スーパーロボット大戦Z 魔王が進む覇道   作:有頂天皇帝

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まえがき
今回はルルーシュたちとシュナイゼルたちの決戦に向けての準備期間です。


第六話 潜む悪意

 

ダモクレスの空中庭園にて。ルルーシュから一方的に通信を切られたナナリーはゆっくりとその手を下に降りていき、再びそれは膝の上で強く握られた。

 

「・・・大丈夫か?ナナリー」

 

そう心配げに声をかけたのは、周囲から人払いをし、その場に残っていた義姉のコーネリアであった。コーネリアと同じくナナリーのそばにいたシュナイゼルも同調した。

 

「辛い思いをさせてしまったね。フレイヤの威力を見せつければ降伏してくれると思っていたんだけど」

 

周囲には色とりどりの花々が咲き誇っていた。ここは先ほど、海中に待機していたところを空中へと舞い上がった天空要塞ダモクレスの頂上部に位置する艦内庭園。上級将校以上の者が入ることを許可された庭園だ。


空調機が吐き出す風にあおられ、ナナリーの車椅子の横で黄色い可憐な花が微かに揺れている。その名を「オンシジウム」────以前、C.C.がナナリーに相応しいと言っていた花に囲まれ、ナナリーは下を向いている。

 

やがて、すいとナナリーの顔が上がり、それは隣にいたシュナイゼルの方向に向けられた。

 

「シュナイゼルお兄さま・・・帝都(ペンドラゴン)の人たちは、本当に大丈夫なのですか?」

 

その問いに、シュナイゼルはにこやかに微笑んだ。

 

「心配いらないよ。あらかじめ避難誘導を済ませたからね」

 

その言葉を聞いて、はっとしたような表情を浮かべたのはコーネリアであった。シュナイゼルが、さらに言った。

 

「もちろん、被害が皆無とはいかないけど、最小限に留めたつもりだよ」


「・・・っ」

 

コーネリアが刺すような眼差しでシュナイゼルを見ている。
そして、ナナリーは────ごく平然としていた。わずかに首をかしげてから、シュナイゼルにまた声をかける。

 

「・・・シュナイゼルお兄さま。私にフレイヤの発射スイッチをいただけませんか?」


「ん?」

 

シュナイゼルがやや意外そうな顔になった。一方のコーネリアは黙り込んだままだった。
ナナリーは、続けた。

 

「私には、戦うことも守ることもできません。だからせめて、罪だけは背負いたいんです」

 

その言葉に反応を見せたのは、言われたシュナイゼルではなかった。
シュナイゼルから逆側からコーネリアがすいとナナリーに近づき、やはり険しい瞳でシュナイゼルを見据え、剣幕をきかせた低い声でこう言った。

 


「・・・兄上。少し、よろしいでしょうか」

 

 

エリア11、消失したトウキョウ上空。
そこには、ログレス級浮遊航空艦、カールレオン級浮遊航空艦といった大量の航空艦による艦隊が浮かんでいた。その艦隊の中心に、ログレス9浮遊航空艦の数倍の大きさを誇る剣のような鋭さのあるスペースノア級戦艦ハガネをモチーフに開発されたルルーシュ皇帝御用艦ウラヌス。その艦内、固く扉が閉ざされた一室で、怒声が響き渡っていた。

 


「────C.C.!! なぜナナリーのことがわからなかった!?」

 


ルルーシュであった。先ほど、通信でナナリーやシュナイゼルと会話していた時の演技などかなぐり捨てている。
毛足の長い絨毯の上をいらいらと歩き回り、ルルーシュはやり場のない怒りと焦燥感をすぐそばにいたC.C.にぶつけた。ちなみにこの室内には、C.C.の他にも、ライ、モニカ、ミリアルドそしてジェレミアがいる。

 


「・・・私は神ではない。ギアスによるつながりがない人間のことまでは把握できん。ナナリーの動向は、彼女に聞け」

 


C.C.がそう言って、何?と、ルルーシュが言おうとしたその時。同じく室内にいたライが、部屋の扉を振り返った。

 

「入ってくれ」

 

ライがそう言うと、部屋の扉がシャッと開いた。するとそこから、マリオ・ディゼルとマーヤ・ディゼルのディゼル兄妹が運ぶ形で、介助式の車椅子に乗せられた咲世子が入ってきた。

 

「ルルーシュ様」

 


「咲世子・・・!?君も生きていたのか!」

 

咲世子の姿を見て、ルルーシュは驚きに大きく目を見開いた。

 

「何とかフレイヤの爆発から逃れる事が出来たのですが、身体が動かず、ご連絡が遅れたことをお詫びいたします」

 


「それで、ナナリーは・・・!」

 

縋るようにして聞いてくるルルーシュ。咲世子に代わり、ライがこう答える。

 

「・・・フレイヤに巻き込まれたのは、シュナイゼルが用意した囮だったそうだ。そして本物のナナリーは、グリンダ騎士団とノネット・エニアグラムによって保護されたが、シュナイゼルの手の者に連れ去られてしまい、あのようなことになったらしい」

 


「グリンダ騎士団・・・マリーベル殿下の筆頭騎士であるオルドリン・ジヴォンのいる部隊ですか。まさか、そのようなことになっていたとは」

 

かつて数度だけ戦場を共にしたことのある騎士団の名前が出たことに、モニカが神妙な表情になる。そして彼女の横にいたジェレミアが、思い出したようにこう聞いた。

 

「しかし、咲世子・・・君の直属の上官であるディートハルトは、シュナイゼルの下にいる。何故君は、危険を冒してまで陛下のところに?」

 


「・・・言われてみれば、そうですね」

 

咲世子はそれだけしか答えず、車椅子の上で少し考えるような仕草を見せただけだが、ジェレミアは咲世子の考えと理由がわかったらしく、

 

「フム・・・騎士道に殉じる、と言ったところかな。君も」

 


「・・・ふふ」

 

ジェレミアの言葉に、咲世子は頷いた。
ジェレミアがルルーシュを主として認めているのと同じように、咲世子もナナリーを主として認めている。だからこそ、どんな危険な目に遭ったとしても、ナナリーと、彼女に捧げる信義のためならば、命は惜しくない。そういうことなのだろう。

 

「シュナイゼルめ・・・!この事実を今まで隠しておいたのか!?カードとして効果的に使うために!!」

 

さらに湧き上がってきた苛立ちをぶつけるかのように、ルルーシュはテーブルの上に置かれていたチェス盤と駒をひっくり返した。

 

「ならば、貴様のカードの切り方は絶妙だったぞ!!こんなにも・・・!こんなにもっ!!」

 


「陛下、落ち着いてください・・・!」

 

ジェレミアとモニカが慌てて宥めようと近寄った時、ルルーシュは呻きながら自分の胸を押さえ、椅子に座った。


その頃、ルルーシュがひっくり返したチェスの駒のひとつが、マリオの爪先まで転がっていき、そこで当たって、止まった。


そこで荒く息をついた後、マリオは俯いたルルーシュの前まで歩いていった。それにルルーシュが顔を見上げた途端、

 


「────しっかりしろ、ルルーシュ!!!戦略目的は変わらないっ!!!」

 


マリオは力任せにルルーシュの胸倉を掴み、容赦なく立たせた。

 

「マリオっ!?」

 

驚きを隠せないルルーシュに、鼻先がつくほど顔を寄せて、マリオは容赦ない叱咤を浴びせる。

 

「確かにナナリーが生きていたことには僕達も驚いた。だけど、それは立ち止まる理由にはならないだろう(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)!!」

 

「──────!!」

 

マリオの言葉にルルーシュが再び驚きに大きく目を見開いた瞬間、マリオはルルーシュを突き飛ばした。椅子が倒れ、ルルーシュは床に尻餅をついてしまう。


呆然とルルーシュが見上げた先で、マリオは突き放すようにさらにこう言い放った。

 

「顔を洗ってこい。そんな腑抜けた目をした男が、皇帝を名乗ることは許されない」

 


「・・・わかっている」

 

騎士が主君に向ける言葉としてはあまりに無礼な一言だったが、ルルーシュは反駁せず頷いてゆっくりと立ち上がり、出口へと向かう。そして去り際に咲世子とすれ違った時、

 

「・・・咲世子。君には今後、マリオとマーヤ同様ライの指揮下についてもらう。ライならばディートハルトよりも期待はできるだろう。・・・委細はライに任せておくから、わからないことがあるならば彼に聞くといい」

 


「承知いたしました。ではライ様、今後ともよろしくお願いいたします」

「・・・はい」

 

車椅子の上から咲世子がそう会釈すると、ライは大きくゆっくりと頷いた。


それを見届けてから、ルルーシュは肩を落としたまま出ていった。少し遅れて、ジェレミアとモニカが、無言でルルーシュの後を追うようにして出ていった。

 

そして、二人が出ていった後、C.C.とマーヤ、ライがマリオに目を向ける。

 

「マリオ」

 

「兄さん・・・」

 


「マリオ、君は・・・」

 

ライはともかく、C.C.の人形めいた美貌とマーヤの可憐な乙女らしい可愛さのある顔にも多少、非難の色があった。少し口が過ぎるのではないか────と、表情がそう言っていた。
マリオはそれに対して、淡々と言葉を返した。

 

「忘れたのか、ライ。僕は────いいや、僕たちは彼の『剣』だ。彼の敵も弱さも、僕たちで排除しなければならない」

 


「っ・・・」

 

マリオのその言葉に、ライがグッとなる。

 

「そしてマーヤ。僕たちは既にルルーシュと契約を交わしたはずだろ。その契約を果たすためにも、こんな所で立ち止まっている暇はない」

 

「・・・そう、ね」

 

マリオの言葉にマーヤはハッとなり、顔を下に向けながらその言葉に同意する。

 

「だから、C.C.・・・君は、『盾』になってくれ」

 


「・・・盾?」

 

そして、C.C.の眉がぴくりと動いた。

 

「────守るのは、君の役目だ」

 

さらに淡々とそう言ったマリオの顔を、C.C.はじっと見つめ、それから軽く吐息した。

 

「・・・勝手な言い分だな」

 


「ルルーシュは君の共犯者なんだろう?」

 


「共犯者、か・・・」

 

C.C.がその言葉を繰り返した時、《終焉の騎士(ナイトオブゼロ)》として気持ちを入れ替えたライはマリオとマーヤに指示を出し始める。

 

「マリオ、マーヤ。本国に待機している《運命の騎士》全員に今回のこと全てを連絡しろ。各地に散った機甲師団すべて・・・そして、マリーベル皇女殿下にも連絡を入れておいてくれ。《運命の騎士》全員と全ての戦力が揃い、ルルーシュが落ち着き次第、一週間後の決戦に向けて軍議と準備を始める」

 


「「イエス・マイ・ロード」」

 

マリオは頷き、マーヤと咲世子と共に、部屋を出ていった。ライもその後に続くように、部屋を出ていく。
ただひとり残されたC.C.は、彼らの後を追おうとしなかった────。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

消失半径100キロメートル。
爆発時の原子分解レベルは臨界値。死者多数。
これがナナリーが許可を出し、シュナイゼルが撃ったフレイヤのもたらした結果である。

 


「では、ペンドラゴンの住民は────!!」

 


薄暗い小部屋で、青ざめた顔をして尋ねるコーネリアの前で、シュナイゼルは微笑んでいた。周囲に他の人影はない。

 


「────消えてもらったよ。そのほうが幸せじゃないのかな? ライや《運命の騎士》、マリーも含めた一部の者たちとは違って、ルルーシュに強制的に忠誠を誓わされる人生より」

 


穏やかに、残酷なまでの真実を告げるシュナイゼルに、コーネリアは頭が真っ白になりそうになった。

 

「し、しかし・・・ナナリーは!!」

 


「嘘も方便だよ。ナナリーがルルーシュに立ち向かう決意を鈍らせないためにも、余計な情報は入れないほうがいいだろう?」

 

憤りをついに禁じ得なくなったのか、コーネリアがきっと眉間に力を込めた。

 

「兄上は・・・そうやって人を操るのですか・・・!」

 

常に自ら最前線に立ち戦場を駆け巡る烈女であり、他国からは「魔女」と呼ばれて恐れられていた妹に見据えられても、シュナイゼルは全く動じなかった。
むしろ、やれやれとでも言いたげに首を左右に振った。

 

「コーネリア・・・どうも君は個人の感情に縛られすぎているね。我々が今目指すべき山頂(いただき)

は、犠牲無くしては到達できない場所だよ。人々の命も、そして・・・情も」

 


「だからといって、戦闘要員でもない民間人を────!!」

 


「人々の願いはなんだい、コーネリア? 飢餓や貧困、差別、腐敗、戦争にテロリズム・・・世界に溢れる問題を無くしたいと願いつつも、人は絶望的なまでに分かり合えない」

 

そう。今まさに戦いを止めようとしない自分たちやルルーシュのように。

 

「最も愚かな外交手段、戦争・・・せめて、これだけでも無くしたいじゃないか。しかし、それに必要なのは、慈悲でもない。理解でもない。まして、真実などではありえない。────力を持った、幻想さ」

 

シュナイゼルは、手元にあったコンソールパネルに手を置いた。途端に、ぱっと室内に光が灯る。
シュナイゼルとコーネリアが向き合った横にある液晶モニター。浮かんだのは、立体型になった世界地図と、その上空を飛行する天空要塞ダモクレスの軌道。全長3キロにも亘る、巨大な空中要塞────。
それらを見て、コーネリアが我が目を疑うと。

 

「このダモクレスは、10日後には人革連の領空に入り、第二次加速に移行する」

 


ハッとしたコーネリアに対し、シュナイゼルは優しげに、恐るべき目的(たくらみ)を告げた。

 


「その後、地上3000キロメートルの衛星軌道上まで到達する予定だ。そして────その位置から、|戦争をやめない全ての国々《

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》

に対してフレイヤを撃ち込む」

 


コーネリアは、再び頭が真っ白になりそうになった。

 

「ま────待ってください!! まさか、天から戦争をする国にフレイヤを落とすと!?ルルーシュを討つためではなかったのですか!?これでは世界中が・・・恐怖で人を従えようというのですか!!」

 


「もともと、我らが父上もこうおっしゃって、ブリタニアにやらせていたじゃないか。平和というのは所詮、幻想だと。戦うことが人の歴史、本性。その父上も唾棄していた幻想を現実にするためには、躾が必要だとは思わないかい?」

 


「人類を教育するおつもりだと!?そんなことは神でもなければ許されない────!!!」

 

ついに本格的な感情を露わにしたコーネリアのその言葉を一蹴するかのように、シュナイゼルはついに声をあげて笑った。

 


「────では、神になろう」

 


「なっ!?」

 

まるで朝の献立でも口にするかのように、あっさりとシュナイゼルはそう宣言した。

 

「人々が、平和を私に望むのであれば・・・ね。立場や性格なんて、所詮は何かを表現するための手段のひとつだよ。『自分』などという代物ほど曖昧なものは、この世には存在しない。それ自体には何の意味もないんだ」

 


「あ・・・あなたはっ・・・!!!」

 

背筋を震わせ、吐き気を催す邪悪が口にするものといっても過言ではないシュナイゼルのその御託に、コーネリアがギリッと奥歯を噛んだ。
と、その時、不意に二人のものではない、場違いな拍手が辺りに響き渡った。

 


「────素晴らしいっ!!!」

 


コーネリアとシュナイゼルが、同時に振り返る。
開いた小部屋の扉。そこにふたつの人影が立っていた。ひとりはシュナイゼルの副官であるカノン・マルディーニだが、もうひとり、その金髪でやや顎の張った長身の男がいた。ちなみに、拍手しているのはこの金髪の男だ。

 


金髪の男の名は、ディートハルト・リート。生粋のブリタニア人でありながら、ライと共にあの黒の騎士団でゼロの参謀役を務めていた男だが、例のゼロ追放以降、いつの間にかシュナイゼルのところに身を寄せていた。一応、名目上は黒の騎士団から派遣された外交使節という立場を取っているが、それは単なるお題目に過ぎず、要するに黒の騎士団に居辛くなったというのが変節の真相だ。ちなみに元々、この男のことを認めていたのはゼロ=ルルーシュとライくらいのものであり、他のメンバーからは招かれざる客として多かれ少なかれ白眼視されていたのだ。

 

「やはり、あなたについてきて正解でした・・・!!ゼロのカオスをも凌駕する完璧なる虚無!!!多様なる変幻────!!!」

 

拍手を続け、感激し切ったように叫び続けるディートハルトの横から、すいとカノンが進み出た。

 

「シュナイゼル殿下。シャドウミラー及びノイエDCと連絡がつきました。フレイヤについては否定的でしたが、ルルーシュを討つためならば我々と手を組むと」

 


「ありがとう」

 

シュナイゼルは歓喜に叫び続けるディートハルトを無視して、カノンにそう答えた。

 

「これでこちらのカードは全て出揃った。ルルーシュの暴虐を経験した民衆は、よりマシなアイデアに縋ることだろうね」

 

その言葉に、コーネリアはギクリと身を強張らせた。愕然として、再びシュナイゼルに向き直り、震える声でこう問い質す。

 

「あ、兄上・・・まさか、そのために今まで動かず、ルルーシュの行動を放置していたと────!?」

 

シュナイゼルは否定しなかった。どこか冷たい笑みを浮かべて、こう言い放った。

 

「これが最も被害の少ない方法だよ。たとえ10億20億の命がなくなったとしても、恒久的な平和が────」

 

全くもって悪びれもしないシュナイゼルのその言葉が、コーネリアの理性をついに焼き切った。

 


「違います!! ただ強制されるだけの平和など、それは────!!!」

 


その叫びと共に、コーネリアのマントが自らの手で跳ね上げられる。
腰から引き抜かれたのは、剣と一体型になった銃。叫びと共に、コーネリアはシュナイゼルに向けようとしたが、

 


「やれやれ・・・所詮、君はこの程度の器だったか。哀しいね」

 


そこで、シュナイゼルが指を鳴らした。瞬間、銃声が響いた。
しかし、それはコーネリアの銃が発したものではなかった。

 

「・・・な・・・っ・・・」

 

四方に置かれていた、女神を象った石像。その内側から素早く銃身が伸び、一斉に火線を放ったのだ。
前後左右からコーネリアを無慈悲に、無残に灼熱の衝撃が貫いた。

 

「君の役目は終わった、コーネリア。ゆっくりと休むといい」

 

倒れ込むコーネリアを見下ろしながら、シュナイゼルは冷然とつぶやいた。
床に伏した皇女は、もはやぴくりとも動かない。それをディートハルトは嬉々とした目で眺め、カノンは複雑そうな眼差しで見ている。
そこに、シュナイゼルの声がかけられた。

 

「後のことは任せるよ、カノン」

 


「は・・・はい」

 

それでようやくカノンも我に返った。ややぎこちなく頷いてから、シュナイゼルに問いかけた。

 

「Bラインで処置いたします。ファランクス卿が消えたとはいえ、このダモクレス内にもまだコーネリア殿下に心を寄せている者はいますから・・・許可いただけますでしょうか?」

 


「ああ。それで構わない」

 

すでにシュナイゼルは、目の前で倒れている用済みの妹のことなど眼中にない様子だった。足の向けきを変え、入り口のところにいるカノンの元へと歩み寄ってくると、

 

「それで、ナナリーはどうしている?」

 


「艦内庭園に留まられたままです。戦いのときも、あちらにいたいと。・・・ところで、本当によろしいのですか? フレイヤの発射スイッチの件は」

 


「ふむ・・・。まだナナリーに利用価値があるのは確かだが────」

 

そこで初めて、シュナイゼルも真剣な顔になって小首を傾げた。

 

「ゼロ・・・いえ、ルルーシュの一手を遅らせられる可能性はありそうですな」

 

ディートハルトが割って入ってきたが、シュナイゼルはその言葉も無視して、カノンに話し続ける。

 

「少し先走りし過ぎているあの態度は気になるが・・・いいや、だからこそ、退路を焼き払っておくことにも意味はあるだろう。自分でフレイヤを撃ってしまえば、もうナナリーも後戻りはできはしないよ。後は勝手にルルーシュたちを撃ってくれるようになるさ」

 


「しかし・・・」

 


「それにどの道、ナナリーにできることなど何もないからね。もし、いざという時に躊躇うようなら、改めてこちらで対応すればいい。そうだろう、カノン?」

 


「・・・・・・」

 

カノンが納得できない顔で沈黙する。ただ、それ以上はカノンは何も言わなかった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

エンブリオの支配する領域である次元の狭間にて、エンブリヲはバルコニーで優雅に紅茶を堪能しながら通信モニター越しにディガルド武国の新皇帝であるジーンと対話していた。

 

『──────それで?約束通りペンドラゴンの住人たちは確保出来たのだな?』

 

「えぇ勿論。ですが数が数だけに一度に送り届けることは出来ないので分けて送らせて頂く」

 

『構わん。機械兵の補充が出来ればこちらの戦力は充分揃う。貴様が提供したモビルドールのシステムのおかげで我がバイオゾイドたちの強化は既に完了している。あとは部品(パーツ)である機械兵を搭載するだけだ』

 

エンブリヲとジーンは互いに腹の中を見せず内心見下し合いながら話し合う。

 

────シュナイゼルやルルーシュたちは知らなかった。ペンドラゴンにフレイヤが放たれる数時間ほど前には既にペンドラゴンの住人はエンブリヲの手によって別の場所へと意識を奪った状態で別の場所に連れていかれておりペンドラゴンに残っていたのはルルーシュのギアスによって支配されたペンドラゴンに警備として残されたギアス兵数十人ほどで、シュナイゼルたちが想定している以上に人的被害はなかった。

 

しかし、フレイヤによって苦痛もなく消えた方が彼らにとって幸せだったかもしれない。ジーンの語る機械兵とはディガルド武国の主力兵器である人工ゾイドであるバイオゾイドを操作するためのアンドロイドの一種として兵士たちに知らされていた。だが、その正体はバイオゾイドに適合させるために身体から魂を抜き取り機械に魂を埋め込んだ、人の魂を動力に動く兵士であった。

 

これによって性別・年齢を問わずにさらには病人すら関係なく機械兵にし、本来ならば適正の必要なバイオゾイドたちを大量に運用することが可能となった。

 

この事実を知ったディガルド四天王が1人、ザイリン・ド・ザルツはジーンに反逆することを決意し、ディガルドの反抗勢力であるルージ・ファミロンたちディガルド討伐軍と協力しディガルド軍に機械兵の真実を伝え、彼らを新たに仲間に迎えジーン討伐軍となった。これによって現在のディガルド武国の人間はジーンとフェルミを含めて僅かな人員しか残っていなかった。

 

「それではこれで失礼させてもらおう。私としてもまだ色々とやることが残っているのでね」

 

『あぁ。では次は1週間後の決戦でな』

 

そうして通信モニターが切れると笑顔の仮面を剥がしたエンブリヲは忌々しげに顔を歪めながら舌打ちを零す。

 

「たかが人間風情が神を語るとは・・・全く度しがたいものだよ」

 

自称・絶対神を名乗るジーンに対して怒りを隠さずそう言うエンブリヲだが、他者からすればエンブリヲもまたジーンと同じ穴の狢でしかなくソレは同族嫌悪としか見えなかった。

 

「─────おやおや。珍しい空間を見つけたかと思えば先客がいたとはね」

 

「────っ!?」

 

突然聞こえてきた声にエンブリヲは思わず椅子から立ち上がり周囲を見渡す。自分か自分が認めたものしか入れないこの空間に他者が入り込むなど有り得ない。しかし確かに声は聞こえたためエンブリヲは周囲を警戒しているとソレは現れた。

 

「おっと失礼。こちらとしては君に敵対する気は無いのでね。素直に姿を現すとしよう」

 

その声が聞こえるとエンブリヲの目の前の空間が歪み、そこから現れた存在たちを目にしてエンブリヲは初めて目を見開き顔を青ざめた。

 

歪んだ空間から先ず現れたのは全身を真っ黒な外装で纏い、頭や肩から何本持つのを生やしており悪魔や魔王のような恐ろしい姿だった。サングラスを思わせる赤い目に電飾モニターのような歯そして後頭部からは青い炎のようなオーラを発生させていた。

 

次に現れたのはウェーブのかかった銀髪の美男子。その目はエンブリヲを移しておらずここにはいない彼の獲物のことしか考えていなかった。

 

そして最後に現れたのは長髪の生体サイボーグのような姿をした存在であり、この中で最も強烈なプレッシャーを放っていた。

 

「む、ムゲ・ゾルバトス・・・」

 

エンブリヲは顔を青ざめながら思わず後ろに後ずさりをすると、ムゲはその腕を伸ばしエンブリヲの首を掴み持ち上げた。

 

「がっ・・・!はっ・・・!?」

 

「久しいなエンブリヲ。貴様があの戦いから逃げて以来だな」

 

ムゲは淡々と事実を述べるかのように無機質な声でエンブリヲに問いかけるよう話しかけるが、首を絞められているエンブリヲは呼吸に必死で答えることは出来ないでいた。

 

「今までよく見つからずに済んだものだな。あの戦いで生きのびたものの中には貴様に憎悪を抱いているらしいが、まぁ私にとってどうでもいいことだな」

 

ムゲはそう言うとエンブリヲの首から手を離した。ムゲの手が首から離れたことでエンブリヲは咳き込みながら深呼吸を繰り返す。

 

「おや?てっきりここで始末するのかと思ったんだがね」

 

「コレにはまだ利用価値がある。せいぜいあの小僧共とZEXISの戦力、そして貴様の言うドライクロイツとやらの戦力を図るのに使ってやろう」

 

「ふむ。まぁ君がそう決めたのなら私から言うことは特にないかな」

 

ムゲは真っ黒な外装を纏った人物───アレクシス・ケリヴに対してそう返すとアレクシス自身もエンブリヲに微塵も興味もないのか彼に視線を向けることなくムゲと話を続ける。

 

「ではなエンブリヲ、貴様がZEXISたちを相手にどこまで足掻けるのか見てやろう」

 

ムゲはそうエンブリヲに告げるとアレクシスとジアートと共に空間を歪ませたかと思えばその場から完全に消え去った。

 

ムゲがいなくなった後、エンブリヲは怒りで顔を赤くしテーブルに置いてあったティーセット薙ぎ払った。

 

「クソがァっ!!死に損ない風情が私を見下しやがって!!」

 

しばらくの間、時空の狭間にエンブリヲの怒声が虚しく響き渡った。しかしこれはエンブリヲの因果応報(自業自得)でしかなく、これはエンブリヲの転落の始まりに過ぎないことをエンブリヲ本人はこの時まだ気づかないのだった・・・。

 

 

◆◆◆◆

 

 

本土にてルルーシュ皇帝軍が部隊を展開している帝都からかなり離れた荒野の周りは先日、帝都ペンドラゴンにフレイヤ弾頭が落とされたことによって厳戒警戒態勢が敷かれていた。元々ルルーシュが会談に向かう前から強力な兵器たちが地上と空、湖を埋め尽くさんばかりに並んでいたが、シュナイゼルと彼の元に集まった宿敵たちと戦うために新たな戦士たちが集っていた。

 

ウォーダン率いる第一独立師団にノイエDC(ディバイン・クルセイダーズ)の旗頭であるバン・バ・チュン大佐を中心としたノイエDC部隊。

 

アレンの第二機甲師団に大ゾギリア帝国のアルフリード隊からアルフリード・ガラント中佐を中心としたヴァリアンサー部隊。

 

ルナの第四機甲師団に北米同盟のブラッド・ワッド大尉率いるブラッド隊を中心としたAMAIM部隊。

 

アリサの第三混成師団に東の星と呼ばれる別次元の世界にてオワリ国のオダ家当主のオダ・ノブナガと彼に付き従うイクサヨロイ部隊。

 

その他にもシュナイゼルが放ったフレイヤ弾頭に恐れを生したもの達が細々とながらも集結しておりその規模はさらに巨大なものへと変化していた。

 

「随分とこの部隊も大所帯になってきたな」

 

後方で待機しているライノセラスの格納庫でヴォルフは周囲の警戒を行った際のついでに狩った鹿の肉にかぶりつきながらそう呟く。

 

「まぁ本心からルルーシュ陛下に従っている人間ばかりではないがな。殆どの人間がフレイヤを恐れているか何か別の思惑を持っているものばかりだ」

 

ヴォルフの隣で同じように狩りで狩った猪のステーキを切り分けて食しているエスデスはヴォルフに対してそう返す。フレイヤ弾頭による恐怖に屈したものたちはわかりやすいが他の理由で加わったものたちは内心それぞれの思惑を持っており決して油断のできるものではなかった。

 

「関係ないでしょ、利用できるなら利用する。逆に私たちの敵になるんだったら潰せばいいだけじゃない」

 

「そうね、そのために私たちがいるんだから」

 

手摺りに寄りかかりながらそれぞれサンドイッチとホットドッグを片手にルミナスとアリサはどこまでも冷徹にそう語るが全員が同じ気持ちであるためか同じように氷のように冷えきった鋭い瞳をしていた。

 

「ところでヴォルフ。ルルーシュ陛下が私に与えてくださったあの破壊龍。問題なく次の戦闘で扱えるのだろうな?」

 

食事を終えたエスデスはヴォルフに対して確認するように尋ねながら下で現在整備中のエスデスに与えられた超大型ゾイド《オメガレックス》を見下ろす。

 

「主力武装の荷電粒子砲を含めた武装の復元はほぼ完了している。ただ、破壊されていたバリア発生装置をEシールドに変更しているから少し時間がかかる。恐らく決戦ギリギリになるかもしれないが・・・」

 

「十分だ。決戦に間に合うというのならば問題ない」

 

ヴォルフが頭をかきながらそう答えるとエスデスは獰猛な笑みを浮かべてオメガレックスを見下ろす。

 

「なら1週間後の決戦じゃ私たち全員の機体がそろうってわけね」

 

「あぁ。今までは俺たち用にカスタムした機体で戦ってきたたが次の決戦は違う。《運命の騎士》としてその力を世界に示す」

 

ヴォルフたちは互いに笑みを浮かべあいながら決戦の時を待ち望むのであった。彼らの下ではオメガレックスともう一体の破壊龍、2機のKMFが鎮座しており機体たちもまた決戦の舞台を待ち望んでいるのであった。

 

それはヴォルフたちだけでなく他の場所で待機しているウォーダン、ゼハート、アレングラハムも同じ気持ちであり着々とシュナイゼルたちとの決戦の時が迫ろうとしていた。

 

しかし、この決戦はこれから始まる巨悪たちとの決戦の序章に過ぎす地球と宇宙、全ての人類にとって生存を勝ち取るための戦いの始まりなのであった。

 





あとがき
今回はルルーシュ陣営とシュナイゼル陣営の決戦準備を書きました。この小説ではフレイヤによる被害者は最小限になっていますが必ずしもそれが幸福とは言いきれません。オデュッセウスやカリーナなど一部の人間の生存とシュナイゼル陣営の戦力強化を考えた結果こうなりましたがまぁそれでもルルーシュ陣営の方が多分質は上回ってますね。次回はマリマヤとライ、黒の騎士団、ZEXISとの衝突を書いてその次に決戦を書こうと考えてます。ちなみに今後についての質問ですが、スパロボにて女性キャラ全員に罵倒を浴びせられたエンブリヲですが、この小説では数話かけて全キャラによる必殺技をくらわせることを考えているのですがどうでしょうか?感想や意見などがあればコメント頂けるとありがたいです。それではまた次回!

ルルーシュの未来はどちらがいい?

  • 原作通り悪逆皇帝
  • オリジナルとして賢帝
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