現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢が牧場を救うのはちょっと大変 作:れべっか
普通ならターボの子は1998年生まれで2002年(4歳)に種付け、孫が2003年生まれで2006年クラシック出走が最速になる。
天満橋の個人所有馬にケイカの冠名を許した後*1、ついでとばかりにあれこれ聞いてみることにした。
「そういえば桂華競走馬は、育成のための牧場を保有せずに委託する方針*2だったよね、方針転換したの?」
「ええ、樺太競馬の復興に参入することになりましたから。今まではお嬢様の遊び半分でしたが、桂華グループが本腰を入れた事業となりました。それに公爵家のメンツとして早いうちに勝利が欲しいとご当主様から暗に言い含められまして」
さらっと橘が凄いこと言った。
清麻呂お義父様と仲麻呂お兄様のどっちがそう言い出したのかは分からないが、実に競馬素人的な思い付きである。
まあ私も本格的に競馬に乗り出す前はそう思っていたのだが。
「馬主となって数年でG1を複数勝利したシンコウ牧場という例もありますな*3」
藤堂が本家からのオーダーを肯定する。
ちょっと、それは数少ない例外だと思うんだけど…… そう簡単に勝てるものじゃないって!
「まぁ勝負は時の運というものもあるさかい、必ずとは言えんけど、努力はするってことで、勘弁な」
あ、天満橋が無理だろってしかめ顔してる。良かった、私だけじゃなくて。
よし、本家からの無茶ぶりは心の棚に置いて、話をそらそう。
「そういえば、ケイカツインロマンは大勝利か惨敗のどっちかしかしない馬って言ってたわね。もう少し詳しく教えてくれない? こんなビデオをわざわざ用意するくらいだから、相当こだわっているんじゃない?」
そう水を向けると天満橋の表情がまた変わった。まるで同志を見つけた限界オタクのような、あるいは見知らぬ人にまで孫自慢を始める爺のような、そんな雰囲気を醸し出し始めた。
これは早まったかなー。橘か藤堂が上手いところで合いの手を入れてくれることに期待しよう。
「最初はツインターボが種付け1シーズンのみで急死したところで……」
*
要約すると、以下になる。
ツインターボが種付けして生まれた牝馬、ツインオーキッド*4。この馬は母父がカブラヤオーというツインターボと同じく逃げの人気馬で、つまり逃げ馬同士の浪漫配合というわけだ。
しかしツインオーキッドは本来なら1998年3月頃に生まれるはずが、1997年12月末に早産で生まれてしまった*5。
馬は誕生日ではなく正月で年を取るので生後数日で1歳になり、同じ年齢の馬と競うには10か月ほどの成長ハンデを負わされたのだ。
小学一年生の4月生まれと3月生まれで体格を比較すれば、どちらが駆けっこに強いかなんて自明の理。ツインオーキッドはデビュー戦をぎりぎりまで遅らせたものの勝利を挙げられず、成長ハンデがなくなる4歳以降に期待することになった。
しかし競馬という経済活動において、勝てない馬をずっと育てるというのは苦行だ。しかもツインオーキッドは”一目見た時点でこいつは勝てると思わせる馬”ではなかったので、2000年(3歳)の夏に故障が発生してあっさりレース引退となった。
ツインオーキッドの進退だが、繁殖には入れないというのが周囲の見方だった。そもそも父のツインターボが人気はあれど実力は二流の馬である。ツインオーキッド自身もレースは負け続き、浪漫配合の結果を証明できずに終わるはずだった。
そこを救世主として現れたのが天満橋である。ツインターボの浪漫に心を焼かれた彼は、再びの浪漫を求めてツインオーキッドを購入した。
「ま、競馬界の常識で言うとこの”格安”で済みましたんでな」
と、どや顔でうそぶく天満橋。こいつ本心から楽しんでいるな……
その後、ツインオーキッドは2001年シーズンに繁殖を試みた。
3歳牝馬(ツインオーキッドは書類上4歳だが実質3歳)はまだ体が出来上がっておらず受胎率は低いのだが、種付け相手のメジロパーマーは目立った産駒を輩出できず種付け料が安かった(150万)*6ので駄目元チャレンジしたら、運良く子を授かって、それがケイカツインロマン。
ケイカツインロマンは今年(2004年)が2歳新馬戦デビューで、ケイカプレビューの1期後輩、桂華競走馬の第2世代と同期になる。
ちなみに2002年の種付け相手はアイネスフウジン(300万)、2003年ミホノブルボン(900万)、2004年サニーブライアン(1500万)*7と逃げ馬の浪漫配合を追及し続けるのだとか。
年々種付け料が高くなっているけど大丈夫なのかしら? あれ橘と藤堂がツインターボについてはグルっぽいし、ひょっとして岡崎も一枚噛んでる? 岡崎には1000億円をぽんと渡した*8ことがあるけど、もしや資金源はそこから?
ケイカツインロマンの血統表
ツイッターで呟いた血統とはちょっと変えました。
修正履歴:「天満橋流公私混同術 浪漫風味」は橘・藤堂・天満橋の3人とお嬢様が登場人物で、岡崎は不在。最後に藤堂と岡崎を取り違えたので修正。
修正履歴:注釈の書式を変更、挿絵を変更。
修正履歴:種付料の基準を注釈に記載。
修正履歴:誤字脱字を修正。
修正履歴:シンコウ牧場の史実名を注釈に追記。