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雨を止めたのは一通のメッセージだった。軽快な通知音を聞いたソラは自らの情報端末を確認する。すると目を見開き涙を拭う。
「やった!ヴィグナたち協力してくれるって!!」
「マジ!?やっ……たじゃん!あ~……でもぉ……」
二人は恐る恐るフィリオプシスへと振り向く。だがその顔を見てすぐに安心した。
「状況を把握、なるほどまた私たちのステージに関わる人が増えたのですね……」
フィリオプシスはあの日初めてのレッスンで見せたように、美しく微笑んでいた。ならば彼女の答えは決まっている。
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レクリエーション当日。ステージの裏側にて甘光が待機していた。今日の甘光はいつもの恰好ではない。ステージ用に誂えられたバイビーク特製のアイドル衣装に身を包んでいた。
衣装は白を基調としており大部分のデザインは共通していたがそれぞれの体格や種族特性を考慮した差異があった。また、各所にそれぞれの特徴を捉えた小物が縫い付けられておりそれらを見るだけで楽しい代物に仕上がっている。
そんな衣装を身に纏い。ソラはマイクを持つ手を胸にあてユニットメンバーにいう。
「とうとう来たね本番が……短い間だったけどこれまで特訓してきた全部を出し切ってロドスのみんなに笑顔を届けよう!」
隣のフィリオプシスはソラの宣言を聞くと目を伏せ軽く頷いた。
「勿論です、フィリオプシス。全力のパフォーマンスでもって皆さんの期待に応えるつもりです。しかし、懸念事項としてフィリオプシスは先程から身体に軽い震動を検知しています」
見ればフィリオプシスの手指は僅かに震えていた。その手を優しくソラが取る。柔らかな温かさがフィリオプシスへと伝わる。
「うん、大丈夫。きっと上手くいくよ。なんでかそう思うんだ」
「そーそー、今から気を張ったって仕方ないんだからさ。フィリオプシスはフィリオプシスらしくどーんと構えてればいいんだよ」
「ソラ……キララ……」
二人に声をかけられたことによってフィリオプシスの震えは既に止まっていた。あるいは言葉よりも目にしたもののインパクトが強かったせいもあるかもしれない。
「ほんっと……緊張しても……仕方ないって。たかがめっちゃ多い人に見られながら音ゲーフルコン目指すようなもん……ウワッ想像しちゃった。あーヤバい……戻しそう……」
「状況把握、キララの方がフリーズ寸前でしたね」
「だめだめ衣装が汚れる~!?」
キララはフィリオプシスの比ではない程に緊張していた。転圧機なみに震えるその姿は氷雪地帯に半袖で放り出された人のようだ。口元を抑えてキララは言う。
「もうダメ。帰ろう……こんなとこに突っ込んでいくなんて非リアには無理だよ。みて、生まれたての小鹿みたいになってる」
いそいそと帰り支度を始めようとするキララをソラとフィリオプシスが抱き捕まえる。
「フィリオプシスはそのコマンドを受け付けません。フィリオプシスを助けてくれるのではなかったのですか?」
「いやぁ……それはぁ……」
「キララは今までちゃんとやってきたじゃん。だから自分を……あたしたちを信じて。ね」
「ううううぅぅぅぅぅぅあ~~~~~何とかなれ~~!!」
キララがヤケになったところでちょうど前の出し物の終わりを告げる。
『さあ、続きましてはロドスに突如現れた期待のアイドルユニット 甘光(アマテラス)によるステージライブです!皆さん拍手で彼女たちを迎えましょう!』
大きな拍手の音に包まれて三人は手を繋ぐ眼前にはステージがある。
「じゃあ……みんな、行こう」
「了承」
「はあい」
声をそろえて言う。
「甘光ー!GO!!」
そして少女たちは光りの届く場へと駆けて行った。