史上最強の弟子ケンイチ ダメージカンストRTA 作:内弟子虐待おじさん
オレが社長で武術家、なRTA、はーじまーるよー。
まず、出願人数を財団傘下の学習塾(国内の全て)から調べます。
……どうやら、この偏差値の高校としてはあり得ない人気です。倍率は2.1倍。
とりあえず、『勉強』コマンドで全ての教科書を15分ずつ読みましょう。
これで大丈夫ですね(才能の理不尽)
当日は電車が遅れる事を見越して早めに起きるとして、そのまま睡眠をとります。
はい、キサラちゃんのおかげで早起きできましたね(皮肉)
とりあえず百獣の世話をします、殺されないように気をつけましょう。
朝食後は電車で受験会場に行くので倍速。
電車を使わないとソニックブームが発生して周りに迷惑なのでやめておきましょう。(累計1敗)
……はい、迷惑をかけずに学校に来れましたね。
問題はほとんど簡単なものなので4倍速。
勉強頑張った(3年間で1時間)良い子なので即就寝。
入学式まで動物たちとテコンドーをしつつ、ムエタイなど他の武術のミドルキックもやってみたり色々します。
入学式は固定ムービー、スキップはできません。
スキル画面から『パルクール』『指導者』『荒れ地◎』『学習力◎』『受け流し』『火喰い鳥』『ドラミング』『マニ車の原理』を習得、そうやってもまだ時間があります。
……さて、この間に固定イベントについて解説しましょうか。
このゲームには、絶対に避けられないイベントが存在します。
その一つに『キサラとフレイヤの邂逅』がありますね。
アレなんですが、実は没入感を高めるために『キサラの強さに応じて相手の規模が変わる』というのが出てきます。
現在は『妙手』の……おっと、入学式が終わったので帰宅、鍛錬して就寝。
次の日の朝も登校して勉強します。
……とりあえず、クラスはキサラちゃんと別みたいですね。
柔道部には宇喜田、ボクシング部には武田、空手部には例のイベントがありますが今のところは誰もいません。
せいぜい、一撃で沈む脆い筑波先輩くらいです。
とりあえず、入るのは『園芸部』固定です。
このゲームでは武器を盗んだり農薬を悪用したりはできませんが、園芸部だと色々な事ができるようになります。これも後日。
この年はまだモブ部長一人がいますが、まあ幽霊部員ですね。
……お、キサラちゃんも入ってきました。
どうやら、アフリカで見た植物をプランターで見かけて助けてやりたくなったらしいです。
面倒見がいいですね、参加していただきましょう。
どうせ固定イベは起こるので、キャラが多くても少なくても関係ないです。
とりあえず固定イベが起こるまで、家で百獣とか百獣の王と組み手。
……おっと、ついに日梅さんと組み手ですね。
彼は打ってからでも変幻自在の蹴りと発生の読みずらい投げ、さらに勘のいいガードや静の気によるカウンター、果てにはサブミッションも豊富などとまさにクソキャラです。
ですが、それでこそ師匠らしいというものです。
……まあ、妙手上位程度の実力ではプレイヤースキルがあっても無理ですね。
かなり彼の行動を分析しましたが、限界が半分%削る事でした。
神童と言えど勝てぬ試合はある、悔しいが。
ですが、どうやら達人認定も近いらしいです。
天才はいる。嬉しいな。
天才なので即就寝。
そのまま学校に行くと、『ラグナレク』の話が聞けます。
……ということは、まあフラグですね。
学校生活は4倍速。
……はい、というわけで引き続き『フレイヤ姉イベ』の解説です。
フレイヤ姉の強さは多少上下しますが、初期値は弟子級の域を出ません。
じゃあキサラはどんな危機に陥って救われるのか、という事ですね?
もちろん、遭遇する危機もキサラに比例して強化されます。
四方八方から毒矢の雨が降り注ぎ、全て避けて100人の刃物で武装した男たちを倒したと思ったら再度増援の250人が来て毒矢+ライフルや拳銃で足場が悪くなって避けきれない所を撃たれ、内功と反射神経で致命傷を避けつつ銃を全て破壊し、相手が残り数名になるまで戦うものの毒が回りついに膝をつく、というタイプの危機です。
……くっ殺とかリョナというよりもはや手負いの猛獣、という表現がピッタリです。
近づいたら噛み砕かれて顔面を殴り潰されそうですね。
毒矢の突き刺さった美しい足は、最新武装の軍隊小隊に値する美しさです。
武器をへしってきた拳はどくどくと流血していますが、人を殺すくらいにはまだ使えると言えるでしょう。
行くかどうか、というよりトドメを刺すか逃げるか、の領域です。
どうせ動けねえんだろ、とビビりながらもナイフを振り上げて近づいた男が一瞬でスネを噛み砕かれて、さらに地面に引き倒されてボコボコにされていますね。
まあ、この後で救急車に乗ればギリ助かる怪我です。
ですがそのせいでついに恐怖は臨界点に達しました。残る数名が自棄になって玉砕覚悟で突撃してきましたね。
動けないキサラちゃんは覚悟を決めますが、そこでフレイヤ様の登場です。
残る全員を倒すと、キサラちゃんと不良達のために応急救護を施してくれました。
一番怪我が酷い奴のために救急車まで呼んでくれましたね。
キサラの方の傷なら、ホモくんの帰りが遅いせいで前みたいに買い物に行く事になった金月李がいるので大丈夫ですね。
今回はここまでとなります、ご視聴ありがとうございました。
◇
「……なぁ、本当にこんな人数が必要なのかよ?」
「ま、ナメられちゃ困るからな……派手に動かせるなら動かしておきてえもんだ、いっぺんな」
隣にいた男の言葉は、もっともな事かもしれない。
俺たちも、一応は鍛えられた腕自慢の男たち。
ある程度、どころかプロレベルになるまで格闘技をやっているものもおり、そうでない者も拳銃やナイフ、しまいにはライフルなどを持たされている。
何も知らない奴が見たら、まあテロリストの装備にしか見えないだろう。
……個人相手に、350人を動かす事がまず異常。
それも少女だというのだから、なおさら異常である。
「この『南條』って女にはな……ウチのモンが恥かかされてんだ。ま、百人がかりで行けば暴れねえで大人しくしてくれるだろうからな」
「へえ……じゃ、毒矢は?」
「なあに、ちょっとビビらせてやろうってな。軽い痺れ薬だ……お楽しみまで死んでもらっちゃ困るってなぁ!」
だが、まあ確かに確実と言えば確実だろう。
そう思って肩をすくめた、その時だった。
突然、俺の電話が鳴り響いたのだ。
「おい、どうした!」
『ボ、ボス!こいつ、化け物……うわあああ!』
短い言葉と、激しい打撃音。
……まさか、あの人数で仕留め損ねたとでも言うのか。
「……っち、まさかライフル持ち出す事になるとは思わなかったが……」
「マジっすか……いるんすね、そんな化け物みたいな奴……」
さて、鬼神が出るか阿修羅が出るか。
どっちにしろ、俺達は確実にあの女を殺す。
「ここです!……ぜ、全滅してます!」
「んだと……?女、は……」
立っている。
……それも、殆ど無傷で。
「……っ!撃て……!」
「お前ら……突然っ、何しやがるんだ!」
先ほどの倍以上の人数。
倍以上の密度に、矢の雨と銃弾の嵐という生きてる方が不思議な組み合わせ。
だが。……それでも、なお。
「……フーッ、痛いじゃないか……なんか、塗りやがったな……ッ!」
「おい⁉︎マジの……バケモンじゃねえか!」
──たったひとりの少女の方が、よっぽど凶悪だった。
ドスでも斧でも、当たらなければ意味がない。
少女のかかとは頭蓋を砕き、そのつま先は臓腑を抉るに十分な威力だ。
まずい、完全に相手の強さを読み違えた。
……過剰に余裕を持って準備した兵隊も、もはや片手で数えられる数しか残ってはいない。
「や、ヤベェ……ヤベェよ……!」
「フーッ、何モンかは知らないけど……潰させて貰うよ!」
そして、ついに暴虐の嵐がこちらに迫ろうか、という所で。
ふいに、彼女が膝をついた。
「……っは、はは……威勢はいいが、ここまでみてえだな……!」
「ふん……!そう、思うなら……近づいてきてみたらどうだい?」
だが、その程度で安心などできない。
その目は、闘志を未だ失っていないのだ。
……早く、毒が回ってぶっ倒れろ。
そう考えていた俺とは裏腹に、一人が既に歩み始めていた。
「へへっ……だがよぉ、動けねえんだろうが!」
「誰が……」
男の手にはナイフ。
その目の前には、痺れ毒の回り始めた15の女がひとり。
負けるはずがない。……ソイツは、元傭兵だ。
鍛えられた男の前に、小娘ひとりが何を出来るというのか。
「──誰が動けないって言った?」
「え……」
足元に、突如何かが飛んできた事に気付いた。
恐る恐る見てみれば、それはアイツの脛の骨のカケラだったのだ。
「ひっ……や、やめ……」
「う……があああああ!」
全身が、恐怖に震えている。
目の前で部下を半殺しにされ、しかし動けない。
……目が、あった。
恐らく、このまま放って置かれれば……死ぬしかない。
「ひぃ……うわあああああ!全員でやれえええ!」
「フーッ、ぐ……!」
もはや、自分が何をやっているのかもわからない。
ただ、怯えるしかない……そんな、恐怖の中で。
「──極意が一つ……『雷鳴』!」
突然、頭頂に衝撃が走り。
それで、俺は意識を失ってしまった。
◆
異常事態だ。
……地域板の書き込みからまさか、と思って来ては見たが、こんな事になっていたなんて。
ふう、と小さく息を吐くと、杖をしまい直した。
「……本当に、何があったらこんな……」
地面に刺さっているものからして、毒矢だ。
そして、何より全身の銃創だ。
「……っ!救急車!2台……いや、コレは……」
片方はすぐ救急車に乗ればいい。
だが、この女生徒の方は重症だ。
致命傷こそ巧みに避けているが、毒の方が酷い。
……痺れ薬と名のつくものを片っ端から適当に混ぜたような、出鱈目な配分である。
「医者は……この辺に病院はないのか⁉︎」
「医者ならいるんだよ!……っ⁉︎キサラちゃん!」
医者、という声に反応したように、どうやら近くにいたらしき女医が手を差し出してくる。
知り合いなら、ますます安心だ。
それにこの雰囲気、恐らく……
「痺れ薬!デタラメな配分のせいで異常な効き方をしています!」
「流石の私でも、出血だけはダメなんだよ。だからこの子、しっかり致死の失血を避けている……とりあえず、感謝なんだよ!」
──達人だ。
彼女はキサラをどこからか取り出したシートの上に乗せると、そのまま『制空圏』を展開する。
「……これより、遺物除去、神経縫合、骨折……もう数えられないけど!手術を始めるんだよ……!『消毒薬』、『手術刀』!」
「まさか……!」
ほぼ『完全』とも言える脱力による、最低限の傷での手術。
指先のように正確に動く、ナノ単位とて乱れぬ精密動作。
手術刀と、一つに。
武器と一体化する、まさに『達人の技』と呼ぶべきものが。
今、医療の現場で行われている。
「『鉗子』……フルメタルジャケット弾でよかったんだよ!お陰で、致命傷に至ってないんだよ……!『糸』『針』、『消毒薬』……!」
目にも止まらぬ速さで手術を行えば、どうなるのか。
それは当然、患者への負担は限りなくゼロに近づく、という事になり。
「縫合……『糸』『針』……完了なんだよ!」
「……っ!これが、活人……」
終始、完璧な道具との一体化を見せたドクター。
確かにそれは武術ではない。
活人もなにも、手術は最初から相手を倒すことではない。
──だが、それでもこの動きに『武術』の真髄を見出したのだ。
神武不殺。ならば、いずれ武術は『医学』にたどり着くのかもしれない。
だとすれば、この動きは。
「……うん、呼んでくれたおかげですぐに治療できたんだよ。あなた、名前は?」
「私、は……」
思えば、この時だったのかもしれない。
私の中にあった何かが、確かに変わったのは。
──武器術というものの、目指すべき場所が見え始めたのは。