術式が『ホワイトグリント』ってマ? 作:隣の家に晩飯凸する止まらないゴルシ
「本日、呪術高専に転校してきた東野準です。どうぞよろしくお願いいたします」
あまり目をつけられても厄介。故に、この程度で構わない。
「ふうん。てめー、術式は?」
「言いません。貴女が私の術式を外部の人間に漏らすというのは勘弁していただきたいので」
「…けっ」
質問してきた女―――禪院真希というらしい―――はどうやら、呪術界の御三家、禪院家出身の人らしい。実家の古典的な風習による迫害やらに嫌気がさした彼女は、実家の人間を見返すために呪術師をしているらしい。馬鹿馬鹿しい。その禪院家も、この女も。古典的な風習に囚われ続ける家も。その連中を見返そうとする女も。
その古典的な風習に囚われている連中を見返したところで、それは古典的風習を通常の風習とみる連中を納得させているだけに過ぎない。見返す、というのは同じ価値観を持っている人物にだけ通用する言葉だ。
「…貴方は、実家を見返すために呪術師をしていると聞きましたが」
「ンだよ」
「古典的風習を主とする古典的価値観を持つ連中を見返す意味がどこにあるんですか?」
「…あぁ?」
「貴女の行動は、実家の人間を貶めていることに他ならない」
「…はっ、言ってくれるじゃねーか。いいか、新入り。この界隈、女は誰であろうと虐げられる。少なくとも男のテメーがンなことほざくな。それともまだ何かあるなら、手合わせで決めようじゃねぇか」
「いいですね。私もちょうど本職さんの実力を見てみたかったので」
いらいらする。あの人を見下した様な―――否、人を煽り立てるような物言い。
新人が、生意気を言えばどうなるか分かっていないようだった。多少は先輩に対する態度を改めさせてやろう。
そう思って、それなりの殺意を以てしてあの男を叩き潰すことを真希は誓った。
その誓いもすぐ破られるが。
「それじゃー呪力術式呪具無しの肉弾戦ね」と五条が言う。目の前にはあの女―――禪院真希か―――が立っている。
手合わせで決める、か。古典的だ。一度冷静になって周りを見渡せば、如何に他人がちっぽけかわかるだろうに―――残念だ。
「よーい、始め!」
五条の掛け声とともに2人が走り出す。強力な術式と底なしの呪力を持つ準。だがこの手合わせではその両方が封じられている。対して、相手は天与呪縛により超人と言っても差し支えない筋力・身体能力を持つ真希。しかも、実戦経験も少しばかり真希が上な分、準は少し分が悪い。
実際、真希は少しの隙もなく突進してきていた。恐らくこのまま顔や身体を殴っても落ちないだろう。そもそもまずは体勢を崩すのが先決だった。
真希の突進を紙一重で右に跳び避ける。そして準は真希の左膝を自分の右かかとで思いっきり蹴る。思わぬ攻撃で自身の姿勢を崩された事に動揺した真希には、少しばかりの隙が出現した。
それを見て準は、ここぞと言わんばかりにタックルで地面に押し倒す。
「一!」
五条がカウントを叫ぶ。
「くそッ…!」
「ニ!」
どうにか抜け出そうと抵抗はしているが、最早ここから抜け出す手立てはなかった。
「三!真希の負け!」
「く、そ…ッ!」
随分と悔しそうにしているが、もはや事後である。
少し疲れた準は、自動販売機で適当に何か買って自室で休むことにした。