赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです   作:書鳳庵カルディ

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第26話 特色

 本来ならば、ゲブラーは他の呪術師たちと共に、新宿で百鬼夜行に対処する予定だった。

 しかし、伊地知の報告によって乙骨が菅原道真の子孫だと知り、夏油が姿を見せない事を訝しんだ五条が、ゲブラー、狗巻、パンダの三名を呪術高専に送り込んだのだ。

 それで間もなく、狗巻とパンダも真希の近くに合流してきた。

 

 広場にて、ゲブラーと真希たち三人は、夏油と睨み合う形になる

 

「何事もそう思い通りにはいかないもんだね」

「ああ、お互いにな。あんたもそろそろ姿を見せたらどうだ?」

 

 ゲブラーが夏油の傍にある塀に向かってそう言うと、その塀の裏から広場にイオリが出てくる。

 どうやら、少し前からここに待機していたようだ。

 

「おっと、もうバレちゃってたか」

「ずっとそこにいたのか? 君がいたなら、とっくにあの猿は殺せていたのに」

「私がするのはあくまで手伝いだよ、小僧。格下を仕留めるぐらい自分でやりな。約束通り、赤い霧の相手はさせてもらうけどね」

 

 ゲブラーを見据えて、イオリはそう言った。

 あまり良くない状況に、ゲブラーは冷や汗を浮かべる。

 

「お前たちはなんとか夏油の相手をしろ。私はイオリの相手をする。できたらサポートはするが、期待はするな。私も余裕がない」

 

 ゲブラーの言葉に、三人は頷いて返事をした。

 

 夏油と一年生三人を戦わせるのは分が悪いが、イオリとやらせるよりはマシだというのがゲブラーの判断だ。

 何せ、イオリを初見で相手にするのはかなり厳しい。

 というのも、彼女の戦い方は少し特殊なのだ。

 

 イオリは戦闘中、自身の戦闘体勢を切り替えて戦う。

 具体的には、斬撃、貫通、打撃、防御という四つの体勢だ。

 それぞれ別人のような戦い方になるため、対処の方法も変えなければならない。

 

 その点、ゲブラーは図書館でもイオリと戦っていたので好都合だ。

 

「図書館の時と同じように打ち倒す」

「あの時は一対五だったけど、今回は二対四だ。同じようにはいかないよ、ゲブラー!」

 

 そうして、ゲブラーはイオリと、一年生三人は夏油と対峙しての戦闘が始まった。

 

 最初、イオリは腰の片手剣を抜く。

 つまりは貫通体勢だ。

 これを理解した上で、ゲブラーはミミックを持ちイオリに近づく。

 

 接近してくるゲブラーに対し、イオリは洗練された片手剣の突きを何度も放った。

 その突きを、ゲブラーは斬撃で一つ一つ丁寧に弾きつつ、下がるイオリを追う。

 イオリとしては、ゲブラーをあまり近づけさせたくなさそうだ。

 

(技の洗練度は未だにイオリの方が上だ。だが、力と速さなら私の方が勝るな。近距離のぶつかり合いなら勝てるか?)

 

 そうゲブラーが考えている内に、イオリは武器を刀に持ち替える。

 今度は斬撃体勢だ。

 ところが、今回イオリはゲブラーの方には向き合わず、一年生三人の方へと走る。

 

(クソッ、私の相手をするとか言ってた癖にこれか!)

 

 内心でゲブラーは、イオリの行動にそう悪態をついた。

 

 イオリの目的は分かり切っている。

 一年生を守るために、無理をするゲブラーの隙を突くつもりなのだ。

 それでも、ゲブラーとしては守らざるを得ない。

 夏油の方に行くのも手だが、そうすると一年生たちが本当に殺されかねない。

 

 ぎりぎりでイオリに追いついたゲブラーは、その背に素早くミミックを振り下ろす。

 対して、イオリは反転して刀でその攻撃を受けた。

 ややイオリの方が苦しそうではあるが、鍔迫り合いの形になる。

 

「結構熱心に先生をやってたみたいだね?」

「……戦いでお喋りをするつもりはない」

 

 ちらりと後ろで戦う一年生たちを見て、話すイオリにゲブラーはそう返事をする。

 特級相手にしては善戦しているが、一年生三人は見るからに苦しそうだ。

 

 パンダの籠手はボロボロになっていて、狗巻は苦しそうに喉を抑えており。

 真希は相変わらず右手だけで薙刀を持って戦っている。

 対して、夏油は特級呪具の三節棍、游雲を武器庫呪霊から取り出していた。

 

 それから、ゲブラーはイオリに猛攻を仕掛ける。

 後ろの一年たちに手を出されたくないのと、距離を離されないようにするためだ。

 この斬り合いによって、お互いの身体に数々の切り傷が出来る。

 

 強いて言うならゲブラーの方が優勢だったが、またもイオリが体勢を変更する。

 両手剣を持ち出した防御体勢だ。

 この体勢になってからは、イオリは回避と両手剣による防御に徹する。

 

 そんな状況が少し続いた時、猛攻による疲れから生じたゲブラーの一瞬の隙を、耐えに徹していたイオリは見事に見抜いた。

 両手剣のまま、彼女は体勢を打撃体勢に移行させ、大技の発動準備をする。

 

 その名も幻影乱舞。

 周囲の敵の間を高速で駆け巡り、斬撃、打撃、刺突攻撃をそれぞれの対象に行う全体攻撃だ。

 もちろん、イオリは後ろの一年生たちも幻影乱舞の対象に入れている。

 

 ゲブラーはイオリが準備している事に気づいたが、それを止めるにはもう遅すぎた。

 

「不味いっ、お前ら下がれ!」

 

 ゲブラーがそう叫んだ直後、紫色の閃光が戦場に煌めいた。

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