SF終末モノ ロボとアンドロイドを添えて   作:明田川

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第四話

「今は電子部品のレートが高いが過去のレート変動を見ると短期間で安定する…慢性的に不足しているのは生活インフラに直結する浄水器か」

 

『街の拡張に際して水道と電線は必要になるから当たり前の話ね、古いタイプの核融合弾は放射能も発生するから高性能浄水器は必須よ』

 

「…ガイガーカウンターは反応なかったし、俺は大丈夫だよな?」

 

『おそらくは』  

 

全く信用出来ない言葉はさておき、今自分は機体ガレージ付きの宿に泊まっていた。

過去のレート表をコピー代払って刷ってもらい、大量のデータを衛星経由でアンジェラに精査して貰っている。

 

『武器と弾薬は売れないわね、街で工場が稼働してからはそれなりの生産力で自給自足出来てるみたい』

 

「あの買い取りカウンターならな、他の個人店なら旧世代の銃は物よるが高く売れることもあるらしい」

 

当分の資金繰りは持ってきた物品を売ることで得るつもりだが、怪しまれない程度に仕事もせねばならない。

資金がなくなるまで調査…というわけにもいかないだろう。

 

「協会の倉庫を借りて持ってきた商品は預けておくか、機体に四六時中乗せておくわけにもな」

 

『人型兵器を使った依頼を受けるなら必要な措置ね』

 

人型兵器は街の生産施設ですら生産は出来ず、発掘品の整備や修理に留まっている。

強力で万能な兵器であることは間違いなく、それを個人で運用しているパイロット達の仕事は無くなることが無い。

 

「特にこの近隣都市へ向かう隊商の護衛が受けたい、航続距離こそ必要になるがスレイプニールなら問題ない」

 

他の街や集落の情報を得るのに最適な依頼はこれ以外にない、調査のためには是非参加したい。

 

『即座に受けられるの?』

 

「いや、講習と実技試験があるからその間は無理だがな…」

 

この街、色々しっかりしているのである。

無法者を排除し、街のルールを守らせることに余念がない。

 

「当分は空いた時間で街巡りだな、店が多いから売り先には困らなそうだ」

 

『そうね』

 

 

次の日の朝、大量の兵器と人間が街から出て仕事に向かい始める頃だ。

稼ぎ時を逃すまいと店を開けた商人達は街に出る前に人々を引き止めあの手この手で売りつけている。

 

「ちょっと早すぎたが、まあ社会見学には最適だな」

 

『ゲート近くの商店街は流石の賑わい様と言うか、街にここまでの人間が集まっていたなんて驚きだわ』

 

「なんというか、こういうのが売れ筋なのか?」

 

発煙筒、信号弾、ライフルグレネード、何製か分からないワイヤー?

どれもメインアームではない、補助的な物達ばかりが売られている。

 

『…この街が生産しているのは基本的な歩兵装備ばかりで、細かい物は品薄の状態が続いているのかしら?』

 

「成る程ね、それなりの人数が買って行くとは良い商売じゃあないか」

 

買い手が出払った頃を見計らって話を聞こう、そのためにも朝飯でも食べて時間を潰すべきだ。

 

「すげぇな、保存食以外を久しぶりに見たぞ」

 

『なにこれ』

 

「何って…タダのサンドイッチだろ」

 

パンは農業プラント直送と謳い文句がメニュー表にデカデカと書かれている。

一般に流通するほどに農産物の生産力があるのは意外だった。

 

「肉は培養か、久しぶりだな」

 

『戦闘糧食ばかりで悪かったわね』

 

「いやいや、それよりも俺だけ食って申し訳ない」

 

具材はハム、レタス、きゅうりの三種類だ。

久しぶりのマトモな食事、涙が出そうだ。

 

「…うっ、うめぇ」

 

出たわ、涙。

店員さんも珍しいことではないのか、微笑ましいとでも思っていそうな表情でこちらを見ている。

 

「お客さん、どこから?」

 

「まあちょっと遠くからで、こんな美味い物食えたのは初めてなもんで…」

 

「そうかい、まあゆっくりしていってくれ」

 

泣きながら食べる自分をそばに置いたヘルメットのカメラから見ていたアンジェラは、どこか不機嫌そうだった。

 

 

サンドイッチを食べ終わり、スレイプニールの砂塵を落としながら作戦会議を始めた。

この街の謎、崩壊後に作られた人類の社会構造など気になることは多いが…今は目先の問題から片付けていかねばなるまい。

 

『今後のことなのだけれど、人工衛星が地平線に隠れると支援できなくなるのは言ったわよね』

 

「ああ、かなり困るな」

 

敵の位置が分かるか否か、高速通信ネットワークによるナビゲーションや演算補助など様々な恩恵を享受しているために衛星とのデータリンクが切れると戦闘力は著しく下がる。

 

『新しく衛星を上げるとか、復旧させるのは現状不可能よ』

 

「だろうな、基地のマスドライバーも砲身が吹っ飛んでる」

 

『だから信用できる仲間を増やしましょう、機械のね』

 

機械…というとなんだろうか、アンジェラと同じようなアンドロイドとかだろうか。

 

「基地の地下からついでに持って来れば良かったかもな」

 

『何処に何があるのかまだ把握しきれてないわ、適当な機体を現地調達してくれないかしら』

 

「分かった、崩壊前の地図見て発掘してみるよ」

 

資金には余裕があるし、戦闘メインで働いてスレイプニールを壊したくも無い。

当分は発掘調査に回そう、漁られていない崩壊前のシェルターや地下格納庫はまだある筈だ。

 

 

ギルドに届出を出し、スレイプニールを使用しての発掘作業の許可を取る。

この街が実効支配している土地では、彼らのルールに従う必要があるのだ。

 

「発掘ですか、大規模な基地などに関わらず報告義務があるので注意してくださいね」

 

「発見者の取り分は三分の二、でしたっけ」

 

「ええ、幸運を」

 

昔衛星からの写真と消滅または埋没していない基地の位置から正確な現在地を割り出す。

これは自分が眠っていた基地が目標になるので問題なかった、この街に接収されたポイントを除くと20km先にバンカーがあるとのことだ。

 

「俺が寝てる間に大量の人型兵器が生産されたらしいな」

 

『そうなるわね』

 

「何故こうも新たな兵器が一気に浸透したのか、その時の事情を是非聞きたいもんだが…この調子じゃあ誰も生き残ってなさそうだ」

 

道中で回収車両が人型兵器と共に発掘作業を行なっており、トラックにはボロボロになったアレイオンがワイヤーで固定されている。

 

「何で埋まってるんだ?」

 

『核兵器の大規模運用による自然災害が原因と睨んでるわ、メインコンピュータ周りが生きていればそれも分かったのでしょうけど』

 

「何も分からんな、地道に調査するべきか」

 

 

『…設定してある目的地は軍のデータベースに無い場所よ?』

 

「知ってるさ」

 

昔の道路があったであろう場所を辿り、荒野を行く。

鉄塔など背の高いものは未だ中程から姿を見せており、これも目印として役に立った。

 

「電線が無いのは都市によって粗方回収されたかららしいぞ」

 

『加工できるなら使い道には困らなさそうね』

 

人型兵器の歩行速度は存外に速く、巡航速度でも70〜80ほどは出せる。

さほど時間はかからずに目的地に辿り着けるだろう。

 

「そんでまあ種明かしだが、ここらにはアンドロイドの販売店があったんだよ」

 

『跡形もないでしょうに』

 

「本命は地下だよ、確か完成予定って宣伝されてた広告には地下シェルター完備とか書いてあったが」

 

生前大きな企業がシェルターを備えた店を作ると言うことで話題になり、見たことがある。

既存の店舗の改装と同時に新規の店舗では地下シェルターを必ず備えるようにするとまで社長が明言していたため、この店にもある…と思う。

 

『…要るの?』

 

「紛争で民間のアンドロイドが軍事利用されてから規制がキツくなってな、非常時には人の手が届き難い場所に移すって決まりになった筈だ」

 

スレイプニールが折りたたみ式のスコップを取り出し、地面を掘っていく。

相当な量が積もっているようで、掘り出すのは大変かもしれない。

 

「コイツの馬力でも時間かかるな、ショベルカーより早いのは確かなんだが…」

 

『そのために野営の準備をしたのでしょう?』

 

「まあな」

 

 

あれから一時間、少し掘り進めたところだ。

 

「…おっ、こりゃあ屋根か」

 

『骨組みしか残ってないわね』

 

「だが掘り進めた場所に狂いはなかったな、このまま掘ろう」

 

とてつもない衝撃で屋根は吹き飛び、熱で歪んだように思える金属製の骨組みの他にも大量破壊兵器の痕跡が見つかった。

硝子となった砂が大量に出てくるのだ、これでは人間は生き残れないだろう。

 

「別の場所から飛んできて堆積したのか?」

 

『屋根近くの地層に埋まっているということはそうじゃないかしら』

 

「ひぇー恐ろし、地下シェルターが無事だと良いんだが」

 

そのまま一日をかけて穴を掘り続けるも、未だ床は見えていない。

やはりこの大きさの建物を一人で発掘するのは難しかったのだろうか。

 

「少し見切り発車が過ぎたか?」

 

『数日かけて終わるなら早い方だと思うけれど』

 

「それもそうか、ゆっくりやらないとこの手の経験は無いから失敗が怖いしな…」

 

アンジェラとの通信もそろそろ切れる、再度繋がるまでは作業を続けよう。

寝ている間に彼女が監視してくれなかったら無防備になってしまう、早くアンドロイドを手に入れたいものだ。

 

「組立式のライトは何処に仕舞ったかな、機体のライトも点けないと…」

 

 

機体から取り出したプラズマカッターで分厚い扉を溶断し、中に入る。

ライトを付けるとシェルター内は特に問題なく戦前の状態が保たれており、アンドロイド達は専用の分厚いビニール袋で包装されているか、大型のカプセルに格納されている。

 

「…なんだこりゃ、すっげえ見たことあるデザインのアンドロイドだな」

 

『これも貴方が居た世界の物?』

 

「あくまで人工音声のイメージキャラクターか何かだった筈だ」

 

地面に散乱していた書類の幾つかを手に取り、その中から販促用のチラシを見つける。

 

「へぇー、ハイエンドモデルが入ってきたばかりだったのか」

 

『性能は高ければ高いほど良いわね』

 

「だな、えーと…この型番か」

 

ハイエンドモデルはカプセルに格納されている機体のようだ。

 

「メンテナンス用の部品もあるな、こりゃいい」

 

『都市にどれだけ持っていかれるかしらね』

 

「3分の2と言ってもあくまで指標らしくて、現場での交渉で細かく決めるらしいぜ」

 

換金した額か、土地の面積か、質量か、ギルドの資料を見てみたが判断基準は現場によって様々なようだ。

 

『…言いくるめられないといいけど』

 

「新参者だし、強気にも出れんな」

 

スレイプニールの通信機でギルドに一報入れる、直ぐにでも駆けつけるそうだ。

 

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