赤い霧が呪術廻戦の世界へやって来るようです 作:書鳳庵カルディ
あの日からおよそ一か月間、ゲブラーは夜蛾との取引通り働き続けた。
情報面では、都市の情報を提供する代わりに、この世界についての情報を引き続き教えてもらい。
戦闘面では、表向きは四級呪術師として高専で活動しつつも、実際には特級呪術師並みの実力者として、一人で一級以上の呪霊を祓い続ける。
そんな生活だ。
ちなみに、時折ゲブラーは五条や夏油に声をかけられ、戦闘訓練に付き合っているのだが、今のところ敗北はしていない。
ただし、着実に差は縮まっているので、流石は最強の二人と言うべきだろう。
さて、そんな生活が続いていたある日のこと、ゲブラーは夜蛾に呼び出されて、久々に高専の二学年の教室を訪れていた。
教室の中では、五条と夏油がいつものように喧嘩をしていたが、ゲブラーもこれにはもう慣れている。
彼女が喧嘩を無視して、教室の空いている席に座ると、間もなく夜蛾も教室に入ってきた。
「硝子がいないが……まぁいい。オマエ達に新しい任務を伝える。天元様が悟と傑の二人をご指名した任務だが、正直荷が重いと判断した。そこで、今回はゲブラーにも同行してもらう。依頼は二つ。星漿体、天元様との適合者。その少女の護衛と抹消だ」
「
夜蛾の話に、五条はそう疑問の声をあげた。
一方で、ゲブラーも内心では疑念を持っていたが、何か事情があるのだろうと、ひとまずは話を聞くのに徹することにする。
それから、ゲブラーは三人のやり取りを聞き、天元様の事情と星漿体の少女を護衛しなければならない理由を把握した。
この世界に来てからは初めてになるが、護衛任務は都市でゲブラーが最も数をこなしてきた任務だ。
都市では対象を守り切れない事も多かったが、せめてこの世界では守り抜きたいと、彼女はひそかに決心を固める。
そうして、一行は星漿体の少女がいるという建物に向かい始めた。
「しかし、盤星教か。こんな平和な世界なら、人の命を狙うような宗教団体なんてないと思ってたんだがな」
「今までの話から推測すると、都市の宗教団体はえげつなさそうですね」
「ああ。実際その通りで、苦しい世界には狂った宗教が付き物だ。信者を歯車に改造する、歯車の教団なんてのもいたな。身内を犠牲にしてない分、盤星教の方がマシなのは間違いない」
と、ゲブラーと夏油が歩きながら話をしていると、突然目的地の建物の一室が爆発する。
「これでガキんちょ死んでたら俺らのせい?」
「どうだろうな。とにかく、今は力の限りを尽くそうか」
ゲブラーはそう言って、本の中から黄金色をしたガントレット型のE.G.O、黄金狂を取り出す。
それと同時に、夏油はマンタのような飛行できる呪霊を呼び出し、爆発した場所から落ちていくのが見えた少女を確保しに飛び出した。
「恨むなら天元を恨み……なっ!?」
「目立つのは勘弁してくれ。今朝怒られたばかりなんだ」
星漿体を建物から突き落とし、すっかり殺した気になっていたQの戦闘員コークンは、突如星漿体を抱えて現れた夏油に動揺した。
しかし、すぐに気を持ち直した彼は、夏油に星漿体を渡すよう要求しようとするのだが……それよりも先に、彼と夏油の間に黄金色の魔法陣が現れる。
「なんだこれは? まさか、何かの術し――」
コークンが何か言葉を言い終える前に、魔法陣から飛び出したゲブラーは、彼の右脚を黄金狂で殴り飛ばした。
これは、対象の逃げ足を潰しつつ、殺さずに済ませるにはどうするべきかと、彼女なりに考えた結果だ。
肝心のコークンは、右脚を複雑骨折して気絶しているものの、一命は取り留めている。
「……E.G.O、あのグロテスクな大剣だけじゃなかったんですか」
「あれは、ただ単に他のE.G.Oよりも使い慣れてるだけだ。今ので分かったと思うが、E.G.Oには特殊な能力が備わってる場合もある。例えば、これの場合は短距離のテレポートだ。ペアの魔法陣を出現させて、その間をテレポートできる。一応、覚えておくといい」
と、ゲブラーと夏油が話をしている一方で、五条もQの戦闘員バイエルとの戦闘になっていたが、間もなく五条が余裕の勝利。
Qの襲撃は失敗に終わり、星漿体の護衛はひとまず成功した。