赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです 作:書鳳庵カルディ
時が過ぎ、季節が晩秋になったある日のこと。
偶然にも居合わせたゲブラー、五条、夜蛾の三人は、呪術高専の窓際で話をしていた。
その話題は、ゲブラーの前に姿を見せた夏油についてだ。
「未だ夏油の動向はつかめん。あいつが何か企んでいるのは確かだろうが、これではこちらも動けんな」
「何も起こらないに越したことはないんだがな。敵が何を準備しているのかすら分からないのが問題だ」
「もしかしたら、ゲブラーが元の世界に帰るのを待ってるのかもね。実力的に考えても、傑はゲブラーの相手はしたくないだろうし」
と、そこまで五条が話をしたところで、その予想を裏切るかのように正体不明の呪力が近づいて来たのを、三人は感知した。
「迷惑な客がやって来たみたいだな」
「噂をすればだ! ゲブラーは先に正面ロータリーに向かえ。俺と悟は校内の準一級以上の術師を集めてから向かう!」
それを聞いて、ゲブラーはすぐそばの窓を開けて地面に飛び降り、指示通り全速力で正面ロータリーへと向かう。
そうして、到着した場所でゲブラーが見たのは、教え子である呪術高専の一年たちと、夏油が率いる呪詛師集団が向き合っている光景だ。
その呪詛師集団の中に、見覚えある人間を一人見つけて、ゲブラーは目を見開いた。
「思ったよりも早く来たみたいだね、カーリー。いや、今はもうゲブラーと呼んだ方がいいんだっけ」
「イオリ? 何をしにこの世界に来た? そこにいるって事は、あまり歓迎できる立場じゃないみたいだな」
ゲブラーの視線の先にいるのは、紫色のスーツを着て刀と片手剣をそれぞれ一本腰に差し、大剣を背負った中年層に見える長身黒髪の女性だ。
その名もイオリ、またの名を紫の涙。
かつて、ゲブラーが一度目の人生で教えを乞うた事もある人物だ。
「図書館で本にしたんだし、私の本の中身はもう読んだよね? 私の目的はあれからも変わらないよ」
「息子に会える世界を探すため、か。随分と遠いところまで探しに来たな。こんなところにあんたの息子はいないと思うが」
「そりゃあね。ただ、世界の可能性の因果関係は複雑なんだ。私が過去に青い小僧*1を手伝ったように、今度はこの小僧を手伝うのが、今の私のやるべきことってワケ。偶然にもね」
ゲブラーとイオリがそう会話をする一方で、夏油は乙骨に話しかける。
「久しぶりだね、乙骨君。自己紹介はもう必要ないだろう。実のところ、あの日私が商店街を訪れていたのは、君の素晴らしい力を見学するためだったんだ。私はね、大いなる力は大いなる目的のために使うべきだと考えている」
そう前置きして、夏油は自身の思想を乙骨に語り始める。
色々と大義名分はあるが、要は非術師を皆殺しにして、呪術師だけの世界を作ろうという考えだ。
熱心に乙骨に話をする夏油だったが、間もなく術師を率いた五条と夜蛾がやって来て、その話は中断された。
「僕の生徒にイカれた思想を吹きこまないでもらおうか。傑、どういうつもりでここに来た?」
「久しいのにせっかちだね、悟。宣戦布告をしに来たのさ。お集まりの皆々様! 耳の穴かっぽじってよーく聞いて頂こう!」
そうして注目を集め、夏油は話の流れ通り呪術高専の面々に向かって宣戦布告を行う。
日時は12月24日の日没と同時。
場所は新宿と京都にて、夏油は千の呪いを放って百鬼夜行を行うと宣言した。
呪術師たちが何もしなければ、件の場所には地獄絵図が描かれるだろう。
その後、宣戦布告を終えた夏油たちは何事もなく帰ろうとしたが、そこに五条とゲブラーは待ったをかけた。
「このまま行かせるとでも?」
「同感だな。容易く逃がすつもりはない」
そう言って、五条は夏油に、ゲブラーは呪詛師たちを運ぼうとする鳥型の呪霊に襲い掛かる。
しかし、五条の攻撃は生徒を人質にとられた事によって中断され、ゲブラーのミミックによる攻撃は鳥型呪霊の口内にいたイオリの大剣によって防がれた。
「やめとけよ、かわいい生徒が私の間合いだよ」
「また今度だね、ゲブラー。昔の教えを覚えてるか、もう一度戦場で試そうか」
こうして、まんまと追撃をいなした夏油たちは、呪術高専から離脱した。
余談ですが、イオリの身長はなんと195cmもあったりします。
まともな人間としては都市でも屈指の身長です。