本栖高校野外活動サークル△   作:園田那乃多

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五話

一方そのころ、中庭の野クル一行は。

 

「どどどどどうしようコウくんポール折れちゃったよ!?」

「落ち着けなでしこ」

「あわわわわどうしよう守矢あたしのせいでポール折れちまった……!」

「落ち着け大垣別にお前のせいじゃないから」

「守矢くんこれ直せたりせえへんかな?」

「おちつ……犬山は落ち着いてた」

 

唯一のテントの破損にパニックを起こすものが数名。

まさか一度も日の目を見ることも無く、こうも早くにお別れの可能性が出てくるとは、テント側も予想外である。

 

「直すって……折れたとこテープかなんかでぐるぐる巻きにするとか? 絆創膏ならあるぞ」

「流石に絆創膏じゃポールは直らんわ……。てか守矢くん女子力高いな」

「昔はなでしこがよく転んでな。その名残」

「ああー、想像つくわー」

 

あおいは、取り出したハンカチでなでしこの涙をぬぐうコウタロウと自然になすがままにされるなでしこを見て、ほんまに仲ええなあと感心半分呆れ半分。

 

「ほらなでしこ、ちーんして」

「コウくんありがとぉ」

「大垣も。別にお前のせいじゃないからそう落ち込むなって」

「守矢ぁ……」

「二人とも飴ちゃん食べる?」

「「食べるー!」」

 

(完全に保護者や……)

 

二人に金太郎飴を与えているコウタロウ。

その表情は完全に親が子供に対するそれである。

 

「なあなあ、テントどうしよか? 980円とはいえ無くなったら痛手やわ」

「そうだよなあ。メーカーに送って修理しようにも、相当時間かかるよなきっと」

「なんせ注文してから届くのに四か月近くかかっとるメーカーやしな」

「「はあ……」」

 

ただでさえお金が無いというのに、更なる出費の予感にあおいとコウタロウはそろって肩を落とした。

と。

 

「お困りのようだね四人とも」

「お、斉藤」

「斉藤さんや」

「……?」

「どうした? 野外活動サークルと名乗っておきながらテント一つろくに立てられないあたしらを笑いに来たか?」

「あはは、ちがうよー」

 

ちょっと見ててと、先のポール修理用パイプとテープを使い折れたポールの修復を始める恵那の数歩後ろで、リン経由で恵那を知っているコウタロウがなでしこに小声で軽く他者紹介をしてあげていた。

 

「コウくんコウくん、あの子は?」

「俺もそこまで仲いいわけじゃないから詳しくは知らんけど、彼女は斉藤恵那。俺らと同じ一年で、ペットの犬をこよなく愛するやつだ」

「へえー、ワンちゃん飼ってるんだ!」

「頼んだら見せてくれるぞ。あとで聞いてみたらどうだ?」

「そうするー」

 

と、ここでポールの修理が完了。

後ろでハラハラしながら作業を眺めていた四人に、恵那がふわりと振り返る。

 

「直ったよー」

「「「「おー!!」」」」

 

ポールが直れば後は丁寧に組み立てるだけである。

数分も立たないうちに、テントは無事組みあがった。

 

「980円テント、何とか完成ー!!」

「やったー!」

「うおー!」

 

初テントにテンションの上がったなでしことコウタロウが、真っ先にテントに突っ込んでいく。

 

「980円だけどちゃんとテントしてるよー」

「やだこれ…なにこれ…………もう俺ここに住むわ」

「気持ちは分かるが少し落ち着け浜松コンビ」

「さっきと逆やなー」

 

負けじとテントに入り込んて行く千明を横目にあおいは目を細めた。

そのまま横を向くと、にこにこと笑顔の恵那が目に入る。今回のMVPは彼女だろう。彼女がいなければ、まだ使ってもいないテントとお別れする羽目になるところだった。

 

「斉藤さんありがとねー、助かったわ。でも、ようあんなこと知っとったね? テント持っとるの?」

「あ、ちがうちがう。あそこの子に聞いたの」

「「「あそこの子?」」」

 

恵那の声につられ、テントから三人の顔がのぞく。

そのまま指さす方を見れば。

 

(……おい斉藤)

 

図書室のカウンターからこちらを見ていたリンと目が合った。

そして。

 

「あーーーーーーっ!!」

「うお、どうしたなでしこ?」

「あの子! キャンプ場で会ったの!!」

「何ィ!?」 

 

少年少女は、こうして再会を果たした。

 

「おー。しまりんじゃん」

 

同じくリンの方を見た千明が名前を呟けば、食いつくようになでしこが反応した。

 

「しまりん!?」

「ゆるキャラみたいな言い方やめえや」

「志摩は苗字、名前はリンだよー」

「リンちゃん!!」

 

本栖湖で出会った少女の名前を知ったなでしこは、一目散にリンめがけて駆けていく。

 

「リンちゃーーーんっ! 同じ学校だったんだーーっ!!?」

 

なでしこの勢いは止まらない。10数メートルの距離を減速することなく駆け抜け……

 

「この間はありがと――――ぶッ」

 

当然、外と内とを隔てる窓に激突した。

そのままずるするとずり落ちていく様が、図書室からは良く見えた。

 

「な、なでしこォ!?」

 

コウタロウが慌てて駆け寄っていく。

 

負傷した幼馴染をその場で介抱しているコウタロウの様子から、大事には至っていないことが分かる。とりあえずリンを含めた四人は、うずくまるなでしこと患部をさすってあげているコウタロウのもとに向かった。

 

「ふふ、コウタロウくん達面白いね。リンが気になるはずだ」

「「えっ……?」」

 

 

 

 

 

へやキャン△

 

ある日の休み時間。

一年生の階の廊下では、何やら手荷物を持ったコウタロウとリンが対面していた。

 

「この度はなでしこを助けていただきまして誠にありがとうございました」

「なんだこいつ。てかなにこれ」

「まあまあ、そう言わずに取り合えず受け取ってくれって。つまらないものですが」

「ちょっと守矢…!」

「じゃな! また放課後」

「……行っちゃったし」

 

私は走り去って行った守矢をぼうっと見送った後、半ば強引に渡してきた菓子折りを見る。

 

『うなぎパイ』

 

……そういやあいつ出身浜松だっけな。

 

 

次の休み時間

 

「この度は助けていただきほんとうにありがとうございました!」

「……どっかで見たぞこの光景」

「これ、つまらないものですがうちの親が持ってけって。改めて、ありがとねリンちゃん!」

「そんな、キウイ貰ったし……」

「いいから貰って! すっごく美味しんだよそれ! …って、あ!!」

 

次移動教室だったー! と嵐のように去って行くなでしこの後姿をぼうっと見送った後、手渡された菓子折りを見て見る。

 

『うなぎパイ』

 

 

……おいまじか

 

 

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