関西人(滋賀県の栗東トレセン所属)で長いこと*5競馬という経済活動に関わっているだけあり、シビアな金銭感覚と誰にも負けない馬への情熱を併せ持った人だった。

桂華(うち)は樺太競馬の立ち上げに絡んで、華族のメンツ的な意味で”金を出してGI勝てるなら出し惜しみしない”スタンスなので、相性が悪いということもなく。私が馬に関しては素人に毛が生えた程度なので、初顔合わせの場は黒井先生の独演会と言うべきものになったが、内容は雑誌記事にしたら売れるのではと思えるほどだった。

 

黒井先生は血統に一家言ある人なので、桂華競走馬で買おうとしている種牡馬・繁殖牝馬*6は話にならないと一喝されてしまった。

樺太競馬の客引き手段の一つとしてレース勝利より血統保護が主眼だと説明し、金持ちの道楽の範囲として一定の理解はしていただけたが、それとは別にレースに勝てそうな血統も持つべきだと強く主張され、黒井先生からいくつか推薦してもらうことになった。

なおネオユニヴァース*7×母系トニービン*8という提案を最初に持ってくるあたり、先生も浪漫を忘れていないようである。なんでもネオユニヴァースは他のどの馬よりも長く柔らかい繋ぎをしており、トニービンのような細くて柔らかいタイプを入れると凄い馬が出るのだそうだ。ただし柔らかすぎて芯が入らず競走馬として使い物にならない馬が出る可能性もあり、普通の生産牧場はそんな博打を打てずに、クロフネ*9のようながっちりしたフィジカルで柔らかさを受け止める方向にするらしい。

他にも父系サンデーサイレンス*10×母系ノーザンダンサー*11の組み合わせは勝てる血統の鉄板であり、ケイカツインロマンの母*12が4代前と血が薄くなっているがノーザンダンサー系なので、ゴールドアリュール*13を合わせるのはどうかと逃げ馬の浪漫配合に理解ある提案をされたり。

黒井先生としては、ケイカツインロマンなんてしょぼい(実績がない)血の牝馬ではなく、母父マルゼンスキー*14のような実績ある馬を使いたいのが本音だろうに、顧客の浪漫を否定しないのがありがたい。

 

また、将来の有力馬をぽっと出の他厩舎に搔っ攫われないように、今から桂華競走馬との取引実績を積んでおく”唾つけ”行為として桂華競走馬の馬を黒井厩舎で1頭預かってくれるとのこと。

ケイカプレビューの次世代(ケイカツインロマンと同世代)は今年の夏から順次デビュー予定ですでに入厩しているので、黒井先生の方で見込みある若駒を見つけたら桂華(うち)が馬主として買う形でお任せすることになった。

 

他には大樹町に予定している桂華牧場(仮名)だが、繁殖牝馬の種付け・妊娠・出産を行う生産と、仔馬が乳離れする生後半年前後までの初期育成、仔馬が1歳夏ごろの本格的な騎乗馴致を受ける前までの中期育成を行うつもりと告げたところ、18haの敷地では全然足りないとこれまた駄目出しを受けた。

放牧地は広ければ広いほど良い、長期放牧で仔馬はどんどん走らせて体幹を鍛えれば芯が入らず使い物にならないこともないだろうし、母馬も運動不足・ストレス解消になって良い仔出しが期待できる。

その理屈は分かるのだが、理想は100ha以上と言われても急な用地確保は難しい(不可能とは言わないけど。後、ネオユニヴァース×母系トニービンをうちで生産する前提みたいな言い方してない?)。

またスペシャルウィークを扱った経験*15から、初期中期育成の幼い段階からしっかり躾けることの重要性を説かれたのだが、放牧地の拡大と合わせると人手がまったく足りない。

大樹町の18haの敷地を後から拡張できる? できないなら最初から別の土地を探すべきか。

 

それに樺太に外厩とかはしゃいでいた*16けど、そもそも去年(2003)に北海道競馬で認定厩舎制度がスタートしたばかり。認定第一号となったコスモバルクが結果を出した*17ことで、今年(2004)の6月に茶代グループが認定厩舎制度へ参入を表明と、外厩制度については日本競馬界全体でまだ手探り状態であり、どう転ぶか分からない。

外厩って私のポケットマネーでポンと作れるほど安くないのよね。そもそも樺太に外厩を作っても立地的に中央競馬には使えず樺太オンリーとなり、コストパフォーマンスが悪い。

でも本州に外厩を作って樺太競馬が休止する冬季は本州に馬を移動させるやり方だと、樺太競馬の発展という意味ではマイナス効果(少なくとも現地の仕事が減るのは経済的によろしくない)。

外厩についてはいったん保留かな……

 

*1
「月刊帝国競馬ニュース 2004年 5月号より」

*2
「天満橋流公私混同術 浪漫風味」

*3
モデルは大樹ファーム

*4
モデルは白井寿昭。スペシャルウィークやアグネスデジタルなどを管理

*5
厩舎開業は1979年

*6
本作の13~15話で登場

*7
2003年クラシック二冠馬。2004/05の天皇賞春を最後に引退して種牡馬入り

*8
主な産駒にエアグルーヴ、サクラチトセオーなど

*9
主な産駒にカレンチャン、ソダシなど。種牡馬活動は2002年からなので作中時間の2004夏だと産駒はまだ未出走。

*10
説明不要の名種牡馬

*11
同じく説明不要の名種牡馬

*12
本作の5話で登場

*13
サンデーサイレンス産駒の逃げ馬。2003/06に引退して種牡馬入り

*14
日本におけるノーザンダンサー系種牡馬のトップクラス

*15
スペシャルウィークは幼くして母馬を亡くし人に育てられたので、サンデーサイレンス産駒にしては珍しく気性が荒くなかった

*16
本作の17話

*17
作中時間の2004夏だと重賞3勝、2004年皐月賞2着




以下、参考URL

黒井調教師の推薦する血統の根拠
https://tospo-keiba.jp/onkochishin

放牧場が広いほど良いという根拠
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/keiba/keiba/2013/08/04/post_147/index.php

社台グループがホッカイドウ競馬の認定厩舎制度へ参入
https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=3146

門別競馬場の屋内調教用坂路施設事業費
https://news.netkeiba.com/?pid=tarekomi_view&no=691


修正履歴:脱字修正
修正履歴:クロフネとコスモバルクの注釈を追加。後書きに参考URL(社台が認定厩舎参入)を追加
修正履歴:気になる表現をちょこちょこ修正(文意に変更なし)
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