キララはリア充にあらず   作:トリケラプラス

1 / 12
キララ入職日 外出 1日目

 

【挿絵表示】

 

私、極東出身のゲームの上手い学生、キララはほんとうに珍しくロドスで割り当てられた自室から外出していた。

 部屋の外はロドスのオペレーターさんや私みたいに鉱石病の治療を受けに来た人たちでごったがえしてた。

 

 ……正直、こういう人がうようよいる空間は苦手、何か見られてる気がするしよくない噂も立てられているような気がする。なる早で今日の外出の目的を済ませて部屋に直帰しよ。うん。

 

外出の目的っていうのは購買で発売されているはずの新作ゲーム、ホライゾンハンター4。携帯ゲーム機に対応した狩ゲーで私も昔から好きでプレイしてる。最もウタゲと違って非リアな私は一緒にやる相手がいなくて全クエスト一人でクリアしたんだけどね……一緒に連れ歩ける猫型ロボットは可愛くて孤独が随分癒されたな。耳パーツがなくてカラーリングがDLC買わないと青から変更できないのはどうかと思うけど。

  そうやってゲームのことに思いを馳せて周りのことを出来るだけ気にしないようにしてたんだけど長くは続かなかった。歩く私の耳に届いたのは困惑した声。

 

「あら?なぜかしら?上手くいかない……」

 

 ロドスの職員さんっぽいお姉さんがカフェでノートパソコンを前にをあーでもないこーでもないって言いながら弄ってた。大変そうだな~でも私関係ないし。そう思って通り過ぎようとしてたんだけど。

 

 「どうしようかしら画面が真っ青になってしまったわ。もしかして壊れたの!?私なにもしてないのに!?まずいわね……また支援部の人達に怒られてしまうかも……」

 

 思わず立ち止まってしまった。

 ってダメダメ何考えてんのさ私!?手伝おうとか思った?ムリムリムリ私だよ?声かけたところで戸惑われるだけだよ。ここは悪いけど早く購買にいこう。何とかするかもだし……。

 気付けば私の足は動いていた。ブルースクリーンを起こしたっぽいお姉さんの元へ恐る恐る一歩一歩近づいていった。心臓がバクバク鳴ってる。今なら引き返せる。引き返せるったら!頭は必死に止めるのに震える足は止まらない。ああ!もうついちゃった。

 「あら?私に何かようかしら?」

 お姉さんが私に気付いた。やばいやばいやばいって。でもここまで来たらもう覚悟を決めるしかない!私は大きく息を吸って言った。

 

 「ぱ、ぱぴょこん!そうさ……えと……なんでもないです……」

 

 声が上ずったやってしまったぱひょこんってなんだよ!変に誤魔化しちゃったし。お姉さんもぽかーんとしてるよ!ああ……消えたい。変な気起こすんじゃなかった。もうゲーム買ったら一月は部屋出ない!

 「もしかしたらパソコンの操作を手伝ってくれるのかしら?違ったらごめんなさいね」 救いの神キタ!今ので読み取ってくれるとかお姉さんコミュ力高すぎ。さてはこの人ウタゲと同族か?声をかけたのをちょっと後悔するけどひとまず返事しなきゃ。

 

「そう……です」

 

「ほんとう!……ありがとう助かるわ。私はメテオ。よろしくね」

 

 「き、キララです」

 

蚊の羽音見たいな声量だったけどお姉さんは聞き取ってくれた。そしてパソコンの画面を見せてくれる。わー雲一つない空みたいに画面が青い。

 

 「この状態なんだけどどうにかできるかしら?」

 

 「見事にブルースクリーンになってますね。こういう時はしばらく待って何ともならなかったら再起動しましょう」

 

 私たちは少し画面の前で待機した後、パソコンの再起動を試みた。これで直ってくれたらいいけど。

 

 「ああよかった。ちゃんと動いてる……ありがとう助かったわ。あなたパソコン詳しいのね」

 

 「い、いえ……大したことはしてない……です」

 

 ほんとうに大したことはしてないのにメテオさんはとても喜んでくれて私は何だか顔が熱くてむずかゆい。死ぬ。

 

 「それじゃあ私はここらへんで……」

 

 「あっ……」

 

 そそくさと立ち去ろうするとメテオさんは大人びた雰囲気に似合わぬ捨てられた子犬のような顔を見せた。いや、見たところクランタっぽいんだけどそれはそれ。とにかく凄く立ち去ることに罪悪感がある。仕方なくとどまることにした。

 

 「えっと……もう少しお手伝いしましょうか?」

 

 「ごめんさいね。お願いするわ。私パソコンはダメで」

 

 みたいですねーと心の中で思いつつ私は操作を手伝っていく。メテオさんの機械音痴は相当で少し目を放したら凄いコトになって大変だったけど何とか目的は達成できた。お礼におごってもらったコーヒーとデザートはいつも部屋で一人で食べてるお菓子とコーラより美味しい気がした。

 

 「ごちそうさまでした。じゃあ私はコレで……」

 

 「ありがとう凄く助かったわ。そうだ、今度寄港先でBBQ会を開く予定があるの是非あなたも誘わせて」

 

 「わ、わ~楽しみだな~」

 

 初対面の人にBBQ誘われた……!?やっぱりリア充のオーラを持った人は違う!BBQかあ。漫画とかでしかみたことないなあ。お肉美味しいのかなあ。……いやいや、メテオさんも社交辞令で言ってるだけで別に職員でもない私を本気で誘おうとか思ってないでしょ。私の馬鹿。

 その日はゲームを買ったら直ぐに部屋に戻ったけど疲れて直ぐ寝ちゃった。久しぶりの外出はやっぱり凄く疲れた。でも不思議と夢見は悪くなかったんだ。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。