赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです   作:書鳳庵カルディ

6 / 38
第5話 最強

「結構そっちの手の内教えてもらったからね。代わりってわけでもないけど、俺の術式について教える。無下限呪術って言ってね。俺に近づくモノはどんどん遅くなってって、結局俺まで辿り着くことはなくなるの。んでもって、原理は面倒だから説明省くけど、それを強化すると強力な吸い込む反応が作れるんだ。オーケー? 理解した?」

「ああ、どうしてさっきからそうも自信ありげなのかも理解した。本当にその術式が通用するのか、試してみようか」

 

 ゲブラーがそう言い終わると同時に、五条は術式順転「蒼」を彼女の近くに発動させ、戦いの火蓋を切る。

 しかし、術式によって圧縮されたのはグラウンドの土のみだ。

 ゲブラーはすぐさまその場を飛び退き、五条の攻撃を回避。

 近接主体らしく、すぐさま五条に突っ込んでいく。

 

「まずは一撃」

 

 そう言って、ゲブラーがすれ違いざま横薙ぎに振るったミミックの刃は、やはり五条の身体に届くことはなかった。

 だが、無下限呪術の説明を聞いていた彼女はそんな事は予想済みだ。

 

 だんだん遅くなり、結局止まるという奇妙な感覚を、ゲブラーはこの瞬間確かに覚えた。

 

(全力で行けば、ワンチャンこの防御は貫通できるな。それでダメなら、他のE.G.Oを試すしかない)

 

 五条とすれ違った後も走り続けつつ、ゲブラーは頭の中でそう考えをまとめる。

 一方で、五条はゲブラーに向かって術式順転「蒼」を放ち続けるが、有効打は与えられていなかった。

 ゲブラーが速すぎるあまり、そもそも当たらない場合が多いのと、例え術式順転「蒼」が掠ったとしても、彼女は吸い込む力を無理やり振り切ってしまうのだ。

 

(このままじゃ埒が明かねぇ。呪力を使わねぇから、六眼で動きも読みづらい。どうする?)

 

 都市のフィクサーは、肉体改造施術を受けるのが当たり前。

 身体に金を注ぎ込めば注ぎ込むほど強くなれる。

 そんな世界のほぼ頂点に立っていたゲブラーの身体能力は、控えめに言っても桁違いだ。

 

 しかし、ゲブラーの強みは決してそれだけではない。

 五条とは違い、彼女は血にまみれた都市の裏路地で生きてきたがゆえに、圧倒的な量の対人経験がある。

 

 五条の周りを走っていたゲブラーは、彼が術式順転「蒼」の連続使用で、ほんの少し疲れを見せた瞬間を見逃さなかった。

 

 刹那、五条に向かって二度目の突進。

 一度目はあくまで様子見の攻撃だったが、二度目の今回は違う。

 間合いに入った瞬間、ゲブラーは全力でミミックを横薙ぎに振るった。

 

「は?」

 

 五条の白い髪が数本、ゲブラーに切られて宙を舞う。

 これが模擬戦ではなかったのなら、切られていたのは髪ではなく首だっただろう。

 無下限呪術は、ゲブラーの攻撃を止めきれなかった。

 

(どうなってる? 無下限呪術は確かに発動させた。ゲブラーの攻撃に、何か特殊な力が付与されていたわけでもねぇ。どんどん遅くしても止められない攻撃……まさか)

「攻撃の速度が無限だった、って事か? ハハッ、俺の術式と相性最悪じゃん」

 

 結論に辿り着いた五条は、緊張の糸が切れてその場に大の字で倒れた。

 記憶にある限りでは、初めての敗北だった。

 

「俺も人の事は言えないけど、ゲブラーさん無茶苦茶だな」

「特色ってのはそういう存在だ。特級もそうなんだろ」

「……特は、突出した実力を持つ者に与えられる称号だって、さっき話したよな? だからこそ、特同士で実力差が大きくなるのは、そっちも同じだったはずだ。あんた、特色の中ではどんな強さだったんだ?」

 

 五条の言葉に、ゲブラーは少し考える素振りを見せた。

 今のゲブラーにとって、赤い霧だったカーリーは完全に自分ではないからだ。

 しかし、赤い霧の記憶は確かに残っている。

 

「赤い霧は最強と呼ばれた。そして、数々の伝説と名声を残した。実際に剣を交えることはなかったから、他の特色と強さの比較はできないが、都市で一番有名なフィクサーは私だっただろうな。でも、そんなもんは私にとっては全部オマケだ。それに結局、赤い霧は仲間を守って死んだ。私は最強だったかもしれないけど、無敵ではなかったよ」

 

 恐らく、殆どの相手には無敵を誇るであろう五条に、ゲブラーはそう言った。

 

 嫌な記憶を思い出した彼女は、コートの内ポケットからタバコを取り出し、火を点けてそれを吸い始める。

 

 かくして、ゲブラーの戦闘能力が、呪術世界にも通用することは証明された。

 しかし、この世界でも赤い霧が立ち込めるのは、もう少し先のお話だ。




以下はlibrary of ruina内における赤い霧のパッシブスキル「最強」の効果の独自解釈です。

・ゲブラーは敵に攻撃を仕掛ける場合、最初の攻撃速度を無限にできる。
(要するに、今回のように一撃離脱を仕掛ける場合は、このスキルを毎回発動できます。連続攻撃を仕掛ける場合には、このスキルは最初の攻撃にしか発動できません)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。