赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです   作:書鳳庵カルディ

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library of ruinaのエンディング後からのスタートです。
library of ruinaを知らない方向けの注釈が大量にあります。
後々、呪術キャラにこれらの固有名詞の説明をするパートがあるので、読むのが苦しい方は0話を読み飛ばしても大丈夫です。


第0話 マシな世界へ

「ん? この階に来るなんて珍しいな、アンジェラ*1。一体どんな風の吹き回しだ?」

「頼み事があって来たのよ、ゲブラー*2。ローランに任せてもよかったのだけれど、ちょっと忙しそうだし。あなたの方が適任だと思ってね」

 

 図書館が都市*3の外郭*4に放逐されて、しばらく経ったある日の事。

 アンジェラは久々にゲブラーの担当する言語の階にやってきて、臆面もなくそう言った。

 無論、ゲブラーには上司たるこの図書館長の頼み事に、心当たりなどない。

 

「別に、私も暇ってわけじゃないんだがな」

「でも、忙しいわけでもないでしょう? 外郭に放逐されてからはゲストの接待もないし、新しく整理しないといけない本が湧き出てくる事もないし」

「違いない。それで、頼み事っていうのは何だ?」

 

 早くもアンジェラの言い分に観念したゲブラーは、半ば投げやりにそう返事をする。

 すると、アンジェラは懐から一冊の本を取り出して、その表紙をゲブラーに見せた。

 そこには、タイトルとして"呪術廻戦"と文字が書かれている

 

「これは、ネツァクがいつもみたいにビールを取り出せる本を探していたときに見つけた本よ。一見、おかしな本には見えないけれど、まるで幻想体*5の本のように中に入ることが出来るわ」

「へぇ、こんな本がね。にしたって、この図書館はお前のE.G.O*6なんだろ? 図書館の中に出現したこの本に、なんの心当たりもないのか?」

「ええ、残念ながらね。だからゲブラー、あなたにはこの本の内部の調査をお願いしたいの。それが、もしかしたら私の願いを叶えるヒントに繋がるかもしれないから」

 

 アンジェラの言葉に、ゲブラーは思わず目を見開く。

 今のアンジェラの願いとはすなわち、都市で苦痛が繰り返される理由を突き止める事だ。

 そのヒントが、こんな本の中にあるというのか。

 

「私は、この本の中身を一通り読んだわ。芸術の階らしく、絵が主体の本だったのだけれど、そこには都市とはまるで違う世界が広がっていたの。人々は絶えず争っているし、物語の世界らしい化け物もいる。けれど、私たちの世界よりずっと優しくて、苦痛を繰り返させまいと足掻いている世界だったわ」

「……確かに、こんな世界に入れれば、ヒントを得られるかもしれないな。この世界でも、苦痛を繰り返さずに済む方法の。きっと、簡単にはいかないだろうが、やってみる価値はある」

 

 ゲブラーはアンジェラから件の本を受け取り、その内容に軽く目を通しながらそう言った。

 

 確かに、この呪術廻戦という本の世界では、主人公たちと呪霊や呪詛師との戦いが続いている。

 それでもこの世界では、カネのない奴ら同士で殺し合い奪い合うことも、いつどうやって殺されるか分からないまま生きていくことも、決して当たり前のことではないのだ。

 それだけで、アンジェラもゲブラーも十分だった。

 

「この本、今のところ完結はしていないけれど、ある程度登場人物の能力は判明しているみたいだから、事前に予習しておくことをおすすめするわ。それから、この本も渡しておくわね」

「これは……まさか、ロボトミー*7のときのE.G.Oか。こんな本も作れるようになったんだな」

 

 ゲブラーが渡された本のページをぺらぺらとめくると、そこには覚えのあるE.G.Oたちが眠っていた。

 

 貪欲の王の、黄金狂。

 何もないの、ミミック。

 それから、終末鳥の黄昏などなど。

 ロボトミー時代のセフィラ暴走で、ゲブラーが扱ったE.G.Oは一通り揃っているようだ。

 

「あのときのあなたは、怒りに呑まれて何も見えなくなっていたけれど、今のあなたならこのE.G.Oの力を誰よりも引き出せるはずよ。これだけあれば、向こうの世界の困難にも十分に対処できると信じているわ。もちろん、困難には遭遇しないのが一番だけれど」

「ああ、そうだな。この餞別はありがたく受け取っておくよ、アンジェラ」

「ええ。他の指定司書には私の方から事情を話しておくから、あとは任せたわ」

 

 そう言い残して、アンジェラはいつものように能力を使い、言語の階から去って行った。

 一方で残されたゲブラーは、これから何をすべきかを考える。

 

(まず、ここの司書補*8たちにはしばらく留守にする事を伝えておかないとな。この本の中から、どうやったらこっちの世界に帰れるかも不明だし。幻想体の本と同じなら、死ぬか本の主を倒せば本から出れるだろうが……楽観的に考えるのは危険だ。死ぬ以外でこの本から出る方法か、或いは本の主を探すのが賢明だろうな)

 

 ひとまず、ゲブラーは頭の中でそう考えをまとめると、司書補たちを集めて事情を話した後に、アンジェラのアドバイス通り呪術廻戦を読み始めた。

 ゲブラーとしては、色々と本の内容に思うところはあったものの、取り敢えずは登場人物の能力の把握に注力する。

 

 そうして、準備を終えたゲブラーは赤い霧のコアページを装備して、焦げ茶色のコートに黒色に統一された服とズボンいう恰好になり、満を持して本の中へと入っていった。

*1
ゲブラーの上司にして図書館の館長。

*2
本作主人公にして図書館の指定司書。赤い長髪をポニーテールにして腰まで伸ばした女性。

*3
この世界の人間が主に暮らしている場所。

*4
都市を包むように存在している。都市の不純物を捨てる廃棄場のような場所。

*5
ざっくり言うと化け物。現在は本の中で眠っている。

*6
特殊な力を持った武器防具。アンジェラのE.G.Oである図書館は例外。

*7
正確にはLobotomy Corporation。ゲブラーが以前働いていた場所。

*8
指定司書の部下。いわゆるモブ。

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