「全て、否定した。全て、破壊した。全て、俺の―――せいだ」
「そんなことは無い。お前が抱え込む必要はない」
彼が、此処まで抱え込んだのは。何が理由だろうか。
「俺は、あの”世界”で何度繰り返したか。救い続ける為に。すべてが終わった後に俺はこの世界に居た。そして悟った。俺は救う人間ではなかったと」
「じゃあ、貴方は」
「”この世界ではない”俺。神代奏・オルタナティブとでも名乗っておこうか」
オルタナティブ、別側面。そんな面を彼が持っていたとは考えられない。
「お前も知っているはずだ。俺がどれだけ嘆き、悲しんだか。人間は、何もできない」
「ああ、知ってるさ。何もできないなりに人間は生きてるんだ」
互いに武器を構える。セイバーは刀を、オルタは禍々しい大剣を。
「マスター、援護を頼む。こいつはあんたらが戦った奴らよりもはるかに強い」
「ここで全て、破壊してやるッ!!」
爆風と共に戦闘が開始された――――
――――――――――――――――――
「行かなくて、本当に良かったのかい?」
「確かに、”行ける”には行けるが。個人的な理由で行きたくなかったんだ」
「君のその”行きたくない理由”がとっても気になるなぁ…………」
気になると言われると言いたくなくなるのが人間の性、といった所か。
「今の所、彼のバイタルは安定しているし。問題ないから大丈夫さ」
「そうか……じゃあ、部屋に戻っておくよ」
「自分を見失ってはいけないよ。君は、君のしたい事をすればいい」
後ろからそんな言葉を言われて振り返るとにこにこしながら、手を振っている技術顧問は一体何なんだ。
「自分がしたい事、ねぇ」
「我が道の征くままに、希望を目指す。それが良いのだ」
「うぉっ、どっから出てきた」
部屋に戻ると後ろに巌窟王が佇んでいた。本当にどこから出てきた?
「ふっ、俺は何処からでも出てくる。そして、何処からでも消える」
「で、何をしに来た」
「貴様を導きに来た。今のお前は、共犯者が監獄搭に来た時の様になっている」
まあ、そんな事だろうと思ってもいた。俺が心に残っている後悔、傷。
「お前は深刻に考えすぎている。ただ、前を向け。そして進め。さすれば希望とならん」
「深刻に考えすぎ、か。そして、自分のしたい事か」
「まて、しかして希望せよ」
そう言って彼、巌窟王は闇となって消えていった。ただ、彼の言った言葉が頭に残って。
「…………」
ただ、救いたくて。幸せになって欲しくて。生きていてほしくて。だから、史実と違う物語を紡いだ。本当に”彼ら彼女ら”は幸せだったのだろうか。
「覚悟が足りてない。立ち上がる気力もない。諦めるしかない」
そんな風に言われようとも立ち続けた。諦めまいと前を向いた。命が削れようと力を使った。
「―――――まだ、終われない」
終れない。もう一度会うまで。そして、あの世界に戻る為に。
「行くか……
――――――――――――――
「禍津曼荼羅、開放」
「このままだと、ジリ貧か」
何時間戦っただろう。途中、何度か死にかけたがスパルタな練習などのお陰で今を生きている。訓練をしていてよかったと思った瞬間である。
「煉獄、凍土、雷鳴、暴風」
「――――斬」
一進一退の攻防。ただ、魔力供給をしているだけなのに恐ろしい殺気を感じる。
「諦めないな、お前は」
「諦めが悪い事で有名だったことを知ってるだろ?」
ペースが上がる。人間では見えない領域まで戦いを続けている。しかし、そうはいっても攻撃の余波が自分の所にも飛んでくる。
「次、何処に居ようか…………ふっ…………」
走りながら街を駆ける。と、いうよりもこの場所自体が町であることに気づけないほど崩壊し始めている。
「「ハッ!!」」
爆風と共に周囲の物が全てどこか遠くへと飛ばされていく。もちろん、自分も。
「受、け…………身っ!!」
何とか受け身を取りつつ爆心地を見る。砂埃ではなく岩埃と言った方が良いほど岩が舞っている。
「これでも、死なないか」
「痛ぇなぁ!!久しぶりに昂りそうだ!」
このままこの感じか、何か来るか。決定打が欲しい。この状況を打破できる何か…………
「斬り裂け、風の如く」
「ッツ…………!!」
背後から剣を振る音と共に風が発射された。風よりも旋風の方が正しいだろうか。
「何故、こちらに来た」
「全てを、救いに」
そうして後ろの何かが前に出た。
「奏…………」
「遅いぞ。何分の遅刻だ?俺じゃなきゃキレ散らかしている所だぞ?」
サーヴァントが来れない場所になぜ彼が居るのか、それも疑問だがとにかく目の前の事に集中する。
「後は任せておけ。まあ、お前には付き合ってもらうが」
「分かってるよ。じゃあ、行こうか!!」
これが、彼の思い。これが彼のやりたい事。
―――じゃあ、君に託す。だから、どうか、幸せになって―――
「そうか、そういう事だったのか」
ただ、自分のやりたいことをすればよかっただけ。それが、俺なりの”救い”。
「霊基”
「なんだ、それは」
「ただ、自分がしたい事を。ただ、自分が正しいと思ったことをすればいい。それが俺だ」
救世のクラス。滅びが向かう世界にただ一人降臨する最強の従者、サーヴァント。
「今のお前は、前の俺だ。だから終わらせよう」
「マスター、離れるぞ」
「え?」
体を抱えられて、空を飛ぶ。逃げなければいけないほど危険になろうとしているのだろうか。
「一つ、私は傲慢であった」
「二つ、私は嫉妬であった」
「三つ、私は憤怒であった」
「四つ、私は怠惰であった」
「五つ、私は強欲であった」
「六つ、私は暴食であった」
「七つ、私は色欲であった」
彼の背中に七つの黒翼が展開される。彼が唱えるのは七つの罪。
「
「っつ――――――」
撃った。撃った瞬間に恐ろしい爆風と禍々しいオーラ。これは周りに居た場合死ぬ。
「がっ…………あっ…………」
「なあ、もう終わりで良いだろ」
大剣を地面に突き刺しよろよろとしながらも立っているオルタ。そこまでしてもこの世界で。
「もういいのよ、後輩」
「せん、ぱ、い。なに、しに…………」
此処からは自分たちも手を出さない方が良いだろうと思い後ろに下がる。
「あんたは、寝ていい。疲れたでしょう」
「でも、貴方を…………」
「いいのよ。あんたの事も好きだから、二番目よ。泣いて喜びなさい」
こっちの世界ではこんな関係だったのか、と思う。
「そ、う…………ですか」
「ええ、お疲れ様…………ん」
口づけをした。そうして彼は優しい笑顔を浮かべながら彼は消えていった。
「…………この先に研究室があるわ。其処に行きなさい」
「先輩は、何処に」
「何処でもない世界に、旅に出て…………人を理解する。そんな旅よ」
そうして、彼女も黒い霧となって消えていった。
「ふぅ……終わったな。そっちもお疲れ」
「うい、お疲れー」
その関係性に疑問を持ちつつも彼女が言った研究室に向かう。
「―――――俺の家の資料。しかも、かなり昔の」
「神代家の年表、家系図まであるな」
この部屋を漁ればあさるほど何かしらの情報が出てくる。それはすべて彼に関係することばかり。
「ん?なんだろうこのスイッチ」
「―――――、天宮市。成程な」
「そのスイッチを押してくれ」
押す。ピピッと音が鳴り地鳴りが聞こえ始める。何処かの扉が開いた…………いや、画面には結界解除と書いてある。
「ああ、もう一度会うのか。彼女たちに」
「それと、俺も時間らしい。多分会うのは、かなり先だろうけど」
よく分からない会話が話されているが、一先ず全てを受け入れる。
「そうか、じゃあ”あれ”やるか」
「分かった」
―我、この剣に誓う。我が友と離れようと、心はこの剣の元に在り―
「じゃあ達者でな」
「おう、また会おう」
そうして藤丸立香の特異点修復は終わりを告げる、はずだった。
「そうして開放したのはいいけど…………その先も特異点。いや、空想樹並みの反応を感じる」
「原因は俺です、スミマセンデシタ」
謝罪をしている奏を見て、いつもより明るくなったと感じる。いや、”素”が出始めたのだろう。
「うんうん、謝罪できるのは良い事だ。まあ、とりあえず今日は疲れただろう。部屋でゆっくり休むといい」
部屋に戻り、伸びをする。一日中走るというのもかなりハードだなと感じ始める。いや、体力馬鹿になった事が恐ろしい。
「で、俺に聞きたいことがあったんだよな?」
「その、”天宮市”について」
「―――――。長い話になるが、良いか」
長い話。まあ、マーリンの王の話を聞き続けた自分にとっては楽な物だろう。
「マーリンみたいにはいかないが、話そう。これは」