SF終末モノ ロボとアンドロイドを添えて   作:明田川

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書き溜めてあったのが発掘されました。


第五話

発掘作業から数日、要らないアンドロイドを売却したお陰でちょっとした金持ちになった私は賃貸物件を借りて作業を進めていた。

何の作業かと言えば、勿論手に入れたハイエンドモデルのセットアップである。

 

『随分と間が空いたわね』

 

「事務手続きが面倒でな、アンドロイドなんて滅多に見つからないらしい」

 

女性型のアンドロイドの服を脱がせてメンテナンスハッチを開き、コードを刺したり循環液を注ぎ込んだりと作業を続けるのは精神的にキツいものがある。

ハッキリ言って普通に恥ずかしい、彼女が起動してからもこうやってメンテナンスを続けることを考えると無骨な軍用機が欲しくなる。

 

『…あら、恥ずかしがってるの?』

 

「そ、そんなことねぇって」

 

慣れない手つきで服も着せて準備は完了、頭部のアクセサリーを模したボタンを押して起動を試みる。

幾ら保存状態が良くても長時間放置されていたのだ、問題なく動くと良いのだが…

 

「はじめまして、結月ゆかりです」

 

「あー、どうも」

 

前世では動画投稿サイトで見知ったキャラクターだった彼女が、自分の目の前で話しはじめた。

転生者はクソ野朗だが、彼女を作り出したことは素直に感謝したくなる。

 

「貴方がマスターでよろしいですか?」

 

「あ、はい」

 

『…童貞丸出しね』

 

頭を抱えてため息をつくアンジェラの姿が容易に想像できる。

前世は色恋沙汰の前に交通事故で他界して、今世では軍人やってたら冷凍されてしまい…正直言って恋愛経験などないのだ。

 

「各種設定を行いますが、スマートフォンやタブレット端末又はパソコンをお持ちですか?」

 

「パソコンで」

 

無骨で殴ったら壊れるどころか人を撲殺出来そうな軍用PCを取り出す。

アンジェラが持たせてくれた装備の一つで、それなりの性能を持つPCだ。

 

「専用の管理用ソフトをダウンロードして頂く必要があります」

 

「えっ」

 

『…インターネット、もう存在しないわよ』

 

盲点だった。

ちなみにゆかりさんはインターネットの使い方が分からない方向けの案内を始めようとしてくれた、本当に申し訳ない気持ちで一杯だ。

 

というかセットアップ自体が個人で出来ない状況下で、都市の連中はどうやって民間用のアンドロイドを運用するつもりだったんだ。

 

「では同梱されていた記録媒体をPCに差し込んでください」

 

「…あ、そりゃそうか」

 

説明書を読むと小さい字で同じようなことが書いてあった。

セットアップ機材を漁ると黒いチップのような何かが袋に入っている、説明書と同じ形をしているので恐らくこれに管理用ソフトが収まっているのだろう。

 

「あったよ、記録媒体が!」

 

『まあ普通あるわよね』

 

「…これ、見たことない形だな」

 

『少なくともそのPCに差し込み口は無いわね、どんな規格なのかしら』

 

アンドロイドのマスターになるのがこんなに大変だったなんて。

早くも壁にぶつかってしまった。

 

 

仕方がないので外付けのメモリーカード読み込み装置を探すことにした、この都市なら案外売っているかもしれない。

 

「電気通りって場所はこっちか」

 

『崩壊前の電子機器、そのジャンク品や修復品が出回る場所…信用出来るのかしら』

 

事前情報を読みながらアンジェラが一言こぼした。

自分も電子機器にはそこまで強くない、祖父母のパソコンの立ち上げを手伝うくらいが関の山なのだ。

 

「シェルター併設の店舗から引き上げる以外に電子機器が生き残ってるのかも分からん」

 

『お目当てのものがあると良いわね』

 

「無いと困るっての」

 

電気通りは思っていたよりも雑多な雰囲気を醸し出している。

何処からか手に入れたであろうイルミネーション用の電飾が目立つ店や、何かの基盤が大量にぶら下がっている店、PCケースと思わしき箱が山積みになっている店など多種多様である。

 

「ひぇー、どうやって回るかなこりゃあ」

 

『凄いわね、あの店で解体されてるのアレイオンのコックピットブロックよ』

 

「なんでもアリだな」

 

ひとまず持ってきた記録媒体とパソコンを手に、店を回ることにした。

「パソコン在庫あり〼」と書かれた看板が目立つ店に入り、店主と思わしき中年男性に話を持ちかける。

 

「ミニマムドライブか、略称のMDって呼称の方が通じるから覚えとくと良いぜ」

 

「へぇ、そんでこれをこのPCに読み込ませたいんだが」

 

「…おまっ!良いもん持ってるなアンタ!」

 

なんでも崩壊前に生産された軍用PCの中でも滅多に見ない高性能機らしく、軍の資料によると特務用の少数生産モデルだとかなんとかと聞かされた。

 

『一番良さそうなのを選んだから当たり前といえば当たり前ね』

 

「(基地の地下はどうなってんだよ)…へぇー、で外付けのMD読み込み装置が欲しいんだが」

 

「んなもん滅多に出ないぜ、軍用は生き残ってたりするが民生品はなぁ」

 

やはりそう簡単に見つからないようだ。

民生品は核の炎に包まれ、殆どが焼失したのだろう。

 

「というかその装備を見るに一山当ててんだろ、どうしてまた使い道のねぇ読み込み装置なんざ欲しがるんだ?」

 

「アンドロイドを見つけてな」

 

「成る程、アレを個人で運用する気とは酔狂だなアンタ」

 

「酔狂でも伊達でもないぞ、本気だ」

 

店主は少し待ってろと言い、通信機で誰かと連絡を取りはじめた。

 

「この店なら在庫があと一つあるらしい、金払うなら仲介してやるぞ?」

 

「…頼んだ!」

 

 

手に入れた読み込み装置は問題なく使用可能で、やっとセットアップを再開出来た。

管理ソフトで各種設定を行なうのだが、流石ハイエンドモデルというべきか設定項目が多い。

 

「モードは自動追従、自己成長はONで」

 

『空き容量はどのくらい?』

 

「えーと、メインが…2ペタバイト?!」

 

前世ではIT系大企業のメインサーバーがこれくらいの容量だった筈、そう記憶している。

また今世でも記憶容量の大きさに驚いた記憶は無い、寝ている間に何かしらのブレイクスルーがあったのだろうか。

 

『サブは?』

 

「ろ、6ペタもあるんだが」

 

『それくらいなら問題ないわね、後でスペック表を送って頂戴』

 

アンジェラはどれくらいの記憶容量があるのだろうか?

彼女は超技術の持ち主である転生者謹製のアンドロイドだ、性能は計り知れない。

 

『対人攻撃関連の禁止項目も取っ払うわ、通信機とそのアンドロイドを繋げてもらえる?』

 

「了解だ」

 

 

「セットアップ完了です、これからよろしくお願いしますね」

 

「こちらこそよろしく、ゆ…結月さん」

 

『何よ畏まって』

 

「…いざ目の前にすると、な」

 

彼女にスレイプニールの副操縦席へ乗るよう指示を出し、セットアップに使った機材を片付ける。

本来民間用のアンドロイドに戦闘用ソフトウェアを入れるまではいいが、どこまで使えるのかは不透明だ。

 

『問題があったら報告して、逐次修正するわ』

 

「それなら安心だな」

 

機体のコックピットに飛び乗り、機体ハッチを閉じる。

OSは既に立ち上げられていて、すぐにでも動かせるだろう。

 

「機体との接続良好、各センサーの精度は許容範囲内です」

 

「よし、目的地は街の南東3キロ先」

 

「了解、ルートを検索します」

 

彼女単独での演算能力は確かなもので、衛星経由で得た周囲の地形と手に入れた地図のことを考慮しながら自動で辿るべき道を示してくれる。

 

「操縦権限を副操縦席に移譲、ユーハブコントロール」

 

「アイハブコントロール、目的地周辺まで移動します」

 

『超高性能なカーナビね』

 

「そういうこと言うなよ、お前はラグが酷くて運転出来ないだろ」

 

『…そうね』

 

機械同士張り合う所があるのだろうか、恐らくだが自分の方が性能は上だと内心思っていそうだ。原作からして相当闇の深い出自だったが、基地に一人で置いていかれている今世も相当だ。

帰る際はお土産を用意しなければ。

 

「3キロ先の中継地点に着いたら更に8キロ先の中継地点に行く、まあサービスエリアに寄りつつ高速道路を走るイメージだな」

 

『その例え、人前で使わないで』

 

「…あ、そうか、高速道路なんてもう無いか」

 

 

 

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