赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです 作:書鳳庵カルディ
「始めに言っておくと、私はこの世界の人間じゃない。わけあってこの世界に来た、いわゆる異世界の人間だ。……なんだ、その顔は。そんなに私の言うことが信じられないか?」
呪術高専の、とある一室にて。
異世界と聞いて、ポカンと口を開けて間抜けな表情を浮かべる五条と夏油に、ゲブラーはそう言った。
一方で、夜蛾は冷静に質問をする。
「それなら、この世界に来た理由はなんだ? 今のところ敵意はないようだが、この世界に迷惑がかかるような事を企んでいるなら、こちらとしても対応を改めないといけなくなる」
「ヒントを探しに来たんだ。私たちの世界で、苦痛を繰り返さずに済む方法の。まぁ、要は社会見学に来たと考えてもらえればそれでいい。別に、この世界で何か大層なことをするつもりはない」
「どうやってこの世界に来た?」
「特殊な本を使って来た。本の中にこの世界があるのか、本がこの世界に通じてるのかは定かじゃないけどな。私だってこんなことは初めてだ。あと、前もって言っておくが本の内容は覚えてないぞ」
話を聞いて、夜蛾はゲブラーをどうするべきか考えていた。
嘘をついている様子はないが、問題は彼女が結界内に出現したという事だ。
幸いなことに、彼女は比較的善人のようだが、次に出現するかもしれない異世界人が善人とは限らない。
更なる情報を得て対策するためにも、夜蛾としてはできるだけ穏便に、この貴重な前例となるゲブラーを引き留めておきたかった。
「取引をしないか。一応、ここは学校だ。正式に入学させてやることは出来んが、この世界について教えることはできる」
「対価は?」
「出来る限りの範囲で呪術高専に協力してもらう。とはいっても、異世界の情報提供が主な協力内容になるだろうが……一応試しておくか。傑、試しに小さい呪霊を出してみろ」
夜蛾がそう言うと、夏油は呪霊操術で低級呪霊の蝿頭を出す。
本来、呪霊は一般人並みの呪力しか持たないゲブラーには見えないはずだが――
「なんだ? この小さいのは。これが呪霊とかいう奴なのか?」
予想外のゲブラーの言葉に、夜蛾たちは三者三様の反応を見せた。
五条は、途端に新しいおもちゃを見つけたとでも言わんばかりの顔になり。
夏油は衝撃のあまり固まり。
夜蛾は順当に驚いた。
「もしかしてだけど、呪霊を倒す事も出来たりする?」
「いや、無理みたいだな。殴ってみたがまるで手ごたえがない」
「そうじゃなくてさ、コートのポケットに武器、隠し持ってんだろ?」
「……気づいてたか」
天才、五条悟は当然のように、対峙していたゲブラーがさりげなく左手をコートの外ポケットに伸ばしていた事を見逃していなかった。
ゲブラーとしては、自身の戦闘能力は出来るだけ隠しておきたかったのだが、この男の前では時間の問題だっただろうと見切りをつける。
彼女は本から、肉塊に覆われた目玉と骨が付いている大剣型のE.G.O、ミミックを取り出し、蝿頭を一瞬で切り払った。
「あ~……オバサンの世界って、そういうえげつない見た目の武器が当たり前のように使われてたりする?」
「まさか、これは特別製だ。それと、二度も私をオバサン呼ばわりするなんて、いい度胸してるな?」
五条の二度目のオバサン呼ばわりに、ゲブラーは威嚇の意味も込めて一瞬殺気を放とうとする。
しかし、それよりも先に五条に襲い掛かるものがあった。
夜蛾の教育的指導……もとい、拳骨である。
指導をまともに食らった五条は、呻き声を上げながらその場にうずくまった。
「悟が悪いことをしたな。だが、武器がどうであれ呪霊を祓えることが分かったのは好都合だ。呪霊を祓うのに協力してもらえるなら、金も出す。こちらの提案、飲んでもらえるか?」
「飲もう。お互い、利益のある関係は歓迎だ」
こうして、呪術高専とゲブラーは協力関係となった。
夜蛾もゲブラーも、これでようやくほっと胸をなでおろしたのだった。