赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです   作:書鳳庵カルディ

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第34話 東京観光

 あの後、虎杖悠仁はゲブラーと五条悟の尽力によって、どうにか死刑執行までの執行猶予を得ることとなった。

 それも、全ての宿儺の指を取り込むまでという条件付きでだ。

 宿儺を取り込まないのならば、即刻死刑執行という状況で、虎杖は悩んだ末に宿儺を取り込み生きる道を選んだ。

 

 そうして、これからの活動のためにも呪術高専に入学した虎杖は、三人目の一年生を迎えるためにも、伏黒、五条、ゲブラー、新一年生と原宿で待ち合わせをすることになる。

 もっとも、ゲブラーの目的は他のメンバーとは少し異なるのだが。

 

「釘崎野薔薇。喜べ男子、紅一点よ」

「俺虎杖悠仁。仙台から」

「伏黒恵」

 

 無事、原宿にて集合した一年生三人は、そんな飾り気のない自己紹介を行う。

 その後、伏黒は引率の五条に質問をした。

 

「それで、これからどっか行くんですか?」

「せっかく一年生が三人揃ったんだ。しかもその内二人はおのぼりさんときてる。行くでしょ、東京観光」

 

 五条がそう言うと、そのおのぼりさんである虎杖と野薔薇は目を輝かせてはしゃぎ始める。

 その光景をよそに、ゲブラーは淡々と自分の話を始めた。

 

「私は別の仕事があるからここでお別れだ。一応、私はあいつらとの顔合わせのつもりでここまで付き合ったんだが――」

「ゲブラーさん、あの二人もう話聞いてないですよ」

「……まぁいいか。どうせあいつらとも、いつかは訓練でまた会うことになる」

(五条はあんな事言ってるが、あいつらもどうせ仕事だろうな)

 

 それから、ゲブラーはしれっと一行から別れ、自身の目的地へと向かい始めた。

 その目的地とは、都内の裏路地に存在するとある祠だ。

 

 参拝する人がいなくなり、すっかりボロボロになってしまったその祠の周辺にて、二級以上だと思われる呪霊が窓によって発見されている。

 それを祓うために、ゲブラーが派遣されたのだ。

 

 祠付近に到着したゲブラーは、目的の呪霊をすぐに発見した。

 

(見た目から推測するに蚊の呪霊か。夏になって、蚊への恐れが運悪く集結したってところだろうな)

 

 蚊が全長二メートル程度にまで巨大化した後、六本の手足を人間のそれにした姿が、まさしく今回現れた呪霊の姿だ。

 小さな祠の天井にとまっていたその呪霊は、近づいてくるゲブラーの姿を発見すると、その細長い口を彼女に突き刺そうと奇声をあげながら突撃する。

 

「キエアアアアア!」

「ッチ、蚊なだけはあって素早さは一級品だな」

 

 ゲブラーは難なく突撃をかわし、通り過ぎていった呪霊をミミックで切りつけようとしたが、その時には呪霊はもう攻撃の範囲外の空中へと移動してしまっていた。

 しかし、まだチャンスはある。

 

(幸いにも、蚊の呪霊の狙いはまだ私だ。さっきは躱してから反撃しようとしたのが失敗だった。今度はもっと単純に――)

「ギエァッ!?」

(直接反撃する)

 

 またも空中から突撃してくる呪霊に対し、ゲブラーはミミックを縦に振るう。

 その斬撃は、呪霊の身体の中央を正確に捉えた。

 細長い口から膨らんだ腹まで刃が通り、呪霊は綺麗に真っ二つになる。

 そして、それは間もなく残穢となって消滅した。

 

 裏路地という狭い空間で、素早い呪霊を周囲の建物に被害を出さずに祓うというのは、中々できる事ではない。

 特級呪術師にして、近接戦の達人の面目躍如といったところだろう。

 

「終わったな。さっさと帰って、家にある脳科学についての本でも読むとするか」

 

 そう呟くと、ゲブラーは祠をあとにして自宅へと帰還した。

 

 暇があったのなら、一年生たちの実地試験の様子を見に行ってもいいとゲブラーは考えていたのだが、生憎と彼女には本来の目的がある。

 仕事は早いが、二足の草鞋を履いているゲブラーは今日も多忙だ。

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