赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです 作:書鳳庵カルディ
「結構そっちの手の内教えてもらったからね。代わりってわけでもないけど、俺の術式について教える。無下限呪術って言ってね。俺に近づくモノはどんどん遅くなってって、結局俺まで辿り着くことはなくなるの。んでもって、原理は面倒だから説明省くけど、それを強化すると強力な吸い込む反応が作れるんだ。オーケー? 理解した?」
「ああ、どうしてさっきからそうも自信ありげなのかも理解した。本当にその術式が通用するのか、試してみようか」
ゲブラーがそう言い終わると同時に、五条は術式順転「蒼」を彼女の近くに発動させ、戦いの火蓋を切る。
しかし、術式によって圧縮されたのはグラウンドの土のみだ。
ゲブラーはすぐさまその場を飛び退き、五条の攻撃を回避。
近接主体らしく、すぐさま五条に突っ込んでいく。
「まずは一撃」
そう言って、ゲブラーがすれ違いざま横薙ぎに振るったミミックの刃は、やはり五条の身体に届くことはなかった。
だが、無下限呪術の説明を聞いていた彼女はそんな事は予想済みだ。
だんだん遅くなり、結局止まるという奇妙な感覚を、ゲブラーはこの瞬間確かに覚えた。
(全力で行けば、ワンチャンこの防御は貫通できるな。それでダメなら、他のE.G.Oを試すしかない)
五条とすれ違った後も走り続けつつ、ゲブラーは頭の中でそう考えをまとめる。
一方で、五条はゲブラーに向かって術式順転「蒼」を放ち続けるが、有効打は与えられていなかった。
ゲブラーが速すぎるあまり、そもそも当たらない場合が多いのと、例え術式順転「蒼」が掠ったとしても、彼女は吸い込む力を無理やり振り切ってしまうのだ。
(このままじゃ埒が明かねぇ。呪力を使わねぇから、六眼で動きも読みづらい。どうする?)
都市のフィクサーは、肉体改造施術を受けるのが当たり前。
身体に金を注ぎ込めば注ぎ込むほど強くなれる。
そんな世界のほぼ頂点に立っていたゲブラーの身体能力は、控えめに言っても桁違いだ。
しかし、ゲブラーの強みは決してそれだけではない。
五条とは違い、彼女は血にまみれた都市の裏路地で生きてきたがゆえに、圧倒的な量の対人経験がある。
五条の周りを走っていたゲブラーは、彼が術式順転「蒼」の連続使用で、ほんの少し疲れを見せた瞬間を見逃さなかった。
刹那、五条に向かって二度目の突進。
一度目はあくまで様子見の攻撃だったが、二度目の今回は違う。
間合いに入った瞬間、ゲブラーは全力でミミックを横薙ぎに振るった。
「は?」
五条の白い髪が数本、ゲブラーに切られて宙を舞う。
これが模擬戦ではなかったのなら、切られていたのは髪ではなく首だっただろう。
無下限呪術は、ゲブラーの攻撃を止めきれなかった。
(どうなってる? 無下限呪術は確かに発動させた。ゲブラーの攻撃に、何か特殊な力が付与されていたわけでもねぇ。どんどん遅くしても止められない攻撃……まさか)
「攻撃の速度が無限だった、って事か? ハハッ、俺の術式と相性最悪じゃん」
結論に辿り着いた五条は、緊張の糸が切れてその場に大の字で倒れた。
記憶にある限りでは、初めての敗北だった。
「俺も人の事は言えないけど、ゲブラーさん無茶苦茶だな」
「特色ってのはそういう存在だ。特級もそうなんだろ」
「……特は、突出した実力を持つ者に与えられる称号だって、さっき話したよな? だからこそ、特同士で実力差が大きくなるのは、そっちも同じだったはずだ。あんた、特色の中ではどんな強さだったんだ?」
五条の言葉に、ゲブラーは少し考える素振りを見せた。
今のゲブラーにとって、赤い霧だったカーリーは完全に自分ではないからだ。
しかし、赤い霧の記憶は確かに残っている。
「赤い霧は最強と呼ばれた。そして、数々の伝説と名声を残した。実際に剣を交えることはなかったから、他の特色と強さの比較はできないが、都市で一番有名なフィクサーは私だっただろうな。でも、そんなもんは私にとっては全部オマケだ。それに結局、赤い霧は仲間を守って死んだ。私は最強だったかもしれないけど、無敵ではなかったよ」
恐らく、殆どの相手には無敵を誇るであろう五条に、ゲブラーはそう言った。
嫌な記憶を思い出した彼女は、コートの内ポケットからタバコを取り出し、火を点けてそれを吸い始める。
かくして、ゲブラーの戦闘能力が、呪術世界にも通用することは証明された。
しかし、この世界でも赤い霧が立ち込めるのは、もう少し先のお話だ。
以下はlibrary of ruina内における赤い霧のパッシブスキル「最強」の効果の独自解釈です。
・ゲブラーは敵に攻撃を仕掛ける場合、最初の攻撃速度を無限にできる。
(要するに、今回のように一撃離脱を仕掛ける場合は、このスキルを毎回発動できます。連続攻撃を仕掛ける場合には、このスキルは最初の攻撃にしか発動できません)