赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです   作:書鳳庵カルディ

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第3話 私たちについて

「さて、お互い協力関係も結べたことだし、そろそろ腹を割って話をしないか? いい加減、相手の顔色をうかがうのも疲れてきた」

「同感だ。俺の生徒たちも、これ以上堅苦しい話を続けていたら逃げ出しかねない」

 

 夜蛾は隣で、未だに拳骨を食らった場所を気にしている五条と、退屈そうにしている夏油を見てそう言った。

 実際、話し合いにこの二人は必要ないのだが、生意気にも強いこの二人がいる方が、目の前にいる得体の知れない女との話し合いはしやすいというのが、夜蛾の本音だ。

 

「それじゃ、まずは私自身について話そうか。その次に、お前たちについて聞こう。その方がやりやすいだろ?」

 

 ゲブラーの言葉に夜蛾は頷く。

 そこから、彼女の詳しい自己紹介が始まった。

 

「私には、三度の人生を生きた人の心が引き継がれている。一つ目は、都市のフィクサーだった時の心。二つ目は、ロボトミーコーポレーションという会社で働いていた時の心。三つ目は今、図書館の司書として働いている私の心だ。全部話すと長くなるから、今は一度目と今の人生について軽く話す」

 

 夜蛾としては、三度の人生というとんでもない情報に突っ込みを入れたいところだったのだが、今は一旦話を聞くのに集中することにした。

 その代わりと言っては難だが、面白そうな話に五条と夏油の気力が復活する。

 

「一度目の人生で、私は都市のフィクサーだった。都市っていうのは、私たちの世界の人間が主に暮らしている不自由な場所で、フィクサーっていうのは、要は何でも屋だ。迷い猫探しに暗殺、治安維持から戦争まで何でもやる。1~9級までの格付けがあって、1級の中でも傑出したフィクサーは固有の色を付与され、特色と呼ばれる。かつての私は赤を付与された特色、赤い霧だった」

 

 ゲブラーの話に、夜蛾と夏油が驚く一方、五条は納得の表情を見せた。

 なるほど、通りで佇まいに隙が無かったわけだ、と。

 

「それから色々なことがあったが、今は図書館の司書をしている。とは言っても、普通の図書館じゃない。本……つまりは情報を餌に、ゲストを招待して司書と戦わせ、負けたゲストを本にする、なんて事をしていた。おい、そう一斉に睨むな。これは昔の話だ。今は図書館長が心変わりしたからな。本になったゲストは生き返ってるし、図書館の運営方針も変わってる」

「いや、まさか私たちを本にしようとしてるんじゃないかと」

 

 慌てて釈明するゲブラーに、夏油は疑わし気な目つきでそう言った。

 ともあれ、話が進まないのでゲブラーは説明を続ける。

 

「図書館長の今の目的は、都市で苦痛が繰り返される理由を突き止めることだ。前にも言ったが、この目的を達成するために、私はこの世界の社会見学に来ている。この世界は、私たちの世界より幾分かマシなはずだからな」

「そうかぁ? ここも結構イカれた世界だと思うんだけど」

「なら、ここの世界は何度も隣人が変わったり、一晩寝て起きたら良くしてくれた大人が手足を切られて道端に転がってたりするのか?」

 

 ゲブラーのこの発言に、夜蛾たちは戦慄を覚えた。

 向こうの世界は、そんなにも過酷なのかと。

 そして、そんな世界で特色まで上り詰めたという彼女は、一体どれほどの存在なのだろうかと。

 

「悪い、少し過激な例を出した。だけど、私が育った場所はそんな世界だったんだよな。小さいころ生き残れたのは、運が良かっただけだ。ほら、次はそっちの自己紹介を頼む」

 

 ゲブラーにそう促され、夜蛾たちは説明を始めた。

 

 最初は、呪霊や呪術師とは何なのかについての話から始まり、次に呪術師の仕事の話をして、最終的に自分たちが何級の呪術師でどんな立場なのかを、彼らは包み隠さず説明した。

 ちなみに、この時夜蛾と夏油は一級呪術師で、五条だけは特級呪術師だ。

 

「なるほど。確かに、呪術師の世界はちょっとイカれてるかもな。じゃあ、表向きの世界は?」

「至って平和だ。人が死ぬのは当たり前じゃないし、戦争も抗争も滅多にない」

「……そうか」

 

 静かに、眩しいものを見るような目で、ほんの少し羨ましそうに、ゲブラーはそう言った。

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