本栖高校野外活動サークル△   作:園田那乃多

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映画見てみんなのイメージが大人で固定されちゃったのを原作とアニメを周回して高校生に戻したと思ったら「ゆるキャン△展」が大阪であると聞いて飛んで行ったらまた大人で固定されちゃって高校生に戻すために…というループにはまってたら遅くなりました。


10年後のなでしこ、コウタロウ、リン


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二十九話

 

「テスト……おわったーーーっ!!」

 

期末テストも無事に終了し、野クルの皆で帰りの電車の中。

なでしこが大きく伸びをして解放感を全身で感じていた。

 

並んで座る他のメンバーも、学生生活における大きな山を越え、解放的な気分で微笑む。

 

「はー、あとは休みを待つばかりやぁ」 ←余裕

「テス勉でやったとこばっかでよかったなー」 ←余裕

「だねー」 ←それなり

「よゆうだったぜ!」 ←ギリギリ

 

若干一名不安を残す者がいるが、概ねテストの手ごたえは感じているようで、そのまま上機嫌で電車は進む。

 

そして。

 

「……あれ、二人とも降りなくてよかったの? 駅過ぎちゃったよ?」

 

いつも二人が降りる最寄り駅を過ぎたというのに、席を立つ様子のないあおいと千明に心配そうになでしこが訊ねた。

 

そんななでしこに、しかして他の三人はふっふっふと不敵に笑う。

がしりと隣のあおいが彼女の袖を掴んで言った。

 

「今からカリブーに行くで! なでしこちゃん!!」

「かりぶう……?」

 

 

 

 

身延駅。

 

駅前から富士川と平行に南北に延びる県道10号線は、歴史的な町並みを残しつつ観光地として栄えている。と思われがちだが、実は今のような和風のデザインになったのは1999年の区画整理の時である。が、対岸の身延中心部や久遠寺、南アルプスの登山客の最寄り駅として賑わっているのは間違いない。

しょうにん通りとも呼ばれるそこに、四人は降り立った。

 

「へえー、身延駅って降りたことなかったけど、こんな所だったんだねー」

 

物珍しそうに辺りをきょろきょろしながらなでしこ。

と、そのレトロな光景にどこか既視感を抱き、幼馴染を呼んだ。

 

「コウくんコウくん」

「ああ。新井の関所の通りに似てるよな」

「だよねっ」

 

テスト前の一件以来、ほんの少しだけいつもより距離がある幼馴染に、逃がさないと言うように一歩距離を詰めた。

一瞬ピクリとその表情が動くが、腕を絡めればため息交じりになすがままになった。勝利である。ぶい。

 

「……意識してんの俺だけかよ」

 

隣でぼそりと何か言うが、つとめて聞こえないふりをして。

こちらをじっと見つめていたあおいに向き直った。

 

「あおいちゃん、ここにカリブーってお店があるの?」

「せやで。商店街の端っこの方やけどなー」

「何のお店なの?」

「それは」

「着いてからの」

「お楽しみだぞなでしこ!」

 

既に下見で一度訪れている三人の息の合ったコンビネーションが決まった。

下見どころかコウタロウは一度そこでリンと買い物に来ており、スタンプカードまである。

 

ならば着くのを待とうとなでしこが視線を街並みにシフトすれば、『ほうとう』の文字ののぼりが。

ぱっと組んでいた手を放し、一目散にのぼりのお店まで駆けていく。

 

「これ知ってる! 野菜がたくさん入ったみそ煮うどん!!」

 

そして次に目に入ったのは、

 

「『みのぶまんじゅう』だって!! もしかして身延の名物かな!?」

 

興奮冷めやらぬと言った様子で報告してくる様は、非常に微笑ましい。

コウタロウは少し向こうを指さした。

 

「なでしこあれ見てみ」

「あ、犬だーーー!!」

 

目につく珍しいものすべてに駆けて行くなでしこ犬を見ていた三人は、それぞれ感想を漏らした。

 

「お前もな」

「元気な犬やなぁ」

「……」

「無言で写真撮るのやめーや」

「……」

「無言で撮ったなでしこちゃん送りつけてくるんやめ」

 

その後ひとしきりイッヌと戯れ、しょうにん通り商店街を北上してしばし。

自然な流れでコウタロウの隣に移動していたあおいが、ある建物を指さし後ろのなでしこに振り返る。

 

「着いたで! ここやここ」

 

アウトドア用品店独特の広めの敷地に、プレハブ調の建物の屋根には『OUTDOOR SPOT Caribou』の文字が映える。

それを見て目を見開いたなでしこが一歩躍り出た。

 

「カリブーってアウトドアのお店だったんだ!!」

「なでしこちゃん、アウトドア用品店来たことなかったやろ?」

「うん!」

「だからテスト明けに行こうって三人で話しとったんよ」

 

友人たちの思わぬサプライズに頬が緩むなでしこ。

 

「なんたってコウタロウはここのヘビーユーザーだからな!」

「そ、そうなのコウくん!?」

「初耳初耳」

 

千明がシュバッとコウタロウの隣に回り込むと、スタイリッシュに彼が財布からスタンプカードを取り出した。デュエリストの如くドローして指に挟む。

 

「ふっ、こういうことさ」

 

そのまま神のカードもかくやと言わんばかりに掲げて見せる。オシリスが来るぞ!!

 

「おおっ!!」

「そ、それはカリブーのスタンプカード……!」

 

なでしこが目を輝かせる横で、ん? と眉を寄せたあおいがそのカードを凝視する。

 

「ってスタンプ一個しか溜まってへんやん。どこがヘビーユーザーやねん」

 

まあ一回しか買い物行ってないしテントも無かったからほぼ何も買ってないので、当然である。

ジト目でメガネ二人を見れば、向こうも二人顔を見合わせた後何食わぬ顔で言った。

 

「あちゃー」

「ばれたかー」

「何やこの二人……」

「いやー、初アウトドア用品店に臨むなでしこを少しでもリラックスさせてやろうとな」

「リラックスて。そんな都会のブティックに入るでもないのに大袈裟な……」

 

呆れ顔であおいがツッコミを入れるのをよそに、ずいっと千明がなでしこに顔を寄せる。

 

「いいかなでしこ! 店内には高額商品が待ち構えている。ヤバいと思ったら速やかに外の空気を吸うんだぞ」

「わ、わかった」

 

何を言っているのかよく分からないが、その雰囲気に気圧されてなでしこが返事をする。

更にずいっと距離を詰める千明。その後ろにはコウタロウ。

 

「ここから先は危険だ。ちゃんとセーブしたか? HPMPは満タンか?」

「武器は装備しないと意味ないぞ。道具は持ち物にいれないと戦闘中使えないからな?」 

「せ、せーぶ……? どうぐ……?」

「さっさと入らんか」

 

茶番はさておき、早速店内に入る一行。

 

高い天井と、広い空間には所せましと商品が並び、一見雑多な印象を受ける。が、空間には余裕があり、手狭さは感じない。むしろ品数が多いことにより、いつ来てもまだ見ぬ品物を発見できるかもというワクワクに満ちた空間が広がっていた。

入ってすぐの店頭には季節にそった注目商品が並び、客を出迎える。

 

そんな中、一際目を惹くのは。

 

「あ、カリブーくんだ」

 

目の前には、大人の背丈を優に超える大きさの二足歩行のトナカイの人形。通称カリブーくんがいた。カリブーブランドの赤いアウターを装備している。

 

会うのは二度目のコウタロウが真っ先に抱き着きにかかるのを、カリブーくん初対面の三人が若干引いた目で見つめる。

 

「コウくん……」

「コウタロウくん……」

「高校生にもなってそれは無いぞコウタロウ……」

 

信じていたなでしこにまで裏切られちょっとショックを受けるコウタロウ。ちなみにリンにも同じような反応をされた。

が、負けじと言い返す。姿勢は変わらず抱き着いたままである。

 

「何を言う。ここに来たらまずカリブーくんに挨拶(肉体言語)するのがマナーなんだぞ」

「んなわけあるかい。騙されたらあかんでなでしこちゃん」

「コウくん……?」

「ヘビーユーザー、ウソ、ツカナイ」

「スタンプすかすかやった人がよく言うわ」

 

ほら行くよと、そのままずるずるとコウタロウはあおいに引きずられ店内に入っていく。なでしこも店内に目を輝かせながら二人に続く。

 

「……」

 

のを、見送るものが一人。

 

「行ったか……」

 

三人が店の奥に入ったのを確認し、周囲に誰もいないことを再三確認すると。

 

「カリブーくん……!!」

 

もふもふの手触りににんまりとする千明だった。

 

 

 

 

「でっけえテントだな……」

 

各々見たいところに散って行ってしばし。

なでしこが小物のキャンプギアのコーナー、犬山達がアウトドアファッションの辺りにいるのを見つつ、あちこちぶらつきながら俺は奥の展示スペースに来ていた。

 

テントやイスなど、実際に大きさや使用感などを確認できるそこで、俺はそのうちのひときわ大きなファミリー用テントを前に、しかしその思考はまとまらず。考えるのは幼馴染のことばかりだ。

 

「入ってみるか」

 

思い出すのは数日前のあの一件。それこそ小さい頃は拙い愛情表現の一環としてハグとかキスとかしていた覚えがあるが、今は互いに高校生である。幼いころとは違う、今になってすることの意味くらいは理解しているつもりだ。

 

なでしこが俺に向ける感情がただの親愛とは違うことも、流石に分かっている。

その気持ちが迷惑だとか嫌だとかは思わない。俺だって彼女に思い入れはあるし、転校先で再会したときは、もしかして運命かな? とか思ったりするくらいには普通の男の子的思考をしている。

 

しかし、高校生にもなって初恋を引き摺っているような俺が、果たして彼女の気持ちに応えられるのだろうか。その資格はあるのだろうか……。そもそも、俺が彼女を恋愛的な意味で好きかというtえなにこれめっちゃ快適やん。

 

「うそ、なにこれ。テント? 本当にテントなのこれ? めっちゃふかふかじゃん。床の硬さゼロじゃん。実家のごとき安心感じゃん」

 

そのあまりの快適さに、珍しくシリアス入っていた俺の思考をよそにごろりと寝転がってみる。

 

「なに…これ……。やだ、これ……。なんか……温いよ……?」

 

駄目だもうこれ俺ここに住むわ。

ここをキャンプ地とする。よし、ブランケット取って来よう。

 

 

なんて。

流石に嘘だ。店の商品でそんなことはしない。

まあ、そうやって誤魔化しちゃう程度には俺も意識してしまってるということだ。しかも当の本人はめっちゃケロッとしてるし! 全然意識してるように見えないし! 俺ってばめちゃくちゃ揺さぶりかけられてる。

 

一応テントからは出て、すぐ隣のロッキングチェアに腰かけてみる。

うお、何だこの座り心地。ここが全て遠き理想郷か……。

 

辺りをきょろきょろして、こちらを認めると抱える程服をもって向かってくる犬山をぼうっと見ながら考えた。

これ……考えても仕方なくね?

何か向こうも全然変わらないし、そもそも俺の気持ちの整理もできてないし、今まで通りでいいな。うん。ヨシ!(現場猫)

 

日本人としての圧倒的事なかれ主義がそう囁いた。

後回しという名の問題解決ができたため、思考はすっきりとクリアだ。うん、今なら何を言われても全力で遂行できるぞ。全力でお兄ちゃんだって遂行できる。

 

そして、男物のコーディネートと思われる服を手に抱えた犬山が到着した。

 

「いたいた。コウタロウくん、ちょっとこれ着てみいひん?」

「着る着る、全力で試着を遂行する」

「全然意味は分からんけどノリええとこ好きよ。ほなこっち来て!」

 

そう言って手を引かれ彼女についていく。

 

買う買わないは置いておいて、俺のファッションセンスは終わっているため、センスのいい犬山コーデは是非とも参考にしたいところだ。むしろありがたい。

 

と、軽く考えて俺は試着室まで行くのだった。

 

 

 

 

 

へやキャン△

 

東京某居酒屋にて。

 

「「かんぱーい!」」

 

カンとジョッキが触れ合う音がして、ビールの泡が揺れる。

そのままの流れるような動きで彼女はごくごくと喉を動かし、やがてジョッキが空になった。酒精のこもる息が漏れる。

 

「まだつまみもないのによくやるなあ」

 

テーブル席の対面に座る昔馴染み、大垣千明に呆れた目を向けた。

酒は嫌いじゃないが、俺は下戸だ。とてもじゃないが一気飲みは出来ない。普通の人間の身体能力は逸脱している自覚はあるが、どうやら神様は肝臓だけは普通並みの強さを与えてくれたようだ。

 

「んにゃあ、この一杯のために生きてるズラ!」

 

纏う雰囲気はすっかり大人になったが、やっぱり千明は千明のまま。

自分の分のお通しが無くなったのを見て、俺の小鉢に手が伸びる彼女を見てそう思った。

 

「にしても、お前が東京のこっちの方に来るなんて珍しいじゃん。なに、あたしに会いに来たの?」

 

いたずらな笑みを浮かべ、俺のお通しをぱくつきながらそう聞いてくる。

こいつの盗人具合にはもう慣れたのでもはや何も言わない。

 

「まあそうだな」

「えっ」

 

目を見開いたきょとん顔で固まる千明。

ぽろりと酢の物がこぼれる…のをキャッチできた。ちょっと行儀が悪いが床に落ちるよりはましだろう。

 

「だってお前、なんか仕事辞めるみたいなこと言ってたじゃん。話でも聞いたろと思ってな」

「そんなんでわざわざ……」

 

昨日電話口で、しかも向こうは酔っぱらってったぽいから覚えてないかもだが。

いくらキャリアアップの時代とは言え、今いる職場環境をバッサリと変える決断や覚悟、そして不安というのは生半可なものではないだろう。

友人としては、何かあったら頼って欲しいというのが本音である。まあもうあおいとかに相談してたら無駄足もいいとこだけど。

 

ふと前を見れば、アルコールのせいか火照った頬で千明がこちらを見つめていた。

あの千明が、ありもしない熱に浮かされたような、そんな表情をするなんて。

 

「……まあ、東京に出た教え子がちゃんとやってるかの確認のついでにな」

 

何だかその視線に耐えかねて、ふいと目線をずらしてそう嘯いてしまった。

すまんひかげ。明日何かおごる。

 

「な、なんだついでかよー! びっくりしたじゃねえかよもー!!」

 

一転していつもの調子に戻ると、席を飛び越えて俺をシメにかかる。

が、普通に返り討ちにあって大人しく席に戻った。

 

「ちぇー、乙女の純情を弄びやがって」

「はいはいすまんすまん。……そんで、もう大丈夫なのか?」

 

頼んだ品が運ばれてくるのを横目に訊ねる。

千明は二杯目のビールを軽くあおると、屈託なく笑った。

 

「ああ、大丈夫だよコウタロウ。もう踏ん切りはついてんだ。再就職先も決まってる」

「そっか」

「うん。ありがとな、心配してくれて」

「まあ友達だからな」

「ああ、そうだな! ……いよーし、今日はコウタロウの奢りじゃー! 飲むぞー!!」

 

……どうやら心配は無用だったようだ。

勢いよくオーダーを始める千明を眺めつつ、ホテルに財布を忘れてきたことをいつ言うべきか悩む俺だった。

 

 

 

 

「そういや千明お前髪型変えた?」

「ん? ああ変えた変えた。だってお前すきだろ? こういうの」

「うん好き」

「ならよし」

「「がはははは」」

 

以上酔っ払いの会話。

 

 





主人公「なでしこの気持ちには気づいている(キリッ)」

なお気付くまでに10数年の月日がかかる模様。


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