破壊者はその世界で何を為す   作:ベリアロク

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第1話 新たなる旅路

「終わった、か…」

 

「そうだね」

 

 

多くの建造物が立ち並ぶ街の高台で、二人の男はその街で起きた出来事を眺めていた。

 

時は平成。数多の出会い・決戦・死別。その全てが積み重なった世界の命運を賭け、試練を経て時の王者となった男と時と破壊の力を持った男の戦いがあった。

 

片やここまで戦ってきた仲間のために、片や自己の宿願のために行われた戦い。

その戦いは時の王者の勝利で決着を迎えた。ここまで信頼し、共に戦ってきた仲間との別れという犠牲の上に。

 

 

戦闘の余波は周囲数十キロに渡り、怪異が生まれては消滅するといったように街への被害も甚大で人の声一つしない。濁るように曇った空には鳥一匹も羽ばたいておらず不気味で無機質な世界が勝者である王を称えるようにそこにはあった。

 

仲間も民も失った孤独の王。彼は唯一残った家臣に最後の言葉を告げた後、無機質な大地・空は崩れ始めビルや家屋も光へと還っていっている。まるでパズルのピースが一つ一つ欠けていくかのような光景。戦いを傍観する二人の傍の大地もぽろぽろと光へと還っていっていた。

 

 

「時空が造り変えられていく……これがあの王サマの選択か。士はこうなるってわかってたのかい?」

 

「どうかな。なんにせよ、これで新しい旅が始められそうだ」

 

 

そう言って黒のスーツを着た男は造り変わりゆく世界を首からかけたカメラで写真に収める。

孤独の王となった男が取った行動は世界の再創造。

未来永劫世界最強の王として君臨出来る未来・運命を捨て、世界のためにその力を使ったのである。

 

 

「なんだか嬉しそうだね、士」

 

「……さぁな。破壊する手間が省けて助かったってぐらいだ」

 

 

士と呼ばれる男は隣に立つ男の言葉に否定も肯定もしないまま背を向ける。

けれどその男の顔にはうっすらと笑みが浮かんでいた。

 

 

「もう行くのかい士。とは言ってもこの世界にそれほど時間は残って無いけど」

 

 

「ああ、俺のこの世界での役目は終わったからな。

 今回はスウォルツさえどうにかすれば良いと思っていたが…また引っ掻き回してくれたな、海東」

 

 

過去に海東が物事を引っ掻き回したせいで過去には友人が死にかけたり世界が滅びかけたり、今回の件では自身の力が奪われたりと散々な目に合っているのだ。

その事を思い出したため士の顔から笑みは消え、海東はそのことを察しながらも変わらず話を続ける。

 

 

「世界中のお宝を手に入れることが僕の夢だからね、手段は選ばないさ。君こそ憎まれ役を買うならもう少しうまくやりたまえ」

 

「そいつはどうも。……ったく、そう言うお前はまだ居るのか?」

 

「世界の終わりなんて素晴らしいお宝、見逃すなんて勿体ないだろう?」

 

「そうかよ…」

 

 

不機嫌さを感じさせても変わらない海東の態度にため息を吐きながら、目の前に人の背を優に超す銀色の舞台幕のようなもの(オーロラカーテン)を出現させる。オーロラカーテンの先には都会的な街並みの中人類と人型ロボットが共存する姿が映し出されていた。

 

 

「じゃあな海東。出来ればこれが今生の別れになることを祈るよ」

 

「連れないこと言うなよ士。また会おう」

 

 

世界の終焉を見届ける海東に背を向けて士はオーロラカーテンへと足を踏み入れる。

新たな世界、新たなライダーに出会うために。

 

 

「新しい旅の始まりだ」

 

 

濁った銀幕をくぐり、空間が歪んで生じる歪な音が鳴る。異音とも不快音ともとれるそれは何十と聞いてきた士にとっては環境音の一つに過ぎない。

銀幕の移動距離はほんの数メートル、たった数歩の距離だった。けれど銀幕と世界の境界を前にして士の脚は止まった。通り抜けられるはずの銀幕に弾かれるのだ。

 

 

「……どうなってるんだ?」

 

 

銀幕に触れてみるもやはり通り抜けられない。拳で叩こうが蹴ろうが鈍い音が返ってくるだけ。かつて世界が崩壊へと向かった日に触れたそれと同じ不可侵の銀幕が士の前にはあった。

 

 

「あの日と同じ……ジオウが取り込み中のせいか? なら今度も同じように――――――」

 

 

状況打破のため士がドライバーに取り出す。

瞬間、目の前の銀幕が形を失い周囲の空間ごと士を飲み込み始めた。

 

 

「何が……ッ⁉」

 

 

そよ風がなびく程度だった引力が忽ち暴風と化し、士の身体を我が元へと引きずっていく。それは生物を飲み込むかのように渦巻く渦潮、或いはブラックホール。どれだけ抵抗しようにも既にベルトを持った片腕は飲み込まれてしまっており士には成す術は無く、士は異空間の渦へと飲み込まれた。士の身体は激流の如き闇に流されていく。

 

 

 

「クソッ、こんなところで旅が終わってたまるか!」

 

 

 

そんな中でも士は足掻く。旅の終着点はこんな暗闇ではないのだと訴えるように。

そしてそんな想いに呼応するかのように渦の中に一つ、銀幕が現れる。

そこには暴れる巨大な獣と評すべき巨漢。そしてそれに立ち向かう、まるでヒーローかのような人の姿がぼやけながらも写しだされている。普通の世界では無いのは間違いなかった。

 

 

「次の世界は……あれだな!」

 

 

それでも士は一心不乱にその銀幕へと進んでいく。

元より片道きっぷである彼の旅に恐れは無いのだから。士は激流に抗いながらその銀幕の臨界を越え新たな世界へと飛び込んだ。

 

 

 

ライダーの存在しない……ヒーローとヴィランが創り出す歪な世界へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

世界の破壊者、ディケイド。

幾つもの世界を巡った彼はその世界で何を為す。

 

 

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