本栖高校野外活動サークル△   作:園田那乃多

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たくさん評価頂けたので投稿ペースが上がりました。
(評価もペースも)止まるんじゃねえぞ……!


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十三話

「二人とも遅れてごめんーーーっ!!」

 

休日の山梨駅のホームから、なでしこが勢いよく飛び出してきた。

その少し後ろには、小走りのコウタロウが続く。

 

「おー来た来た」

 

リュックを背負い、その上に寝袋を担ぐなでしこと、なでしこと同様の荷物に加え両肩から大きめのバッグを二つ下げる重装備のコウタロウが申し訳なさそうに謝る。

 

「すまん。甲府駅で迷ってな……」

「ごめんね……」

「えーよえーよ。まったり行こかー」

「時間も十分あるしな。……でも、コウタロウが迷うなんてなんか意外だぜ」

「確かに。いろんなことつつがなくこなせそうなイメージやわ」

 

千明やあおいの言う通り、コウタロウは割と何でもできるタイプだ。

しかし彼とて一応人間。分からないことは分からないものである。

 

「浜松は全然電車通らないから、乗り換えとか慣れてないんだよね…」

「ああ。自転車移動が基本だったから……」

 

浜松には私鉄が南北にちょろっと通っているだけで、他の主要都市のように網目状に張り巡っていない。マイカー移動が基本であり、学生は大概自転車かバスを使う。

そのため、同じ駅内でJR身延線と中央本線が行き交うような乗り換えには不慣れだった。

 

「まあコウタロウならどこ行くにも自転車で十分だもんな……」

「まあな」

「肯定しちゃったよ」

「立ち話もあれやし、そろそろ行こかー」

 

あおいの言葉に、全員が頷く。

 

「よし。んじゃー今日の目的地『イーストウッドキャンプ場』へ…しゅっぱーつ!!」

「「「おーーっ!!」」」

 

 

 

 

四人は駅を離れ、目的地に向け「富士塚通り」を歩きだす。

 

「あきちゃん、今日泊まるところってどんなとこなの?」

「よく聞いてくれた!」

 

なでしこのその疑問に、千明は眼鏡を光らせて答える。

 

「薪がタダで温泉が近くて夜景がきれいで、一泊1000円!! …ってゆーナイスなキャンプ場らしい」

「何そのキャンプ場に欲しい要素全部詰め込みましたみたいな場所」

「欲張りセットやね」

「夜景も温泉も楽しみだねー」

 

恐るべきは千明のリサーチ力である。

三人の住む場所からは少し遠いが、ここまで環境がいいキャンプ場も早々ないだろう。あおいが欲張りセットと言ったが、まさにその通りである。

 

「そうだなでしこ。夕飯は任せてって言ってたけど、何作んの?」

「言われた通りパックご飯は持ってきたでー」

 

千明とあおいの質問に、残る二人はさっと目くばせをする。コウタロウはなでしこが何を作るかは知っているようだ。

 

「それは」

「夜の」

「「お楽しみ!!」」

「ヒントはキャンプっぽいごはんだよ!」

「あっ、なでしこそれ言ったら――」

「カレーとか?」

「……お、お楽しみだよ!!」

「……あちゃ~」

 

(カレーか)

(カレーやな)

 

キャンプっぽいごはんと言えばカレーなのは全国共通認識である。

秘密はあっさりばれた。

 

残る疑問は何故コウタロウがカレーだということを知っていたのかである。千明は肩を組んで引っ張ってくると、ひそひそと話を始めた。

 

(というか何でコウタロウは知ってたんだよ)

(なんでも何も、何作るのって聞いたらカレーだよって昨日)

(ええ……)

(その後、しまった! みたいな顔してたけど)

(嘘つくん下手やなあなでしこちゃん……)

 

 

なるほどねともろもろの事情を把握したため、気を取り直してキャンプ地へ向かう。

駅からは約4km。徒歩で50分ほどの距離である。ちょっとした遠足気分だ。

 

話題は自然と、圧倒的大荷物のコウタロウへ向かう。

 

「そういえばコウタロウくんめっちゃ荷物持ってるけど大丈夫なん?」

「何をそんなに持ってきてんだ?」

 

あおい達は言った後で、そういえばこの人体力お化けだったと思いなおす。恐らく心配は無用だろうが、もしきついようだったら手伝ってあげるつもりでいた。

 

「あ、コウくんのその荷物、半分私のなんだー」

「誤解の無いように言っておくが、俺が勝手に持ってるだけだからな」

「いやなでしこがお前に持たせてるとかは思わないから大丈夫」

「まあなでしこちゃんが『コウくん、持ちなさい』とか言ってたらそれはそれでおもろいけど」

「確かに」

 

なでしこも人並み以上に体力があるためコウタロウが持たなくても問題は無かったが、なでしこ保護者勢でしかも男のコウタロウが、自分より多い荷物を持っているなでしこを手伝わないはずが無かった。

 

「で、その大荷物は結局何が入ってるんだよ」

「えーと、土鍋とガスコンロ、替えのガスで一つ。あとは全部食べ物だよ」

「……あたしら一泊の予定だよな? うちの親が週末にまとめて買ってくる量くらいあるんだけどそれ」

「これがなでしこクオリティだ」

「なんでコウタロウくんがドヤ顔なん……」

 

そんなに大量の荷物を持っても平気そうなコウタロウの顔に、なにをしたらこの人は疲れるんだろうと疑問を抱えつつ一応訊ねてみた。

 

「この先坂だけど大丈夫か? まあ大丈夫だろうけど」

「こういうキャリーカートあった方が疲れへんよ? まあ要らんやろけど」

「まあ心配ないな」

「「知ってた」」

 

だろうねと予想していた通りの答えに口をそろえる二人。

山梨での噂に加え、なでしこからも地元での武勇伝(?)を散々聞かされていたため、これくらいでは最早何とも思わなくなっていた。流石に70kmを自転車の速度で走れると聞いたらもう「そういう奴なんだなあ」と納得せざるを得ない。

 

「何なら疲れたら言えよ? 二人の荷物くらいは持てるから」

 

加えてこれである。

 

「あ、あかん。頼りになりすぎる……!」

「かつてこれほどまでに心強い荷物持ちがいただろうか……!」

 

信頼と実績の伴った男らしすぎる言葉に、ちょっとだけクラッと来た二人だった。

 

 

 

 

「「わーーっ!」」

 

千明が言ったように、キャンプ場へと続く道が坂になって暫し。

コウタロウはともかく…なでしこと彼の二人は、まるで坂道など苦にもならないとばかりに斜面を駆けていた。紅葉に染まる街路樹をバックに二人で記念撮影を始める始末だ。

 

「……なあイヌ子」

「…なに?」

「静岡っ子って、皆あんな体力お化けなのかな?」

「どんな魔境やねん静岡。あの二人が特別なだけやろ…たぶん」

 

如何せん静岡の民に対する知識が無さすぎるため断言はできないが、多分きっとそう。

あんなフィジカルモンスターが一山いくらといてたまるか。

 

「コウくんコウくん、紅葉綺麗だねーっ」

「ハイカラだな」

 

「……なでしこの荷物もあたしらより全然多いもんな」

「せやな……」

「もう荷物あいつらに全部持ってもらわねーか? コウタロウも言ってたじゃんか」

「いやそんな直ぐ頼るんはどうよ……。笛吹公園まで600mやし、そこでいったん休憩せーへん?」

「…だなー」

 

魔境の民の二人と違い、一般的な女子高生としての体力しか持ち合わせていない千明とあおいは、ひぃこら言いながらしんどそうに「600m…」とその先に続く道を見た。

 

「こっちだよーっ」

「おーい」

 

あれ?壁かな? と思わず二度見してしまうような急こう配の坂の上で、手を振っている二人が見えた。

 

「……」

 

無言でプラカードに何事か書き込み始める千明。

 

『笛吹公園まで乗せてください!』

 

「おーい、こっちだよーっ」

「おいまてあいつヒッチハイクしようとしてないか?」

 

 

 

 

なんてことがあり。

 

ようやく……

 

 

「うわぁーーーっ!! すごい眺めだよここっ!!」

「すごいな……」

「まあ結構有名な夜景スポットだしな」

 

笛吹公園内の市内が一望できる展望スポットでなでしこが目を輝かせる。

山を一つ挟んで見える富士山を背景に広がる一面の光景に、コウタロウも目を見開いて感動していた。

 

「ねえねえ、写真とろ! 写真!!」

「よしきた」

 

二人の疲れ知らずさには、最早呆れるほかない。

千明とあおいは若干苦笑いで映った。

 

「オイ見ろなでしこ、こっちも絶景だ!」

「ほんとだ!? キャーッ」

 

「本当に元気な子じゃのう…」

「ワシらも昔はああじゃった…」

 

呆れを通り越して老人化していた。

ベンチに腰掛け日向ぼっこするみたいに穏やかに二人を見守る。

子犬のようにはしゃぎまわる二人の声が聞こえてくる。

 

「あ、コウくん見て見て」

「んー? どれどれ…『おすすめメニュー 季節のフルーツパフェ、りんごソフト――』」

 

老人化していた二人が、ピクリと反応する。

 

「……中でスイーツ食べれるみたいだな」

「スイーツ! 食べたい!!」

「なら行くか。俺二人に声かけて――」

 

「「うおおおおおおおおっ!!!」」

 

「――うわ、すげえ勢いでこっち来た」

 

乙女がスイーツにかけるパッションを前に、坂道の疲れなどは吹き飛ぶのだった。

 

 

 

 

『んまぁ~~~!!!』

 

店内に四人の至福の声がこだました。

 

千明とあおいを疲れから即座に復活させた魔法のワード「スイーツ」を味わいに、四人は笛吹公園内のカフェ、「Orchard Kitchen」に足を運んでいた。

 

それぞれ、季節のパフェ、りんごソフト、レモンソフト、ぶどうソフトに舌鼓を打つ。

 

「疲れとると甘いもんがウマーやなぁ」

「暖房きいてる店内で食うアイスウマー」

「炬燵で食うアイスみたいに背徳的なうまさだよな」

「あ、それ私も思ったよー」

 

それぞれが自身の注文したスイーツを味わうが、どんなものであれ人が食べているものは何だかすごくおいしそうに見えるものである。

 

なでしこが言った。

 

「コウくん、一口ちょうだい?」

「いいぞー」

「ん~! レモンソフトもおいひいねえ…」

 

そう言って自然に口を開けるなでしこと、自分のスプーンで自然になでしこに食べさせるコウタロウ。

二人にとってはなんてことはない。いつものやり取りだった。

が、いつもと違うのは一つ。

 

「流石なでしこ、自然な流れであーんしてもらうなんてアタシたちにできないことを平然とやってのける……」

「しびれる憧れるー」

 

ここに男子と触れ合った経験のほとんどない女子二名がいたこと。

 

その二人の視線を受けて、何を思ったのかコウタロウ。

なでしこにした様に、こちらにスプーンを向けてくる

 

「お前らも食う? ほらあーん」

「「!?」」

 

その言動に目を見開く二人。

驚愕のあまりなでしこを見たるが、「おいしいんだよー」とにこにこと笑うばかり。全然気にも留めていない様子。

 

(おおおおい噓だろこいつ! 男女の距離感バグってんのか!?)

(……いや)

(イヌ子……?)

(よう見てあき。コウタロウくんのあの表情、なでしこちゃんに向けてんのと全く一緒や! つまり、全然私らのこと意識してないんやで!!)

(な、何ィ!? ……それはそれで腹立つな)

(せやろ? …だから、私は行くで)

(ま、まさかイヌ子お前……)

(骨は、拾ってな……!)

(イヌ子ォーー!!)

 

何のことは無い。ただ食べさせてもらうだけである。

 

しかし、向こうは意識していないとはいえ、気になる男子にあーんをしてもらうというのは、年頃の乙女としてめっちゃ緊張するもの。

高鳴る心臓と、紅潮する自身の頬は敢えて無視して、あおいは意を決して戦場に向かった。

 

「じ、じゃあもらうな? あ、あーん……」

 

キスをするわけではあるまいに、思わず目をつぶって彼に口を寄せる。

 

「おう。あーん」

 

と、口の中に弾けるレモンの香り。

目を開ければ、いつもの彼の顔がどうだったと言わんばかりに問いかけてくる。

 

「おいしい?」

「………………うん」

 

なんだか目を合わせられなくて、思わずキャスケットのつばを下げる。

 

味なんて、分かるわけが無かった。

 

 

 

「え? なにこれ」

「あおいちゃんどうしたのかな? 顔真っ赤だよ?」

「それには触れてあげるな」

 

 

 

 

 

へやキャン△

 

 

「犬山って服のセンスいいよな」

「え、何々どしたん? 褒めてくれるなんて珍しいやん」

「そうでもないだろ。……いや、そう言えば私服見たの初めてだなって」

「確かにせやな。いつも制服だったし」

「だろ? 大垣もユニセックスな感じ似合ってるし、犬山のその感じ、俺すげえ好きだわ」

「すきっ……!?」

「え、うん。ファッションがな」

「せ、せやな。ファッションがな……」

「何々、どしたの二人とも?」

「あーえっと、いやな、犬山の眉毛が可愛いなって話」

「あー。確かにいろんなもの貫通するよな、イヌ子の眉毛」

「野クル七不思議だねっ」

「あとの六つは無いけどな」

「いやお前の武勇伝は十分ランクインするだろ」

 

 

(コウタロウくんがすけこましな理由分かった気がする……)

 

 

 

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