本栖高校野外活動サークル△   作:園田那乃多

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最終回のイメージ画







二十八話

 

「ふわあぁ……」

 

だんだんと夕日に照らされだす本栖高校最寄り駅のホームにて、なでしこが一人大きなあくびを漏らした。

閑散としたホームには他に誰の姿も見受けられない。あれだけ寄り道をすれば当然である。

 

コウタロウとは委員会があるから、そしてテスト勉強をしろと言われ学校で別れ、部活も熱心なところ以外はテスト期間はお休み。

 

(明後日からテストかぁ)

 

自身の成績は、悪くもなく良くもなく、まあまあと言ったところ。

テスト勉強と言っても、彼が隣にいないのにどうして集中できよう。なのに、先に帰れなんて。私の成績が下がってもいいのか。

なでしこは、自分を最優先してくれない彼にちょっぴりむくれつつ電車を待つ。

 

(テストが終わったら冬休みだ……)

 

冬の寒さが厳しい地域の学校は、その他の地域と比べて冬休みが長い。その逆もまた然りなのだが、比較的年中温暖な浜松は、冬休みも夏休みも特別長いということは無かった。

 

(浜松より冬休み長いってなんか嬉しい)

 

学生にとって長期休暇は胸躍るもの。

なでしこの頭の中では、年越しそばに除夜の鐘、初日の出におせちなど、冬休みのメインイベントたちが浮かんでは消えてを繰り返していた。無論隣にはコウタロウの姿がある。

 

(お正月は今年もおばあちゃん家かな。コウくん家はどうするんだろう? 帰るとは言ってたから、一緒にいれるとは思うけど……)

 

守矢家も正月はコウタロウの祖父の家で過ごす予定である。もっとも、彼自身はバイクで前乗りして幼馴染の土岐綾乃と過ごすという個人的な計画を立てているのだが、どうやらなでしこには言っていない様子。たぶん普通に忘れてる。

 

(アヤちゃんにも久しぶりに会いたいな……)

 

浜松のことを考えれば、どうしても綾乃を思わずにはいられない。

メッセージでやり取りは続けているが、会うのは数か月ぶりになるのだ。自然、なでしこの顔も綻んだ。

 

(あ、でもその前にクリスマス――)

 

大好きな人と二人きりで過ごしたいという思いがちらと顔を覗かせる。

だがそれでも脳裏に浮かんだのは。

 

(そうだっ!!)

 

なでしこは、ある提案をすべくメッセージアプリの野クルのグループルームを呼び出した。

 

 

 

 

放課後の理科室にて。

 

「はい! 今日は木皿の塗装はがしと、スキレットのシーズニングを行いまーす」

「スキレットのシーズニング初耳なんだが」

「仕事増えとるやないか」

「ここテストに出まーす」

「聞けよ」

「はい聞こえませーん」

「聞こえとるやん」

 

理科室の教卓で黒板を背に、いつの間に用意したのか白衣と白ちょび髭という博士!スタイルで千明が実験開始を宣言した。

カセットコンロにヤスリ、オリーブオイル、そしてミカンを準備しながらあおいとコウタロウが呆れた顔でツッコミを入れる。

 

シーズニングとは、表面に付いたサビ止めを落としオリーブオイルを馴染ませる、鉄鍋を買ったら最初に行う慣らし作業である。簡単に工程を説明すれば、しっかりと洗った後、空焼きしてオイルを塗ってを繰り返す作業を行う。その際、取っ手が超熱くなるので超気をつけなければいけない。

 

バチンと音を立て、家庭科室から借りてきたちょっと古いカセットコンロを点ける。

ゆらゆらと揺れる火力高めの火を見つめながら、他愛もない雑談に興じる三人。

 

「そういえば歴史の田原先生産休するんやてなー」

「聞いた聞いた。まさか教師一筋の田原ちゃんがなー」

 

今回あおいとコウタロウが作業に必要な道具を借りて回ってきたのは、単純に優等生が言った方が赤点ギリギリの千明よりスムーズに事が運ぶと判断されたためだ。結果は見てのとおりである。

 

「電撃結婚だったよな」

「せやなー、あんときは驚いたわ」

「現国の平塚先生なんか特にびっくりしてたな。やっぱ同じアラサー同士シンパシーとか感じてたのかな……」

「ひっくり返ってたもんな……あたしリアルであんな驚き方する人初めて見た」

「もう誰か貰ってやれよあの人……」

 

三人が三人とも、美人だし面倒見もよく生徒想いなのになぜか結婚できない女教師を思い浮かべ、はあとため息を吐いた。

 

「電撃産休」

「電撃新婚生活」

「電撃子育て」

「……結婚かー。あれだよな、よく25歳までにはって言うよな」

「あー確かに。……私もそのくらいにはしたいわー」

「25って言うと、あたしら10年後か。何してるんだろな」

 

何とは無しのコウタロウの発言に、それぞれが10年後を思い浮かべる。

が、しばらくして自分の将来が全く思い浮かばないコウタロウは早々に諦めると、特に深い意味もなく隣に座るあおいにを見つめ言う。

 

「犬山はあれだな、教師とか合ってそうだな。面倒見いいし優しいし」

「えー? ふふ、ほんまー?」

「わかるわかる。イヌ子教えるの上手いもんな」

「将来子供は犬山の学校に預けよう」

「ちょ、やめーや恥ずかしいわ! …嬉しいけど!!」

「お、珍しくイヌ子が恥ずかしがってんな」

「だ、だってコウタロウくんが子供とか言うから……!」

 

子供という単語に、何となく自分と彼を想像してしまったあおい。きっとかわいいんだろうなと思いかけ、はたと思考をストップさせた。

自分の周りにコウタロウ以外の男子があまりいないのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが、なんだかこっぱずかしくなり、ほんのり赤い顔であおいが止め止めと手を振った。

 

自分だけ意識しているのが何だか悔しくて。お返しとばかりに、彼の将来予想を言ってみる。

 

「コウタロウくんの職業はちょっと思いつかんけど、…こ、この先ずっと付き合いある気するなー?」

「ふむ……?」

 

そう言って考え込むコウタロウに、なんだかすごく恥ずかしいことを言ったような気がして。

慌てて否定の意を告げるあおい。

 

「な、何となくやけどな!? 何となくやで!? ほんまに大した意味は……!」

「いやそういえば、この学校来て最初に仲良くなったの犬山だったしな。たぶんそういう縁があるんだと思う。うん、ずっと続いてほしいな、この縁」

「ひ、ひゃい……」

 

普通に肯定されてしまった。ちょっと攻めたつもりが、思わぬ返り討ちに合ってしまったあおい。

どういう意味で彼は言ったのだろう。……まあ文字通りの意味だろうが、世が世の文豪なら今のはもう告白である。

違うことは分かっているのに、なんだか目を合わせるのが躊躇われて、うつむきがちに出された声は炎の音にかき消されて。

きっとこの顔の熱さは、コンロの火のせいに違いない。

 

「なあなあ、あたしは? あたしはどうしてると思う?」

 

互いの将来を予想するのは存外に楽しいらしく、千明が興味津々な様子で身を乗り出して聞いてくる。

コウタロウは変わらず、あおいはナイスタイミングとばかりに首を振って邪念を振り払った。

 

「大垣か。大垣は…うーん……、何か会社員、って感じじゃないし……」

「た、確かにあきがスーツきっちり着てるの想像できんな」

「ただまあ明るいしいると楽しいし、人の輪の中にいるんだろうなー」

「うんうん!」

「そうだな、なんか仕事帰りに居酒屋で飲んだくれてそうだ」

「うんう……ってそれ仕事じゃねえじゃん。酔っ払いじゃん。ただのまるでダメな大人、略してマダオじゃん」

「でも、凄い想像できるわ……!」

「イヌ子まで……」

 

それが事実か否かは、まだ分からない。

 

「話変わるけどさ、この前キャンプした時結構歩いたじゃんか」

「ん? うん」

「この前…あー歩いたな」

 

そういえば野クルの皆で行ったのは二週間前だったなと、つい先日もなし崩し的にキャンプをしてしまったコウタロウが思い出すように目を細める。

 

先週の土日になでしことリンとキャンプをしたと言う話は、同じく日曜にシフトに入っていた千明あおいの二人に「あの後どうしたの?」と詰められあっさりばれた。なぜかは分からないが二人にジュースをおごった。

 

「後で調べたら笛吹公園までバス出てたわ。しかも片道100円」

「えっ!! そうなん!?」

「安っ!」

 

ジュッという熱された金属に肉が触れる音がした。

 

「きゃっ!!」

 

熱されたスキレットの柄の部分に指先が触れてしまい、やけどを負うあおい。ひぃーと涙目で患部を水で冷やし始める。

 

「大丈夫か?」

「うん……なんとか」

「犬山がやけど……まるでホットドッグだな」

「コウタロウくん嫌いや」

「何でっ!?」

「いやこれはコウタロウが悪い」

 

程度の低いダジャレにあおいはツーンとそっぽを向き、千明は呆れた目を向ける。

耐えかねたコウタロウは手を合わせてすまんと謝った。

 

「……怒ってへんよ。あと、嫌い言うのもウソやし」

「おう、ありがとな」

「ま、コウタロウのボケはたまに明後日の方向にぶっ飛ぶからな」

 

あたしがフォローしてやらんと、と呟きつつ、あおいと持つのを交代したスキレットにオリーブオイルを垂らしていく。

 

「オイルこのくらいか?」

「そんなもんやないの?」

「もうちょっと高いとこから高低差つけて垂らした方がいいんじゃないか?」

「それすんのもこみちくらいだろ」

 

と、

 

「三人で何の実験してるの?」

 

偶々理科室の前を通りがかり、知り合いが何やら作業にいそしんでいるのを発見した恵那が、ひょっこりと顔をのぞかせた。

 

「あ、斉藤さん」

「お、さいと――」

 

ジュッ、と熱された金属に肉が触れる音がした。

 

「ぎゃーっ!!」

 

先に同じく、スキレットの柄の部分に指が触れてしまった千明。

短い悲鳴と共に、反射的にスキレットを放り投げる。

 

超高温に熱された鉄の塊。

熱くなくとも、金属が上から落ちてきたら危険なうえに、今はそれがやけどするほどに熱くなっている。

 

危ない――

 

三人が三人ともそう本能的に感じ、しかし咄嗟に動くことができず。ぎゅ、と強く目をつぶる。この後の惨状を見ないように、自分に落ちてこないことも祈るように。

 

 

が、誰かの頭に鈍器がぶつかる鈍い音も、熱で肉が焦げる音も匂いも、そのまま床に落ちる甲高い音も聞こえない。

 

「ほい」

 

代わりに、お菓子を手渡すような気軽さあふれる危機感のかけらも感じさせない声音が聞こえ、恐る恐る目を開ける。

すると、なんの危なげもなく空中で回転するスキレットの柄の熱くない部分を親指と人差し指でつまんでキャッチするコウタロウが目に入った。

 

そのまま流れるような動作でコンロの上に戻す。

 

「「「お、おぉ~」」」

 

女性陣から歓声の声が漏れる。

 

「さ、流石コウタロウくんやな……」

「ありがとなコウタロウ、助かったぜ……」

「ほんとキャッチするの上手だよねー」

「まあこのくらいは誰でもできる」

「「「それは無理」」」

 

逸般人コウタロウの言に、いやいやと苦笑いで首を振る三人。

ここになでしこが居れば、コウタロウは箸で羽虫をキャッチできるだとか、工事現場から落ちてきた鋼材をキャッチしてそのまま現場まで運んであげただとかいうエピソードが飛んでくるところだが、生憎彼女は今はいないため、そこまで広がることは無かった。

 

 

 

 

「へえー、鉄フライパンって使う前こういうことするんだ」

 

あおいも千明も指を負傷したため、代打としてもろもろの説明を受けた恵那がスキレットのシーズニング作業を買って出た。

 

今はミカンの皮を炒めている。先ほどコウタロウが職員室で貰って来たものだ。

ちなみに、指を負傷している女子二人の代わりにコウタロウが皮を剥いた。中身は今もきゅもきゅと頬張っている千明とあおいの口の中である。

 

「なんか面白いね」

 

軽く袖をまくり、慣れた手つきで菜箸を操る恵那をコウタロウはぼうっと眺める。

視線に気づいた恵那が、ふわりと笑って問いかけた。

 

「ふふ、なあに?」

「いや、なんか手慣れてるなって」

「たまに家で料理手伝ったりするからね」

「へえ」

「そういうコウタロウくんは、料理するの?」

「まあぼちぼちだな。たぶん斉藤ほどじゃない」

「得意料理は?」

「卵かけごはん」

「あはは、それ誰でもできるやつじゃん」

 

頬杖をついて、穏やかな表情で恵那を見つめるコウタロウと、あくまで自然体でいる恵那。

場所が場所なら、長年同棲したカップルの様な雰囲気だ。

 

二人のそれぞれ隣にいる千明とあおいは、ようやくミカンが口の中から無くなり、そんなふたりのただならぬ様子について小声で話し出す。

 

(な、なあイヌ子。コウタロウと斉藤ってそんなに接点無かったよな……?)

(…………)

(イヌ子?)

(うぇっ? …あ、ああ、せやな。確かにあんま話してるの見たことないな)

(だよな……)

 

実際は何のことは無く、コウタロウはただ感心しているだけで、恵那は基本誰に対しても自然体的でいるからである。

 

あおいと千明が疑惑の視線を送る間にも、シーズニング作業は進んでいき。

 

炒まった後は、お湯を沸かして、たわしでしっかりと洗う。

そして、最後にもう一度空焼きをしてオイルを薄く塗れば、完成である。

 

「「おおーー」」

 

ぴかーとはいかないが、何となく使い込まれた小ぎれいさが出たスキレットを前に、千明コウタロウを除く二人から感嘆の声が上がる。

 

「こっちもできたぞ」

 

物珍しさから完成したスキレットをまじまじと眺める二人に、隣から千明の声が掛かった。

 

「ほれ!」

 

そういって、ヤスリがけを終え、スキレットと同じく薄くオイルを塗った木皿が差し出される。

 

「おー、オイル塗ると味が出るね」

「まあ後半ヤスリがけしてたんほとんどコウタロウくんやったけどな」

「し、仕方ないだろ指やけどしちゃったんだから!」

 

ヴーー…ヴーー……

 

まあまあとコウタロウが千明をなだめていると、野クルメンバーの携帯にそろってメッセージ通知が入った。

 

「お」

「ん」

「なでしこからだ」

 

代表して千明が携帯を開けば、残りのメンバーがどれどれとのぞき込んだ。

 

『テスト終わったらみんなでクリスマスキャンプやりませんかっ!!』

【写真】

 

そこにはクリスマスキャンプの提案を告げる文面と、写真には赤白のニット帽に、白のマフラーを口元にやってサンタクロースめいた格好のなでしこが写っていた。

 

「クリスマスキャンプやて」

「ナイス提案だな」

「なでしこサンタだね」

「そうだね」

 

確かにクリスマスは完全に冬休みに入ってからなので、キャンプをするには都合がいいだろう。

千明はおおむね賛成なようで参加に意欲的だし、コウタロウは何か予定あったっけと思案しており、恵那は如何にリンをそこに放り込むかを考えだし。

そしてあおいはというと。

 

「私はクリスマスはコウタロウくん(彼氏)と過ごすからムリやなー」

 

自然な流れでコウタロウの手を引き、腕を絡める。

そのまま頭を彼の肩に預け、幸せそうに微笑んで、ちらと恵那を流し見た。

 

「ふぅん?」

「なっ!!?」

「ふぁっ!!?」

 

恵那は意外とばかりに肩が上がり、千明とコウタロウは驚愕の余り目を見開いて動揺する。

 

「って、何でお前も驚いてんだ!!」

 

何故だか自分と同じかそれ以上にびっくりした様子のコウタロウに、千明が詰め寄った。

付き合ってる事実を本人が知らないとはこれ如何に。

 

「だって俺も今初めて聞いたし!!」

「なんじゃそりゃ!?」

「あれれ」

「説明しろコウタロウ! お前イヌ子の彼氏なんか!? どうなんだ、何とか言え!」

「こっちが聞きたいんですけど! あれ、俺犬山と付き合ってたっけ!? 全然記憶ないけどお付き合いしてましたっけ!!?」

「知らねーよこのすけこまし! あほばかまぬけ! 敵! 女の敵!!」

「記憶にございません!! 記憶にございません!!」

「ウソやでー」

 

なぜだか取っ組み合いを始める千明とコウタロウの喧騒の中で、さらりと告げるあおい。

その一言に、コウタロウに馬乗りになり眼鏡を外した千明、外されたコウタロウ、それを面白そうに見ていた恵那が、首だけ動かしてあおいを向く。

 

「「「……よかった!」」」

 

それぞれがそれぞれの思いを込めて、そうつぶやいた。

 

 

 

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「……斉藤さんは、シロやな」

 

 

 

 

内船駅。

 

ヴーー…ヴーー……

 

家の最寄駅から出たなでしこのスクールバック内の携帯が通知を知らせた。

野クルのグループのものだと通知を確認し、メッセージアプリを開く。

 

「!!」

 

 

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「みんなでキャンプできるのは嬉しいけど……」

 

写真の端でひょっこりと写り込む幼馴染に目が釘付けになる。

 

「コウくん……なんでそこにいるの……?」

 

自分の知らない所で他の女と仲良くしているコウタロウを見つめ、なでしこの足は自分の家とは別方向を向いた。

 

 

 

 

へやキャン△

 

夕暮れも深まったころ。

 

あのあと斉藤をキャンプに誘い、それとなく保留になったあたりで解散し、二人と別れ家路についた俺。

特別約束をしていた訳ではないが、テスト期間は決まってなでしこと一緒にテスト勉強をしていたため、彼女は恐らく今日もそのつもりでいるだろう。自分でなでしこを帰しておきながら、なんだかんだこうして遅れてしまったことに申し訳なさを感じつつ、急いで内船駅から出ると、猛ダッシュで家へ向かう。

 

「ただいまっ」

 

あっという間に玄関に到着し、玄関を開ける。

駐車場に車が無いという事は、両親は未だ帰ってきていないのだろう。

 

……あれ、なら何で玄関の鍵が開いてるの?

 

「お帰りコウくん」

 

仁王立ちしながら腕を組んで、普段とは違うニコニコとした笑顔を浮かべて俺を出迎えてくれた幼馴染がそこにはいた。

 

「お、おう……。ただいまなでしこ……」

 

冷汗が流れた。

おかしい。いや別になでしこが我が家にいることは割といつものことだからそれではなく、こんなにも私不機嫌です!と言わんばかりの態度の我が幼馴染だ。

 

確かに今日はちょっと仲間外れっぽくなってしまったが……。

 

「な、なでしこ……?」

「つーん」

 

おかしい。だって自分で言ってるもん。自分の口でつーんとか言ってるもん。普通擬音として出るものだよそれ。

明らかに機嫌がよろしくないのだろうが、そもそも怒り慣れていないのもあって、ただ可愛いという印象しかない。おかしい。

 

とりあえずいつまでも玄関にいるわけにもいかず、恐る恐るローファーを脱いで廊下に上がる。そして、ゆっくりとした動作でなでしこの前まで歩く。

なんでこんな慎重なんだよ俺、ここ自分の家だろ……。

 

「ん!」

 

触らぬ神に祟りなしと言わんばかりに、何故だか抜き足差し足でなでしこの前を通り過ぎようとすれば、頬を膨らませた彼女が両手を広げて通せんぼをしてくる。

ど、どうしろと……?

 

「ん!!」

「え、ええ……?」

 

そのまま手を広げながら、一歩詰め寄ってくる彼女。訳が分からず困惑する俺。

もしかして俺をこの家から排除しようとしてる? ブルドーザー的に押し出そうとしてる?

 

「ん! 抱っこ!!」

「ええ……」

 

どうやら違ったらしい。抱擁を求めていたようで、なるほど言われてみればそういうポーズだ。予想外過ぎる。

とはいうものの、困惑しつつも無防備に身を差し出してくるなでしこをぎゅっと抱きしめた。

そうして互いの距離が無くなれば、彼女の腕は背に回されるかと思いきや俺の顔を両手で捉え。

 

「なでしこ?」

「……コウくん」

「ん?」

 

少しうるんだ彼女の目の中に、俺が写ったと思ったその時。

 

「……ん」

「っんん!!?」

 

彼女と俺が重なった。

 

 

 







どうして最終回にする必要があるんですか()

もともと、アニメ8話のあおいちゃん彼氏事件のネタを扱ってみたくてSS書き始めた部分もあり、それが出てくる今回の話で一応の区切りにするつもりでした。とか思ってたらやっぱり似たようなネタは既にやってる方がいて、勝手にシンパシー感じたりもしていたのですが……。

ですが、やっぱり皆可愛い過ぎてもう頭おかしくなりそうなのでもう少し続けたいと思います。

(映画も公開間近でモチベーションもあるし10年後を書くまで)俺は止まんねぇからよ、お前ら(評価感想)が止まんねえ限り、この先を俺は書き続けるぞ! だからよ、(評価感想)止まるんじゃねえぞ……

まじでお騒がせしてすいませんでしたッッ!!
引き続き拙作をよろしくお願いします!!!


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