仮面ライダービャクア外伝~仮面ライダーソウテン~   作:黒井福

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どうも、黒井です。

いよいよ本作も最終章に突入です。
ここからラストまで突き進みますよ。



*今回、結構暴力的でショッキングな展開があります。具体的には旧劇場版エヴァくらいの。
ですのでそう言うのが苦手な方はご注意ください。


第9話:悪意による摘出

 健の携帯にその着信が来たのは、本当に唐突だった。

 

 学校も終わり、家へと向かう途中の事。家が目前へと迫ったその時、健の携帯が着信音を鳴らしたのだ。

 こんな時間に一体誰だと携帯のディスプレイを見て、相手が黄泉だと分かると一瞬健の呼吸が止まった。あんな別れ方をした後で、彼女とどう話せばいいのかと。

 

 だが悩んだ時間は短かった。黄泉がこうして健と話そうとしてくれているのだ。であるのなら、それに応えるのが漢と言うものだろう。

 

 健は家に入らず、家のすぐ横の路地に入った。そこは奇しくも、健と黄泉が初めて出会った場所であった。

 

「もしもし、黄泉さん?」

『……うん。健君、今、いい?』

「うん……僕も、黄泉さんとはもう一度話したいと思ってたから」

 

 健の言葉に、携帯の向こうから黄泉の安堵の溜め息が聞こえてきた。その声だけで健も何だか肩に乗っていた重石が取れた様な気になる。黄泉の方も、健と話したくて話せずにいたのだ。それが分かり、お互い気持ちは同じだという事が分かったのである。

 

 健が安心していると、黄泉の方が話し始めた。

 

『その、この間はゴメンね。健君に一方的に文句言っちゃって……』

「うぅん、良いんだよ。仕方ないよ。黄泉さんにも、色々と事情はあったんだろうし」

『そんなの、言い訳にもならないわよ。私の家族が死んだ事と、健君は何の関係も無いって言うのに……』

 

 電話口だが、黄泉の声色は本当に申し訳なさそうに聞こえる。しかもよく耳を澄ませば、僅かに泣いているのか鼻をすする様な音も聞こえた。顔は見えないが、彼女が悲しそうな顔をしていると想像しただけで健も心が苦しくなる。

 

 向こうが心から申し訳なく思っていて、過ちが必ずしも間違っていないのであればここはその謝罪を受け取るのが礼儀でありまた、相手の為でもあるだろう。なので健は大人しく黄泉からの謝罪を受け取る事にした。

 

「……分かったよ。でも僕も黄泉さんに御伽装士の事を黙ってたのは確かだ。だから今回の事はお互い様って事でどう?」

 

 健の提案に、黄泉はキョトンとしていたのか暫し無言だったが直後にクスクスと笑い声が聞こえてきた。

 

『ふふっ、何それ?』

「へ、変だったかな?」

『ゴメン、笑っちゃって。ううん、ありがとう』

 

 お互いに顔は見えないが、笑い合っている事は分かる。これは仲直り出来た……と判断していいだろう。

 そう思うとなんだか心にへばり付いていた気持ちの悪いものが取れたようでとても清々しい気分になる。ここ最近の鬱屈した思いが晴れていくのが分かった。

 

 今なら黄泉とちゃんと顔を合わせて話が出来る。そんな気がする、と言うか話がしたい。今すぐ彼女に直接会いたかった。

 

「ねぇ、黄泉さん? これから少し時間良いかな?」

『いいけど、何で?』

「黄泉さんと会いたいんだ、直接…………駄目、かな?」

『ッ!……ううん、良いよ。私も、早く健君に会いたい――!』

 

 黄泉の答えに健は笑みと同時に目尻に涙を浮かべた。彼女との関係が切れていない事が嬉しいのだ。

 

 早速健は黄泉と会う場所を決めようとした。落ち合うならやはりお互い分かりやすいところが良い。

 

 折角だから前に黄泉と行った事のあるハンバーガー屋さんが良いだろうか? そんな事を考えていた時、ふと空からキラキラと輝く粉の様な物が降って来た。雪ではない。雪が降るような季節ではないし、気温もそんなに低くはない。何よりも空は別に曇ってはいないのだ。とてもではないが雪が降ったりするような天気ではない。

 

『え? 何これ?』

 

 どうやらここだけでなく黄泉の居るところでもこれは降っているらしい。これは一体何なのかと健が降ってくる粉に手を伸ばした。

 

 瞬間、激しい吐き気と不快感が健を襲った。

 

「うぐっ!? こ、これ――――?!」

『げほっ!? ごほっ!? な、何これ!? く、苦しい――――!?』

『愛弟子! 今すぐ怨面を着けよ!?』

 

 健と同時に黄泉も苦しみだした時、電話口に紫が黄泉に急いで指示を出すのが聞こえた。どうやら2人は共に居るらしい。

 

『小童、お主そこに居るな? 聞こえていたらお主もすぐソウテンに変身せよ!』

「か、河南さん? これは、一体――」

『グダグダ抜かす暇があったらさっさと変身せよ!!』

「お、オン・マイタラ・ラン・ソウハ……変身!」

 

 紫に急かされる形で健はソウテンに変身した。電話口に聞こえる声から、向こうでは黄泉も変身しているらしい。

 

 訳も分からず変身させられた健だったが、変身すると先程までの不快感が嘘の様になくなった。その事にソウテンは困惑せずにいられない。

 

「あ、あれ? 何ともなくなった?」

『こっちも……師匠、これは一体?』

『化神じゃよ。これは化神の仕業じゃ。何考えとるのかは知らんが、化神がこの町全体に攻撃を仕掛けてきたのじゃ』

「『なっ!?』」

 

 ソウテンもゲツエイも信じられないと絶句した。いくら何でも規模が大きすぎる。しかも町全体に被害を及ぼすほどの攻撃など、一体どれだけ力のある化神だと言うのだろうか?

 

『恐らく、下手人の化神の名はバケコチョウじゃろう』

『知ってるんですか、師匠?』

『昔仕留めた事があるでな。面倒な化神じゃよ。空を飛び、毒の鱗粉をばら撒く』

「空を飛ぶ化神なら、僕が何とかします!」

 

 ソウテンになら、空を飛ぶ化神に対抗する手段がある。彼はそのバケコチョウの討伐を志願した。この事態を収束させることが出来るのは恐らく現状では彼しかいない。

 

 紫もそれを理解しているのか、特に反対する事はなかった。電話口からは紫が納得するような唸り声が聞こえてくる。

 

『ふむ……そうじゃな、愛弟子に空を飛ぶ化神の相手は荷が重い。出来ると言うのならお主に任せよう』

『師匠、私は?」

『お主は小童の……むっ!?』

 

 突然、紫の声に緊張が走った。ソウテンからは分からない事だが、紫の陰に彼女の使い魔である影狐が入ったのだ。その瞬間紫の表情が険しくなり、それを間近で見ていたゲツエイの声にも緊張が走る。

 

『師匠、どうしたんですか?』

「河南さん?」

『……面倒な事になった。別の化神が現れよった』

 

 紫の言葉に装填とゲツエイが息を飲んだ。ただでさえバケコチョウにより町全体に被害が出ていると言うのに、この上さらに別の化神が現れるなど……

 

 しかしこのタイミング、果たして偶然だろうか? バケコチョウにより町全体が被害に遭っている中、別の化神が現れた事にソウテンは違和感を感じずにはいられない。

 

 もしや――――――

 

「誰か、化神に指示を出してる奴が居る?」

『え? 健君、それどういう事?』

「前に出てきた化神が、誰かに僕の事を聞いたって言ってたんだ。もしかして、これは――――」

『悪いが、長々と議論している暇はない。この鱗粉もすぐ人を殺すほどの毒性は無かろうが、それでも時間を掛ければそれだけ被害が大きくなる。ソウテン、お主は早々にバケコチョウを始末せよ。別の化神は愛弟子が何とかする』

「そう言えば、河南さんは大丈夫なんですか?」

『見くびるでない。この程度自力で防げる。ワシの事よりお主は自分と倒すべき化神の事だけを考えよ』

 

 どうやら情報交換などの時間はここまでの様だ。これ以上話し合いに時間を掛けていると、紫の言う通り被害が今以上に拡がってしまう。

 

「分かりました。バケコチョウの方は任せてください!」

『別の化神は私がやるわ。健君はバケコチョウの方に集中して』

「うん……黄泉さん、気を付けてね。何だか嫌な予感がするから」

『大丈夫。健君も、気を付けてね。話したい事、一杯あるんだから』

「うん。それじゃ……」

 

 通話を切り、ソウテンは暫し携帯を見つめていた。先程から妙に胸がざわつくのだ。何か良くない事が起きるような、そんな予感がする。

 

(考えすぎだ、考えすぎ……。今は、早くバケコチョウを――!)

 

 頭を振って不安を振り払うと、ソウテンは家のガレージへと入っていく。

 毒の鱗粉はどんな小さな隙間からでも入って来るのか、ガレージの中にも降ってきていた。この分だと家屋の中に居る人々にも被害が及んでいるに違いない。一刻も早くバケコチョウを倒さなければ。

 

「久しぶり。最近あんまり構えなくてごめんね」

 

 ガレージの大半は買い出し用のワゴン車で占められているが、一画には1台のバイクが鎮座していた。御伽装士が現場に急行したり遠出する際に使うバイク、ソウテン専用バイクのクラマトルネイダーだ。

 健はまだ運転免許を持っていないので普段使いは出来ないが、今回の様に迅速に現場に急行する必要がある場合などには重宝した。

 

 ソウテンがガレージに入り、クラマトルネイダーの調子をチェックしていざ出発しようとしたその時。

 

 ガレージに顔色を悪くして脂汗を浮かべた晃が入って来た。

 

「た、健……」

「お父さん!? 大丈夫!?」

「あ、あぁ……命に関わるほどじゃない。裕子も同じだ」

 

 そうは言うが、晃は立つことも辛そうだ。裕子も姿を見せていない以上、安心はできない。

 

「待ってて……僕が原因の化神を必ず倒すから」

「あぁ、任せたぞ……」

 

 晃の言葉に頷き、ソウテンはクラマトルネイダーのエンジンを入れた。激しいエグゾースト音が、マシンの雄叫びの様に響く。

 

 出発の直前、ソウテンはもう一度だけ晃の事を見た。その視線を受け、晃は脂汗を流しながらソウテンにサムズアップをしてみせる。

 

 無言のエールにソウテンもサムズアップで応え、ハンドルを握ると一気にアクセルを全開にしてガレージから飛び出した。

 

 空を見上げれば今も尚毒の鱗粉が舞い散っている。そして走る道中、周囲を見ればあちらこちらに苦しそうに倒れている町の人々の姿があった。中には見知った近所の人や、学校の友人たちの姿もある。

 彼らの苦しむ姿に、ソウテンは奥歯を噛みしめハンドルを強く握る。

 

(……許せない、こんな…………)

 

 無差別に大勢の人々を巻き込むやり方をする化神にソウテンが怒りを抱いていると、不意に視界の端に何かが映った。そちらに目を向けると、空中に滞空している巨大な蝶の姿が見えた。ソウテンは一目で分かった。あれがこの鱗粉を放っている化神、バケコチョウだと。

 

 その姿を見た瞬間、ソウテンは気合を入れ式神でもあるクラマトルネイダーに声を掛けた。

 

「クラマトルネイダー、行くよ!!」

 

 ソウテンの声に答える様にクラマトルネイダーのヘッドライトが明滅した。

 

「マイタラ・ラン・ソワカ! 飛べ!」

 

 呪文を唱え、クラマトルネイダーのシートの上からソウテンが飛んだ。するとその瞬間、クラマトルネイダーの形状が変化した。

 

 前後の車輪が90度回転し地面に車輪の側面を向け、同時に車体が全体的に前後に伸びる。そして変形が完了したクラマトルネイダーの上に、ソウテンが着地しそのままサーフボードの様に空中を飛行してバケコチョウの所まで飛んでいった。

 

 これこそがクラマトルネイダーの特筆すべき能力。必要に応じてこのように飛行形態に変形し、空を飛ぶ化神に対抗できるようにするのだ。それ以外にも悪路を飛び越えて現場に急行する事も可能とする。

 

 空を飛んで一気にバケコチョウに近付くソウテンに、バケコチョウの方も気付いたのだろう。羽搏いて鱗粉をばら撒きながら、ソウテンの方を向いて戦闘態勢を取る。

 

『ほほほっ! 来よったか、空色の御伽装士よ。待って居ったぞ』

「何?」

『妾の役目はお主の相手をする事よ。まさか空を飛べるとは思わなんだがなぁ』

「僕の相手? どう言う……まさか!?」

 

 バケコチョウのこの物言い、まず間違いなくコイツには仲間が居る。そしてバケコチョウの役割がソウテンを釘付けにする事という事は、こいつの仲間の目的は…………

 

「答えろ!? お前達の目的は、まさか――――!」

『流石に気付いたか。そうよ、妾達の本当の目的は、この町に居るもう1人の御伽装士・紫の御伽装士よ。今頃はバケヨロイ殿達が小娘の御伽装士を嬲り者にしておる頃じゃろうて』

 

 ゲツエイの……黄泉の身に迫る危機。それを理解した瞬間、ソウテンの視界が真っ赤に染まった。

 

「させるかぁぁぁぁっ!!」

 

 激情に任せ、鎌鼬の双剣を手にソウテンはバケコチョウに向けクラマトルネイダーを飛ばした。一気に接近し、バケコチョウを切り裂くべく双剣を振り下ろす。

 

『おっと』

 

 だがソウテンの一撃は易々と回避された。見た目通り、ひらりひらりと宙を舞いソウテンの攻撃を紙一重で回避した。その動きはまるで風に舞う木の葉の様だ。

 

 一刻も早くゲツエイと合流しなければならないのに、攻撃を悉く回避され続けソウテンの中に焦りと怒りが増していく。

 こうしている間にも、ゲツエイがどんな目に遭っているか……

 

「お前なんかに、時間は掛けていられないんだ!?」

『ならば攻撃を当ててみよ? ほれほれ、妾はここに居るぞ?』

 

 焦りに攻撃が雑になって来たソウテンを、バケコチョウは更に煽った。焦りを誘い、攻撃から正確性を失わせ、そして隙を見せれば反撃する。元よりソウテンは自力で飛んでいる訳ではなく、乗り物の上でしか空に居る事は出来ないので、少しバランスを崩させてやればそれだけで時間を稼ぐことが出来た。

 

『ほれ!』

「ぐぁっ!?」

 

 バケコチョウにクラマトルネイダーから蹴り落とされ、地面に向けて落下するソウテン。無様に落下しつつあるソウテンの姿を、バケコチョウは嘲笑と共に見ていた。

 

『ほーっほっほっほっ! 空も飛べぬお主が、この妾に挑むなど愚かな事よの』

「ぐぅっ!? くそ、くそぉ――!?」

『もう紫の御伽装士の元へ向かいたいなら向かえば良かろう。ただしその場合、町の人間どもに死人が出るやもなぁ? 妾の毒の鱗粉、長時間吸えばただの人間なら確実に殺せる故に』

 

 それが嫌なら自分の相手を知ろという事か。何とも厭らしい戦い方だ。自分に絶対有利な状況でのみ戦い、逃げる事を精神的に縛る。見た目優雅なのに、性根は淀んだ沼地の様に腐りきっている。

 

 こんな奴に時間を稼がれている事に、とうとうソウテンの堪忍袋の緒が切れた。

 

「いい加減に、しろぉぉぉぉぉっ!!」

 

 叫び声を上げながら、ソウテンは二つの剣の柄を連結させバケコチョウに向け投擲した。回転しながら連結させた双刃の剣がバケコチョウに向け飛んでいく。

 

 だが当然と言うべきか、投擲した剣はあっさりとバケコチョウに避けられた。

 

『ほほほっ! そんなものに当たるような間抜けではないわ』

 

 余裕をもってひらりと躱したバケコチョウだが、それを見てソウテンはほくそ笑んだ。今の攻撃はバケコチョウに当てる為の一撃ではなかったのだから。

 

 バケコチョウに避けられ、頭上高くにまで飛んでいった双剣。それはソウテンの手を離れても尚回転を止めず、それどころか更に回転数を上げ次第に風を纏い始める。

 

『ぬっ?』

 

 その異変にバケコチョウが気付いた時にはもう遅かった。双剣を中心に竜巻が発生し、暴風がバケコチョウ諸共鱗粉を周囲から巻き上げた。激しい暴風は刃となって、バケコチョウの極彩色の翅をズタズタに切り裂いていく。

 

『ぬなっ!? なぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

 竜巻は掃除機の様に町から鱗粉を吸い上げ天空へと逃がしていく。風が収まる頃には町から鱗粉は全て無くなり、後にはボロボロになったバケコチョウだけが残された。

 そのボロボロのバケコチョウが、重力に引かれ落下し始める。

 

『ぅぉ……が……』

 

 蝶の化神という事で体重が軽いのか、ソウテンに比べ落下速度が遅い。それは言い換えれば、狙いを付けやすいという事に他ならなかった。

 

 ゆっくり落下してくるバケコチョウに、ソウテンは穿空の弓矢を構え矢を番えて狙いを定める。

 

「退魔覆滅法、風龍一矢!」

 

 放たれた矢は風を纏い、一瞬でバケコチョウまで飛んでいき一撃で貫いた。既に限界までボロボロだったバケコチョウは、それがトドメとなったのか空中で爆散した。

 

『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!』

 

 断末魔の叫びを上げて爆散し、風に流されて消えるバケコチョウの様子にソウテンは束の間安堵の溜め息を吐く。

 

「やった……ふぅ」

 

 これで街の人達は守られた。暫くの間は毒が体に残って満足に動けないだろうが、住民の全滅と言う最悪の事態は免れた。

 

 だが何時までも安心してはいられない。バケコチョウの話を信じるなら、今こうしている間にもゲツエイの身に危機が迫っている筈なのだ。こんな所で安心してはいられない。

 

「クラマトルネイダー!」

 

 呼ぶとクラマトルネイダーが近くに飛んできたので、ソウテンはそれに乗って上空からゲツエイの姿を探した。地上を走っていては分からないが、上空からならすぐ探せる。

 

 先程は気付かなかったが、空が暗天により色が変わっていた。胸騒ぎを抑えながらソウテンが上空から町を見渡しながら飛行する。

 

 空を飛ぶこと数分、ゲツエイの姿はなかなか見つからない。

 その代わり、おかしなものを見つけた。

 

 複数の化神の死体が転がっている広場の中心で、それを超える数の化神らしき異形が集まっている。何かを取り合う様に、一転に向けて集まっているその光景にソウテンの心臓がドクンと震えた。

 

 まさか……いや、そんな筈は…………

 

 脳裏に浮かんだ嫌な予感を必死に振り払おうとするソウテンだったが、少し離れた所に居る紫の言葉は彼の縋ろうとした希望を打ち砕いた。

 

「黄泉ッ!?!?」

「――――――――――え?」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 遡ること数分、ソウテンとの通話を終えたゲツエイは紫のナビに従い化神が現れた現場へと向かっていた。

 

 その道中、紫はゲツエイに警告した。

 

「気を付けよ愛弟子。確認した化神はバケヨロイと言う奴だが、奴は相当な手練れじゃ」

「上等です。ヨロイだろうがカブトだろうが……」

「それだけではない。奴は明らかにこちらが来るのを待っておる。何か仕掛けている可能性が高い故、十分に警戒せよ」

「はい!」

 

 紫の言葉に頷きながら、ゲツエイは目的の広場へと向かった。そこにバケヨロイが待ち受けていると言うのだ。

 

 向こうが待ってくれているのなら好都合とばかりに、ゲツエイは草薙の大太刀を手にバケヨロイの元へ向かった。

 

「この先じゃ。気を引き締めていけ」

「はい!」

 

 広場に入る直前、紫に声を掛けられ一度足を止めるとゲツエイは呼吸を整え、気分を落ち着けると意を決して広場に入った。

 

 果たして広場には紫の言う通り、バケヨロイが待ち受けていた。バケヨロイは広場のベンチに腰掛け地面に突き立てた刀の柄頭に両手を乗せ、下を向き目を瞑っている。

 

『来たか……待っていたぞ』

 

 ゲツエイが広場に入ると、バケヨロイはゆっくりと顔を上げた。だがまだ刀は地面に突き立て、ベンチに腰を下ろしたままだ。

 

 侮っているのかそれとも何か考えがあるのかは知らないが、少なくとも舐められているという事は伝わった。こちらを侮った様子のバケヨロイに一泡吹かせるべく、ゲツエイはバケヨロイが何かをする前に攻撃しようと一気に飛び出した。

 

「随分と余裕そうね! 私を甘く見ると、痛い目見るわよ!!」

「ッ!? 待て、愛弟子!!」

 

 ゲツエイが飛び出した直後、紫が彼女を引き留めようと声を掛けるが時すでに遅し。あっという間にバケヨロイに接近したゲツエイは、手にした大太刀をバケヨロイに向けて振り下ろしていた。

 

 バケヨロイの兜を唐竹に叩き切ろうとするゲツエイだったが、その刃はバケヨロイを切り裂く前に何者かにより止められた。

 

「ッ!? え――」

 

 大太刀を受け止めたのは大きな鋏だった。見れば地面から飛び出した鋏がゲツエイの大太刀を挟んで受け止めている。

 

『シャアッ!!』

「がっ?!」

 

 鋏で大太刀を受け止められ動きが止まったゲツエイに、別の方向から攻撃が飛んできた。武器を受け止められた事に一瞬思考が停止していたゲツエイにはそれを避ける事は出来ず、脇腹に諸に攻撃を喰らい地面に叩き付けられる。

 

 今ゲツエイを攻撃したのはバケヨロイでも、地面から飛び出した鋏の持ち主でもない。鋭い棘が何本も生えた茨を鞭の様に扱う、薔薇の花の化神だった。

 

「うぐッ?! いつつ……ぐぅ」

「愛弟子、下がれ!」

 

 薔薇の花の化神・バケイバラの一撃は強烈だったのか、攻撃を受けた脇腹からは血が流れ落ちている。無数の棘が攻撃が当たる瞬間にゲツエイの脇腹を抉り取ったのだ。

 

 ゲツエイが痛みに呻いている間に、地面からは鋏の持ち主までが出てきた。片腕だけが異様に大きな鋏の蟹の様な化神・バケマネキだ。

 

 さらに化神はまだ出てくる。

 

 物陰からは無数の脚を持つ百足の化神・バケムカデが……

 

 近くのマンホールからは、蛇の化神・バケカガチが……

 

 空からは頭に立派な角を持ったカブトムシの化神・バケカブトが……

 

 次々と現れた化神を前に、ゲツエイだけでなく紫でさえも目を見開き息を飲む。

 

「な、何よ……これ……」

「化神が、百鬼夜行でもないのにこれほど徒党を組むなど――――!?」

 

 これは最早ゲツエイとソウテンだけで対処できるレベルを超えている。この場は退いて、面倒を承知で周囲の御伽装士に協力を要請しなければ。

 

 そう思った次の瞬間、暗天により空の色が変化する。この状況で、あの化神達の攻撃を逃れて救援を求めるのはほぼ不可能に近い。

 向こうもこちらを逃がすつもりなどないのか、ゲツエイを包囲する。

 

 それでも紫は黄泉を助けようと、呪術を用いて化神達の意識を逸らそうとした。

 

「愛弟子、逃げよ! ハァッ!」

 

 だがそれはバケヨロイにより防がれた。印を結び紫から放たれた火球を、バケヨロイの刀が一振りで打ち消した。

 

『邪魔はさせん』

「チッ! お主ら、何が目的じゃ!」

 

 紫が問い掛けるも、バケヨロイは答える事無く2人の合流を妨げる。その間に化神達によるゲツエイへの攻撃が始まった。

 

『ハァッ!』

「くっ!?」

 

 バケカガチが接近し、口を大きく開けてゲツエイを飲み込もうとしてきた。ゲツエイはそれを大太刀で受け止め、逆にバケカガチの口を切り裂こうとした。

 

 その大太刀をバケイバラの鞭が受け止めた。大太刀に鞭が巻きつき、あらぬ方向へ引っ張りバケカガチへの攻撃を妨害する。

 

「あっ!?」

『させぬよ』

『貰った!!』

 

 バケイバラに反撃を妨害された事でゲツエイに大きな隙が出来た。その間にバケカガチが接近し、ゲツエイの左腕に食らいついた。

 

「あぁぁぁぁっ!?」

『ならば右腕は貰った』

 

 食い込む牙と流し込まれた毒にゲツエイが悲鳴を上げていると、バケマネキが何時の間にか接近してきてまだ無事な右腕を大きな鋏で挟んだ。万力を超える力で挟まれ、ゲツエイの右腕の骨が軋みを上げる。

 

「ぅぅぅうううううう、あぁぁぁぁぁぁぁああああっ?!」

『フンッ!」

「ごふっ?!」

 

 左腕をバケカガチに、右腕をバケマネキに捉えられ、両手を広げさせられたゲツエイに更なる追い打ちが襲い掛かる。バケカブトがその体で彼女に向けてタックルを行ったのだ。重厚な甲殻に覆われた体はそれだけで武器になる。まるで重戦車の突撃の様な一撃に、ゲツエイは一瞬意識が飛び衝撃で大太刀も手放してしまった。

 

 バケカブトの一撃が決まると同時にバケカガチとバケマネキはゲツエイを解放した。それによって衝撃で吹き飛ばされたゲツエイは、近くの街灯などを薙ぎ倒して地面に叩き付けられる。

 

「がはっ!? あぐ、ぐ、うぅぅぅぅ……」

 

 武器を奪われ、腕を大きく負傷させられたゲツエイにあの化神達を倒す事は難しい。絶望的な状況に、バケヨロイに阻まれている紫の顔に焦りが浮かぶ。

 

「愛弟子――――!?」

 

「まだ、まだぁ……私は、まだ――――!!」

 

 既に満身創痍と言った有様のゲツエイだが、まだ彼女の闘志は消えていない。両腕を中心に体のあちこちが痛むが、それ以上に化神に対する憎しみと怒りの方が勝っていた。激情の炎が力となり、彼女を立ち上がらせ戦う力を与えた。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 獣の様な叫びを上げながらゲツエイが化神達に向け突撃する。無策で突っ込んでくるゲツエイの姿に、化神達は嘲りを感じながら迎え撃つ。

 

『愚か者め! 真っ二つにしてくれる!』

 

 突っ込んでくるゲツエイをバケマネキが鋏で両断しようとした。開いた大きな鋏が、ゲツエイの胴体を捉える。

 

 だがゲツエイはその鋏を両手で掴むと、力任せに押し広げた。バケマネキも鋏に力を籠めるが、それよりもゲツエイの方が力が上なのか鋏が広げられる。

 

『なぁっ?!』

「あぁぁぁぁぁっ!!」

 

 予想以上のゲツエイの力に慄いていると、ゲツエイは更に力を入れバケマネキの鋏を根元から引き裂いた。

 

『ギャァァァァァッ?!』

「フンッ!」

『おのれっ!!』

 

 自慢の鋏を引き裂かれ悲鳴を上げるバケマネキをゲツエイは蹴り飛ばす。その隙にバケカガチが大口を開けてゲツエイに食らいつこうとする。

 それをゲツエイは正面から受け止め、今度は無理矢理口を閉じさせるとその口を引き千切ったバケマネキの鋏で貫き縫い留めた。

 

『んぎぃぃぃぃぃぃぃっ!?』

 

 手負いの状態で立て続けに2体の化神を無力化してみせた、そのゲツエイの底力と執念は大したものだろう。

 

 だが彼女の反撃はそこまでだった。

 

 バケカガチの口が縫い合わされたその瞬間、ゲツエイの首に茨の鞭が巻きつき持ち上げた。鋭い棘がゲツエイの首に食い込む。

 

「あがぁぁぁぁぁっ?!」

 

 街灯を使って上に引っ張り上げられたゲツエイは、窒息と食い込む棘に苦痛の悲鳴を上げる。

 

 そこにバケカブトとバケムカデの突撃が前後から叩き込まれた。凄まじい力で体を挟まれ、彼女の背骨がミシリと音を立てる。

 

「あ、か――――」

 

 前後から挟まれ、体を潰されたゲツエイの体から力が抜けた。バケイバラに吊り下げられたまま、釣り上げられた魚の様にだらりとぶら下がる。

 

『死んだか?』

『意外と骨のない。もっと甚振らせてくれるかと思ったが』

『まぁ良い。後はこいつを――――』

 

 化神達がゲツエイをこの後どうするか話し合っていた時、不意に彼女の手がピクリと動いた。

 彼女はまだ死んでいない。それどころか、化神に痛めつけられる毎に怒りと憎しみを滾らせ、力を高めていた。

 

(師匠……ごめんなさい。もう、限界なんで…………使います。ジュウケツを!)

 

 唐突にゲツエイの双眸が赤く輝いた。怪しい赤い光を放ち、それと同時にゲツエイの体を瘴気が包んでいく。

 

「ぐぅぅぅぅぅぅ…………」

『な、何だ?』

『何が起こっている?』

 

「ッ!? いかん! 止めよ愛弟子!? ジュウケツを使ってはいかん!!」

 

 紫が慌ててゲツエイを止めようとしたが、もう彼女は止まる事はない。瘴気に包まれた中、ゲツエイの姿が変わっていった。

 

 両肩の肩当は腕に移動し籠手となり、両足の装甲は変形し爪先立ちした獣の様になる。

 籠手からも赤く輝く爪が生え、一際大きく双眸が輝いた時。そこに居たのはゲツエイの姿をした獣だった。

 

「グルルルル、ガァァァァァァァァァッ!!」

 

 これこそがゲツエイの奥の手とも言える姿、その名もゲツエイ・ジュウケツだ。黄泉に埋め込まれた化神の左目から化神の力を引き出し、ゲツエイの力を合わせる事で驚異的な力を発揮する事が出来る。それこそ大抵の化神では手も足も出ないほどにだ。

 

 だがその代償に、この姿になると理性の殆どを失ってしまう。この姿を解くには、ゲツエイが体力を使い果たすか黄泉がギリギリで理性を取り戻すかのどちらかしかない。

 その危険性故に紫は安易にジュウケツを使わないようにと度々黄泉に説いていたのだが、もうそんな事を言っていられる状況ではなくなってしまったのだ。

 

『な、何だこれは!?』

 

 ゲツエイの変化に化神達が狼狽える。それが彼らの命取りとなった。

 

 まずゲツエイは自分の首に巻きついている鞭を力尽くで引き千切った。触れれば傷だらけになる様な茨の鞭も、籠手の前には意味を成さず強化された力と鋭い爪によりあっという間に引き千切られゲツエイを自由の身にする。

 

 そして自由になったゲツエイが真っ先に襲い掛かったのは目前に居るバケカブトだった。爪を拳の様に握り、重厚な甲殻で覆われたバケカブトの体に叩き落す。

 

『くっ!』

 

 咄嗟に防御態勢を取るバケカブトだったが、ゲツエイの拳はバケカブトの体を一撃で粉砕し、腕をへし折り腹を穿ち背中まで貫通させた。

 

『がぁっ?!』

『何ぃっ!?』

 

 この場に居る中でバケカブトの甲殻は1~2を争う頑丈さを誇っていた。それが一撃で粉砕された事に化神達の間に動揺が広がった。

 

「ウルァァァァァァァァッ!!」

 

 ゲツエイの攻撃はそれだけに留まらず、バケカブトを貫いたままの腕を振り回し背後に居るバケムカデに叩き付けた。既に骸となったバケカブトの重量とゲツエイの力で、バケムカデの体は一撃で叩き潰される。

 

『ぎゃぶっ?!』

 

 潰れたカエルの様な悲鳴を上げるバケムカデ。その衝撃でバケカブトの体が完全に砕け、ゲツエイの右腕が自由になる。

 

 自由になった両手の爪を広げ、ゲツエイはバケマネキとバケカガチを次々と引き裂き血祭りにあげた。

 

「ガルァァァァァァァァッ!!」

『や、止め、ぎゃ――!?』

『ひ、ひぃぃぃぃぃぃっ?!』

 

 先程までの様子は何処へ行ったのか。狩るものと狩られるものは完全に入れ替わり、残る化神はバケイバラとバケヨロイのみ。

 

 まず真っ先に標的となったのはバケイバラの方だった。ゲツエイが赤く輝く相貌で睨むと、睨まれたバケイバラは恐怖に戦き後退った。

 

『あ、あわわ……こんなの聞いてない!? こんな奴だなんて――!?』

「グルルルル――――!!」

 

 今にも襲い掛かろうとバケイバラにゲツエイが迫る。バケイバラはこれ以上は無理だと、その場から一目散に逃げだそうとした。

 が、何故か足がその場から動かない。まるで何かに縫い付けられているかのように足がピクリとも動かないのだ。

 

『な、何? 何で!?』

 

 足が動かない事に困惑するバケイバラに、ゲツエイが爪を広げて襲い掛かる。振り下ろされた爪に、バケイバラは逃げる事も出来ず切り裂かれた。

 

『うぎゃぁぁぁぁぁっ?!』

 

 バケイバラの断末魔の叫びが辺りに響き渡った。

 

 その瞬間、ゲツエイの足元に陣の様な紋様が浮かび上がった。

 

「ッ!?」

「愛弟子、逃げよ!?」

 

 紫が使うのとは異なる呪術の気配に、ゲツエイだけでなく紫も危険を感じ離れるよう命じた。だがゲツエイが逃げるよりも早くに、紋様から伸びた稲妻がゲツエイの全身を焼くのが早かった。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁあああああああああっ?!?!」

「愛弟子ッ!?」

 

 全身を走る電撃の痛みに、ゲツエイは皮肉にも正気を取り戻した。それと同時に体力の全てを奪われ、力無く倒れると同時に変身が解除された。

 

 そして――――

 

「これで、全ての仕込みは終わりましたね」

 

 倒れた黄泉の前に、気持ちの悪い笑みを浮かべた将之が悠々と姿を現した。

 

 息も絶え絶えになりながら、黄泉は将之を睨み付ける。

 

「あ、あんた……一体…………」

「おや、お忘れですか? 私はあなたの事を一日たりとも忘れた事はなかったと言うのに?」

「え?…………ッ!? あ、あぁ――――!!」

 

 思い出した。この将之と出会ったのは、忘れもしない。家族を奪われたあの時の事。

 

 あの時、家族を全て失った黄泉の前に現れ、そして――――

 

「私に……私に、この左目を植え付けた、あの時の――――!?」

「何、あやつが!?」

「やっと思い出していただけましたか。お久しぶりですねぇ」

 

 黄泉に思い出してもらえたからか、将之が嬉しそうな声を上げる。

 

 だが倒れた黄泉にとって、将之は自分の仇の1人だ。忌々しい化神の左目を受け付けた張本人であり、そして恐らく、化神に家族を襲わせたのもこの男なのだ。

 許せる訳がない。黄泉は満身創痍で息をするのも苦しい中、執念だけで体を動かし将之に這いずって近付いていく。

 

「返せ、返せぇ!? 私の家! 私の家族!? 私の、人生――――!!」

 

 腕の力だけで体を引き摺り将之の足元に近付くと、力の入らない手で彼の脚を掴んだ。

 

 足を掴まれた将之は、その手を軽く払うと逆に踏み付けた。

 

「あぁっ?!」

「勘違いされては困ります。返すのはあなたの方ですよ」

「な、何を――――?」

「…………まさか!?」

 

 奪われた側の自分が一体何を返すと言うのかと、黄泉が手を踏みつけられる痛みに顔を顰めながら問い掛ける。

 一方紫の方は、将之が何を言っているのかに気付き顔を青褪めさせた。

 

「くっ!」

 

 これ以上将之の隙にはさせないと、黄泉を助けに向かおうとする紫だったがそれはバケヨロイによりまたも阻まれる。放った影狐はバケヨロイの刀により切り裂かれてしまった。

 

「えぇい、邪魔じゃ!!」

『邪魔はお前だ。我らの計画の邪魔はさせない』

 

 紫がバケヨロイと対峙している間に、将之は本格的に行動を起こした。右手に爪のついた手袋を嵌め、足を黄泉の手から退かすと同時に彼女の首を左手で掴んで持ち上げた。

 

「うぁっ!? ぐぅぅぅぅっ!?」

 

 持ち上げた黄泉の顔の前に、将之は右手を近付ける。正確には、彼女の左目の前にだ。

 

 そこで漸く、黄泉も将之の狙いが分かった。この男は、黄泉の左目に植え付けられた化神の左目を抉り取るつもりなのだ。

 

「ま、待っ、止め――――!?」

 

 黄泉が声を上げるが、将之は止まらない。寧ろ彼女の恐怖に染まった表情を楽しむように、笑みを深めるとその手を突き出した。

 

「返してもらいますよ、その左目を!!」

 

 将之の右手は狙い違わず黄泉の左目に食い込み、力尽くで彼女の左目を抉り出した。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!?!?!?!?!?」

「黄泉ぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

 左目を抉り取られ、黄泉の絶叫が周囲に響き渡る。

 

 紫はそれを見ているしか出来ず、その光景に将之は恍惚とした笑みを浮かべていたのだった。




という訳で第9話でした。

今回黄泉が大ピンチでしたが、黄泉の受難は今回だけでは終わりません。次回も続きます。
正直虐めすぎかなとも思いますが、その分挽回する展開はちゃんと用意していますのでその時をお待ちください。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
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