赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです   作:書鳳庵カルディ

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第15話 記述、法則と社会

 気がつくと、ゲブラーは元いた図書館の言語の階に戻っていた。

 

 念のため、何か違和感がないか辺りを見渡してみるが、特にそういったものは見当たらない。

 むしろ、約一か月もの時間が過ぎたにしては、周囲の光景が変わらなさすぎるぐらいだ。

 目の前の机にも、相変わらずの姿で呪術廻戦の本が置かれている。

 

 そこに、ゲブラーが帰ってきたのを察知したアンジェラは一瞬で現れた。

 

「お疲れ様、ゲブラー。思ったよりも帰ってくるのが早かったわね」

「そうか? いや、ちょっと待て。私が本の中に入ってからどれぐらい経ったんだ?」

「三日だけれど」

「となると、この本の中と外では時間の流れ方が違うな。私は向こうで一か月は過ごしたから、本の中では大体十倍の速度で時間が流れてるのか? 決めつけるには早いが、遅くなるよりかは好都合だな」

 

 そんな風にゲブラーが話をしていると、アンジェラは懐から何冊かの本を取り出して、それらをまとめてゲブラーに手渡した。

 そのどれもが、表紙も中身も白紙の未完成な本だ。

 

「向こうの世界の情報は、これらの本に分類して記入しておいて頂戴。ひと段落したら、後でまとめて確認しておくわ。大変だろうけど、支障のない範囲でなら中層*1の司書補を引き抜いてもいいから。引き続き任せたわ」

「……はぁ、こっちの世界でもペンを握らされるとか。ネツァク*2に酒を借りに行きたくなってきたな」

 

 アンジェラが去った後、言語の階に残されたゲブラーはため息をついてそう言った。

 しかし、酒を飲んで呪術世界の情報を忘れてしまっては一大事なので、仕方なく彼女は手渡された未完成の本と向き合う。

 

 一応、常に携帯している手帳にもそこそこ情報はメモしてあるのだが、所詮は手帳だ。

 あまり頼りには出来ない。

 

(取り敢えず、第一に向こうの世界の法則についてまとめておかないとだな。またあの世界に行ったときに、同じ失敗をするわけにはいかない)

 

 そう考えたゲブラーは、まず一冊目の本に"呪術廻戦の本の世界における独自の法則"という題を記した。

 そして、その内容も続けて書き込んでいく。

 具体的には、事前に予習した本の内容は忘れてしまう事や、呪力や呪霊の性質についてなどだ。

 

 途中までは順調に書き進められていたが、この本から出る方法を書こうとしたところで、ゲブラーの手は一時的に停止した。

 

(あの男を倒したのがトリガーになったのは間違いないが、あいつが本の主って感じもしないんだよなぁ。倒すことで本から出られる敵が複数存在するか、物語の区切りがついたら本から出られると考えた方が妥当か。ともかく、ここら辺は要検証だな)

 

 そうして、推測等も交えつつ簡単に本の内容をまとめ終えたゲブラーは、今日のところは寝ることにした。

 図書館の力によって、身体の傷は既に癒えているが、流石に精神的な疲れは残っている。

 

 明日以降は、中層の連中にもこの作業を手伝わせると決意して、ゲブラーは眠りにつくのだった。

 

 ++++++

 

 あれから、ゲブラーは司書補の手も借りつつ、呪術世界の社会についての情報をまとめ上げた。

 というのも、ゲブラーは向こうの世界で活動するためにも、社会に関する知識を最優先で収集していたからだ。

 逆に考えると、彼女は社会についての情報しか集められなかったとも言える。

 

 都市の社会は頭によって管理されているため、そう簡単には変えられない。

 ゆえに、最も必要なのは人そのものを変えるための情報だ。

 

 都市の人々の何かが何らかの方法で変われば、都市の病は治療され、都市でも苦痛が繰り返されずに済むかもしれない。

 その何かを探すために、ゲブラーはもう一度呪術廻戦の本の中へと入った。

*1
図書館の層の一つ。自然科学の階、言語の階、社会科学の階が存在する。

*2
芸術の階の指定司書。気だるげな酒飲みの青年。




 活動報告にて、アンケートの結果とそれを受けての今後の展開方針について書きました。
 ご投票、本当にありがとうございました。
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