比企谷君、ヒーローになる   作:おたふみ

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十六話

さて、状況を整理しよう。

この天井は見覚えがある。入学式の日に事故って入院した時と同じ作りの病室。

ファルコンにバッサリ斬られて、気を失って病院に担ぎ込まれたのか。

腕には点滴、胸のあたりは包帯だらけだ。

そして、ベッドの横には雪ノ下がつっ伏して寝てる。

 

雪ノ下っ!!…ビックリした。なんで居るんだよ。

…寝顔に涙のあとがあるのがわかる。たぶん、起きたら怒られるんだろうなぁ。

 

お、ベッドサイドに水がある。のども乾いたししただこう。

 

「ん…、比企谷君…」

 

やべ、起こしたか?ここは冷静に。

 

「よ、よう、雪ノ下。目が覚めたか?」

 

「比企谷君!!」

 

雪ノ下に抱きつかれた!

 

「もう、目を覚まさないのかと思ったじゃない!!」

 

「残念ながら、永眠ではなかったな」

 

「バカ〜」

 

いつもなら『あら?起きたの?てっきり永眠かと思ったわ。その方が世のため人のためなのに』なんて言うクセに。今日に限っては泣いている。泣かせてしまった。

 

 

「わ、悪かったな」

 

「なんであんなこのしたのよ!!また自分を犠牲にして!!」

 

「今回のは不可抗力なんだよ、脊髄反射的にな」

 

「比企谷君が死んじゃったら、私…私…」

 

俺が死んだら、どうするんだよ。

 

「悪かったよ…」

 

泣きながら抱きついてる雪ノ下の頭を撫でる。

 

「んで、あの後はどうなった?」

 

「ファルコンはすぐに引いたわ。三浦さんと海老名さんはこちらで保護している。もちろん、私達のことも話をしたわ」

 

「なるほどね」

 

おそらく、葉山は本気であの二人を処分するつもりはなかっただろう。だが、上からの命令でやらざるを得なかった。俺が間に入ることを計算ずくでやったのか?

 

「比企谷君、手がとまっているわよ」

 

「あ、ああ、すまん」

 

え?いつまで頭撫でるんですか?

 

「うふふっ♪」

 

なんかご機嫌だよ、この娘。

 

面倒臭ぇけど…。

「決着つけねぇとな」

 

「ダメよ」

 

「え?声出てた?」

 

「えぇ出てたわ。ファルコン…、葉山君と戦うつもりならダメよ」

 

「でも…」

 

「いつもは『働きたくない』とか言ってるのに、こんな時だけやる気を出して。いい?貴方は怪我をしているのよ」

 

「しかしだな…」

 

「みんな心配しているのよ、貴方のことを」

 

「わかったよ」

 

「とりあえず一週間は入院だから」

 

「え?そんなに短いの?」

 

「あのバトルスーツは優秀よ」

 

「なるほどね」

 

「では、私は帰るわ」

 

雪ノ下が離れた寂しさを少し感じる。すげぇ、いい匂いしたし。それに…誰だまな板とか絶壁とか言ったヤツ!しっかしありましたよ!つつましやかだったけどな!だから、雪ノ下も気にすることはないぞ!

 

「その、なんだ、あ、ありがとな、雪ノ下」

 

「比企谷君がお礼を言うなんて…。大丈夫?熱でもあるのかしら?」

 

「うるせえよ」

 

「ふふっ。あ、あと」

 

「まだあるのかよ」

 

「入院中の暇つぶしに、ざい、ざい…財津君?の小説モドキを置いていくから」

 

「おい」

 

「それじゃ。また明日」

 

どうすんだよ、この紙の束。古紙回収に出していいかな?いいよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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