本栖高校野外活動サークル△   作:園田那乃多

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評価が止まらないどころか、総合日間ランキング8位だってよ…
嬉しすぎてスクショしちゃいました。

皆様、本当にありがとうございます!
これからもどうぞよろしくお願いします!!


十四話

笛吹公園内のカフェから何とか尻の根っこを引きはがし、四人はキャンプ場よりも先に温泉に来ていた。

その道中、駐車場から続く温泉入り口の立て看板を見たなでしこがつぶやく。

 

「ほっとけや温泉だって。おもしろい名前ー」

「いいじゃないかどんな名前だって。ほっといてやれよ。…ほっとけや温泉だけに!」

「……あきちゃん」

「あき、ないわー」

「温泉入るからってわざわざ冷えさせなくていいんだぞ?」

「……お、お前らーーっ!!」

 

千明のギャグは華麗にスルーされ、残る三人はスタスタと荷物を置くため休憩所に向かった。

憤慨しながら追いかける千明。

 

「お、お前ら最近あたしの扱い雑じゃないか!?」

「右の方が空いてるみたいやな」

「早いとこ荷物置いて温泉行こうぜ」

「さんせーい!」

「せめて話は聞いて!?」

 

涙目になった千明が流石に可哀想なので、三人は笑いながら冗談冗談となだめにかかる。

 

「ほら大垣、座布団どうぞ」

「あき、ストーブ持ってきたで」

「あきちゃん、マッサージするよ!」

 

「お前ら……。気持ちは嬉しいが、ここでくつろいだら尻に根が張るなんてレベルじゃなく二度と『起きて』帰れないことは明白だぞ…本気か?」

 

現に今、暖かい部屋にいるだけでもう既に「あ、もうここに住むわ」と思考停止しかけているのだ。その上温泉に浸かった客を完全に堕としにかかる悪魔の刺客(座布団・ストーブ・マッサージ)を仕向けられたら、100%墜ちる自信があった。

 

「大丈夫や。あきが寝ちゃったらその分までうちらが温泉堪能してくるから」

「任せろ」

 

ぐ、とサムズアップを返すあおいとコウタロウ。

 

「二人ともあたしをイジッてそんなに楽しいか?」

「「すごく」」

「いい笑顔だなコンチクショウ!!」

 

そんな風に三人がじゃれあう中、リンからの通知に反応していたなでしこ。

30分ほど前に送っていたメッセージに、今返信が来た。

 

【リンちゃんは今日どこ行ってるの??】

【ここだよ】

【http://live/kiri/cam.php?1】

 

(アドレスだ)

 

どうやらバイクに乗っていたらしく、返事が遅れたようだ。

返事と共に送信されていたURLをタップしてみる。

 

(霧ヶ峰カメラ?)

 

URLを開けば、県道40号線ビーナスラインを映すライブカメラ、霧ヶ峰カメラが立ち上がった。

 

「ん?」

 

そして、目を凝らせば。

 

「んんー??」

「なでしこ、誰から?」

 

先ほどからスマホをじっと見つめるばかりのなでしこを不審がって、コウタロウも彼女のスマホを覗き込む。

と、

 

「あーーーっ!! リンちゃんだこれーーっ!!」

「っ、みみがぁ……!」

 

至近距離で叫ばれ耳がキーンと打ち震えるコウタロウはさておき。霧ヶ峰カメラの端には、こちらに向かって手を振るリンの姿があった。

 

「なでしこ、どうした?」

 

なでしこの大声に反応した千明が、視界の端で悶絶するコウタロウを敢えて無視して様子を問いかけてきた。

いや、敢えて無視どころか邪魔だとばかりにごろんと転がして壁に寄せた。ぐおおと苦悶の声が漏れる。先の意趣返しである。

 

「リンちゃんが、テレビに映ってるんだよーーっ!!」

 

テレビではなく、ライブカメラである。

なでしこはすわ大変だと言わんばかりにリンが映る霧ヶ峰カメラの映像を見せる。

どれどれーと寄ってきたあおいは、コウタロウの頭部側に移動し自然な流れで彼の頭を自身の膝の上にもたれさせた。

 

「ホントや。志摩さん、今霧ヶ峰におるんねー」

「霧ヶ峰って確か長野の諏訪湖の辺りの高原だよな」

「あおいちゃん、そこ代わるよー」

「今めちゃ寒いはずだけど大丈夫なのか?」

「あ、ほんまー? ならお願いするわ」

「いや膝枕してもらわんでも大丈夫だわ」

「えー!! あおいちゃんばっかりずるいよ」

「……ねえ聞いてる?」

 

 

「見えてるよな? 返事がない……」

 

その一方で、一向に返事が来ないリンはしばらくライブカメラの前で手を振り続けていた。

待たされ続ける彼女がようやく出発できたのは、しばらく振り続けた後コウタロウから【話に夢中で返事忘れかけてるからもういいぞ。車危ないし】とメッセージが来てからである。

 

 

 

 

時間は少し巻き戻って、正午の少し前。

 

長野へ向けて150kmの道のりをまだ早い早朝に出発したリンは、県道40号線ビーナスライン沿いの山小屋カフェ「マツボックリヒュッテ」に愛車のビーノを停め、少し早い昼食を決め込んでいた。

 

(麓キャンプ場では2000円の利用料に怯み薪代をケチった私だけど……)

 

メニューの値段設定を睨む。

 

(今はバイト代が入ったばかり!! 金はあるんや!)

 

「ボルシチセット一つ。ドリンクはキャラメルマキアートで」

「かしこまりました」

 

ボルシチ(ドリンクセット)1300円と、カフェプライスとしては割と良心的な値段設定で助かった。

いつぞやクラスの女子生徒が言っていたが、おしゃれカフェの強気値段設定は味ではなくおしゃれさに金を払っているんだと。あとSNS映え。

 

今のところ多くの女子高生がやっているようなSNSはやっていないしやるつもりもないリンには、理解しがたいものだった。コウタロウにも話したが、「コメダなら同じ値段で3倍量が食える」とのこと。

 

(まあ大食いなでしこと行くんだったら、そうなるよな)

 

私とは行ったことないけど、と呟く。

 

(そういえば守矢とちゃんと遊びに行ったのって、こないだが初めてだったんだよな)

 

先週の土曜に身延駅前のアウトドアショップ「かりぶー」に行ったのを思い出す。

昼過ぎに駅前で待ち合わせて、予算の範囲内でテントと小物などキャンプに必要そうなものを一緒に選んだわけだが、何となく自分が使っているものと同じものを勧めた。

別に他意はない。だって、実際使って良いと感じたものなのだから。

 

テントは残念ながら在庫が無かったが、翌日守矢から送られてきた写真には、自分が使っているのと同じ「ムーンライト3型」を手に笑う彼が映っていた。多分親と一緒に甲府市内まで行ったのだろう。

別に他のテントでもいいだろうに、そこまでして自分と同じものを使ってくれようとするなんて……。

 

まあ、お揃いだということは伝えてないのだが。だって恥ずかしいし。

 

「お待たせしましたー」

「っ……。ありがとうございます」

「ごゆっくりどうぞ」

 

頬が緩むリンの前に、注文していたボルシチセットが運ばれてくる。

思わず持っていたスマホを落としそうになるが何とかセーフ。瞬時に表情を切り替え、いつものクールしまりんにもどった。

 

兎にも角にも、料理が来たからには食べなければ。

リンは手を合わせると、心の中でいただきますと唱え、ボルシチを口に運んだ。

 

(~~~~!!)

 

うまい……。冷えた体にしみわたるぜ……。

寒い日に、100km近く走ってきて冷えた体。温かい店内で温かいボルシチを食べるこの幸福と言ったらない。

 

【寒い日のボルシチうまー】

【写真】

 

この感動は是非とも分かち合わねば。

早速、友人達にそれぞれ写真と共にメッセージを送った。

 

(そうだ。あいつのお土産何買ってこう…)

 

鍋のお返しもあるし。

そう言って思い出すのは、なでしこの顔。元々麓キャンプ場での鍋は、本栖湖でのカレーメンのお返しという話だったのだが、キウイも貰っていたし、カレーメン1個じゃ釣り合わないよなとリンは思っていた。

 

ちらと店内を見れば、レジ付近にマグや小物、Tシャツなどの品が目に入る。

 

(雑貨とか……? いや、食べ物のほうが喜びそう…ってか喜ぶだろ)

 

よくわからない食べ物(多分なんかのモチ)を渡され目を輝かせて喜ぶなでしこが目に浮かんだ。お土産は諏訪辺りの食べ物にしよ。リンはそう決めた。

 

(守矢はいつも通り、その辺の道の駅で売ってる剣とか龍とかのじゃらじゃらしたやつでいいか)

 

小学生男子が喜びそうなお土産のチョイスだが、別にコウタロウはそんなものを欲しがってるわけではない。

ただリンが彼のためにと品物を悩むのが恥ずかしいので、いつもそういった大きくなって貰うと扱いに困るシリーズが彼のお土産として選ばれるのだった。

コウタロウは友人の感性を疑っていた。

 

【ボルシチ! おいしそー!!】

 

と、先のメッセージに返信。

こちらはなでしこだ。

 

【寒い日に食べるアイスうまー】

【写真】

 

同じような文言でかぶせてきたのはコウタロウ。

彼らが笛吹公園内のカフェで一服しているのはカフェに入る前になでしこから送られてきたメッセージで既に知っているのだが、そうとは知らず自慢げに写真を送ってくる友人に少し頬が緩んだ。なんかかわいいなこいつ。

 

【そこ、笛吹公園のカフェでしょ】

【何で知ってんの? エスパー?】

【ふふ、実はキサマの体にGPSを埋め込ませてもらった】

【な、なんだってー!】

【これでお前がいつどこで何をしているのか筒抜けってわけだ】

【汚いぞ、怪人シマリーン!】

【は? 誰が怪人だ】

【お前から始めたじゃんか……】

 

ひとしきりコウタロウとメッセージで戯れると、なでしこから新着通知が入る。

 

【リンちゃんは今日どこ行ってるの??】

 

「【長野のすわ…】いや待てよ……」

 

メッセージを送る前に、ぴこーんとナイスアイディアが思い浮かんだリン。

気持ち急いでボルシチセットを食べ始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

へやキャン△

 

 

「……」

「……」

 

『次は~甲斐大島、甲斐大島~』

 

「……」

「……」

 

通学の電車内にて、俺は今人生でトップレベルに気まずい思いをしていた。

 

だって……

 

ちらと横を見る。

 

「……?」

 

少女が。

あの時のホクロ毛の少女が、何故か少し離れた俺の隣からこちらを観察していた。

 

何? なんだ? なんで何もしゃべらないんだ?

口汚く俺を罵ったり、恥かかせやがってと罵倒を浴びせればいい物を、どうして黙ったままなんだ?

 

(くそ、それもこれも委員会の朝当番を急に交代させられたせいだ。恨むぞ志摩……)

 

そう。あの一件以来、この名も知らぬ少女と顔を会わせるのが嫌で仕方のなかった俺は、なでしこが起きるまで待つことにし、電車の時間をずらしたのだ。

 

しばらくはそれで問題なかったのだが、今日こうして再会を果たしてしまった。

 

さっき初めて目が会った時なんか凄かった。めっちゃ目見開いて三度見位されたぞ。どんだけ恨まれてんだよ俺……。

 

『次は――』

 

「……」

「……」

 

気まずすぎる……。

 

むしろ、俺からしゃべりかけた方がいいのか……? いやでも何で?

挨拶するような関係でもないし、かと言って謝るのもどうだ……?

 

くそ、どうしたらいいか全くわからん……。誰でもいいから助けてくれ! この状況を救ってくれ!!

 

と、プシューと電車のドアが開く。

 

「あれ、コウタロウくんやないの。電車の時間戻したん?」

「!? い、犬山っ!!」

 

そこに、見知った顔が現れる。

九死に一生を得た…! 今は彼女が窮地を救う天使に見えるぞ……!

 

俺はがばっと立ち上がると、呆然とするホクロの少女をよそに犬山の手を掴んだ。

 

「ど、どうしたん急に?」

「会いたかった!! さあ行こうすぐ行こう今すぐ行こう!!」

「えっ? えっ? 会いたかったてどういう事!?」

「いいから! 俺と一緒に来てくれ頼むお願い何でもしまむら!」

 

そう言ってぐいぐい犬山を引っ張って隣の隣の車両まで移動した。

 

「助かったぜ……」

「どういうことなん……」

 

 

一方残された少女はというと。

 

「……ぐすん」

 

ちょっと泣いた。

 

 

 

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