SF終末モノ ロボとアンドロイドを添えて   作:明田川

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第三話

「…燃料の質はそこまで良くないな」

 

『でも使えるわ、これは大きな発見ね』

 

「だな、採掘施設か精製施設がまだ生きてる証左だ」

 

戦時に貯蓄されていた燃料はこんな粗雑なものではない、世界が変わってしまってから作られたものだろう。

 

「多少燃費は下がるかもしれないが、仕方ないと割り切るか…いやエンジンの負担を考えると…」

 

『街に到着してから考えた方が良いと思うけど?』

 

「あー、そうだな」

 

すれ違う兵器の数が街に向かうにつれて増えて来ている。

都市に攻撃を仕掛けてきたような多脚戦車、慣れ親しんだ車輪走行の輸送車両、自分と同じ人型兵器などだ。

 

「人型兵器なんて作るならモビルスーツが無いのが不思議だな…」

 

『ガス惑星からの輸送船団は宇宙港を失って100年以上立ち往生、燃料が確保出来なくて核融合炉が動かないからMSは固いだけの置物よ』

 

「成る程」

 

ならば自分が装備しているパイロット用装備と対になる人型兵器「タイタン」も核融合炉が動力源なので動かないのだろうか。

 

「…おっ、アレは?」

 

『目的地ね、今まで以上にしっかりとした建物じゃない』

 

「コンクリート製の外壁、ねぇ」

 

コンクリートで街一つを覆う壁を作るとなると相当大変だ、何年にも及ぶ工事と土木に明るい人材が必要だろう。つまりこの都市は相当な技術を忘れることなく保持しているのだと思わされる。

 

「アレみろ、壁の中は工場だらけだぞ」

 

『あの壁は人を守る、というより技術を守るためのものなのかしら』

 

「相当な奴らだな」

 

人型兵器や車両が並ぶ大きなゲートがあり、恐らくあの場所が入り口なのだろう。

そこに並び待つこと一時間、やっと受付に来れたと思ったら…

 

「初めての方ですと諸々の手続きが必要となりまして、この書類に目を通して下さい」

 

「は、はい」

 

「そしてここと、ここと、あとは全て記入をお願いします」

 

「わかりました」

 

名前、年齢、性別などの当たり前のことを記入した。

その後は街の法律、基本的なルールが書かれた紙とそれを理解し従うことを確約させるためサインを書く。

何処から来たのかという問いは難しかったが機体のカメラで自分と同じように書類を書かされる人々から盗み見て書いた、というか全員が意外と「北の方」とか「南の村、名前は無い」とかばっかりだったので楽だった。

他には犯罪を犯したことはないか、人を殺したことは無いか、盗賊として活動していたことはないか…何度も何度もそんなことを問われる。

 

「これ、後でどれかに抵触してたら有無を言わさず罪に問うために書かせてるよな」

 

『最高死刑と書かれているし、銃殺してもいいようにじゃあないかしら』

 

「おっかねぇな」

 

受付に渡すとスレイプニールの調査が行われ、盗品ではないことが確認された。

この街で運用されている、もしくは協会所属の機体だとシリアルナンバーが隠されているらしい。

 

「へぇ、機体の管理は一応やってるんだな」

 

『アナログな手段に留まっているみたいね』

 

各種手続きは特に問題なく終わり、これらの情報は協会と呼ばれる組織にて管理されるらしい。

そして協会はさまざまな仕事の斡旋や大規模な作戦の統括を行なっており、この地域に住む人類にとっての司令塔であることは間違いなかった。

 

「世界が崩壊した後にここまでまとめ上げるとは、どうやったのか気になるな」

 

『可もなく不可もない状態に上手く着陸させた街という印象を受けたのは貴方もみたいね、ここまでやろうと思ったら相当前からの準備が必要よ』

 

「準備ねぇ…転生者が裏で関わってる、とかな」

 

アンジェラも疑っているようだ、はじめての調査にしては上々じゃあないだろうか。

 

街の中は前回の集落とは違い建造物が廃材の寄せ集めではなくコンクリートで建てられていたり、戦時中に多用されたプレハブ式の家屋がそのまま使われていた。

 

「あれは…移動式の通信設備か」

 

『近くで回ってるレーダーも移動式、車両で簡単に牽引出来るわ』

 

生き残った基地から運んできたのだろう、都市の仕様に合わせて塗装し直されている。

そういえばと通信機を弄ればこの街のラジオ放送が流れた。

 

『ノア放送局はいつでも新たな音楽を欲しています、もし見つけたらご連絡を…』

 

「ああ、そういえば音楽も失われたか」

 

ラジオで流れるのはおそらく崩壊後に作られたであろう楽曲で、ピアノの軽快な音楽がコックピットに響く。

 

「へぇ、良いじゃないか」

 

そうこうする間に駐機場に到着、作業員によってチェーンやワイヤーで機体が固定される。

恐らく盗難防止というより、街の中で暴れないようにするという方が近いだろう。

 

「すみませーん、降りて下さーい!」

 

「分かりました」

 

降機用のワイヤーを使って地面に降りると作業服とヘルメットという分かりやすい出で立ちの整備員が立っていた。

 

「各種手続きが終わるまで機体はここに駐機されることになっています、こちらに同意のサインお願いします」

 

「はい」

 

目を通すと本当に作業員が言ったこととほぼ同じ文が初めに書かれていて、ここで何かあっても弁償しかねるとも添えてあった。

街に機体の所有権を奪われるとかそんなことはないようで、仕方なくサインをして作業員に書類を渡した。

 

「このまま向かいの協会の方まで行ってもらって、こちらの書類を受付に渡して下さい」

 

「分かりました」

 

「このバインダーの色ごとに並ぶ受付が違いますので、注意してください」

 

なんというか、スムーズに進んでいる。

寄せ集めの人員が考えたとは思えない仕組みで外から来た者を篩い分けているのは正直言って凄い、崩壊後でも事務仕事が出来る人間が纏まった人数居るということなのだから。

 

協会と呼ばれる大きな建物は飾り気の無いコンクリート製の四角い建造物だが、シンボルマークと思わしき三角形二つを砂時計のように頂点を合わせたデザインの物が入り口の上に取り付けられている。

建物に入ると職員がバインダーを見て駆け寄ってくる。

 

「黒色の方はあちらの受付になります、乗って来た機体についても幾つか質問がありますのでその点ご了承下さいね」

 

「ご丁寧にどうも」

 

恐らく黒色は人型兵器乗りが持たされるバインダーなのだろう、先に並んでいる人々も陸戦用の装備というよりパイロットとしての装備が目立つ。

 

「アンジェラ、機体の方は?」

 

『今は武器弾薬をチェックされてるわ、商品の入ったコンテナも確認するつもりみたい』

 

「盗まれたら警報鳴らしてくれよ」

 

『ええ、勿論』

 

結局手癖の悪い人間は現れなかったようだが、商品を見て驚愕し上司に報告されたのは少し不安だ。この街が持ち込みを禁止している物品でもあったのだろうか、しかし御禁制の品についての説明は無かったが…

 

前に並んでいた人々は徐々に減っていき、遂に自分の番が来た。

 

「次の方!」

 

「はい」

 

「あー、ヘルメットを取って貰えますか?」

 

自分が装着しているフルフェイスの軍用ヘルメット、街に入ろうとしているのに顔を隠しているのは不自然だ。

外して顔を見せると、特に問題は無かったようだ。

 

「ありがとうございます、次はバインダーを」

 

「どうぞ」

 

書類に問題は無かったようだが、受付係の机に置かれた電話が鳴った。

 

「失礼します」

 

電話をとって何回か相槌を打った後、書類の空欄に赤いペンで幾つか書き込まれた。

やっぱり何かやらかしたかもしれない。

 

「写真を撮りますので、右手の通路に進んで下さい」

 

「分かりました」

 

「私がご案内しますね」

 

受付係からバインダーを受け渡された別の職員が自分を先導して通路を進む。

写真室と書かれた部屋に入ると、また長い列が出来ていた。

 

「並んで待っていて下さい」

 

バインダーを写真室の受付に渡し、案内係は帰って行った。

 

それからは写真を撮られ、個人情報に間違いが無いか確認させられ、他愛無い質問に答え、数時間の待ち時間に耐え、なけなしの硬貨(使えたので本物らしい)で手数料を払い…

 

「こちら身分証になります」

 

やっと終わった。

ドックタグ型のそれは常に首にかけている必要があるらしい。

 

「駐機場ですが、こちらの場所に移って頂くのですが使用料がかかりまして」

 

「…成る程」

 

それなりに高いのだろうか、金額の単位が分からない。

 

「売れる物がある場合は買い取りカウンターにて買い取りが可能です、レートは変動しますのでカウンター近くのレート表をご覧下さい」

 

こりゃいい、街公認の買い取りカウンターがあるなら大体の価値が分かる。

物品の価値が分からない現状、街に来てから最も助かる情報を得れた。

 

「人型兵器乗りの方は一般の方とは受けられる仕事の範囲が違いまして、あちらの依頼カウンターで詳しい説明があると思いますのでそちらで」

 

「分かりました」

 

もう外は暗くなり始めた、売るもの売って資金に変えよう。

 

 

ある日のこと、いつも通り買い取りカウンターで受付嬢をやっていた時だった。

新しく身分差を得たばかりの新人さんがカバン持ってやってきた。

 

「換金ですか?」

 

「はい、お願いします」

 

新人さんは身なりも良く、街の外ではそれなりに成功したことが分かる。

特にあのヘルメットはレアもので、三年に一度持ち込まれるレベルの希少品だ。

 

「(外で上手くやっていても街の品質管理は厳重ですからね、こんな風に)中を確認しますねー?」

 

「はい」

 

鞄を開くとそこにはビニール袋で小分けにされ、整理整頓された物品の数々が収まっていた。

 

「(へ、へぇー、綺麗にしてるじゃないですかー)」

 

「あっすみません、やっぱり袋が邪魔でしたか?」

 

「大丈夫ですよー」

 

街の運営に欠かせない電子部品が品薄である、ということからレートが高騰していた矢先にこの新人はこれだけの品数を売りに来た。

恐らく行商人間のネットワークだろう、流石商人は侮れない。

 

「これだけの数になりますと、少し査定に時間がかかりましてー」

 

「来たばっかりで先立つものが必要でして、ある程度の金額を先に支払って貰える制度を利用したいのですが」

 

「その制度は身分証を作って三ヶ月間しか使用できませんのでー、身分証の提示をお願いします」

 

「分かりました」

 

ハキハキと話すし制度への理解もある、品物の管理も良し。

これは中々優良な新人が来た、評価は高くしておいてやろう。

 

「こちら先払い金になります、確認をー」

 

いやこれ幾らなんだ…確認しました、ありがとうございました」

 

彼は私が見たことのないレアものを持ち込んでくれる、そんな気がするのだ。

他の奴らみたく粗雑に扱って折角の発掘品をぶっ壊したりとかしなさそうだし。

 

「またのご利用、お待ちしてまーす」

 

 

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