現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢が牧場を救うのはちょっと大変   作:れべっか

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第2話 ネッ馬誕生裏話

2003年春のある日、私のところに北海道の零細牧場支援という案件の書類が回ってきた。*1

それについて橘に説明を求め、初めて大事になっていることを知った。

 

私は競馬について無知だった。競走馬が血を繋げると言われてもピンと来なかったくらいに。

そもそも、私は馬を保有するなら牧場(寝床や食事を世話するための施設・人員)がセットで必要だと思っていた。そして競走馬がレースを引退した後も乗馬なり何なりで最後まで面倒を見るのが当然と思っていた。

 

毎年開かれるセリ市で、あるいは生産牧場と直接交渉して馬を買い、調教師と契約したら、馬はトレーニングセンターと呼ばれる競走馬調教施設に預けられる。馬主は委託料を払う必要はあるが、自前で馬を養う必要はない。

またレースから引退した馬の面倒を馬主が見続けることもほとんどない。競走から引退した馬は、一部が繁殖用として生産牧場に戻り、一部が乗用として乗馬クラブに行き、それ以外の大半は…… 食肉になる。

一部の好事家が惚れ込んだ馬の余生を支えることもあるが、適切な運動をさせるのに広い土地が必要だし、馬一頭の食費は月に7~10万円と言われ*2、獣医にかかれば百万円単位の費用が掛かることも珍しくない。馬は家畜・経済動物であり、愛玩動物として個人が気軽に飼うには負担が大きすぎるのだ*3

 

私が無知であるだけでなく、数頭の馬なら愛玩動物として飼えるくらいのお金持ちであったことが悪かった。

法人馬主・桂華競走馬が立ち上がるタイミングで、常識知らずの私が馬と牧場をセットで買う意向を示したので、馬の生産と馬主を兼任するオーナーブリーダーをやると周囲に思われたわけだ。

で、経営の苦しい中小牧場が『うちを買ってくれ!』と売り込みに殺到し、牧場側が自治体や道とつるんで陳情合戦を始めて泥沼化し、収拾をつけるために大事となった。

 

結局、零細牧場支援としては11頭の馬を買い、育成のための牧場は保有しない方針とした。*4

それ以上は個別に牧場を支援するのではなく、もっと大きい枠組みで、北海道競馬の再編・再建を道と協議することになった。

 

北海道の競馬状況を整理すると、まず競技場は札幌・函館・紋別・旭川・北見・岩見沢・帯広の7か所存在する。

そのうち中央競馬は札幌・函館で、道営の地方競馬は札幌・紋別・旭川で、市営のばんえい競馬は旭川・北見・岩見沢・帯広で開催される。

地方競馬は赤字運営のため函館・岩見沢・帯広から1997年限りで終了し、代わりに紋別を新設して集約することで赤字を減らそうと試みたが、このままではあと数年で旭川も終了しそうな見込みである。

ばんえい競馬についてはもっと悲惨で、何らかの手を打たないのであればあと数年で全滅と見られている。

 

この状況で、山形県の上山競馬と栃木県の宇都宮競馬・足利競馬も含めて救済することになったのはご愛敬。

群馬県の高崎競馬も北関東競馬という枠組みでここに含めたいけれど、自治体が高崎競馬を存続でなく廃止したいようなので*5様子見。

 

私が最初にしたことは、北海道の国会議員、泉川太一郎氏への競馬法改正のお願いである。

これが通れば「勝ち馬投票券の販売を業務委託」して「全国の地方競馬の投票券をインターネットで簡単に購入可能」となり、地方競馬の売上アップに直接影響する。

ちなみに競輪は2002年3月31日の自転車競技法改正で車券の発売・払戻業務を委託可能になっているが、競馬はまだなんだよね。*6

 

法改正の準備と並行して、インターネット投票券購入システムの構築。

2002年3月から携帯電話アプリで、同年7月からパソコンのwebブラウザから(特別なソフトウェアを必要とせず)中央競馬の馬券がインターネット購入できるようになったので、それをパクり…もとい参考にする。

サービス開始時は上山・宇都宮・北海道・ばんえいの4競馬を買える予定だが、いずれは佐賀・高知など桂華が支援していない地方競馬も買えるようにしたいし、独自のネット購入システムを持つ中央競馬や南関東地方競馬(大井・川崎・浦和・船橋)ともシステム連携して相互購入できると良いね。

 

次に、webブラウザから馬券購入する入り口として、競馬情報総合ポータルサイトの作成。

最新ニュース、レース結果や血統などのデータベース、クチコミ掲示板、レース中継のストリーミング配信*7、スポーツ新聞や競馬情報誌と提携して記事を転載、その他もろもろを無料/有料会員向けに提供する。

3年ほど前に某SNS会社の子会社が競馬ポータルサイトを開設*8したけど、それを買収する手もあるわね。

 

最後に、レース映像の放送・配信。

競馬専門TVチャンネルの作成。中央競馬と南関東地方競馬は1990年代から衛星放送とケーブルTVで専門チャンネルを持っているので、これもパク…もとい参考にする。

ネットで買える馬券のレースは、現地に行かなくても視聴できるようにしたいよね。

帯広や旭川のローカルケーブルTV会社に番組作成を委託できないかしら。

 

 

パクってばかりとか言わない!

 

 

*1
「お嬢様が馬主になるそうです 練習編」

*2
この費用はトレーニングセンター委託中の場合

*3
ツルマルツヨシの会によると、ツルマルツヨシ1頭10年で1000万円以上とのこと

*4
「月刊帝国競馬ニュース 2004年 5月号より」

*5
「お嬢様が馬主になるそうです ケイカプレビュー 伏竜ステークス」

*6
2004年6月9日の競馬法改正まで待たされる。

*7
インターネットラジオサイトねとらじは2001年12月開始なのでラジオ実況なら技術的に可能

*8
mixiが1999年にnetkeiba.com開設




修正履歴:注釈の書式を変更
修正履歴:馬の繋養費用の注釈を追加
修正履歴:高崎競馬を自治体が廃止したがっている部分に注釈を追加
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