現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢が牧場を救うのはちょっと大変 作:れべっか
「ちょっと、元・鵺武者、現・サムライサメ亡霊について相談があるの」
通称『桂華稲荷』*1の社務所で神奈水樹に相談を持ち掛けてみた。
以下、「帝都学習館学園七不思議 鵺武者フィードバック」のおさらい。
元々、東京に流れてきたオカルトアイテムに引き寄せられた亡霊が、帝都学習館学園の霊力の影響を受けて実体化した。オカルトアイテムを探してここ近辺をうろうろするそれを、私たちが鵺武者と命名した。
そして、鵺武者を人に害なす存在に誘導する"何か"*2がいたので、早急に無害化する必要があった。
鵺武者を『サムライサメ亡霊』という概念に変更することで無害化に成功した。
「無害化とは言えど被害局面を限定しただけで、『水着の娘が襲われる』ことには変わりない。『刀を持ったセーラー服の娘に退治される』けれど、監視カメラと警備員を常時配備しなければいけない」
「怪異相手に対策があるというだけで、十分無害化できていると思うんだけど。それ以上に何とかしたいってこと?」
私が頷くと、それまで姿を見せなかった蛍ちゃんがこっそり生えてきて、話を聞く姿勢になった。
「鵺武者の当初の対処方法、貴方が強引に買い集めた千余個の歴史的物品はまだ精査中よ。それに鵺武者からサムライサメ亡霊に変質したから、縁のある物品を探り上げて返却しても水着の娘を襲い続ける習性が残り続ける可能性がある」
「だから水着の娘を襲うという部分も変質させて、完全無害化できないかなって思ったの」
「話を持ち掛けたってことは、何かアイデアがあるのね?」
単なる思い付きなんだけど、と断りを入れてから、私はここ数日の間頭の片隅にあったことを口にする。
「私の馬に、ケイカサムライサメとか、ケイカサメゴーストとか、そんな名前を付けたらどうかなって」
「「?????」」
水樹と蛍ちゃんのどちらも、まったく理解ができないという顔をしている。
いや、突飛な案だとは自覚しているけど。
「
「……まぁ、そう言われてみれば、筋は通っているのかしら」
「鵺武者をサムライサメ亡霊に変質させたファクターは水着公爵令嬢、つまり私。ならば私はサムライサメ亡霊をさらに変質させることができる」
水樹は私のアイデアを咀嚼してどうにか飲み込んでくれたようだ。
なになに蛍ちゃん、その馬がレースに勝てずに全国的知名度を得られないならどうするのって?
勝てないならさっさと競走馬を引退させるだけよ。競走馬の名前は四股名のようなもので、引退したら改名できるの。それに「サムライサメは大した結果を出せずに短期間で消えた」という事実が残るから、それはそれで無駄にはならないし。
「私の考えつかないアイデアを出してきたことは、素直に称賛するわ。でもケイカサムライサメというネーミングはどうかしら。世間では桂華とサムライサメがタッグを組んだと思われるだけで、サムライサメ亡霊を制する意味には取られないでしょ」
「そっかー、駄目か。競走馬の名前はカタカナ9文字が最長だし、露骨な宣伝と判断されると登録却下されるから、あまり凝った名前にできないのよね。このアイデアは没かしら」
「目の付け所は悪くない、というか、うっかりケイカシャークとか名前をつけてサムライサメ亡霊が想定外の変質をする可能性に気づけただけでも価値はあるわ」
その可能性があるのか。
シャーク、ゴースト、ファントムといった単語は競走馬のネーミングに普通に使われるので、桂華競走馬にNGワードとして通達・周知させておかないといけない。
「だとすると、苗字に鮫の字が入っている騎手*3は、
「それは流石に杞憂だと思うけど」
修正履歴:誤字修正
修正履歴:重複表現削除、騎手に注釈追加