赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです   作:書鳳庵カルディ

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第22話 変化

「これは、かつて私が言われた事でもあるんだがな。お前が、呪いの生まれない世界という贈り物を渡したとして、術師全員がそれを喜んで受け取るだなんて思ってないよな? 余りにも多くのものを犠牲にして、前に進もうとしてるんだし」

「もちろん。ですから私も、10年前はひどく悩みました。しかしもう決めたのです。非術師は、嫌いだと」

 

 そう言った瞬間、夏油の顔から作り物のような笑みが消え、代わりに恨みがましい表情が浮かび上がる。

 これこそが、今の彼の本性だ。

 

 ゲブラーがいない間に、夏油はすっかり変わってしまっていた。

 

「そうか。なら、これ以上話す必要もなさそうだな。それぞれ、守るか奪うべきものがあるから」

「私の世界にあなたはいらない。どれだけ強くても、呪力のない非術師は猿だ」

 

 この会話を最後に、ゲブラーはミミックで夏油に斬りかかる。

 対して、夏油は特級呪具の游雲をすぐさま武器庫呪霊から取り出して、ゲブラーの攻撃を受け止めようとするが、無限の速度で繰り出される彼女の一撃は、そう簡単には止まらなかった。

 

 ミミックと游雲の衝突音が鳴った直後、衝撃をもろに受けた夏油は、商店街の中を派手に吹っ飛んでいき、とある雑貨店の一つに突っ込んで衝突した。

 そこに、ゲブラーは追撃をしようと夏油を追いかけるが、彼は呪霊操術を発動させ、何体かの呪霊を解き放つ。

 その中には、煙幕のようなものを発生させる呪霊もおり、彼女は一時夏油の姿を見失った。

 

 ためらいなく、ゲブラーは煙幕の中に突っ込んで夏油の姿を探そうとするが、その前に彼が出した数体の呪霊が、煙幕の中から飛び出してくる。

 それらの呪霊はゲブラーを無視して、彼女の背後にいる狗巻と乙骨に襲い掛かろうとしていた。

 

「決戦の時は今じゃない。おいとまさせてもらうよ、ゲブラー」

(パッと見、最低でも二級以上の呪霊が数体か。この煙幕の中で夏油を探している間、あいつらが持ちこたえられるとは限らないか)

 

 そう考えたゲブラーは追撃を中断し、放たれた呪霊の殲滅に移行した。

 

 ミミックを振り回し、反撃する暇も与えず凄まじい速度で呪霊をほぼ殲滅したゲブラーだったが、その頃にはもはや煙幕は晴れており。

 内装が滅茶苦茶になった雑貨店に、夏油の姿はなかった。

 どうやら、捨て台詞を吐いた後にまんまと逃げたようだ。

 

「ッチ、あいつも成長したな。狗巻と乙骨は大丈夫か?」

「はい、なんとか」

「しゃけ」

「ならいい。お前たちも、ちゃんと自衛はできたみたいだな。今回は運が良かった」

 

 実は、ゲブラーは数体の呪霊の内一体を、わざと狗巻たちの方に取り逃がしていた。

 それくらいなら、今の彼らでもなんとかなるだろうと判断したからだ。

 

 その判断は正しく、狗巻と乙骨は連携をとって、見事に呪霊を祓っていた。

 

「あいつのせいで予想外の事態が相次いだが、いい経験にはなっただろ。お疲れ様」

 

 そうして、任務を終えた一行は、商店街から呪術高専に帰還する。

 

 その後、高専の校内で五条と会ったゲブラーは、報酬を受け取った後に任務の顛末を話した。

 

「夏油は変わっていたな。そして、固く変わらない意思を持った。違えた道は、もう交わりそうにないな」

「……決別は10年前に済んだよ。それより、向こうの目的は何か分かった?」

「私と会うのは予想外だったみたいだから、目的は狗巻か乙骨だろう。となると、狗巻よりかは乙骨の線が濃厚だな。具体的な目的は分からないが、乙骨の持つ特殊な事情に、夏油が目をつけたと考えるのが自然だ」

 

 ここまで話したところで、ゲブラーは五条に背を向け、歩きながら改めて口を開く。

 

「まぁ、お前の方が夏油には詳しい。私は探偵じゃないし、調査活動は管轄外だ。戦力が必要だったらまた呼べ」

 

 そう言い残して、ゲブラーは自身の仕事に戻るべく、その場を去っていった。

 

 夏油の真意を知る者は、今はまだ、闇の中でじっと息をひそめたままだ。

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