赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです   作:書鳳庵カルディ

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第13話 フィジカルモンスターズ

 ゲブラーも伏黒甚爾も、お互いに一筋縄ではいかない相手であることは、立ち振る舞いで既に理解していた。

 しかし、これまで術師を相手にしてきた甚爾と違って、ゲブラーにはフィジカルが取り柄の連中と戦ってきた経験がある。

 

 ゆえに、先に攻撃を仕掛けたのはゲブラーの方だ。

 まずは様子見として、彼女は刀を持つ甚爾の右手に、同じく右手のミミックを軽く振るう。

 

 それに対して、甚爾は右半身を引いて攻撃を躱すと、今度は右脚で逆に大きく踏み込み、カウンターでゲブラーの顔に向かって刀を斬り上げた。

 だが、これは続けてゲブラーが放ったミミックの横薙ぎとぶつかり合い、完全に相殺。

 状況は睨み合いの状態へと戻る。

 

 両者、使用している武器が長物ということもあり、深くは踏み込まないじわじわとした戦いが続いた。

 武器同士をぶつけ合い、時にゲブラーが甚爾の脚を浅く斬ったかと思えば、甚爾はゲブラーの腕に刀傷を与える。

 そんな戦いだ。

 

 ところが、お互いに全身切り傷まみれになり、服も身体もボロボロになってきたところで、伏黒甚爾はある事に気づく。

 ゲブラーの傷の一部が、何故か段々と治ってきているのだ。

 

 これは、呪術世界でゲブラーが傷を負わなかったが為に、これまでは発動することのなかったミミックの特殊効果によるもの。

 具体的には、ダメージを与えた分だけ一定の割合で、使用者の体力を回復するというものだ。

 当然、甚爾の刀にはそんな効果はないため、互角に見えたこの長期戦は、実際にはゲブラー有利で進んでいた。

 

 この事に気づいた甚爾は、一旦バックステップで距離をとると、武器庫呪霊に刀をしまい、代わりに天逆鉾(あまのさかほこ)万里ノ鎖(ばんりのくさり)を取り出して組み合わせた。

 これによって、停滞していた戦況は一気に動き出す。

 

 リーチに優れた甚爾の目標は、遠距離からゲブラーを削ること。

 リーチの劣るゲブラーの目標は、近づいて有利な間合いから甚爾を倒し切ることだ。

 

 早速、甚爾は遠心力を利用して、万里ノ鎖に繋がった天逆鉾をゲブラーに飛ばす。

 しかし、彼女はその攻撃を躱すどころか、逆に鎖を左手で掴んで引っ張り、甚爾から攻撃の主導権を奪ってみせた。

 

 この隙に、ゲブラーは一気に距離を詰めようとするが、甚爾とて無能ではない。

 もし自分自身が相手だったらという仮定から、ゲブラーが万里ノ鎖を掴むのを彼は予想していた。

 そして、予想通りの動きを彼女がした今、甚爾は最高のカウンターの準備をする。

 

 それから、突っ込んでくるゲブラーに対し、天逆鉾と万里ノ鎖をあっさりと手放した甚爾は、武器庫呪霊から刀で全力の居合切りを放った……が。

 そのとき、既にゲブラーは高く跳躍しており、今や甚爾の後方上空にいた。

 

「チッ、化物が」

「お前もな」

 

 そう言って、ゲブラーは空中からミミックを甚爾に投擲すると、代わりに本の中から黄金狂を取り出す。

 一方で、甚爾は飛んでくるミミックを迎撃するためにも後ろを向くが、その瞬間、彼の真後ろとゲブラーが落下していく方向に、黄金色の魔法陣が出現。

 

 ミミックを刀で弾いた甚爾は、真後ろにテレポートしてきたゲブラーに黄金狂で腹を貫かれ、致命傷を負った。

 

 その後、ゲブラーはそっと黄金狂を甚爾の腹から抜き、口を開く。

 

「なんとなく、お前にも色々あったのは分かるよ。でも、私たちは人間だ。何をどうしようと、感じた苦痛からは逃れられない。……何か、最期に心残りはあるか?」

「ねぇよ。だが……ニ、三年もしたら、俺の子供(ガキ)が禪院家に売られる。好きにしろ」

 

 そうして、伏黒甚爾はその生涯に幕を下ろした。

 

 武器に差がなければ、どちらが勝っていたか分からないほどの、過酷な戦いだった。

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