赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです   作:書鳳庵カルディ

29 / 38
第27話 熱い怒り

 イオリはゲブラーと一年生たちの間を高速で駆け巡り、武器を持ち替えてそれぞれに斬撃、打撃、刺突攻撃を行った。

 

 元より、イオリと対峙していたゲブラーは、この幻影乱舞をなんとかガードする事ができる。

 だが、ただでさえ苦しい夏油との戦いを強いられていた一年たちには、そんな事は不可能だ。

 

 元々ボロボロだった一年生たちの身体は、攻撃を受ける度に紙切れのように折り曲がり、くしゃくしゃになった。

 後に残ったのは、手足の一部がなくなった彼らの身体が、血まみれで倒れ伏している光景だ。

 皆死んではいないが重体で、いつ命の灯が消えてもおかしくはない。

 

 この有様に、ゲブラーは静かに感情を燃え上がらせる。

 そうして、E.G.O発現の条件はついに満たされた。

 

 身に着けていたコートは赤黒く炎のように揺らめき始め、ゲブラーの全身は黒い機械的な鎧に覆われる。

 赤い霧の顕現だ。

 

 そんなゲブラーは真っ先に、目の前にいるイオリに向かってミミックを振ろ下ろす。

 イオリは両手剣でそれを受けるが、大技の直後で消耗している事もあり、見るからに押され気味だ。

 しかし、彼女は一人で戦っていたわけではない。

 

 一年生たちの相手をしなくてもよくなった夏油が、すぐさまイオリの加勢に入った。

 怒りで視野が狭まっていたならば、ゲブラーはこの攻撃に反応できなかっただろうが、彼女はこれに素早く反応し、一旦バックステップで夏油とイオリから距離をとる。

 

 ゲブラーは怒りに苛まれながらもそれに呑まれず、冷静に戦う術をよく知っている。

 

 そこにちょうど、明らかな異常事態に気づいた乙骨がやって来た。

 周囲の惨状に動揺し、初めて見るゲブラーの姿に困惑しつつも、乙骨は彼女に話しかける。

 

「ゲブラーさん、なんですか? どうして、こんな――」

「細かい話は後だ。仲間を助けたいなら、生き残りたいなら刀を構えろ。……敵は見えるな?」

「っ、はいっ」

 

 にじみ出た涙を拭い、対峙する敵をはっきりと捉えた乙骨は、ゲブラーにそう返事をする。

 そして、覚悟を決めた。

 

「来いっ、里香!!」

 

 かくして、特級過呪怨霊・折本里香は二度目の完全顕現を果たす。

 これで、こちらも向こうも特級一人に特色一人。

 階級的には互角の状態だ。

 

「ゲブラーさん、僕に時間をください」

「何をするつもりだ?」

「友達を助けます」

「……一分間だけ一緒に戦え」

 

 短くそう言い切ると、ゲブラーは敵に突っ込んで行く。

 それを見て、乙骨もそれに追随した。

 

「前の話は覚えてるな?」

 

 ゲブラーの言葉に乙骨は無言で頷き、イオリの方に向かって走る。

 そして、里香をイオリに向かって真っ先に突っ込ませた。

 

 攻撃を受けたイオリは、両手剣で防御はするが反撃を行う様子はない。

 ゲブラーと同様になぜか呪霊自体は見えるようだが、呪霊に反撃を行う手段は持っていないようだ。

 これならば、乙骨はイオリとなんとか渡り合えるだろう。

 

 一方で、ゲブラーは夏油に攻撃を仕掛ける。

 

 はっきり言って、夏油はゲブラーとあまり相性が良くない。

 いくら大量に呪霊を出しても、まともな相手にならないからだ。

 それがE.G.O発現状態ともなれば、夏油は間違いなく苦戦を強いられる。

 

 ゲブラーが振るうミミックの一撃目を夏油は游雲で受けるが、その威力を殆ど殺し切れない。

 游雲を持つ手は衝撃で痺れ、夏油の身体は踏ん張り切れずに後退する。

 

 そんな状態でゲブラーの追撃を受けれるはずもなく、夏油は仕方なく大量の呪霊を出して壁にした。

 巨大なコガネムシのような見た目の雑魚呪霊たちだ。

 一瞬でやられはするが、最低限の壁にはなる。

 

 追い詰められた末の行動のため、致し方ない事ではあるが、E.G.O発現状態のゲブラーにこれは悪手だ。

 というのも、他のE.G.Oと同様に、ゲブラーだけが発現できるこのE.G.Oには特殊効果がある。

 

 この状態のゲブラーは敵を倒す度に、その力を増大させるのだ。

 大量のコガネムシ型の呪霊を倒した今、ゲブラーの力は最高潮である。

 

 そんなパワーアップ状態で、ゲブラーはミミックのチャージを開始する。

 対峙する夏油に余裕はなく、チャージの邪魔をされる心配はない。

 

「乙骨下がれ! 後は私が抑える!」

 

 そう叫んだ後、乙骨が下がったのを確認したゲブラーは逆に前に出て、大技を発動させる。

 チャージによってサイズの増大した大剣ミミックを横に振るい、範囲内の全てを薙ぎ払う全体攻撃、大切断-横だ。

 

 ゲブラーが放ったそれは、夏油とイオリを芯で捉えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。