術式が『ホワイトグリント』ってマ? 作:隣の家に晩飯凸する止まらないゴルシ
最初に感じたのは激しい羨望だった。
羨ましいと何度も思っては己の生まれた環境を恨んだ。母は己の出産後にそれが祟って死亡。父は暫くして蒸発した。幼くして己は両親を失った。高校生になり、施設を脱し一人暮らしを始めた彼はその憎悪を腹の底で育みながら生きていた。
そんな時、偶然とあるダークウェブに遭遇した。そこで目に付いたのは一丁の拳銃と短機関銃だった。
―――これがあれば、強者として生まれながら弱者を虐げる者を罰せれる。
彼はそう考えた。否、考えてしまった。彼の歪んだ人生が生み出した、歪んだ価値観がそう考えさせた。
そして彼は一週間後、新宿にて大量殺人を起こす。この事件で凡そ256名が死んだ。一般人及び警察官を含んだ最終的な死者数である。この乱射事件の最中、彼は一人の警察官が放った銃弾によって死ぬ。そして、彼は己としての記憶を保ったまま別の世界へと旅立った。
アクシデント、もとい、イレギュラー。
人生では幾度となく起こる事だ。テストでヤマをはって外したり、プレゼン資料の入ったUSBが破損したり。人生では何度も何度も起こる。だが、よりによって今起こるのは困る。
兵庫県神戸市中央区―――の、ある廃ビルに蔓延っている二級呪霊数体を祓うだけの簡単なお仕事のはずが、たまたま起こったアクシデントのせいで対呪詛師戦に早変わりである。
だがそこらのアクシデントとは比較にならないほどこれは不味い。
今準の目の前にいるのは、己の術式によって生成されるホワイトグリント―――を、黒く染めたような機体だった。
「お前は―――何者だ」と聞かれる。その漆黒の機体の足元には一般人の死体が数人分転がっていた。
「呪術師だ」
ゆっくりと呪詛師がこちらを向く。
「ならば―――死ね」
刹那、爆発。準の術式発動時に発生するアサルトアーマーが半径5メートルの物体を消しとばしたのだ。だがそれは呪詛師に届くことはなかった。
「プライマルアーマー…!」
プライマルアーマー、略してPA。術式によって術者を覆う『ネクスト』の基本的防御機構である。その概要は機体周辺に散布したコジマ粒子を安定的に還流させることで、慣性抑止フィールドとも呼べる力場を形成、自機に向かってくる各種攻撃の速度や威力を減衰させて受けるダメージを軽減・無効化させる物である。それがアサルトアーマーによる攻撃を防いだのだ。
準には察しがついている。こんな近代的な術式は基本的に己のような転生者が持つと。従って、目の前にいるこいつは転生者である。
「…今度はこちらの番だ」
再び青白い光が辺りを覆う―――前に、どうにか準は逃げ出せていた。彼の着るネクスト―――ホワイトグリントは、飛行態勢への変形が可能だ。そのシステムのおかげで九死に一生を得た訳だが―――。
ビルが崩れ去り、出てきたのは瓦礫の山に立っている呪詛師だった。