転生したからとりあえずハッピーエンドに導く   作:零之悪夢

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さあ、追憶を始めましょう?


追憶〈戦争〉
原作第1巻 十香デットエンド?


――息を呑む。それは、あまりに非現実的な光景だった。消しとられたかのように破壊された街並み。隕石でも落ちてきたとしか思えない、巨大なクレーター。空を舞う、いくつもの人影。全てが夢か幻としか思えない、馬鹿げた景色。だけれど【彼】は、そんな異常な世界を、朧気にしか見ていなかった。――そんなものよりもはるかに異常な物が、【彼】の目の前に会ったからだ。

 

それは、少女だった。奇妙な”闇のドレス”を纏った少女が一人、立っていた。

 

「ぁ――――――」

 

嘆息に、微かな声が混じって消える。他のどんな要素も不純物に成り下がってしまうくらいに、その少女の存在は圧倒的だった。

 

金属のような、布のような、不思議な素材で構成されたドレスも確かに目を引いた。そこから広がった”闇のスカート”も、気を失うほどに綺麗だった。しかし、彼女自身の姿容は、それすらも脇役に霞ませる。肩に腰に絡みつくように煙るは、長い”黒闇色”の髪。凜と蒼穹を見上げるは、何とも形容しがたい不思議な”黒色”を映す双眸。女神にさえ嫉妬を覚えさせるであろう貌を物憂げにゆがめ、静かに唇を結んでいるその様は。

 

視線を、注意を、心をも、――― 一瞬にして、奪い去った。それくらい、あまりにも、尋常でなく、暴力的なまでに(・・・・・・・)美しい(・・・)

 

「――君、は……」

 

呆然と。【彼】は、声を発していた。瀆神としてのとど目を潰されることすら、思考のうちに入れて。少女が、ゆっくりと視線を下ろしてくる。

 

 「……名。か」

 

心地のいい調べの如き声音が、空気を震わせた。しかし。

 

 「――そんなものは、ない」

 

どこか悲しげに、少女は言った。そんな少女が、”美しくて”、”救いたい”と思ってしまった。

 

 「―――――っ」

 

そうして、”三人”の目が交わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

起床。何時なのかを確認するため携帯を探す。ベットの枕の近くに置いていたはずだが。

 

 「…………どこだ。下、か」

 

眠い目を擦りながらベットの下を覗くと案の定、携帯を発見。時刻を確認する。AM5:00。

 

 「起きないと、か」

 

洗面所で顔を洗い、動きやすい服装に着替え、外に出る。今日から”高校2年生”だが、いつもと同じ日課をこなす。

 

 「ふっ…………ふっ…………」

 

走り、走り、走る。長さ的には町内一周程度。何百、何千とやって来たので丁度良い汗を掛ける運動になっている。

 

 「戻ったら、シャワーを浴びて、ご飯を作って…………」

 

家に戻った時にやるべき事を頭の中でリスト化、優先順位を決める。そうして、その順番の通りにリストを消化していく。

 

 「7時か。そろそろ出ないと………の前に」

 

家にある物の確認、在庫が足りているかを一つずつ見ていき、足りないモノをパソコンで注文。配達予定日は一週間後に設定して、完了。

 

 「そろそろ出ようか」

 

家を出て、扉を閉める。そして看板を「CLOSE」から「OPEN」に変える。そう、俺の家はカフェ<Grand Order>。其処の経営を行っている。

 

 「よっ、今日も起きられたか?」

 

 「まあ………若干、身体が痛いけど」

 

そう、【彼】は五河士道。ライトノベル<デート・ア・ライブ>の主人公でありこれから精霊をデレさせ、救っていく主人公。そんな物語に俺は感動した。だけど、救っても消えてしまう、そして本当に救えなかった精霊がいる。それを全て救いたくて。

 

 「おーい、大丈夫か」

 

 「うん、問題ない」

 

そうして、歩き始める。なぜ、こう思ったのかには理由がある。俺こと【神代奏】は転生者である。転生した時の記憶は”無い”が特典と思わしきものは持っていた。

 

 「――――――」

 

ひっそりと、起動する。体中に在る”魔術回路”をフルに。起動に問題無し。確認できたのでそっと解除。俺が持っているものは型月世界における魔術、サーヴァントの宝具、技術。おそらく、スキルなども含まれていると考えられる。試しに陣地作成をしてみたら恐ろしい事になったのは苦い思い出だ。

 

 「俺達も高校2年かー。琴里も心配してるし、身を固めるべきなのかね…………」

 

 「じじ臭いぞ。彼女を作るに訂正しろ」

 

そんな高校生がするわけがない会話をしながらこれからの事について予想する。おそらく、今日4月10日に第十精霊(プリンセス)に出会う……なのだが予想外な事も起こっている為、注意が必要である。

 

 「五河、五河…………ここか。今年も奏と一緒のクラスだな」

 

 「運命力ってやつか?そういうオカルトは信じないたちなんだが」

 

そんな話をしていると、他の友人などと話ながら教室へ向かう。そうして自分たちの席を確認する……確か、原作では士道が窓側の一番後ろだったはず。そうして席順を見てみると、士道は予想通り後ろで、その前が俺というあからさまに仕込んだとしか言いようがない席順だが。

 

 「今回も同じクラスだね。宜しく」

 

 「ああ、宜しく」

 

今回の予想外その1。鳶一折紙の違いだ。この鳶一折紙は”髪が長い”。要するに、原作第11巻の世界改変後の鳶一折紙、識別名<デビル>の可能性がある。もしくは<デビル>ではなく、<エンジェル>の可能性も有るが、恐らくは反転体。その事実に頭を悩ませながらも今後の事に思考する。

 

 「――――でな、奏が…………」

 

 「そんなことが…………」

 

後ろの会話に耳を傾けながら今後の展開を整理する。並列思考というものができるようになったのは死ぬ前からだが、かなりの練習を必要としできるようになってからはかなりの疲労蓄積があるのでやらない事の方が多かったが、こちら側の世界に来てからは特に疲労を感じなくなった。体も作り変えられていると言う事だろうか。そんな事も考えつつホームルームを聞き流す。時間が経つのは早い。先ほどまで後ろで話声がしていたと思えば、ホームルームである。

 

 「そろそろか…………

 

恐らく、空間震が発生するはずだが……今のうちに姿を消しておくか。

 

 「――――――」

 

ホームルームが終わったと同時に教室からそそくさと出ていき、誰も居ない事を確認して、認識阻害の魔術を自分に掛ける。そうして学校から出て手ごろな高層のマンションの屋上に向かって”飛ぶ”。

 

 「あ、連絡、連絡…………」

 

携帯をだして”ある人物”に連絡を入れておく。これで準備は完了。後は士道がこの辺りに来れば始まってくるはず。

 

 「平行世界…………別の世界線。IFのIF、か」

 

この世界、全てが俺の知っている物語(ストーリー)かもしれないし、そうじゃないかもしれない。最善な選択、好感度管理、やることは多いようだ。

 

 「…………先が思いやられる。どうしたもんかな」

 

まず、今回の精霊…………あえて、”十香”と呼ぶとASTには所属していないが”精霊”に反応して折紙、<デビル>がこちらに向かってくる可能性も考えられる。攻略対象でもあり、敵でもあるのが難しい所であるが。

 

 「来たか。さて…………どうしようか」

 

”こちらの準備”も完了。しかし…………

 

 「どうして反転体なんだーー!?意味不明だろ!!」

 

予想外その2。プリンセスが最初から反転体。士道大丈夫かな……

 

 「やべぇ!!斬られる……」

 

そうして、彼の前に”跳んだ”。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

一閃。動いていたら首ごと斬れていたであろう斬撃を躱さなかった自分を褒めて欲しいくらいだが、正直足がすくんでいる。これ以上やられたら死ぬ。

 

 「ほう、肝は座っているようだな」

 

 「そう、か?正直、足、ガクガクなんだが…………」

 

ふっ、と笑う彼女はその身の丈に合わない剣をくるくると回して持ち直す。その剣先を俺の首に沿える。

 

 「―――――、君、は。どうしてそこまでして、戦うんだ」

 

 「私は闘う事でしか、生きられない」

 

そんな悲しい顔を見せないでくれ。そんな絶望している顔を見せないでくれ。そんな顔をするくらいなら―――

 

 「辞世の句はそれで、いいか」

 

 「え、ホントに殺るの?」

 

 「勿論だが」

 

ヤバい、ヤバい。どうすればこの状況を切り抜けられる?打開する方法は?回避する?体は動くか?と考えていると彼女の後ろから”空を飛ぶナニカ”が斬りかかってきたのが見えた。

 

 「危ないッ!!」

 

彼女を護るように手を引いて後ろに下がらせた。まあ、これだったら彼女も大丈夫だろう。短い人生だった…………

 

 「投影開始(トレース・オン)、干将・莫邪」

 

何者かが”二対の剣”を持って俺達を護るようにその攻撃を弾き後ろに下がらせた。

 

 「危ない、危ない…………最初からミスるところだったな」

 

 「か、なで?」

 

 「はいはい、貴方の奏ですよー」

 

そんな冗談を言えるような状況でもないにもかかわらず、彼―――奏は前を向き剣を構える。

 

 「まあ、俺は”闘う”専門じゃないし……後宜しく、巌窟王(アヴェンジャー)

 

 「クク、クハハハハハァァ!!」

 

 「え、はぁ!?」

 

脳が理解することを拒否している。今、目の前の光景がすべて夢のように感じるほど信じられない事が起こっている。

 

 「まあ、ネタ晴らしするか。―――――顕現しろ、理想郷(アヴァロン)

 

その言葉を聞いて俺の意識は闇にのまれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

その場所はくそったれ(マーリン)が存在している場所、永久に閉ざされた理想郷(ガーデン・オブ・アヴァロン)。秘密の花園。

 

 「…………ん。ここは」

 

 「ようこそ、アヴァロンへ。まあ、聞きたいことがたくさんあると思うから好きに聞いてくれ」

 

【彼】、五河士道は色々なことを質問し吸収していった。恐らく、原作よりか頭の回転が速くなっている―――まあ、鍛えたんですけどね。

 

 「聖杯戦争―――英霊―――。そんな世界が…………」

 

 「だから、”闘う専門”じゃないって言ったんだ。まあ、こんな英霊だけどな」

 

そう、自分は恐らく英霊になっている。人間の皮を被った何か。それに気づいたのは中学生の時。分身―――巌窟王の宝具で分身しているのを思い出し、実践できるかやってみたら本当にできた。それを利用し、今日まで<神代奏>と<エドモン・ダンデス>という二人で生きてきた。そうすることでメリットもあった。要するに”自分”が二人いるのだ。二人いることで戦いながら相手の事を分析できるし、二手に分かれることがあってもどちらかに影で移動することもできる。デメリットよりもメリットの方が勝っていることからこういうややこしい事をしている。

 

 「後、聞きたいことは?」

 

 「特に、無いかな。まあ、かなり驚いてるけどな」

 

そうか。その”目”は…………そういう事でいいんだろうか。なら、もう覚悟は決まっている。

 

 「じゃあ、【五河士道】。君に問う。どんな理不尽があろうとも、どんな絶望が待っていようとも、君は<あの子>を助けたいかい?

 

 「―――――――」

 

 「生半可な物じゃあ、駄目だ。本気で、命を懸けて、救いたいと、思うかい?

 

君の事だろう、どうせ答えは分かって居る。かなりの付き合いだ、命を懸けても”救いたい”んだろう。

 

 「ああ、やってやるさ。絶対に救ってやる。俺が、どうなっても」

 

 「ここに、契約は成立した。君を(マスター)と認めよう。サーヴァント、神代奏。君の願いを叶えよう」

 

【彼】の”左手”に令呪が刻まれた。令呪の形は三つの花。何の因果かは知らないが”そういう事”なのだろう。

 

 「さて、『精霊を救う物語』を語るとしよう――――

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

意識を失い、奏と話をしたことまで覚えているが一体どうなっているのだろうか。

 

 「貴様、何者だ。何故、私の獲物を取ろうとする」

 

 「何、君の隣に居る奴を護る為さ。と・に・か・く、こいつとお話しててよ」

 

恐らくあの場所で話をしていた時間は”こちら側”では一瞬。だから、意識を失う前の景色と何も変わらない。

 

 「はぁ!?お話!?大丈夫なのか!?」

 

 「まあまあ、いけるいける。アヴェンジャー、右に避けてストレート。そのまま気絶させちゃって」

 

無慈悲、冷酷。命令しているだけなのに何処か歴戦の指揮官を思わせる。”やり慣れている”と言った方が良いか。

 

 「ふむ…………どう、殺そうか。普通に斬るか…………?細切れにするのも良いな」

 

 「殺し方で迷ってるんだ…………」

 

そう言いながらも彼女を横目で見る。顔立ちは整ってるし、髪も手入れしているように見える。普通の服を着たらどうだろうか…………クール系なのか可愛い系なのか。うーん、悩ましい。

 

 「何を考えている、人間。よそ見をしている場合か」

 

 「えっ…………あばっ…………」

 

何かの流れ弾が顔面を直撃。そのまま床に叩きつけられもう一度意識を失う事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 「あっ、ミスった」

 

攻撃の余波が士道に直撃。そのままぶっ倒れた。

 

 「おい、この人間どうするのだ」

 

 「あっちゃー。気絶しちゃったか…………まあ、どうにかしておくよ」

 

綺麗な直撃、芸術点を含めて満点と言いたいところだが…………でも、彼女―――<プリンセス>は彼の事を気に入っているようだ。

 

 「こいつを動かせるようにしておけ……私は眠る」

 

 「はいよ。”また”な」

 

彼女は光の粒子となって消えた。しかし、【彼女】は【彼】を悲しそうに、見つめていた。

 

 「で、そろそろ転移が始まるような、始まらないような」

 

 「……………………」

 

 「相変わらず意識は無し、っと」

 

肩に士道を担ぎこの後の行動を考える。この先の展開では…………フラクシナスに転移され、精霊について説明を受けるはずなのだが。

 

 「―――――――帰る、は無いな。多分、そろそろ」

 

サーヴァントスキル<直感>。それが備わっているので何か起ころうとすると感じるのだ。

 

 「まぶしっ…………」

 

急に光に包まれ目をもう一度開くと、機械的な場所で配線が所々見られる。ここがあのフラクシナスなのだろうか。

 

 「で、説明してくれるんでしょうね?【奏おにーちゃん】?」

 

 「あいよ…………とりあえず、コイツをベットに置いてからでいいか」

 

 「ええ。令音、士道をベットに寝かせてあげなさい」

 

そうして後ろから出てきた”彼女”と目を合わせた。自然な動きだが、目が動揺しているのが分かる…………まあ、何年ぶり何だろうな。

 

 「どうしたのよ、じーっと令音を見つめて」

 

 「………昔の、友人に似てただけだ。すごく」

 

 「ふーん。あんまり聞かないでおくわ」

 

そうして会議室らしき場所に通され、二度目の説明を彼女―――【五河琴里】にした。彼女との関係性は姪っ子みたいな?感じである。

 

 「………魔術、ねぇ。<顕現装置(リアライザ)>を使わない”魔法”か。そんなものがこの世に存在するなんてね」

 

 「実際に見ただろう…………まあ、俺よりも”魔法使い”している人は居るけど」

 

時計塔の厄介者と呼ばれる”魔法使い”には及ばないが、そこそこ戦える自信はあるしいざというなら宝具を展開して一掃も出来る。

 

 「士道と契約を交わしたって言ってたけど、それにデメリットとかあるのかしら?」

 

 「特には無いな。まあ、左手は隠さないとだけど。後は………魔力を消費すると疲れるってことくらいか」

 

彼女には俺とエドモンが同一人物であることは話していない。要するにマスター二人体制で一人のサーヴァントを使役していると言う事になる。現実的に不可能ではない事も説明済みだ。

 

 「本当に厄介事が多すぎるわ………最初から反転体だなんて」

 

 「一つ聞きたいんだが………精霊は今確認できるところで何人いるんだ?」

 

そうして情報交換を行った………予想通り、<デビル>の存在を確認。そして、現在確認できるのは<プリンセス>、<デビル>、<ハーミット>、<ナイトメア>、<ベルセルク>、<ディーヴァ>、<ウィッチ>が確認できているという。ふむ、案外ラタトスクという場所はかなり実用性が高いと言える。

 

 「でも、士道は………最初から怖がらなかったわね。何かしたの?」

 

 「鍛えた。と言っても人並みにだけどな」

 

 「鍛えた、ね。一般常識も叩きこんだのかしら?うちの駄目兄だからそう言うのも勉強してないと思うし」

 

その他諸々の必要な事をかなり前から叩きこんでいるし、実行できている。最初から強い………強くてニューゲームという感じだ。

 

 「ちゃーんとやってますよ。貴方達が目標としていることは直ぐに実行できますよ」

 

 「まあ、こっちとしてはありがたいわ。なーんか”手の上で踊らされている”ようで気持ち悪いけど」

 

 「言わんお約束だぞ、琴里。さて、そろそろ目も覚めた頃じゃないか?」

 

その後は―――原作通り、と言いたいところだが【彼】はすぐさま承諾した。その目は覚悟に満ちていて、誰かに意見去れようとも曲げない意思を感じる。

 

 「俺が居るから、なのか。それとも心境の変化なのか。まあ、前向きだから悩む必要もないか」

 

家に戻り関係性の整理や、情報の整理を自室にあるホワイトボードに書き込む。そうして考えていると分身がこちらにやって来た。

 

 「……今回戦ったのは、陸上自衛隊とDEMの魔術師の様だが、どうする」

 

 「もう、動き出していると言う事でいいか。じゃあ、行動開始中………っと」

 

あの社長も目を付けている。そうするとあの”魔術師”がこっちに来ることになるんだが………

 

 「難しい………とても難しい。どうしたものか」

 

 「どうしたものか、だな。こちらとしては好ましい方向へ向かっているのは確かだが」

 

しかし、この先の展開を読むことは困難を極める。どうしても原作通りと行かない場合もある。なのでこれ以上考えるのは無駄か。

 

 「明日になってみないと駄目か。明日起こることで今後を決めるとしよう」

 

そして眠りについた…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、いつも通り。起きて、学校に行って、この後の事を考える。特に士道の事を考える。次にどう対処したらいいのか、どうすべきかをアドアイスしなければ【彼】は死ぬ。だから俺が居るんだろう。

 

 「なんで、”狂ってる”んだろうな」

 

時間、概念、全てが俺の見てきた”世界”とは違う。これが”作られた”物なら誰が、何のために、やったのか。娯楽?それとも愉悦?

 

 「まあ、そんなことを考えても仕方ないか」

 

そんな考えをとにかく忘れる。それよりも前を向いて歩きだすことが大事だ。目の前の事象から目をそらさず、向き合う。それが、”神代奏”。

 

 「行くか―――――」

 

歩き出す、『戦場』へ。これから起こる事が知らなくても俺は前に進む。

 

 「士道、出番だぞ」

 

 「ああ、頑張ってみるよ」

 

今日の朝に”頼んでいた”物を引っ提げ、学校の自分の教室へ歩き出す。後は彼に任せておけばいい……後は邪魔者を”入れない”様にするだけだ。

 

 「屋上で待ち伏せ、かな」

 

階段を上る。誰も居ない学校の階段を。さっきまで学校が賑わっていたはずなのに。まあ、昔に学校に肝試しに行ったなぁ…………という記憶を思い出しながら扉を開ける。

 

 「司令官殿、ポイントαに着いたよ」

 

 「こちらでも確認したわ。後は宜しく、魔術師さん」

 

 「了解、通信終了」

 

右耳に装着したインカムを外す。何故か俺にも渡された。まあ、こういう事が出来るからと言う事だろう。

 

 「おっ、やってる。良い感じだな」

 

秘策その1。食べ物で釣る。【彼】の料理スキルをふんだんに使い作らせたサンドイッチ。これだったら健啖家である【彼女】はイチコロだろう。

 

 「来てくれないのが一番なんだがなぁ」

 

今日を振り返ると特に何もなかったと言える。本来であれば折紙に注意されるはずだがそれも無し。その時間で対処方法を練ることができた。

 

 「………かかった。まずは一人」

 

空中、地面に睡眠を促す魔術の罠を大量に設置しており普通の人間ならこれで対処できるはずだが。

 

 「まあ、普通の人間だけじゃないよなぁ。これ」

 

何人か引っかかってはいるが………喰らっても何も感じない奴らが居るらしい。

 

 「さて、お仕事と行こうか!」

 

罠が効かなかった場合、こちらの方法で沈める。思い描くは”M40”を。

 

 「結構いけるもんだな………ジャミングにしてっと」

 

普通なら7.62×51mmだが、自分で作ったその弾はジャミングを仕込んだ為、撃たれた対象は顕現装置の強制解除、機体不良が起こる。

 

 「――――――――」

 

一発、二発、三発、四発…………

 

 「――――――――――」

 

五発、六発、七発、八発…………

 

 「――――――――――ッ!!」

 

九発、十発、十一発、十二発…………

 

 「―――――リロード」

 

十三発、十四発、十五発、十六発…………

 

 「―――――殲滅、完了っと」

 

外しかけた所もあったがサプレッサー装備だったので気づかれることはほぼなかった。まあ、”やったことがあった”から別にいいが。

 

 「司令官ー。こっちの足止め終ったけどどうする?」

 

 「………とりあえず待機。何かあったら連絡するわ」

 

 「あい。切るぞ」

 

引いてるなぁ…………まあ、”一般人”からすればだけど。周りがちょっと逸脱しすぎてるから忘れていた。

 

 「あー。聞こえてるか?」

 

 「何だ。急に………トラブルか?」

 

 「名前、どっちが良いかな、って」

 

と急にインカムから士道の声が流れてくる。よく分からん機能であっちのインカムとこちらのインカムが通信できるように設計されていた。まあ、便利だからいいが。

 

 「候補は?」

 

 「十香か……天香」

 

 「―――――天香にしよう」

 

名前を決める所まで行っていたらしく、名前はどれが良いかという選択がこちらに来た。まあ、【彼】の事だったので同じだろうと思っていたが本当にそうだったので驚きを隠せない。

 

 「ああ、俺もそっちが良いと思ってた。じゃあ、それにするな」

 

通信が切れる。今世紀で一番疲労がたまった気がする…………

 

 「聞こえるかしら………戻っていいわよ」

 

 「はいよ。回収宜しく」

 

 「ええ、転送するわ。士道の方も上々かしらね」

 

そうして名前を付けることに成功したのだが…………半分以上は”食事”に釣られていたと言う事だろうか。後から話を聞いた所かなりの量を食べたらしく、予備がいつの間にか消えていたという。

 

 「健啖家で大食いか…………困ったもんだなぁ」

 

食費が!!五河家と神代家の食費が圧迫される!!良心の呵責に苛まれる!!

 

 「領収書…………切って琴里に払ってもらおうかな。これ…………」

 

金額、およそ3万円。そこそこ良い食材を使ったので高かったのは目に見えているが…………そんなに食うか。

 

 「在庫、増やすかなぁ…………」

 

喫茶店で買う量では無いが…………仕方あるまい、此処で有効になるのがサーヴァントスキル<黄金律>。じっとしていてもお金が手に入るチートスキル。

 

 「とにかく貯金だなぁ…………」

 

そんな事を考えながらまた眠りにつく。【彼】と【彼女】に訪れる幸福を祈りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

昨日の【彼女】の現界が静粛現界だった為、学校が犠牲になることは無かった。時間のずれがありそうだが。

 

 「ア゛ア゛ア゛ァァーー。学校終わったぁ」

 

 「そんなガラガラ声で何話してるんだ」

 

昨日中々寝付けなかった士道の声は若干枯れている。一体何を考えていたんだか。

 

 「今日の晩御飯は………見てからだな。安いやつあると良いけど」

 

 「そう言えばセールあるんだったか?行ってみる………か」

 

そう言って校門を出ようとした時、目を引いたものがあった。”来禅”の制服でありながら、綺麗な顔立ちに黒い長い髪。

 

 「待っていたぞ。さあ、昨日の言ったデートやらをするぞ士道」

 

 「おおう…………ちょっと、待っててな」

 

そうして俺と目を合わせて会議をしようと促してきた。

 

 「どうする…………天香が急に出てきたからデートするしかないのか?」

 

 「そうだろうな…………連絡は俺からしておくから、行ってこい」

 

そうして連絡を取る為に携帯を取り出しコールする。多分出るだろうが…………

 

 「もしもし。何か用かしら」

 

 「ちょーっと困ったことになってな」

 

そうして電話した相手―――琴里に事情を説明した。まあ、あれが来るはずなんだが。

 

 「ええ、分かったわ”こっちで”準備しておくから商店街の方へ向かって頂戴」

 

 「りょーかい。切るな」

 

電話を切り行くべき場所を士道に伝える。さて、二人に任せて俺は先回りをして敵の殲滅を…………

 

 「お前も来い、奏」

 

 「ええ!?俺も!?」

 

歩き出そうとしたところで天香に首を掴まれ強制的に連れていかれる。これはこれで恥ずかしいのだが。

 

 「分かった…………お前に付いて行くよ」

 

 「ああ、私に付いて来い。行くぞ士道」

 

 「………ああ」

 

そうして精霊一人と男二人のよく分からないデートが始まった―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これは、何だ」

 

 「きなこパンだな」

 

 「食うか?買ってくるけど」

 

きなこパンフラグ。彼女は原作だとツナマヨおにぎりが好きなはずだが。

 

 「うむ、うまい。これはハマる味だな」

 

普通に喰ってる。マジ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――――――!!」

 

 「――――――!?」

 

キィィィィーー!!とブレーキの音を響かせながらカーブを曲がる。クラッチを駆使しながら爆速で山道を登る。

 

 「初心者じゃない、動きだなっ!!」

 

 「なかなかやる。先に行かせてもらう!!」

 

ほぇーーーー。精霊ってカーレースとかするんだねぇ。初見のゲームのはずなのに普通に運転してるよ、しかもクラッチで。

 

 「こりゃあ運転できる年齢になったら怖いなぁ………」

 

最初に視たモノを瞬時に記憶、後は腕を動かすだけ。人間とは違う人体の形。こういうのが本当に驚かされる。

 

 「絶対乗らんとこ…………」

 

危険運転、駄目、絶対。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「狭いな…………」

 

 「まあ、ホントは二人とかで撮るもんだし」

 

 「………………」

 

プリクラ。男二人と女一人。こうやって撮ったことは”何度”かあるが………

 

 「ポーズを決めてね!!3,2,1…………」

 

そんな感じで何枚か撮った。その後の落書きにかなり時間をかけた気がする。

 

 「ふむ…………こうだな」

 

 「てきとーにやっとこう」

 

 「……………」

 

一人死んでいる【彼】が居るが……これから激しくなると思うが大丈夫だろうか?

 

 「疲れる………疲労が…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

士道が緊張でピークを迎え、喫茶店に入ることになった………のだが。

 

 「うむ、うまい。士道の料理には勝らないがな」

 

 「そ、そうか。ありがとう」

 

デレデレしている二人の事を横目にコーヒーとパンケーキを食べる。甘ったるい雰囲気にのまれないようにコーヒーを飲む………何でカップル用のパフェ頼んでいるんだ?

 

 「食べるか?」

 

 「……………食べる」

 

甘い、甘すぎる。初心のあれだ。”昔の自分”を見せられているようで背中がぞくぞくする。

 

 「……コーヒーおかわりお願いします」

 

今日何杯目かのコーヒー。あまり飲みすぎるのも良くはないが、この状況で落ち着くために飲むしかない。そう思いながらパンケーキを口に運ぶ、コーヒーの苦さを打ち消すほどの甘味。どれだけの砂糖を入れているのだろうか。

 

 「甘い、な…………人生って」

 

 「ん、わりぃ。トイレ行く」

 

 「うい…………」

 

そうして席を立った士道を横目に見ていると天香がこちらを見てくる。そうして彼女は俺に話しかけてきた。

 

 「お前にとって、”戦う”とはなんだ?」

 

 「”戦う”…………ねぇ」

 

戦うことを生きる目的としてきた彼女―――それに関してどう答えるべきかを考える。嘘をつくべきなのか、”神代奏”としての答えを言うのか。そうして俺は自分自身の答えをいう事にした。

 

 「戦うということは、”誰かを護る”ことだと思う。誰かを護ると言う事は俺が考えうる最高の誇りだと思ってる」

 

 「誇り、か」

 

”前の世界”でとある人に言われた事。守ることは誇りである、それを忘れたらお前はお前ではない…………私はそう思っている。と言われた。その誇りを忘れることは許されない。俺はこの誇りをいつまでも忘れることは無いだろう。

 

 「で、なんで俺の事知ってたんだ?

 

 「士道から聞いた」

 

 「あいつマジで個人情報漏らしすぎだろ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふむ、いい景色だな。ここは…………」

 

 「まあ、おすすめスポットだしな」

 

 「教えたの俺だけど…………」

 

そうして俺達三人は天香をいろんなところに連れて行った。まあ、最終的に俺が休む羽目になったけれども。楽しいデートだった。

 

 「ま、後は二人でごゆっくりー」

 

 「え?」

 

よく分からないまま、奏は一人で後ろの方へと行って消えていった。気を利かせてくれたのだろうか。

 

 「なあ、士道。私は…………私は、此処に居てはならない。そう、思わないか?」

 

 「……………いや、そうは思わない。お前は此処に居ていい。俺はお前と一緒に居たい。もっと、お前と。天香とデートがしたい」

 

 「ああ…………私だって、そうしたい。でも、私は”精霊”。人間の敵だ」

 

精霊、人間の敵。聞いた話によると精霊を実験に使おうとする組織も存在するらしい。そんなことは関係ない。ただ、”俺が”生かすか生かさないか。

 

 「なあ、天香…………俺と一緒に居ないか」

 

 「無理だろう…………そんなこと」

 

 「お前は何も考えなくていい!!ただ、俺と一緒に居てくれれば…………ただ、それだけでッ!!」

 

ただ、彼女を抱きしめる。感じるのは冷たい体。死んでいるように感じられる冷え切っている手。それを俺の元に引き寄せる。

 

 「……………ただ、俺と一生居てくれれば…………それでいい」

 

 「………………………」

 

 「なあ、だから…………」

 

瞬間、謎の気持ち悪さが空間を支配する。多分、奏に鍛えられた空気で敵か味方を識別しろというのが役に立っているのだろうか。全身を舐め回されているような気持ち悪さ………何かに”狙われている”。

 

 「がァァ…………!グェッ…………」

 

気づいた時にはもう、身体は勝手に動いていた。天香を逆サイドに入れ替え狙われているであろう場所に背を向けると恐ろしい轟音と共に、”撃たれた”。

 

 「……………っ!!しどう?」

 

 「はっ…………も、う。だめ、かな……」

 

チガトマラナイ。イシキガトビソウダ。アア、ダケド”コレダケハツタエナイト”。

 

 「なあ、てん…………か。ごほっ…………ごほっ…………。これ、だけは。”ひと”、だけは…………きらわ、ないで…………」

 

なあ、もっとイキタカッタ。そうだろう?イツカシドウ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なあ、しどう。冗談だと言ってくれ…………」

 

流れる血は止まらない。どぐどぐと流れる。私の制服とやらに流れていく。赤く、赤く、染まっていく。

 

 「止まれ、止まってくれ」

 

幾ら願っても止まらない。そう、五河士道はただの”人間”なのだ。私達の様に一発喰らったくらいで死なないモノではない。だけど、さっきの”銃弾”は私を確実に殺すことのできる弾。それを士道は受けてしまった。

 

 「なあ、しどう。しどう…………しどう…………」

 

幾ら呼びかけたって、返事はない。恐らく奏も同じようになっているだろう。

 

 「きらいにならないで、か……」

 

キライ、キライ、キライ。人はキライ。人間は死すべき。士道は嫌いにならないでと言ったが。私は嫌いだ。何であろうと士道を殺した世界には罪を”償わせる”。

 

 「<暴虐公(ナヘマー)

 

私の剣を出す。まずは、どうしてくれようか。

 

 「まず、殺すか。一切合切、全て塵に還す」

 

撃ってきたであろう人間は見えている。其処に向かって跳ぶ。

 

 「死ね、人間」

 

まず、一人。何か音がした気がするが気にせずに他の人間を殺す。空を飛ぶ人間ども、もはや鴨にしか見えない。

 

 「――――――、つまらん」

 

どれくらいの時間が経っただろうか。最初に居た場所に戻ってきていたようだ。その場所には血の水たまりに横たわる士道の姿が見える。

 

 「なあ、士道…………やはり、この世界は…………壊すべきだ」

 

力を籠める。何故だか”いつもより”力が湧く。全てを破壊し尽くしたいと願っているからだろうか分からないがこれならば破壊し尽くせるであろう。

 

 「終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)

 

私はその大きな剣を街に向け構えた。

 

 「ふっ――――――」

 

 「熾天覆う七つの円環(ローアイアス)

 

振り下ろそうとした時、何かに”阻まれた”。私はそれごと真っ二つに”斬った”。

 

 「グッ…………痛てぇ…………」

 

気づいたら目の前に居る奏の”左腕”を斬っていた。斬った断面からおびただしい量の血が吹き出している。士道と同じくらい。

 

 「あ…………っああ…………?」

 

 「剣を持て。お前の信念はそんなものか、天香」

 

 「へ…………っ…………」

 

その”威圧”に、私は竦んだ。恐ろしい物を相手取っているかのよう。

 

 「もう、良いんだよ。天香…………こっちにおいで」

 

 「あ、あ…………」

 

私は泣き崩れる。彼が生きていただけでも私は…………

 

 「そろそろ起きてもいいんじゃないか…………”士道”?」

 

 「―――――――。…………熱っ!!」

 

体をパタパタとさせながら士道は何事もなかったかのように起き上がった。

 

 「ど、うして?しどう、が」

 

 「まあ、あいつも”精霊もどき”みたいなもんさ。まあ、今は…………落ち着いて。幾らでも泣け」

 

そうして、私は泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――ー

 

 

 

 

 

 

 

 「で、左腕は大丈夫なの?」

 

 「んー。問題ない、治癒魔術で治したからな」

 

あの事件から一日。休日だったので俺は五河家にお邪魔している。ついでにご報告を申し上げているといった所か。

 

 「まあ、ならいいわ。魔術って便利ねー」

 

 「便利じゃない事もあるけどな…………」

 

そう言いながら紅茶を嗜む。テレビでは昨日の高台が現場が報道されている。

 

 「で、何時になったら馬鹿兄と天香はお風呂場から出てくるのかしら?」

 

 「別に良いだろ…………好き同士何だから」

 

 「まあ、恋愛については私からは何にも言えないし…………別に私にもチャンスあるし…………

 

無事、恋仲となったあの二人は一緒にお風呂に入る仲にまで成長したらしい。まあ、好きな精霊たちはどんどん増えていくだろうけど。

 

 「……………次のデートは何だろうな」

 

 「ん、新しい精霊。多分…………」

 

その答えを琴里から聞いて少し驚きを隠せなかった。

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