赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです 作:書鳳庵カルディ
ゲブラーたちが天内の確保に成功した一方で、音楽室に天内がいないことを確認した五条と夏油は、ゲブラーたちと合流しに礼拝堂へ向かおうとする。
しかし、彼らはその道のりの途中で、目と口の部分に穴が開いている紙袋を被った、見るからに不審者の男を発見した。
恐らくは、夏油の呪霊を祓った呪詛師だろう。
「Qの連中といいコイツといい、呪詛師は奇抜な恰好をするのが流行ってるのか?」
「同感だけど、さっさと仕留めよう、悟。さっき黒井さんから連絡がきた。ゲブラーさんはもう学校を出たらしい」
「クックッ、敵に情報を渡すとはな素人め。やっぱさっきのが3000万か」
携帯を開きながら夏油が喋るのに対して、紙袋男はそう吐き捨てると、自身の体を液状化させて消えてしまった。
六眼で紙袋男の術式を把握していた五条と、情報を渡してしまった夏油は、自分の迂闊さに少し後悔する。
「本体含めてMAX5体の分身術式だった。一体だけでも潰したかったな」
「仕方ないさ。情報を渡したのは私のミスだし、どっちにしろ逃げられてはいた。それより、今は黒井さんを探そう。私たちと合流しに来ているはずだ」
そうして、五条と夏油は黒井を探すのだが、何故か彼女の姿はどこにも見当たらない。
大声で叫んでも、携帯で連絡しても返答がなかった為、彼らは仕方なくゲブラーとの合流を目指すのだった。
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視点をゲブラーに戻すと、建物の屋上を伝って走っていた彼女は今、待ち伏せていた例の紙袋男五人に囲まれていた。
正直なところ、この程度の相手だったらゲブラーは、タイマンだろうが五人相手だろうが余裕で勝てる自信があるが、今は背中に護衛対象の天内がいる。
僅かな隙さえも晒したくないため、彼女は一瞬でこの呪詛師を殲滅することにした。
「5人、皆同じ背恰好じゃ。式神か?」
「分からない、だが無問題だ。一旦降ろすぞ、天内。あと、少しの間目瞑っててくれ。その間に終わらせる」
「舐めた真似してくれるじゃねぇの。痛い目見るぜっ!」
そう言って、紙袋男は一斉にゲブラーに襲い掛かるが、彼女はそれよりも遥かに素早く、ミミックを持って紙袋男の一人に突進を仕掛けた。
それで、あっという間に一人目の首を切り裂き、鮮血を噴き出させる致命傷を負わせても、ゲブラーはまだまだ止まらない。
二人目、三人目、四人目と続けざまに突進を仕掛け、心臓を突き刺し、脳天を叩き斬り、腹を切り裂いて相手を再起不能にしていく。
そして、最後の五人目にはミミックを投げて脚に突き刺し、その動きを封じた。
「……終わったのか?」
「ああ、もう目を開けてもいい」
幸いにして、その時点で紙袋男の術式の効果は切れていたため、天内は無残な死体は見ずに済んだ。
脚にミミックが刺さったまま、悶えている男の姿を目撃することにはなったが。
「さて、あとはコイツを拘束するなり気絶させるなりして、私たちは先を急ぐか。尋問は後でいくらでも出来る」
と、ゲブラーが話していたところで、突然天内の携帯が鳴り始める。
そこで、彼女が携帯を開くと、そこには拘束された黒井の姿があった。
「どっ、どうしよう黒井が……黒井が!」
慌てふためく天内を見て、携帯を覗き込んだゲブラーは、映し出された写真に思わず舌打ちをする。
黒井を一人にした時点で、こうなる可能性があることは理解していたが、これは想定内では最悪の事態だ。
しかし、相手の最重要目標はあくまで星漿体。
どう転んでも、主導権はこちらにある。
「こうなると、敵は星漿体への襲撃から、星漿体との人質交換にプランを切り替えたと考えるべきだな。一旦、五条たちとの合流を優先するぞ。行動方針を考え直す」
そうして、五条たちと合流した一行は、天内の強い要望と五条の温情によって、人質交換の場へと向かうことになる。
ゲブラーとしても、黒井が攫われたことには負い目を感じており、この判断に粛々と従うのだった。