朦朧した意識の中、最初にわかったのは、空を飛んでいるということだけだった。
隣には黒ローブもいて、二人で空を飛んでいる。
「『ん?』」
「どうしたんだい?」
「『カイトが起きたみたいだ』」
「そうかい。代われるか?」
「『はいよ。出て来い』」
声が聞こえると、意識が戻ってきて、肌寒く感じる。
「やぁ、久しぶりだね」
「......あんたは、俺なのか」
「うん。前にも言わなかったかな?流石私、とね」
「そう、か」
「驚かないようだね。ひどく冷静、あぁいや、
絶望。
そうか、俺は今絶望してるのか。
だから、なにも思わない。
「悲しいかい?自分が根源だと聞いて」
「......薄々、そんな気はしてた。弐も作れるし、なぜだか厄災も吸収できるし」
おかしいとは思っていた。
「なら、どうしてそこで刀を振るうことをやめなかった?」
「世界を、守るためだ」
「自分がその護るべきものを壊しているのに?」
ごもっとも、と言わざるを得ない。
しかし、それならそれで策はあった。
払うものをすべて払った後自分で死ねばいいと。
そう考えていた。
「はぁ......どこまで行っても、主人公気質の人間だね、君は」
黒ローブが着地しようとするので、俺もそれに倣う。
なぜかわからないがやろうと思ったらできた。
「私は君の未来の姿さ、君の行動も限定されていると言ったらどうする?」
「それは嘘だな。もしそうなら、俺が世界を救おうなんて考えるはずがない」
「絶望してから、随分と口が回るね」
「何も考えてないからじゃないかな」
そう言いながら、刀を抜く。
刀は軽い。
まだ、振れる。
「おや、未来の自分に挑むのかい?無謀だなぁ」
「確かに、あんたからしたら、俺は過去の姿かもしれない。けど、俺からしたら、あんたは俺の未来の可能性の一つだ。もちろん、あんたみたいにはならないさ。俺は、世界を護る役目があるからな」
「あぁ、いつになく饒舌だねぇ。そんなことは万に一つもありえないな。君が私になることは確定しているのだから」
「なら、ここで斬り殺す」
低く構えて突進。
奴は刀で流すと、俺の空いてる背中に刀を突き立てようとする。
当然、そんなことは分かっているから、無理矢理体を回転させて受け止める。
この勝負は、刀の熟練度や、経験の差ではない。
お互いが自分だと分かっている今、これは言わば自分自身との闘いとも取れる。
あいつは過去の自分と、俺は未来の俺と。
お互いに俺ならば、行動もわかる。
大人びて思考は若干変わるだろうが、それでもわかる。
「はぁっ!!」
「うぉぉぉ!!」
刀をぶつけあい、いなし合い、捌き合う。
未だに目立った傷がないのも、それを物語っている。
「はぁ......しぶといねぇ......」
「それも、あんたは知ってるんだろ」
なんてったって、未来の俺なんだからな。
だから、自ずとわかってくる。
俺もこいつも、死ぬまで動き続けるって。
だから、新しい手を使う必要がある。
「それは......?あぁ、そういうことか」
「あぁ。俺が作り出した、新しい刀だ」
右手に「試作の壱」、左手に「虚構の弐」を握り、
必ず、こいつを殺すと。
そろそろ終わらせる。