長い、とても長い夢。たぶん、自分じゃない”彼”の記憶を夢見ている。英霊と契約するとその記憶を夢で追体験できると聞いたことがある。これがそうなのだろう。
「―――――そうか。だから―――は、俺を。助けてくれたの、か」
ノイズが走る。今度は別の景色へと変わった。
「うん、俺も君が好きだ。これが…………恋心ってやつかもしれない」
ノイズが走る。今度は暗闇だ。
「俺は、何もない。俺は存在するべき人間ではない。やっぱり、この世に居るべきじゃない」
本当の暗闇。そこから手が伸びてくる……そして、自分を掴んで―――。みたいなそんな夢。
「本当、何を考えてるか分からないなぁ…………」
そう言いつつも手元にある”時計”をくるくると回しながら時間を潰す。彼が去る前に託した、魔術礼装?聖遺物?なのか分からないモノ。
「もう、居なくなって何か月だっけ?」
時間神殿が年末だった気がするから…………半年以上は経っているか?そう考えつつも次の戦闘の事を考えるべきだと思い思考を切り替える。次は呪いの厄災、ケルヌンノス。
「ヤバかったら呼べ、ねぇ…………大丈夫かな」
独り言をぽつぽつと言いながらストームボーダーの自室で準備運動をする。動くことは無いだろうが、非常事態に備えておくことは良い事である。そのように鍛えられているから。
「空想樹の切除、それはその世界の人たちを殺すこと。だけど、それでも―――」
進まなければいけない。どんな絶望があっても。
「この想いは絶対に曲げちゃいけないんだ。そうだろ、藤丸立香」
ウィィン、と扉が開く。扉の先から出てきたのは、マシュ。
「先輩、準備出来ましたか?」
「うん、出来てるよ。”これ”も調整したし」
この時計は魔力を使う代わりに特別な銃弾が撃てる。早くなったり、遅くなったり見たいな弾が。
「先輩に一つ聞きたいことがありまして…………」
二人で廊下を歩いているとそんなことを聞かれた。突然、どんなことが聞かれるのか少し怖かったが。
「先輩は、どうして。そんなに強いんですか?」
そんな問いにどう答えるべきか………考えているとある答えに行き着いた。
「そうだな…………たぶん、奏のせいだと思うよ」
彼が居てくれれば足を止めなくて済む。彼が居ればどんな敵も倒せる。彼が居てくれればどうにかなる。そう思っていた。だけど、そんなことを頼っちゃいけないんだ。
「頼られっぱなしのマスターもカッコ悪いでしょ?」
そんな人間になりたくはないから、そう思いながら生きてきた。
「私は、そんな先輩がかっこいいと思いますよ」
「絶対そんなことないって………」
そんな話をしていたことまで覚えている。そう、これは回想だ。ただ、ケルヌンノスと戦っている時に呪いについての会話が聞こえた気がした。
「―――――――」
「勝手にそう思ってるだけだろ。呪いが何だ。そんなもの、俺が引き受けてやる!」
確か、そこまで言ったことまで覚えている。記憶がしっかりあるのはそこまで。その次が………
「………あ」
気づいた。気づいてしまった。ここが、とんでもない場所で"とんでもない事"に巻き込まれていたことを。
「あれ?こっちにいる割に冷静だね?もう、諦めちゃった?」
無性にイライラしたので時計を出し、変形させた銃を向ける。それに観念したのかその相手は手を挙げて降参といった感じて笑っていた。
「何をしている。オベロン」
「いや〜。君が案外落ち着いた性格だと思ってたのに怒りそうなのが面白くて……ぷっ!」
煽るのが上手い人間には、話を聞かないのが1番である。無視して周りに誰かいないかを確認しつつ、次に何をするべきか考える。
「助けがいないか探してるの?まさか、ここに来るやつなんているわけないじゃないか」
本当に、そうか?可能性は本当にゼロか?いいや、"絶対"にある。そう信じられる。何故なら。
「もう、見つけたぞ。来い、キャスター!!」
光だ。ものすごい光が目の前に降り注ぐ。終末装置を止める為の抑止力が。
「"異邦の魔術師"との契約に基づき、召喚に応じ参上しました」
まだ、足りない。打倒するにはこれだけではたりないのだ。だから!!
「来てくれ!!〈
彼が言うには天使と言うらしい、謎のナニカ。その大きな時計の長針をもぎ取り、中心に刺す。そして、合言葉は…………
「神代奏は、大晦日と甘いものが好きです…………でいいんだよな」
その言葉を言うと、時計は粉々に消え空間にヒビが入り始める。バキッ、メキッと音が繰り返す。
「来い!!奏ッ!!」
ヒビが広がり、大きな穴となった。”機械的”な手が出てくる。其処から手を広げ、空間を広げていく。
「アァ―――。やっと、だな」
右手と、左足、そして顔の半分をロボットの様な装甲で覆っている彼。それを”いつもの”服装に変えると調子を取り戻した。
「サーヴァント
「久しぶり、と言っては何だけど。戦える?」
「ああ、問題ない。新たな力を試す実験台になってもらおう」
そうして、彼は初めて会うはずのキャスターとも挨拶をするだけで”何か”を感じ取り連携を取れるまでの中になったようだ。
「
そうして二対の剣を持ち攻撃する。一つ言えるのなら、とても”速い”。雷のような音や光が見える。
「いきなり出てきたと思えば…………面倒くさいなァッ!!」
「キャスター、頼む」
「ええ、交代です」
剣を消し、二対の銃に武器を変える。それは先ほどまで自分が使っていた<
「―――――――」
「後ろから撃ってるだけなんて臆病なのかな?」
打つ手は止めない。外さない。もちろん、キャスターに当たらないようにしているし何処にどう打てばいいのかすら分かっているように思える。
「決める、か。夢を終わらせよう」
「それでは。対終末、対粛正防御、はじめ」
なら、こちらも援護に入ろう。そう思い、右手を掲げる。
「令呪を持って命ずる。二人とも、宝具を放て!!」
「異邦の国、時の終わり、なれど剣は彼の手に。城壁は固く、勝どきは万里を駆ける。冷厳なる勝利を刻め──『
「滅せ、滅せ、滅せッ!!
防御を張り、剣で滅する。どうやっても無理な攻撃と防御。それを成し遂げてしまうのが彼……なんだろう。
「ふぅ。終わりっと」
そんな感じで、第六異聞帯を攻略することができた。奏が居たからどうにかなったという感じだろう。それに、急に召喚したから魔力があまりなくてストームボーダーに戻ったとたんに寝てしまった。奏にお礼が言えなかった、そんなちょっとした後悔を残して。
「はっ?へぇ?」
「驚くのも無理もないさ。”急に”現れたのさ…………これが」
次の日。起きた所でダ・ヴィンチちゃんに呼び出され部屋に行くと、驚くべき光景が広がっていたのだ。
「”日本”の中心が…………」
「そう、恐らくだけど東京の辺り。そこに、急激に魔力反応と”空想樹”の反応が現れた。このままだとこっちに異星の神が降臨してしまう」
日本の中心が、ぽっかりと黒い結界の様な物で覆われている。薄く見える結界の中は”枝”の様な物が三本絡まり合い一つの樹となっているように見える。この原因は、一体なんだろう?
「だから、本日から此処。仮称”日本異聞帯”として攻略する。いいかい?」
「うん、分かった」
そう、今までの俺達なら。できると思った。だけど一つだけ違和感があった。
「――――――」
「奏?」
返事がない。肩を叩いても揺さぶっても返事がない。息はしているし、瞬きもしている。
「――――あ、悪い。考え事してた」
様子がおかしい。絶対に何か隠している。そう、思った。
「今回の攻略は、俺は、いけない」
「はっ?」
「多分、俺は”弾かれる”。あの結界に弾かれる」
弾かれる?結界に?どういうことだろうか?
「だから、今回はマスターだけで頑張ってくれ」
そうして、スタスタ歩いて行ってしまった。どうして、そんな感情が渦巻く。