本栖高校野外活動サークル△   作:園田那乃多

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あとは…感想やな!(チラ見



十二話

【冬用シュラフ、赤に決めた!】

 

いよいよ野クル初キャンプを来週末に控えた金曜の夜。

ピコン、と通知が入ったのでスマホを確認すれば、なでしこが野クルのグループルームに送信していた。

同時送信しているリンクをタップしてみれば、「POLER BEAR, SLEEPING BAG color: 」の文字。 値段も手ごろで、体感温度も-10度までとゆるキャン勢の俺たちにはぴったりなシュラフ。今日の放課後にみんなでこれにしようと決めたやつだ。

 

なるほど、なでしこは赤を選んだわけか。

 

「正直俺も赤がよかったけど、被るのはなあ……。次点で黄色に――」

 

ピコンと通知。

 

【あたしは野クルイエローだ!】

 

「……」

 

ふむ。まあ黄色は大垣の方が似合うか。じゃあ俺はなでしこと対になるように青に――

 

ピコンと通知。

 

【私、野クルブルーやで】

 

「……」

 

とっとっと、と文字を入力する。

 

【お前ら狙ってやってる?】

【?? なにが?】

【どうしたんコウタロウくん?】

【コウくん色何にするー?】

 

まあそうだよな、狙ってやってたら怖いわ。そんなわけが無かった。

なでしこの文面に、結局色どうしようかと暫し逡巡。

つつ、とカラーバリエーションをスワイプしていると、一番下に少し毛色の違うものがあった。

 

「……これにしよ」

 

【この三色のストライプが入ってるスペシャルエディションってのにするわ。ちょい高いけど】

【おお! 流石バイト戦士、余裕あるなー】

【ねえあおいちゃん、この三色って】

【…ふふふ、コウタロウくんええとこあるやん】

 

コウタロウが選んだのは、素色をベースに赤青黄色の三色のストライプが映えるシュラフだった。

 

 

 

 

 

 

二日後の週末の午後。

 

各務原家のガレージ前では、倉庫から引っ張り出してきたロッキングチェアを前になでしこが目を輝かせていた。

 

「ふおおおおお!! うちにこんなのあったんだねー」

「引っ越しの時運んだでしょそれ…」

「そうだっけー?」

 

早速腰かけてゆらゆらとその座り心地に酔いしれるなでしこの傍らで、姉の桜(探すのに付き合わされた)がため息とともにそう言った。

 

「私この後出かけるんだから、使ったら戻しときなさいよ」

「ふぁーい。どこに行くのー?」

「んー、詳しくは決めてないけど、甲府市内かしら」

「……そういえば珍しくおめかししてるね。もしかして彼氏できたの?」

 

そうは聞くが、この姉は恋人ができたとしてそれを吹聴するような性格ではない。しかし自分は妹として絶対に気付く自信があった。故に、お遊び半分で訊ねる。

 

「違うわおバカ。…とにかく、いいから壊さないようにねそれ」

 

が、妙に会話をたたもうとする。……怪しい。

 

「……なんだか怪しいなあ。ねね、誰と行くの?」

「いいじゃない別に誰と出かけても」

 

ふいとそっぽを向く姉。

隠し事をしている時の癖だ。伊達に十何年妹をやっていない。

 

「ふぅーん? 誰かと行くのはそうなんだ?」

「なっ……カマかけたわね……!」

「友達なら友達って言えばいいのに。……本当に彼氏できたの?」

「……」

「えっ? ほ、ほんとうなの……?」

 

なでしこのその言葉に、ついに桜は折れた。

はあとため息を一つ吐いて、白状した。

 

「………………コウタロウくんよ」

 

その発言に、その人物の名前に、がばっと立ち上がり驚愕に目を見開くなでしこ。

 

「えぇーっ!? な、なんでお姉ちゃんがコウくんと!??」

 

どうしてコウタロウと桜が一緒に出掛けるなんてことになったのだろう。おめかししてるところを見るに異性として意識はしているだろうし、やはりデートだろうか?

言い知れない不安感が首をもたげる。

まさか実の姉に最愛の人を取られるなんて……。いつの間に姉と付き合っていたのだろう。いや、昔から二人は仲が良かったし、自然な流れでそういう関係になっていてもおかしくない。……そういえばこの間同じテントで寝るという話になった時、お姉ちゃんに殺されるって言って断られた。それって、こういうことだったのだろうか。つまりその時から……?

 

なでしこはあからさまに狼狽したまま桜を向いた。

 

と、視線の先にはだから言いたくなかったと言わんばかりに、はあとまた一つため息を吐く姉の姿が。

 

「落ち着きなさい。別に付き合ってるわけじゃないわよ。ただいつもお世話になってるじゃない? そのお礼。どこか連れて行ってあげようと思って」

「な、なんだ。よかったぁ……」

 

桜の言葉は真実である。

事実、各務原家は毎度コウタロウから「おすそ分け」として色々な食材を貰っていた。お礼としてお菓子や夕食を振舞ったりしているのだが、何分「おすそ分け」の品が品だけに(野生動物の肉をはじめきのこや山菜など山の幸をこれでもかという量)、十分に返せているかと言われると首をかしげざるを得ない。

 

コウタロウ本人は何の見返りも求めていない(しいて言うならなでしこの笑顔)ため、お礼を一言添えるくらいで問題ないのだが、そうは問屋は下ろさないのが常識人の各務原家並びに桜であった。

 

今日はこれから桜の車で甲府市内まで繰り出してコウタロウをもてなす予定だ。

有り体に言えばデートである。

 

「まあ、コウタロウくんなら喜んで付き合うけど」

「だ、だめだよっ!! コウくんはだめなの!!」

「……冗談よ。安心しな」

 

愛妹の涙さえ浮かぶ必死な表情に、思わず眉根が下がる。

本当にコウタロウを奪う気はない。その気ならそもそも山梨まで付いてきていないのだ。桜は妹の幸せを願っていた。

……まあ、向こうからどうしてもと言われたらやぶさかでないが。

 

「じゃあ本当に時間だから。私は行くわね」

「うん……」

「もう。本当に大丈夫だから」

「うん、分かった……。いってらっしゃい」

「行ってきます」

 

少しだけしょんぼりモードのなでしこを残して、桜は車に乗り込むと守矢宅まで向かった。

 

 

 

 

「……よし!」

 

意を決した表情でなでしこが携帯の画面に指を這わせる。

 

【コウくん。いまどこ?】

 

少し経って返信。

 

【今日は桜さんと出かける予定。今車の中ー】

〈写真〉

 

タップして写真を開けば、信号待ちの間に撮ったのか、微かに笑みを浮かべてピースサインをする姉と幼馴染のツーショット。

先の姉との会話のせいで、なんだか彼の様子もいつもより上機嫌に見えて、殊更に胸がきゅっと締め付けられた。

そんな内心を隠すように、いつものように茶化してメッセージを送信する。

 

【遅くなるまえには帰ってくるのじゃぞ?】

【勿論。お土産買ってくるからなー】

 

「えっと、【たのしみにしてるね…】」

 

と、なでしこがそう書ききる前に連続してコウタロウから通知が入る。

 

【あんま携帯ばっか触るのも失礼だし、そろそろ電源切るな。また後で】

【…うん。後でね】

 

それを機に既読が付かなくなる。

誰かといるときにスマホばっかり触っているのは同行者を不快にさせる。そういう意味でコウタロウの桜への気遣いは素晴らしいのだが、なでしこからしたら面白くない。

 

「……こんな時まで優しくなくていいのに」

 

しかし、一時とは言えコウタロウと会話ができてちょっとだけ機嫌が直るなでしこ。ちょろい女だぜ……。

思い直す。そもそも、あの幼馴染が浮気をするはずがないのだ。心配は杞憂であった。別に二人は付き合って無いが。

 

ヴーー、ヴーー…

 

と、しばらくコウタロウとのトーク画面を眺めていると、一件通知が入る。

 

「リンちゃんだ」

 

【もとすこなう】

〈写真〉

 

写真を開けば、いつぞや見た富士山が映っていた。

どうやらあの時のあの場所でデイキャンプをしているようだ。

 

「今日は本栖湖でまったりかー。いいなあ」

 

穏やかな日差しの中、週末の午後を湖畔でゆっくり過ごしているであろう友人に思いを馳せる。……ぴこん、といいアイデアが浮かんだ。

 

「そうだ!!」

 

言うが早いか、なでしこはロッキングチェアとひざ丈の高さの小さなちゃぶ台、そしてお菓子を持つと、すぐ近くの富士川まで走り出した。

 

 

 

 

ヴーー、ヴーー…

 

富士川の河川敷というナイスロケーションでなでしこがプチキャンプ気分に浸りながらアウトドア用品雑誌に目を通していると、またも通知が入る。

 

「お、今度はあきちゃんだ」

 

 

【野クル初キャンプ地決まったぞ!】

 

 

「おおおお!!」

 

この間の冬キャン計画の際に決めていたのは日程だけで、場所は追って千明が調べるという話になっていた。今、遂に野クル初キャンプが動き出すのだ……!

 

【どこのキャンプ場に泊まるの?】

【それは来週のお楽しみ。一番いいサイト予約したった!】

【流石あきちゃん!】

【クク…赤子の手をひねるより簡単だったわ!!】

 

 

「冬用シュラフも買ったし、初めてのテント泊キャンプ……」

 

いよいよ現実味を帯びてきた野クルでのキャンプ。

 

「みんなで焚き火して夜更かしして……」

 

大好きな友人と幼馴染と共に囲む焚き火や、キャンプご飯、夜は遅くまでおしゃべりして。

旅行は準備している時が一番楽しいと言うが、まさになでしこは今一番楽しい時間を味わっていた。

 

(はぁーーー、今から楽しみーーー!)

 

キャンプを想像しながらゆっくりとロッキングチェアに背をうずめる。

そして。

 

「すぴーー……」

 

午後の陽気とお菓子でいい具合に満足したお腹、そして極めつけに夢想するに相応しいキャンプの話題と、何となく目を閉じればそのまま睡眠コース一直線だった。

 

 

 

夜。

 

「……」

「zzz……」

 

「……」

「んむぅ」

「起きろ寝坊助」

「……んぅ。お姉ちゃん…? あと五分……」

 

コウタロウと夕食を済ませて帰ってきた桜が、河川敷でロッキングチェアから大きく寝違えたなでしこを発見。

そばにあった雑誌を丸めむぎゅうと頬に押し付けてなでしこを起こした。が、寝起きが弱いなでしこは中々起きてこない。起きるというかもう夜なのだが。

寝ぼけたままの妹の耳元で、『必殺技』を囁く。

 

「今日はコウタロウくんがうちでご飯食べてくって」

「コウくんが!? わ、起きる起きる!!」

「冗談よ」

 

「がーん…!!」

 

 

なお、同時刻本栖湖でなでしこと同じように寝過ごしたリンが、真っ暗闇の中半泣きになって家路に就いたのは別のお話。

 

 

 

 

 

 

へやキャン△

 

「そういえば冬用シュラフは買ったけど、コウタロウはテントどうした?」

「土曜にアウトドアショップに志摩と行ったんだけど、おすすめのが無くてな。日曜に甲府まで行って買って来た」

「コウタロウくんのことやから、またチャリのが速いー言うて自転車で行ったんやろ?」

「ほんとよくテント自転車に積んで甲府から走ったよな~」

「いや車で行ったぞ」

「は? いやいやお前免許持ってないだろ」

「ああ、なでしこのお姉さんに連れてってもらった」

「……それだけか?」

「映画見て市内回って、夜飯ご馳走になって夜景見て帰ってきた」

「「なにその理想的なデートプラン」」

 

(なあ、二日連続で違う女とデートって……)

(コウタロウくん意外とすけこましやな)

 

 

 

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