赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです 作:書鳳庵カルディ
ゲブラーの大切断-横を、夏油は游雲で、イオリは両手剣でそれぞれ受ける。
しかし、その威力を殺し切れるはずもなく、両者は持つ武器が手に食い込んで来るのを感じながら、後方に勢いよく吹っ飛ばされた。
夏油は黒い骸骨のような呪霊に支えてもらって、イオリは地面に両手剣を突き立てて、自身の飛ばされる身体を止めようとするが、それでもこの吹っ飛びは抑えきれない。
両者はともに、広場を囲んでいた塀に突っ込んで行き、身体をぶつけて激しい衝撃音をたてた。
土煙をたてて塀が崩れる中、ゲブラーは油断なくイオリの方に追撃を仕掛ける。
一方で、乙骨と里香はその隙に同級生たちの身体を回収し、比較的安全な付近の建物の回廊に移した。
それから、乙骨は里香の力によって反転術式を使い、同級生たちの治療を行う。
コピーされたその反転術式の力は強力で、欠損部位さえも再生させてしまう程だ。
これならば、後遺症が残る心配もないだろう。
治療の最中、里香が真希に嫉妬してしまう場面もあったが、乙骨はそれを宥め、すぐにゲブラーの援護に向かった。
そこで乙骨が見たのは、広場の塀の向こうにある林の中で、獅子奮迅の戦いを繰り広げるゲブラーの姿だ。
ゲブラーが放った大切断-横は、夏油とイオリに確かな大ダメージを与えたが、仕留めきるには至らなかった。
そのため、ゲブラーは足止めのためにも、二対一の戦闘を続けていたのだ。
数で劣っているゲブラーだったが、そこまで苦しそうな様子は見られない。
何せ、ゲブラーはパワーアップ状態を継続しているのに対し、夏油とイオリは大技を受けた直後だ。
力関係は十分に釣り合っている。
だが、ここに乙骨が加わるとなれば話は別だ。
今度は、駆けつけてきた乙骨は夏油と、ゲブラーはイオリと対峙する形になる。
それぞれぶつかり合うが、夏油とイオリはもう、乙骨とゲブラーに敵わない。
具体的には、夏油は呪霊たちを里香の力による呪言に潰され、肉弾戦でも乙骨と里香の連携に押され気味だ。
斬撃体勢のイオリの方も、パワーアップ状態のゲブラーとの斬り合いで押されている。
追い詰められた夏油は、遂に最後の切り札を出した。
「やるじゃないか。だが、それもここまでだ。これは特級を冠する呪い、特級仮想怨霊「化身玉藻前」だ。更に、私が今所持している4461体の呪いを一つにして、君にぶつける」
そう話して、夏油は特級仮想怨霊「化身玉藻前」と巨大な禍々しいうずまき、呪霊操術極ノ番『うずまき』を展開する。
「させるか!」
そう叫んで、ゲブラーは夏油の邪魔をしようとするが、そこにイオリが立ちはだかった。
防御体勢に変更してからの、決死の割り込みだ。
ニヤリと笑みを浮かべるイオリに、ゲブラーは舌打ちをする。
うずまきによる攻撃は、大切断-縦ならなんとか対抗できるかもしれなかったが、これではそれも叶わない。
焦るゲブラーはイオリを越えるために、本からテレポート機能が存在する黄金狂を取り出そうとする。
しかし、イオリは未来を見通したかのような反応速度で、ゲブラーが取り出した黄金狂を両手剣で叩き落とした。
どうやら、イオリは意地でもゲブラーを通さないつもりらしい。
もはや、乙骨があの『うずまき』をなんとかするしかない状況だ。
ところが、ゲブラーはこれまでの訓練で、乙骨があれに対抗できそうな大技を使ったのを見た事がない。
そんな中で、ゲブラーが手出しできない事を悟った乙骨は、突然里香に感謝の言葉を話し始め、最後には「一緒に逝こう?」と告げて彼女にキスをした。
自らを生贄とした呪力の制限解除だ。
この乙骨の決断を、ゲブラーは黙って見守るしかなかった。
「そうくるか、女誑かしめ!」
「失礼だな、純愛だよ」
「ならばこちらは大義だ」
乙骨と夏油がそんなやり取りをする一方で、ゲブラーとイオリも口を開く。
「これがお前の目指した結末なのか!?」
「結末と言うにはまだ早すぎるよ。最後まで見届けるんだね」
E.G.Oの鎧の内側にあるゲブラーの顔は悔し気で、イオリの顔は疲労困憊といった様子だ。
間もなく、夏油の『うずまき』の呪力と里香の呪力がぶつかり、その場にいた四人は衝撃と舞い上がる土煙に呑まれるのだった。