仮面ライダービャクア外伝~仮面ライダーソウテン~   作:黒井福

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鴉と狐、時々隼(其之参)

 当初はバケエンマを倒せばよかっただけの筈が、意図せずして準百鬼夜行とも言うべき複数の化神を相手にしなければならなくなった。しかも化神の増援は何時途絶えるかも分からない為、黄泉は明確に何時帰れるかが分からない。それらを彼女はスマホ越しに健に伝えるべく六角モータースの表に出て彼に伝えた。

 

『そっか、まだ暫くはそっちに……』

「うん……ゴメンね?」

『ううん、そう言う事なら仕方ないよ。こっちは心配しないで、何とかするから。だから黄泉さんも気を付けて。無茶して怪我とかしないようにね?』

「大丈夫よ。こっちには望月さんも居るんだし」

 

 バケエンマの呼び掛けにどれだけの化神が応えるのかは分からない。だがこちらには自分以外にもう1人、同年代で同性の御伽装士が居るのだという事実が、健と離れ離れになっている黄泉の心に力を与えてくれる。勿論戦力とは別に、健と触れ合えない事に対する寂しさはあった。まだ三日と経っていないのに、黄泉の心はもう健の事を恋しく思っている。許されるなら今すぐ日向食堂に帰って、健に抱き着いて彼の温もりに甘えてしまいたい。

 

 しかし今の彼女は御守衆の一員であり、窮地に陥りそうになっている沙夜の援護をする為にやって来たのだ。その責務を放棄する事は出来なかった。

 

「私の事より、健君の方こそ気を付けてよ? 沼川さんに怪我させた化神がまた出てこないとも限らないんだから」

『うん、ありがとう。大丈夫、無茶はしないよ。それじゃあ、黄泉さん……』

「うん、またね」

 

 伝えるべき事を伝え終え、名残惜しくはあるが黄泉は健との通話を終えた。通話の切れたスマホを手に持ち暫くその場に佇んでいた黄泉は、寂しさを振り払うように気合を入れ直すと六角モータースの中へと戻っていった。

 

「ふぅ…………よし、頑張るぞッ!」

 

 こうして黄泉は今暫く、ここ六角モータースで世話になる事となった。今後の予定などを煮詰めていき、大体の方針も決まる。

 

 こちらに出向いている間、黄泉は光姫の六角家で厄介になる事となり沙夜と共にこの家に居候する事になった。戦いを終えた2人に光姫が遅めの夕食を振る舞ったのだが、そこで光姫と沙夜は次から次へとご飯をお替りする黄泉の大食漢っぷりに圧倒された。

 

「お代わり、お願いしても良いですか?」

「あ、あぁ……よく食うね?」

「私も健啖家な方ですが、ここまでは……」

 

 黄泉がお代わりした回数は既に4回を超えている。身近にここまで食べる人物が居なかったので、光姫も沙夜も言葉を失った。黄泉は黄泉で、自分が大量に食べる事に驚かれるのも久し振りだったのでちょっぴり申し訳ない気持ちになる。

 

「す、すみません……これでも普段よりは抑えてる方だったんですけど……」

「こ、これでかいっ!?」

 

 すでにオカズはとっくの昔に全て無くなり、炊飯器の中も底を尽きそうになっている。今日は黄泉も居るからと何時もより少し多めに用意したつもりだったが、これでも黄泉が普段日向家で食卓を囲むときに比べれば少ない方であった。黄泉の大食漢に慣れた健達日向家ではこの倍の量は普通に用意される。食堂を経営している事もあって食材が豊富と言う事もあるが、何よりも黄泉のこの大食漢具合により以前に比べて日向家では食卓に並ぶオカズとご飯の量が増えていた。

 

 そんな黄泉の大食漢さを見て、沙夜は自分なんて大した事なかったのだと思ったりしていた。

 

 食事を終えると、黄泉は当面の間滞在する部屋に案内される。六角家はそれなりの広さがあり、部屋にも余りがあるので黄泉が滞在できるだけの余裕はあった。今回だけで終わらなかった場合適当なホテルに泊まる事も考えていた黄泉にとってはありがたい事であった。

 

「それでは、暫くはここで過ごしてください。少し狭いかもしれませんが」

「泊めてくれるだけでもありがたいですよ。言う程狭くもないですし」

「そうですか? 良かったです。お風呂も直ぐに沸きますから、少し待っていてくださいね」

「何から何まで、お世話になります」

 

 沙夜が部屋を後にすると、黄泉は荷物を部屋の片隅に纏めて畳の上に寝転んだ。見上げた先に見える日向家のそれとは違う天井の光景に、黄泉は改めて自分が1人見知らぬ土地に来たのだと実感し静かになった事も相まってちょっぴり寂しさを感じた。先程健と話しておかなければ、彼の事が恋しくてスマホを手にしていたかもしれない。

 

 取り合えず待っている間何もしないのも手持ち無沙汰だったので、黄泉は持ち込んだ荷物を開け中身の整理をしているとドアの向こうから再び沙夜の声が聞こえてきた。

 

『皇さん?』

「あ、はーい!」

『お待たせしました。お風呂が沸きましたので、お先にどうぞ』

「はい、ありがとうございます!」

 

 沙夜に呼ばれて、黄泉は着替えを手に部屋を出た。部屋の前で彼女を待っていた沙夜は、口元に小さく笑みを浮かべながら風呂場に向けて彼女を案内する。

 

「さ、こちらです」

「はい」

 

 沙夜の後に続いて廊下を歩いて行った黄泉は、風呂場に辿り着くと脱衣所で衣服を脱ぎ脱衣籠に衣服を入れると小さいタオル片手に風呂場へと入っていく。

 

 六角家の風呂場は日向家のそれより広く、湯船も人が2人余裕では入れるほどのサイズがある。こんな広い風呂場に入った事のない黄泉は、タオルで体の前を隠しながら束の間圧倒され、直ぐに我に返るとシャワーで汗を流し頭と体を洗って湯船に浸かった。

 

「ん、くぅ~~~~……!」

 

 熱い湯に全身浸かると、この日の疲労が湯に溶け出ていくような感覚に湯船の中で思いっきり手足を伸ばし体を震わせる黄泉。今日は本当に色々あって疲れた。慣れない新幹線での長距離移動もそうだし、健の居ない状況で1人見知らぬ土地に足を踏み入れるという精神的な疲労、そしてもちろん化神との戦いの疲労が今になって襲ってきた。熱い湯が全身を解す何とも言えぬ感覚に身を委ねていると、不意に浴室と脱衣所を繋ぐ扉の向こうから沙夜の声が聞こえてきた。

 

『皇さん、湯加減はどうですか?』

「望月さん? はい、丁度いいです」

『良かった。それじゃ、失礼して……』

「……ん?」

 

 何やら脱衣所からゴソゴソと沙夜が動く音が聞こえてきて、気になった黄泉が扉の方に目を向けると、次の瞬間扉が開かれ生まれたままの姿となった沙夜が体の前面を小さいタオルで隠した沙夜が入ってきた。

 

「し、失礼しま~す」

「うぇっ! え、あ、は、はい……」

 

 まさか沙夜が入って来るとは思っていなかったので、黄泉が呆気に取られていると沙夜は控えめな様子で頭を下げてくる。それに数秒遅れて黄泉は頷き浴槽の端に移動し、沙夜は恐る恐ると言った様子で浴室に入り体を洗い始める。沙夜が浴室に入ってきた瞬間こそ驚きもあり呆気に取られていた黄泉だが、よくよく見ると沙夜もまた前髪に目が隠れて表情が分かり辛いがそれでも恥ずかしさを堪えているのが分かった。

 

(な、何で望月さん……無理して一緒に……?)

 

 沙夜が黄泉と共に風呂場で汗を流す事になったのは、光姫に唆された事が理由であった。曰く、同性同士であれば風呂場で裸の付き合いをしても問題ないし、裸の付き合いをすればより分かり合え今後の戦いでもより円滑にコミュニケーションが出来るからと言うものであった。

 

 当初はその言葉に納得し、これが今後の戦いでも有利に働く事に繋がるとあればと覚悟を決め黄泉に続き浴室に入った沙夜であったが、シャワーを浴びて汗を流している内に冷静になり自分は光姫に担がれたのではないかと言う疑心を抱き始めた。

 

(と、とは言え、今更上がる訳には行きませんし……ここは、覚悟を決めなければッ!)

 

 元来引っ込み思案な沙夜は、積極的に他人に触れ合うタイプではない。永春が特別なのだ。それ以外の者とは基本最低限のコミュニケーションしかとらない。ましてやこんな風に裸の付き合いをするなど、沙夜の心臓は緊張と恥ずかしさで爆発しそうであった。

 

 心臓が早鐘を打つのを、沙夜は湯で体が温まったからだと自分に言い聞かせつつ頭と体を洗い湯船に浸かる。

 

 湯船で隣り合う黄泉と沙夜は、暫く無言で湯に身を委ねていた。揺れ動く透明な湯面には2人の乳房が浮力で浮かび上がる。4つの浮島が浮かぶ湯船の中で、2人は互いに隣の相手をチラチラと伺い見ながら何を話すべきかと頭を悩ませた。

 

((き、気まずい…………))

 

 あまりにも長い沈黙。黄泉も決して沙夜程人見知りする方ではないが、さりとて陽キャと言う程社交的な訳ではない。後先考えずに殆ど初対面の相手と言葉を交わせるほど口が回る方ではない為、何か良い話題はないかと黄泉は事前に調べておいた沙夜とビャクアのこれまでの活躍を引用した。

 

「あ、あの……」

「はい?」

「望月さんって、少し前に1人で大きな事件を解決したんですよね?」

「あ、はい。物部 天厳の事ですね。確かに私が天厳を討ちましたが、あれは決して私1人の力と言う訳ではありません」

「え?」

 

 報告書では天厳の事件で対応に当たったのはビャクア1人と記載されていた。だが沙夜の口ぶりは彼女以外に事件解決に尽力した者が居たと言うふうに聞こえる。一体誰が化神との戦いに参加したのかと黄泉が首を傾げていると、沙夜はその表情が少しおかしかったのかクスリと笑みを浮かべ永春の名を口にした。

 

「永春君です。永春君が居たから、私は天厳に勝てたんです。彼が居なかったら、私は今頃ここには居なかったかもしれません」

「永春君って……あの男の子? え? 彼って御伽装士……じゃ、ないです、よね?」

「えぇ、違います。永春君は普通の……はい、普通の男の子です」

 

 沙夜の言葉に黄泉は息を飲んだ。一見ごく普通の人畜無害なあの少年の永春が、沙夜を助けていたとは。己惚れる訳ではないが、自分が解決に尽力したバケヨロイも厳しい戦いだったと思う。それを解決出来たのは偏に師である紫と、最愛の健の存在あってこそだ。どちらか片方が欠けても、自分はこの場に居なかっただろうと黄泉は断言できる。

 しかしその2人はどちらも力を持つ者達だ。紫は呪術師だし、健に至っては自分と同じ御伽装士。対して沙夜に手を貸したのは、何の力も持たない永春であるというのだから、彼女が驚くのも無理はなかった。

 

「凄いんですね、沙夜さんって。普通の男の子と組んで、事件を解決出来ちゃうんですから。私とは大違いだ……」

 

 誰かの力、それも自分に匹敵するかそれ以上の者の手を借りなければここに居られなかった自分と沙夜の違いにちょっぴり打ちのめされそうになる。だが他ならぬ沙夜が、そんな黄泉の発言に否と答えた。

 

「それは違います、皇さん」

「え?」

「皇さんだって凄いです。失礼ながら、皇さんの事も少し調べさせてもらいました。とても大変な日々を過ごしてきたと」

 

 上半身を黄泉の方に向け、グイッと身を寄せ拳を握る勢いで言葉を紡ぐ沙夜。その圧力に黄泉が思わず仰け反りそうになるが、すぐ後ろに浴槽の壁がある為それ以上下がる事は出来なかった。

 追い詰められた形となる黄泉と沙夜の乳房があと少しで触れ合いそうになる中、沙夜は同情を含んだ目で黄泉の事を見つめながら口を開いた。

 

「家族を目の前で殺された挙句、化神の片目を植え付けられる苦しみは私には想像も出来ません。それでも皇さんは人間としての自分を見失わず、人々を救う為に戦ってきたじゃありませんか。それは普通の人に出来る事ではありません」

「し、師匠が居たからです。私1人じゃ、とっくの昔に壊れてた……」

「それでも、です。今こうして皇さんが私を助けに来てくれたのは、皇さんの強さがあればこそです。それは誰にも否定できるものではありません」

 

 沙夜からの称賛に、黄泉は何だか気恥ずかしくなり無意識の内に左目に手を持って行っていた。沙夜は黄泉の左目に輝く、金色の瞳に注目し思わず感想を呟いていた。

 

「……綺麗な目です」

「え?」

「あっ、す、すみませんっ!? 私ったら……」

 

 口にしてから、沙夜は自身の言葉が失言だったかと慌てて黄泉から離れた。彼女にとって左目は家族を奪われた心の傷の象徴の様な物と思い、ただでさえ左右で目の色が違う事を気にしているのではと今更ながら考えたのだ。初めて黄泉に出会った時から彼女の目が左右で違う事を気にしていたが、その理由が辛い彼女の過去にあると思うと暢気に綺麗等と言っている場合ではないと思ったのである。

 

 しかし、黄泉は沙夜の感想を悪く捉えてはいなかった。それどころか彼女は、沙夜にこの左目を綺麗と言われた事を素直に嬉しく思い笑みを浮かべていた。

 

「ありがとう、ございます」

「え?」

「師匠の目……綺麗って言ってくれて……」

 

 この左目は、師である紫から譲り受けたものである。バケヨロイに与する将之によりそれまで黄泉を苛んでいた化神の左目は抉り取られた。そこに開いた孔を埋めてくれたのが、他ならぬ紫である。彼女は黄泉の失われた左目の代わりに、自身の左目を移し替え傷を癒してくれた。

 紫には本当に感謝しかない。化神に家族と左目を奪われ人間性を失いそうになっていたところを救われ、生きる目標と戦う術を教えてもらい、そして未来をも貰った。紫からは本当に貰ってばかりで申し訳なくなり、同時に自分は師から愛されていたと実感し心が温かくなる。

 

「皇さんの、お師匠様の左目……」

「うん……本当、師匠にはいろんなものを貰っちゃった。それこそ返し切れないんじゃないかってくらい。だから私は頑張るんです。師匠が築いたゲツエイの名を穢さない為に。……ま、何と言っても、私が戦いを始めた理由って復讐とかそう言う自分の為だから、望月さんや健君みたいに気高くてカッコいいものじゃないんですけどね」

 

 ちょっとカッコつけてみたが、やはり戦いの目的が復讐だった事に黄泉は自分が沙夜や健達に比べると汚い理由の様な気がして言ってて恥ずかしくなってしまった。思わず自分を卑下する黄泉だったが、沙夜はそんな彼女の手を取り胸元に持って行った。豊かで柔らかい胸に手を押し当てられ、同じ女性でありながらドキリとする黄泉に沙夜は前髪越しに彼女の目を真っ直ぐ見つめながら彼女の卑下を否定した。

 

「いいえ、そんな事ありません。皇さんも立派で強い方です」

「も、望月さん?」

「例え初めがどんな理由であっても、今の皇さんは私を助ける為に来てくれた。私はそれを嬉しく、頼もしく思います。だから言わせてください。皇さん……来てくれて、ありがとうございます」

 

 沙夜からの心からの感謝に、黄泉は心が洗われたような気分になった。真正面から向けられるその気持ちに、黄泉は嬉しさと恥ずかしさに俯きがちになりながらも上目遣いに沙夜の事を見ながら言葉を返した。

 

「こちらこそ、ありがとうございます。あの、望月さん……」

「沙夜で」

「え?」

「私の事は、沙夜と呼んでください。これから一緒に戦う仲間になるんですから」

 

 仲間と言われて、黄泉の心にまたしても温かさが広がった。健以外でこうして肩を並べるのは、バケアリの事件で共闘した薫だけだ。

 

「で、でも、一応私の方が後輩な訳ですし……いきなり名前呼びなんて……」

「ダメ、ですか?」

「うっ……」

 

 前髪に隠れながらも上目遣いになっている事が伺える沙夜の仕草に、黄泉は思わず言葉を飲み込んだ。ここまで言われているのだから、それに応えないのは失礼にあたる。

 最終的には根負けした黄泉が、自分の事も名前呼びすると言う事で決着が着いた。

 

「分かりました。その代わり、私の事も黄泉って呼んでください」

「はい、勿論です。改めて、よろしくお願いしますね、黄泉さん」

「はい、沙夜さん」

 

 互いに名前で呼び合い、どちらからともなく微笑み合ったのだった。

 

 そのまま2人は暫く湯船の中でとりとめのない会話に華を咲かせていたのだったが、不意に黄泉が沙夜の顔に注目し始める。正確には前髪に隠れたその両目に、だ。

 

「あの、黄泉さん? 私の顔が、どうかしましたか?」

 

 突然注目されて首を傾げる沙夜に、黄泉は一言断りを入れて徐に手を伸ばした。

 

「沙夜さん、ちょっと失礼します」

「え、ちょっ!?」

 

 黄泉が手を伸ばしたのは両目を隠す沙夜の前髪。彼女の意図に気付いた沙夜は、咄嗟に前髪を手で覆い伸ばされた手を遮った。あと少しで前髪を払い沙夜の両目が拝めると思った黄泉は、自身の意図が妨害された事に唇を尖らせた。

 

「あ~ん、もう! 何で隠すんですか」

「だ、駄目ですッ!? それだけは絶対に駄目なんですッ!」

「え~? そんな減るもんじゃないじゃないですか?」

「そう言う問題じゃないんですッ!」

「でも沙夜さん、私の目は見てるじゃないですか」

「黄泉さんは目を隠してないじゃないですかッ!」

 

 前髪に隠された沙夜の目を何とかしてみようと襲い掛かる黄泉と、それに必死で抵抗する沙夜。2人の少女が湯船の中でもみくちゃになり、瑞々しい裸体を絡ませ合いお湯がバシャバシャと跳ね浴槽から零れ落ちる。

 

 そんな取っ組み合いの最中、沙夜が背中を向け黄泉が後ろから抱き着いた。その瞬間、黄泉の両手が沙夜の胸を後ろから掴む形となる。

 

「ひゃんっ!?」

「おぉ、大きい……」

 

 不意打ちで胸を掴まれ、沙夜が思わず悲鳴を上げ体を跳ねさせる。一方の黄泉は、改めて触れた沙夜の巨乳に前髪に隠された沙夜の目の事も忘れて今度は彼女の胸の大きさと感触に夢中になっていた。

 

「う~ん、さっきから思ってたけど沙夜さんも結構な大きさですよねぇ。私も大きさには自信ある方だったけど、これは……」

「ちょっ、黄泉さん、何を、んんっ!? やっ、ちょ、だめ、ひぅっ!?」

 

 黄泉は自分の胸の大きさと沙夜の胸の大きさの違いを確かめるように彼女の胸を下から持ち上げるように揉み、乳房の表面を撫で柔らかさと肌触りを確かめる。自分でもそんなに頻繁に触った事のない乳房を好き放題されて悶える沙夜であったが、彼女だって何時までもやられてばかりではない。一瞬の隙を突いて黄泉の手を振り解くと、振り返って黄泉の右肩を押して彼女に後ろを向かせた。

 

「うぅ~~、ダメ、ですッ!」

「わっ!?」

「お返しですッ!」

「あっ!?」

 

 今度はお返しとばかりに沙夜が黄泉の胸を後ろから掴んで揉み始める。攻守逆転し胸を揉みしだかれ、黄泉は手足をバタバタと暴れさせながら胸を他人に好き放題去れる感触に身を震わせた。

 

「ちょちょっ!? さ、沙夜さん、待って、ひゃぁっ!?」

「黄泉さんだって、結構な大きさじゃないですか。さっきのお返しです! この、このこのっ!」

「ちょ、待っ、あははははっ! く、くすぐったいくすぐったいっ! あっ、そ、そこ、ダメッ!?」

 

 胸を揉まれる感触のくすぐったさに笑い転げながら、同時に感じる未知の感覚に悶える黄泉。一方の沙夜は、黄泉の反応が面白くなってそのまま後ろから背中に自身の巨乳を押し付けるように抱き着こうとする。

 

「それっ!」

「えっ? わぁっ!?」

 

 後ろから圧し掛かる様に抱き着かれ、背中に沙夜の乳房の感触を感じる黄泉。そのまま乳房を弄ばれそうになる黄泉だったが、彼女だってやられてばかりではなく湯の中で体を反転させると正面から沙夜の乳房を掴んで再び揉み始める。

 

「うひゃぁっ!?」

「ふっふっふ~ん!」

「なんのッ!」

「ひゃいっ!?」

 

 沙夜の乳房を正面から捏ねるように揉む黄泉であったが、沙夜もまた負けじと黄泉の乳房を揉み返す。互いに相手の乳房を揉み、時には相手を振り払って攻守を入れ替えてとじゃれ合う2人。普通の少女であれば何時までも続くものではなかっただろうが、彼女達はどちらも御伽装士として鍛えられていた事もありなかなかに長引いた。

 それにこんな風に同年代の少女同士でじゃれ合うと言う事も無かったし、2人は今この瞬間の触れ合いを何だかんだで楽しんでいたのだ。気付けば互いにムキになって、相手を組み敷こうと湯船の中で取っ組み合ったり湯を掛け合ったりしていた。

 

「わっ! このっ!」

「きゃっ! えいっ!」

 

 美少女2人のじゃれ合いは、長湯に違和感を持った光姫が様子を見に来て風呂場でふざけ合う2人を一喝するまで続くのであった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 黄泉が旅立ってからはや3日、残った健は1人担当地区の化神討伐に勤しんでいた。

 

「ハァァァァッ!」

『くそっ!? 御伽装士がッ!?』

 

 黄泉が沙夜の援護の為に1人旅立ってからも化神は変わらず現れたが、幸いな事に彼1人でも十分対処可能なレベルしか出てこなかった。鮎夢が担当する隣の地区も彼が1人でカバーしなくてはならないのが少し大変だったが、当初予想していたほどの忙しさは無くどちらかと言えば余裕をもって対処が出来ていた。

 

「トドメだッ! 退魔覆滅技法、風龍一矢ッ!」

『しま、ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

 一瞬の隙を突きソウテンの風龍一矢が敵対する化神を撃ち抜いた。射抜かれた化神は内部から膨れ上がる暴風で体を内側から切り裂かれ爆散し、それを確認した彼はゆっくりと手にした弓を下ろし一息ついた。

 

「ふぅ……これで終わりかな」

 

 黄泉を送りだしたのは良いが、彼女が離れてから彼は寂しさと不安にちょっぴりナーバスになっていた。最近まで御守衆に不信感を抱いていた彼女が現地で1人、他の御伽装士と仲良くやれているかもそうだし、自分1人で鮎夢の地区までカバーしきれるかと言う不安もあった。

 何よりも彼が危惧していたのは、鮎夢が仕留め切れず撃退するに留めてしまったと言う化神が再び牙を剥く事である。

 

 一時は彼女の世話になった健だからこそ知っている。鮎夢のユウゲンは決して弱くはない。ユウゲンは特性こそ典型的な術特化型であり直接戦闘に関しては不安がある。だが彼女はその呪術の腕と経験でカバーし、これまでに何体もの化神を討伐してきた実績がある。健が正式にソウテンとして今の担当地区を任されて以降も何度か助けられてきた彼女が、倒し切る事が出来ないどころか自分が負傷し暫く戦えなくなるほどの相手に何処まで戦えるかと言う不安があった。

 だが蓋を開けてみれば彼女が取り逃がしたと言う化神は姿を見せず、至って順調に仕事を済ます事が出来ていた。

 

 この分なら黄泉が帰ってくるまで自分1人でも十分持ち堪えられる。彼がそんなちょっと楽観的な考えを抱いていたその時、倒した化神の爆炎を突き破る様にして新たな化神が飛び出してきた。

 

「あっ!?」

『キャキャァァァァッ!』

 

 甲高い叫びを上げながら飛び掛かってきた化神・バケサルにソウテンは咄嗟に穿空の弓矢の刃で迎え撃とうとする。今からでは弦に弓を張るのは間に合わない。

 

 だがバケサルの鋭い爪がソウテンに届きそうになったその時、無数の御札が飛来しバケサルに貼りついたかと思うと、神通力が流し込まれ動きを封じた。

 

『ギャァァッ!?』

「えっ!?」

 

 突然の事に唖然とするソウテンの横をユウゲンが通り抜ける。その手には既に幻燈の番傘が握られており、込められた神通力が解放され無数の火の玉が上空に打ち上げられたかと思うと反転して無数に分裂しながら落下した。

 

「退魔覆滅技法、貂上天下ッ!」

「沼川さんッ!」

「そのまま~」

「わぷっ!」

 

 ユウゲンの登場に驚くソウテンだったが、彼女は彼が貂上天下に巻き込まれないよう番傘の中に彼を引き入れる。その際に彼の頭を胸で抱きかかえる形となってしまったが、それを気にする間もなく降り注ぐ火の玉の爆発が2人を包む。2人はユウゲンが差した番傘で火の玉の被害を受ける事は無かったが、御札で動きを封じられているバケサルは逃げも隠れも出来ず火の玉の爆撃に晒され爆散した。

 

 吹きすさぶ爆風が収まると、ユウゲンはソウテンを解放する。彼を抱きかかえていた腕を放し、差していた傘を閉じるとソウテンは抱いていた疑問を口にした。

 

「沼川さん、大丈夫なんですか?」

「この程度の怪我で~、参るほど弱い女じゃありませんよ~。それより~、事情は私も把握してます~。今~、皇さんは中部地方に居るとか~」

「あ、はい。何か厄介な化神が出て、ちょっと大事になったからもう暫く戻ってこられないって……」

 

 最初はただ現地の御伽装士では対処が難しい幻術を扱う化神の討伐に手を貸すと言うだけの話であった。だがその化神が他の化身を呼び寄せていると言う事が分かり事態は急変。黄泉は暫く現地に残り、事態が収束するまで滞在する事が決まった。それを聞かされソウテン……健も寂しく思ったが、これも仕方のない事と黄泉とはメールや通話でのやり取りで我慢していた。

 

 だが次の瞬間、ユウゲンの口から出たのは予想外の言葉であった。

 

「単刀直入に言いますね~。日向君は今すぐ皇さんの所へ向かってくださ~い」

「えっ? 何でですか?」

「私が仕留め損ねた化神が~、そこに向かっているからですよ~」

「えぇっ!?」

 

 これにはソウテンも目が飛び出るのではと言う位驚いた。何しろユウゲンを退けた化神と言えば、術に対して耐性を持つ術師型の天敵とも言える奴なのだ。ゲツエイは術だけでなく直接戦闘でも戦えるが、術師型に転向しようとしている今の彼女にとっては非常に危険な敵となる。

 

 そんな奴が今正に彼女の元へと向かおうとしている事実にソウテンは胃が縮む様な感覚に陥った。

 

「で、でも、何でそんな事が……?」

「私がただやられるだけで終わると思いましたか~? 一矢報いる序でに~、追跡用の術を仕込んでおいたんですよ~」

 

 抜け目のない彼女にソウテンは空恐ろしさと同時に頼もしさを感じて乾いた笑いを零す。ユウゲンはそんな彼に今すぐ黄泉の元へと向かうよう促した。

 

「日向君は~、直ぐに皇さんの所へ向かってくださ~い。この辺りの事は私が引き継ぎますから~」

「で、でも、今からで……」

「クラマトルネイダーで空飛んでいけば~、アイツよりも先に皇さんの所に辿り着ける筈です~。急いでくださ~い」

 

 諸々の報告や手続きは全部やっておくとまで言われては、ソウテンとしても頷かない訳にはいかない。と言うか黄泉に危機が迫っていると聞いて、本当はジッとしている余裕が無かった。彼女を心配する思いと自制心が鬩ぎ合っていたところに、ユウゲンの言葉が後押しとなって彼は迷う事無くクラマトルネイダーを使って中部地方へと向け飛び立った。

 

「分かりました。沼川さん、後お願いしますッ!」

「急いでくださいね~。きっとアイツも既に回復しています~。気を付けて下さ~い」

 

 ソウテンはユウゲンに見送られ、クラマトルネイダーを飛行モードに変形させて黄泉が居る六角モータースへと飛んでいく。

 

 飛び去って行くソウテンを見送ったユウゲンは、彼の姿が見えなくなると先ずは晃に事情を離すべくスマホを取り出すのであった。




ここまで読んでいただきありがとうございました!

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
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