赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです   作:書鳳庵カルディ

24 / 38
小話1 ゲブラーの住居事情

 これまで、ゲブラーは夜蛾学長に便宜を図ってもらい、呪術高専の学生寮に住んでいた。

 しかし、それもそろそろ終わりにすべきだろうと、彼女は任務帰りの車に乗りながら考える。

 

 特級呪術師として働き、五条から講師としての給料も受け取っているゲブラーには、現在それなりの額の貯金があった。

 それに戸籍等の重要な書類も、この世界で生活していく上で必要だろうと、補助監督の面々に助けられながらなんとか作成できている。

 

 これ以上迷惑をかけないためにも、ゲブラーは高専から引っ越す事を決意した。

 

「という事でだ。協力してくれ、伊地知。何せ私はこの世界の感覚に疎い」

「え。まぁいいですけど」

(五条さんといいゲブラーさんといい、私の事使いすぎじゃありません?)

 

 あの後、高専の職員室に向かったゲブラーに話しかけられた伊地知は、向き合っていたパソコンから目を離して返事をした。

 内心では多少の不満はあるものの、彼は決して口には出さない。

 

 五条ほどの無茶ぶりではなく、至って単純な調べ物で済みそうなのが、伊地知にとっての救いだろう。

 

「それで、希望条件はどんな感じですか?」

「場所はここの近辺がいい。最低でも週に一回は、ここに来ないといけないからな。後はまともな生活環境さえあれば問題ない」

「予算のほどは?」

「これだけだ。それなりに余裕はある」

 

 そう言って、ゲブラーは自分の預金通帳の金額を見せる。

 それで、伊地知は特級呪術師は流石に稼いでいるなと思いつつ、五条悟名義の入金からそっと目を反らした。

 藪をつついて蛇を出す予定は、伊地知にはない。

 

 それから少しして、条件に見合った物件をネットでいくつか見つけた伊地知は、それらの物件の資料を印刷してゲブラーに渡した。

 

「時間のあるときに不動産会社に行って、これらの物件の内見に行ってみて下さい。どれか一つは気に入る物件があると思います」

「分かった、協力感謝する。次に出張があったら、何か差し入れを買ってくるよ」

 

 その後、ゲブラーはなんやかんやで希望に合った物件を見つけ、都内のとあるマンションの一室に引っ越した。

 

 高専から運ぶ荷物は大してなかったが、新しく家具を買い揃えるのに、ゲブラーは思いのほか苦労した。

 物資の乏しい都市の裏路地で暮らしていたゲブラーにとって、現代社会は買える物の選択肢が多すぎたのだ。

 それでも彼女は、諸々の買い物と手続きを全てやり遂げた。

 

(ここまで苦労するものだとは思わなかったな。だが、目的は果たせた)

 

 そう考えながら、ゲブラーはソファに座って煙草に火を点ける。

 

 最低限必要な家具や家電と本棚しかないため、部屋の中の光景はなんだか殺風景だ。

 気が向いたらもう少し物を増やしてみてもいいかもしれないと、ゲブラーは思う。

 

(出張先の土産物でも飾るかな。この世界は都市に比べて広大で、物も文化も豊富だ。酒と煙草以外の息抜きがあってもいいだろ。あくまで気が向いたらだが)

 

 少しして、煙草を一本吸い終わったゲブラーは本来の仕事のために、まだ内容を理解し終えていない心理学の本を読み始めた。

 

 まだまだ、先の道のりは長そうだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。